【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 県職労の社会的使命として、地域に暮らす住民とともに、公務職場に働く者の立場から、生活者の視点に立った運動を展開していく必要があります。そのためにも、住民との共同作業による地域づくりを進める上で、積極的に地域や他団体との交流を図っていく必要があります。
 今回のレポートは、県職労が「ディーセントワークの実現」を方針に掲げ、この間取り組んできた運動を纏めました。



ディーセントワークを求めて
地域に目を向けた社会貢献活動について

石川県本部/石川県職員労働組合・政治政策部

1. 県職労運動の活性化に向けて。ディーセントワークを取り組む意義

 石川県職員労働組合は、2012年を「ディーセントワーク元年」と位置づけ運動を展開してきました。
 「ディーセントワーク」とは、直訳すると、「ちゃんとした仕事、まともな仕事」という意味になります。この言葉は、国際労働機関(ILO)事務局長のファン・ソマビアさんが、21世紀のILOの目標として、1999年のILO総会における就任演説で初めて掲げたものです。2000年に開催された日本ILO協会記念式典でも、ソマビアさんは、「ディーセントワーク」について、「世界の人々がいま最も望んでいるものは、基本的人権に次いで、ディーセントな仕事ではないかという結論に達しました。これは子どもに教育を受けさせ、家族を扶養することができ、30年〜35年ぐらい働いたら、老後の生活を営めるだけの年金などがまかなえるような労働のことです。」と解説しています。
 世界を見渡すと、アフリカなどを中心に現在も貧困からの脱却、まともな仕事の実現が目標となっています。一方、経済において勝ち組の国でも、リーマンショック前後の激しい経済競争により、働く人の権利軽視や所得格差の拡大、失業率の上昇が起こり、ここでも「ディーセントな仕事」が求められています。「ディーセントワーク」の実現は、各国や地域が抱える課題や状況によって、例えば、「平和に暮らせる保障」、「人間の尊厳」、「生き方の多様性」の確保を意味しており、更に多様化していると言えます。
 日本でも、20世紀の高度成長時代以降、物質的には豊かになっていますが、それでも「何かが足りない」ことが指摘されています。最近、哲学者のマイケル・サンデル ハーバード大学教授が言っているように、「お金では買えないもの、金銭的価値で判断してはいけないものがある」ということです。
 私達は20世紀後半、賃金があがれば、物が豊かになれば、精神的な満足も得られるという時代を経過してきました。そして、21世紀に入り、物質的豊かさだけでは足りないと感じるようになっています。「ディーセントワーク」とは、賃金だけではなく、働きがいという精神的なものが含まれています。「物だけでは足りない」、「精神的満足に必要なのは何か」を、各自が積極的に探さなければならない時代であると、はっきり言える状況になったのではないでしょうか。
 私達は今、「ディーセントワーク(ちゃんとした仕事、人間らしい生き方)」とは何かについて、一人一人が自分自身で探すことが求められています。


2. ディーセントワーク実現の一つの例

 「ディーセントワーク」とは何かを考えると、バランスと調和の概念が根底にあると考えられます。私達は、バランスは個人の中だけでなく、社会の中でも必要であると考えています。
 県職労は、「社会の中で個人がバランスをとることも、人間らしい生き方だ」という仮説を立て、もう一つの取り組みを進めてきました。それが次の項です。

3. 環境保全ボランティアを通じて社会貢献活動を実施

 県職労は、公務員労働者の社会貢献活動が求められており、組合員の賃金労働条件の向上はもとより、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)に加え、地域に目を向け積極的に地域貢献に取り組むことが、県民の県職員への理解醸成に資すると考えています。また、そういった取り組みを通じ、組合員に対して、仕事の在り方や家族との絆、人間らしい生き方を考えるきっかけを提供しているものと信じています。
 この様な状況の中、県職労が従来から取り組んでいた「ゆとり・ふれあい事業」を、家族とともに「環境保全・社会貢献」に取り組むボランティア活動として発展させ、また、他団体との積極的な連携を図りながら運動を展開してきました。

*≪自治労グランドデザイン構想≫

「現場力」を活かした地域における具体的取り組み
@ 「課題や問題点は現場に存在し、住民ニーズに基づくその具体的解決策・改善提案もまた現場に存在する」という認識のもと、自治研活動をはじめ現場組合員の取り組み実践によって、豊かなサービスを実現
A 一括交付金、「義務付け・枠づけ」の見直しのもと、各自治体において国基準を下回らないサービス水準の確保が必要。自治体レベルでの政策法務力の向上と具体的な条例化の推進が急務
B 公共サービス基本法の成立を受け、公共サービス基本条例や公契約条例制定の取り組みを推進し、「質の高い公共サービス」を実現
⇒一方で、公共サービスの民営化・委託化、人員削減が進むなか、すべての公共サービス労働者の処遇改善と雇用の安定をはかるという当然の任務
「住民の理解と協力なくして運動の前進はない」との認識のもと、上記処遇改善を含めて、市民との協働を自覚的に推進していく必要


4. 具体的な取り組みの紹介

(1) 石川県職員労働組合の取り組み
<2008年事業>
@ 日 時:2008年8月2日(土) 7:00集合 7:10作業説明 7:20〜8:30美化作業 
A 場 所:能登地区・精育園(障害者施設)の構内の除草等の美化活動  
      金沢地区・駅西50m道路(県庁〜金沢駅間)の歩道の清掃  
      加賀地区・木場潟公園の中央園地付近の除草等の美化活動 
B 内 容:例年開催している「ゆとりふれあい事業」として、県内3会場で草刈りやごみ拾いのボランティア活動を行った。職場の仲間との交流や家族とのふれあいが出来、充実した時間を過ごした。
C 参加者:・能登地区 精育園 46人参加。
      ・金沢地区 駅西50m道路(県庁〜金沢駅間)120人参加。
      ・加賀地区 木場潟公園 48人参加。
<2009年事業>
@ 日 時:2009年8月29日(土) 9:00〜12:30
A 場 所:金沢市「湯涌温泉・みどりの里」周辺
B 内 容:湯涌温泉のみどりの里周辺に植樹と草刈のボランティア活動を行った。終了後に研修センターで、地産地消学習会を開催し、食の安全・安心やフードマイレージなどの環境問題を学習した。学習会終了後に、家族ごとに地元食材を使ったそば打ち体験と、打ちあがったそばで昼食会を行った。
C 参加者:県職労組合員・家族 35人参加。

<2010年事業>
<本部事業・加賀地区>
{植樹説明会} {記念写真} {全体記念写真}
@ 日 時:2010年11月7日(日) 9:30〜11:00
A 場 所:小松市マウンテンバイクコース 石川県小松市東山ヲ1番地1 
B 内 容:組合員家族がエフエム石川主催の「いしかわ漁民の森づくり」ボランティアに参加し、マウンテンバイクコースに桜の苗木の植樹ボランティア活動を行った。前段の学習会で、南加賀農林総合事務所の間明弘光さんによる環境学習会と植樹作業の説明会を開催した。家族ごとに桜の苗木を植え有意義な時間となった。
C 参加者:県職労組合員・家族 43人参加。
<本部事業・金沢地区>
{植樹風景} {植樹風景} {作業説明会風景}
@ 日 時:2010年8月22日(日) 9:00〜11:30
A 場 所:金沢湯涌みどりの里及び湯涌温泉街周辺 石川県金沢市湯涌荒屋町47番地
B 内 容:浅野川氾濫から地域再生を図っている湯涌温泉の玉泉湖周辺に桜の苗を植樹した。また、カブトムシやクワガタなどの昆虫採集や自生している植物を観察した。
C 参加者:県職労組合員・家族 37人参加。
<本部事業・能登地区>
{植樹風景} {説明会風景} {植樹風景}
@ 日 時:2010年10月30日(土) 10:00〜11:30
A 場 所:和倉温泉多目的グランド 石川県七尾市和倉町 
B 内 容:和倉温泉地内にオープンする多目的グランド周辺に八重桜の植樹ボランティア活動を行った。植樹終了後、能登丼で昼食会を行った。なお、石川県が推奨するエコチケット対象行事とした。
C 参加者:県職労組合員・家族 47人参加。
<2011年事業>
{記念写真} {植樹風景} {植樹風景}
@ 日 時:2011年10月30日(日) 10:00植樹開始 11:30終了 13:00解散
A 場 所:石川県河北郡津幡町上大田地内山林

      *学習会・交流会会場 「河合谷ふれあいセンター」・津幡町字上河合ロ50番地
B 内 容:エフエム石川が主催する「漁民の森づくり」ボランティアに参加し、コナラの苗木を植林した。
      また、津幡地区でジュニアスクールを開催しているツエーゲン金沢のスタッフとスクール生との交流や夕日寺県民自然園で里山活動推進員をされている松枝 章さんの環境保全学習会を開催した。
C 参加者:県職労組合員・家族 65人参加。
<2012年事業>
{記念写真} {竹林伐採風景} {竹細工風景}
@ 日 時:2012年9月29日(土) 9:30〜13:30
A 場 所:橋立自然公園 加賀市橋立町井343番地
      *交流会会場 「加賀フルーツランド」・石川県加賀市豊町イ−59−1
B 内 容:連合石川退職者連合と共催して、竹の伐採の「竹林保全ボランティア」を行った。また、伐採した竹を使い、森林管理課の西山 宏さんによる竹馬や花飾りの作成を行った。
      ボランティア終了後、会場を移しバーベキューで昼食交流会を開催した。
C 参加者:県職労組合員・家族 46人参加。
<2013年事業>
{栗ひろい風景} {栗ひろい風景} {学習会風景}
@ 日 時:2013年10月5日(土) 10:00〜13:30
A 会 場:中瀬農園 鳳珠郡能登町上町ト字50番地付近
B 内 容:ライフサポートセンター・労福協・子育て支援ネットや、連合石川能登地協と「食とみどり・水を守るいしかわネットワーク」と連携し「能登くり拾い」ボランティアとし、担い手不足が深刻な能登地区での体験を通して、能登の地域農業の現状を知る機会となった。
      ボランティア終了後会場を移し、星陵大学特任教授の澤 信俊さんによる環境保全学習会のあと、バーベキューで昼食交流会を開催した。
C 参加者:県職労組合員・家族50人

(2) 県庁ボランティアサークル「ボランティアの炎」の取り組み
 社会貢献ボランティアを行うため、2012年10月31日、県職労役員経験者を中心とした県庁ボランティアサークル「ボランティアの炎」が、27人の会員で発足しました。
 犀川の河川敷ごみ拾いや、高齢者福祉施設の草刈や餅つきボランティア、車いす利用者の兼六園での名所探訪などの活動を実施してきました。
<犀川河川敷ごみ拾いボランティア>
{清掃作業風景} {作業説明会風景} {清掃作業風景}
@ 日 時:2013年4月27日(土) 9:30〜11:00
A 場 所:かないわ病院前・犀川河川敷 金沢市普正寺町9−6

B 内 容:NPO法人環境・福祉・活性化ネットワークや企業のボランティア団体と共催し、河川敷にあるごみ拾いを行った。ごみ袋100個以上の大量のごみを回収した。
C 参加者:ボランティア炎会員 15人参加。(全体70人参加)
<高齢者福祉施設草刈ボランティア>
@ 日 時:2013年8月3日(土) 9:00〜12:00
A 場 所:軽費老人ホーム百々鶴荘 石川県野々市市上林1丁目179
B 内 容:百々鶴荘の夏祭りを前にして、百々鶴荘からの要請があり、周辺の夏草刈りを行った。
      ごみ袋60個分の草があった。
C 参加者:ボランティア炎会員 27人参加。
<高齢者福祉施設餅つきボランティア>
{餅つき風景} {フラダンス披露} {昼食会の利用者}
@ 日 時:2013年12月14日(土) 9:00〜12:00
A 場 所:金沢市福祉サービス公社 デイサービスセンター松寿荘 石川県金沢市金石3−3−3
B 内 容:NPO法人環境・福祉・活性化ネットワークとNPO法人いしかわ介護ボランティアセンターと共催して、恒例の年末餅つきボランティアを行った。餅つき終了後、2階の大広間に会場を移し、施設利用者がつきあがった餅で昼食会を行った。また、ボランティア会員によるマジックショーやフラダンスの披露があった。
C 参加者:ボランティア炎会員 16人参加(施設利用者80人、ボランティア参加総勢70人参加)。
<障がい者名所探訪ボランティア>

{兼六園探索風景} {お茶会風景} {兼六園探索風景}
@ 日 時:2014年4月12日(土) 9:00〜12:00
A 場 所:金沢市 兼六園
B 内 容:NPO法人環境・福祉・活性化ネットワークと共催し、障がいを持った車いす利用者12人の参加で兼六園内探訪と、時雨亭でのお茶会を実施した。
C 参加者:ボランティア炎会員 11人参加。(車いす参加者12人・参加者総勢52人参加)。


5. 取り組みの総括

 従前は、バス旅行など県職労組合員とその家族だけで実施してきた「ゆとり・ふれあい事業」でしたが、地域や他団体とも連携し、環境保全ボランティアに取り組み、これまでに、のべ537人の組合員とその家族が参加しています。
 そのほかにも、新潟・能登震災復興ボランティアや東北大震災復興ボランティアにも県職労として積極的に参加してきました。
 また、県職労役員経験者を中心に発足した、県庁ボランティアサークル「ボランティアの炎」の取り組みも評価され、マスコミにも取り上げられています。
 身近なボランティア活動を通じて、県職労の社会的使命や、家族とのふれあい、地域との連携、環境保全の大切さを改めて知る機会となりました。

6. これらの活動の課題と展望

 私達が、住民との共同作業で地域づくりを進める上で、地域に暮らす住民とそこに働く者の立場から、生活者の視点に立った運動を展開していく必要があり、そのためにも、積極的に地域や他団体との交流を図っていかなければなりません。
 今回は、環境保全の取り組みを報告しましたが、今後は、県内の全支部・連協での通年的な取り組みや障がい者・高齢者福祉ボランティア、子どもたちとの交流ボランティア活動にも目を向けた活動を展開していきます。
 また、県庁ボランティアサークル「ボランティアの炎」との連携も模索したいと考えています。
 県職労は、職員の賃金・労働条件の改善をはかることはもとより、県職労運動の持つ意義について、地域に目を向けた運動の強化と社会的影響力の検証など、その本質を組合員とともに議論しながら、新しい県職労運動の拡大につなげていくことが求められます。


7. 最後に

 戦後間もない時代と比べれば、私達の暮らす現代日本は、「不足」の時代は終わりを告げたと言えます。今は「未足」の時代。これから、私達は一体何を求めていくのでしょうか。
 仏教に「知足」という言葉があります。
 京都にある龍安寺(りょうあんじ)は石庭とつくばい「吾唯足知」が有名です。幅22メートル、奥行10メートルほどの敷地に白砂を敷き詰め、帚目(ほうきめ)を付け、一見無造作に15個の石を5か所点在させただけのシンプルな庭ですが、庭のどの場所から眺めても、15個の石のうち必ず1個は他の石に隠れて見えないように設計されているそうです。つくばいには「吾唯足知」(われ、ただ足るを知る)と書かれており、これは、釈迦が説いた「知足のものは、貧しといえども富めり、不知足のものは、富めりといえども貧し」という「知足」(ちそく)の心を図案化した仏教の真髄ですと言われています。
 また、老子も「知足」を説いています。
*《「老子」33章の「足るを知る者は富む」から》みずからの分(ぶん)をわきまえて、それ以上のものを求めないこと。分相応のところで満足すること。
 今まさに、物欲の時代から、精神的な豊かさを求めていく時代です。
 「義」バランスのとれた人間関係、「勇」人間関係を維持する力、「仁」優しく母のような徳、「礼」正しく美しい立ち振る舞い、「誠」言ったことを必ず実行すること、「智」行動に駆り立てるための内に向けた知識、「信」徳を身に着けた人に自然とついてくるもの。
 今後の組合運動の方向性ではないでしょうか。