【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 広聴の課題の一つにサイレントマジョリティからの意見聴取、とりわけ若者からの意見を聴取し、行政に反映させる必要がある。そういった中、若者がよく使うSNSでは、広報手段としての活用はあるが、広聴手段としての活用がないため、自治体向けLINE@を活用した広聴手段を提案する。



広聴用LINEの開設について
~自治体LINE@の活用~

愛知県本部/自治労名古屋市連合労働組合・総務財政支部 澤  敏文

1. 広聴用LINEの意義

 ・広聴の課題の一つにサイレントマジョリティからの意見聴取、とりわけ若者からの意見を聴取し、行政に反映させる必要がある。
 ・広報手段としては、SNSという若者がよく使うアイテムを利用した情報発信が一般化している。
 ・広報手段としてのLINE@は、情報発信や情報収集手段が増えるため、自治体・住民の双方にとってメリットがあるとして、多くの自治体が開設している。政令市では、福岡市が最初に導入しており、登録者数も多くなっている。
 ・とりわけLINEは、無料でアカウントを取得して運営できる自治体向けのLINE@があり、利用者も多いこと、他の利用者が閲覧することができない「トーク」という簡易なメール機能があることから、広聴手段としての活用ができないか検討する価値がある。
 ・ただし、全ての自治体で、広報手段として開設されており、広聴のLINEはない。
  なお、全ての自治体で、トークに対する返事は出来ない規定となっている。

2. 活用方法

 活用方法としては、従来の広聴方法である、個別広聴、調査広聴、集会広聴として活用できる。また、結果の公表まで「情報発信」として行う。

(1) 個別広聴としての活用
 市政に意見を出さない若者のために、「市民の声」の収集手段の一つとして活用する。ただし、LINE上での返信はできない。

 

(2) 調査広聴としての活用-その1-
 一般的な以下の調査広聴として活用する。
 ○LINE登録者討論会用アンケート
 ○世論調査等の他のアンケートとの同内容アンケート調査
 ○アンケート予備調査

 

(3) 調査広聴としての活用-その2-
 ○LINE川柳
  LINE上に「お題」を出し、皆さんから川柳風に回答してもらう。
  回答結果はイントラネットでも公表。
 <お題例>
 ・市職員に物申す
 ・名古屋めし
 ・経済状況
 ・不登校
 ・就職
 ・家庭環境
 ・市の窓口担当者

(4) 調査広聴としての活用-その3-
 ○LINE大喜利
  LINE上に「お題」を出し、皆さんからおもしろい回答をしてもらう。回答結果はイントラネットでも公表。
 <お題例>
 ・この窓口だめだなあと思うとき






 ・あなたが市長になったとき、(市民に対して何を言うか、 大喜利風に答えてください。)

 

(5) 集会広聴としての活用-その1-
 ○LINE上討論会
 LINE上にお題を出し、「トーク」にて皆さんの考えを集める。
 返信はできないので、一定の間隔で出てきた回答を示し、トークを進める。
 ただし、誹謗中傷等がリアルタイムで記載される可能性があるため、自由なコミュニティの場の設置は、各都市制限があるのでは。
 <お題例>
 ・「名古屋の自慢できるところは何ですか?」
 ・「名古屋の愛着度を高める方法は?」

(6) 集会広聴としての活用-その2-
 ○メッセージにより、登録者討論会を行う旨の広報を行い、希望者に市役所会議室や市の各施設に集まってもらい、施策の課題などについて討論会を実施する。結果はLINE上で公表。

 

3. LINE登録者の獲得(友だち登録)

 LINEは開設するだけでは意味がなく、より多くの「友だち登録」を促し、かつ継続していく手段が求められる。
 なお、友だち登録させる方法は、大きな項目として、LINE開設により自動的に友だち登録される「自動的手段」と積極的に依頼を行う「積極的手段」に分かれる。

 

4. 友だち登録の拡大と継続的な運営課題

(1) 運営課題
 LINE導入を成功させるには、「友達登録」を多くし、継続的な運営を促す必要がある。例えば、福岡市の広報LINEのメニューは、市政情報・緊急情報・新着動画・市長記者会見・市長からのメッセージ・市長の動き・重要プロジェクト・福岡市の魅力紹介を行っているが、広聴課のLINEでは、実施中のアンケートのお知らせ、アンケート結果の公表くらいしか発信内容がない。友達を多くし、つなぎとめておくためには、毎日の情報発信などの対策が必要となる。
 なお、LINE@での情報発信は、「タイムライン」と「メッセージ」の2画面からの発信となる。

(2) 利用者の望むもの
 友だち登録を増やすためには、LINE利用者が何を魅力に感じて利用しているのかを探る必要がある。データは古いが、2007年に内閣府が情報化社会と青少年に関する意識調査を行っており、SNSを利用する理由はなぜかの問いに、「書き込んだり、他人の書き込みを読む」60.4%、「時間つぶしに適している」54.3%が5割を超える結果となっている。また、東京経済大学で同大学のmixi利用者を対象にした調査結果でも、「情報を契機とするコミュニケーションを志向しているようすがうかがえる」と述べている。

 

5. 運営課題への対応策(一番の課題)

(1) 運営上の対策(例示)
 ・調査広聴で行う「LINE川柳」や「LINE大喜利」は、運営課題への対応策の一つ。
 ・LINE利用者は、毎日誰かの情報を得て定期的に楽しみながらコミュニケーションをとる。
 ・アンケートをする場合、PDFファイル等で依頼する方法は、運営課題への対応策とはならない。
 ・毎日1問ずつ質問を続けると、翌日の質問を待ち遠しくなる心理が働く。

 

 

(2) 地元アイドルグループや民間人などとのタイアップ
 福岡市の公式ウェブサイトやYouTubeでは、民間人を活用したSNSでの発信が多く見られる。広聴を目的としたLINEであるため同様の活用は難しいが、例えば、アンケート結果の公表で集約結果を添付するだけでなく、OSUやLINE登録者による動画での説明を行ったり、結果をアップしたお知らせ動画を配信することも、友だち登録を増やすことや離脱を防ぐ方法として考えられる。