【論文】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

 「道の駅」の経緯、全国1,004箇所の「道の駅」の諸データから基本特性を明らかにして、聞き取りやアンケート調査等から、道の駅の成功要因、問題点や課題を整理して、今後の道の駅の高度化による地方自治体の地域振興に向けての方向性(案)の考察を目的とした。その結果今後の方向性として、全国の利用規約の策定など5本柱の提言と地域連携機能の高度化として、サポータークラブの確立など8つの項目を提言することができた。



全国「道の駅」の高度化による
自治体の地域振興の方向性
―― 6次産業の拠点から防災安全拠点まで ――

山口県本部/山口県地方自治研究センター・理事長 熊野  稔

1. はじめに

 「道の駅があったから町が生き残った。」ある過疎地の道の駅支配人が言われた発言である。1993年4月に「道の駅」登録制度が始まり、最初の103箇所の登録が、20年を経た今、登録数は増加し続け2014年現在1,030にも登る。「休憩、情報発信、地域連携の機能を持つ地域と共に創る個性豊かな賑わいの場」の定義を持つ公共施設で、24時間利用可能な駐車場が20台以上、トイレが10個以上、休憩施設が必要という登録要件がある。今では、ドライバーの利便と地元のニーズが合致して交流拠点をなし、地域振興に寄与する所が多い。
 筆者は1991年の「道の駅」社会実験に参加して以来、2013年度まで全国の「道の駅」を可能な限り、聞き取りやアンケート調査で調べてきた。本稿では、「道の駅」の経緯、全国1,004箇所の「道の駅」の諸データから基本特性を明らかにして、道の駅の成功要因、問題点や課題を整理して、今後の道の駅の高度化による地方自治体の地域振興に向けての方向性(案)を考察した。

2. 「道の駅」の経緯と動向、効果

 『道の駅』は山口県が生んだ産物である。1990年に中国地域づくり交流会で山口市阿東町、船方総合農場の坂本多旦氏が、車を運転するとトイレ休憩等に困ることから、「道路に駅があっても良いのでは」という趣旨で「道の駅」を提案され、1991年に地域交流センターの協力を得て、阿武町と田万川町(現萩市)で初めて社会実験が行われた。この時、岐阜県高山市でも同様な社会実験が試みられた。その後栃木県でも実験が行われ、実験結果から利用者に好評で様々な効果が期待できることから、1993年に建設省の「道の駅登録制度」が実現し、地方自治体が主体で建設した。1993年度の最初の登録は103箇所であったが、2014年度現在1,030箇所を数えるまでに増加した(図-1参照)。過去20年間、単なる休憩・情報機能と売り上げだけでなく、車利用者と地元住民の満足効用度を高め、地域振興効果があり、貢献が果たされてきた。くつろげる休憩や地域情報・気象道路情報・医療情報等の受発信、地元民が作った農作物や特産品を「道の駅」に出荷し、新たな特産品開発が生まれ、地元の旬の資源や売れ残り商品を加工・販売する6次産業化が進行するなど、産業振興や雇用開発にも役立ってきた。今では農山村地域に賑わいを呼び、元気の源になっているところが多い。ドライバーの利便と地元のニーズが合致して、交流拠点をつくり、地域振興に寄与してきた。
 山口県内では、元祖・「道の駅阿武」は発祥交流館を持ち、まちむら交流ステーションになって都市部からの交流人口の受け入れ活動も行っている。2014年春には新しい道の駅にリニューアルされた。同じく同実験をした萩市田万川町での「道の駅ゆとりパーク田万川」は、県内で最大の駐車場台数を有し、隣接して農産物加工場を有して農産物加工販売の6次産業化が行われ、近接して全国第1号のRVパークや温泉を有し、客が参加できる農産物のセリ市も朝から行って賑やかとなった。2013年夏の山陰豪雨災害では、復興支援拠点としても機能した。
 「きくがわ」や「美東」などは、周辺に建物が張り付き、農山村地域における町の顔となり集客・交流拠点を作るという建物集積でのまちづくり効果が起こった。また、「仁保の郷」は地元自治会が運営し売り上げが好調でコミュニティの拠点であるし、「錦町」は地元住民の愛護会組織があり集落のコミュニティと一体となっている。

図-1 全国「道の駅」登録数推移

3. 1,004駅の特性(施設構成、駐車場とトイレ)

 全国1,004駅の諸施設の個数割合、駐車台数等の全国平均を算出し、全国での設置状況、「道の駅」の施設内容の割合を図表にした(表-1表-2図-2)。図-2は、施設数の合計(3,868)から各施設数の割合を図化したものである。(例:全体の施設数の合計は3,868個、店舗・売店の数は951個で割合は、24.6%。ただし図は四捨五入したもの。)
 この結果から、店舗・売店の設置率が95.2%と一番多く、次いでレストラン、屋内無料休憩所、公園となっている。これは屋内無料休憩所や、公園などの利益をもたらさないものより、店舗・売店、レストランなどの利益が出るものを重視しているという結果である。特に近年の「道の駅」では地元特産品の販売に力を入れており、多大な利益を出している。群馬県の「道の駅ふじおか」では群馬県産ブランド牛の品揃えが豊富であり、売り上げも日本で2番目に多い。このように名産品等で知名度を上げると、その「道の駅」に行くことが目的の利用者も増え、地域振興に大いに貢献している。

表-1 全国「道の駅」の諸データ(全国1,004駅に対する設置割合)
全国のデータ 店舗・売店 レストラン 無料休憩所 公園 喫茶・軽食 休憩施設
設置数 951 789 556 402 338 213
全国の設置状況 94.7% 78.5% 55.3% 40.0% 33.6% 21.2%
  博物館・美術館 温泉 展望台 運動場 宿泊施設 キャンプ場
設置数 154 138 111 76 72 66
全国の設置状況 15.3% 13.7% 11.0% 7.56% 7.17% 6.57%

 

図-2 全国「道の駅」の施設割合
表-2 全国「道の駅」駐車台数と便器数の諸データ
  駐車台数 トイレ数
平 均 109.0425 22.21733
最大値 1,597 144
最小値 17 5
設置率 100% 100%
 

 「道の駅」の基本となる休憩機能では、駐車台数とトイレ個数が要であり、全国すべての「道の駅」に設置される。表-2に示すように、全国1,004駅の駐車台数とトイレ便器数を調べると、最大駐車台数は「道の駅 みぶ」の1,597台で、最少駐車台数は17台であった。また最大トイレ個数は「道の駅 ガリレアかめおか」の144便器数で、最少トイレ個数は5便器数であった。
 また、1,004駅の男女のトイレ便器数比は、女子トイレ:男子トイレ便器数(小):男子トイレ便器数(大)が約2.5:2:1という比になった。
 次に、駐車台数とトイレ便器数の分布図を作成した。
図-3図-4参照)

 

図-3 「道の駅」の駐車台数ヒストグラム
図-4 「道の駅」のトイレ便器数ヒストグラム

 図-3の駐車台数の分布をみると50台から150台までの駐車場を設けている「道の駅」が最も多く、平均値は109台であった。また、図-4のトイレ便器数の分布表では0個から15個が最も多いが、建設省が定める「道の駅」の登録要件としてトイレ便器数は10個以上となっているので、実質最も多いトイレ便器数は15個から25個であり、平均値は22個となった。そこで式(1)に駐車台数の平均値109台を代入すると、トイレ便器数は21.83個となる。
 次に駐車場台数とトイレ数における相関係数を算出した。その結果全国の駐車台数とトイレの相関係数はR=0.522となった(表-3)。これは0.7≧|R|≧0.5であり、「相関関係がある」と言える。(出典:「社会調査の基礎」放送大学テキスト)
 駐車台数とトイレ便器数のバランスが良くないと、待ち行列等が生じる。そこで1,004駅のデータから回帰式を求めると以下のようになる。
Y=0.0573X+15.59 …式(1)
X:駐車台数   Y:トイレ便器数
 大型駐車場は2台分に換算して計算している。駐車台数20台以上トイレ便器数10以上で適用可能である。

表-3 駐車台数とトイレ便器数の相関係数
駐車場とトイレの相関係数 北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州
  0.273 0.461 0.545 0.571 0.578 0.653 0.56 0.657 0.396
全国での相関係数 0.522                

4. 発展する「道の駅」の要因

 全国「道の駅」行脚で、発展している「道の駅」の要因を考察すると以下の様になる。
 ①人望厚い優秀な駅長や支配人などのリーダーとスタッフの存在、②快適な休憩と的確な情報が得られる、③ここにしかないものへの資源を活かし、地域資源をできる限り活用した売れ筋の豊富な品揃えと美味しい郷土料理がある、④自治体や道の駅同士との連携・行政の支援・地元住民の応援体制や組織があり熱心に活動している。例えば、地元から自分たちのサロンとして愛着を持たれ協力体制がある「道の駅」は元気が良い。⑤魅力ある集客イベントに熱心である、⑥農水産物直売と農産物加工販売の6次産業化による特産品開発が盛ん、⑦観光交流拠点として機能している、⑧接客サービス、清掃、安全・安心など維持管理が適切になされている等が挙げられる。
 魅力ある「道の駅」は目的地にもなり、体験観光などにより観光交流人口を確実に高め、地元を元気にしてきたのは事実であろう。今後「道の駅」は、様々な地域振興施策を仕掛けられる社会実験場やインターンシップなどの社会研修教育の場にもなりうる可能性を秘めている。 

5. 「道の駅」の課題・問題点

 今後の経営課題としては、利用者数の増加が望まれ、売り上げの向上による黒字経営を求めているが、公共施設としての利用者の休憩や情報提供、非常時の安心拠点としての公共サービスが十分な担保となっていることが不可欠である。そのための経営努力がなされてきている。
 今抱えている問題点は、施設の老朽化(耐震改修やバリアフリー、汚れへの対応)、利用者のマナー違反(破損、汚損、盗難、ごみ捨て、駐車場への長時間占拠)、出荷者の高齢化、周辺地域の人口減少・少子高齢化、周辺の高速道・バイパス開通などによる前面道路の交通量減少、「道の駅」や直売所など周辺部との競合問題による利用者・売り上げの減少、期間限定の指定管理者としての持続性のネック等があげられ、これらをいかに解決していくかの方向性が今後期待される。

6. 今後の方向性(案)

(1) 全国「道の駅」利用規約の策定
 利用者のモラル向上のための全国的な利用規約の樹立が求められる。ごみのポイ捨てや投棄、盗難、落書きは言語道断であるにせよ依然として利用上の犯罪であり問題である。また駐車場を長時間占拠してキャンプすることも公共空間の占拠となり問題である。キャンピングカーでの長時間占拠をたしなめると、「他の道の駅は文句を言わなかったがここでは許されないのか」という返答があったという。そこで四国道の駅連絡会では22年度の総会で利用規約を作って利用者に遵守してもらうことが承認された。
 これを全国版で行い利用者の利用モラルの意識向上を図ることが、利用者の安全性や利便性につながるものと思われる。基本的には休憩、情報、地域連携の3機能の高度化を図ることが重要であろう。

(2) 休憩機能の高度化
 24時間安心してくつろげる十分な休憩空間の確保が求められる。昼間の休憩スペースや建物を施錠した後の夜間休める場所、屋外の東屋やベンチの確保、清潔な利用しやすいトイレなど基本機能の見直しと確保である。無料で飲める飲料水があれば重宝する。

(3) 情報機能の高度化
 情報機能の拡充と高度化は今後の道の駅の重要課題である。まずは、情報ソフト内容の拡充として、各「道の駅」(HP)のコンテンツ拡充が求められる。未だコンテンツ不足の駅が散見される。通行止め、迂回路情報、道路情報、災害情報、災害対応・避難情報、気象情報、道路・観光情報、地域情報、医療情報を的確に発信すると共に、「道の駅コンシェルジュ」の人的配置により利用者の様々な質問に答えられるスタッフが望まれる。
 また、行政の窓口的な役割や体験観光、地元地域の振興情報、空家・空店舗情報・入居案内情報、就職・移住・定住斡旋情報、特産品や郷土料理のレシピ他、地方自治体や関係団体とのリンク等が求められる(表-4参照)。また今後は地元情報を受け入れ発信する受発信システムも期待される。例えば、地元のためのレンタルボックス(地元住民が契約を結んで情報パンフレットや小物を置き、情報発信や販売を行う)の設置、アンケートやメールでの様々な意見収集と情報発信である。
 次に、個人のモバイル情報アクセスが普及した今日では、公衆無線LANの設置により「道の駅」の情報がスマホ等にアクセスできるインフラ整備が重要である。公衆無線LANとは、無線LANを利用したインターネットへの接続を提供するサービスで、そのアクセスポイントから受信できる場所を、無線LANスポット、Wi-Fiスポット、フリースポット、ホットスポット等と呼ぶ。一つのアクセスポイントから受信できる範囲は半径20m程度。ノートパソコン・スマートフォン・タブレットコンピュータといったモバイル機器の所有者が、道の駅では、誰でも無線LANを利用してインターネットに接続できる環境が理想である。
 他にも「道の駅」がラジオ放送局やサテライトスタジオになり周辺エリアに情報発信するようなことも検討に値しよう。
 地震等による停電や断水等非常災害時の通信を確保することは、どの道の駅でも求められる。災害対策時の通信システムを確保していくことは検討に値しよう。
 そしてこれら情報を適切に運用、活用し得るハードの情報提供機器(リクエスト端末、タッチパネル、電光掲示板、マルチビジョン、ITSスポット、インターネット用モニター、災害時の情報発信基地など)の確保である。「道の駅」の情報端末状況を図-5に示すが、未だに十分であるとは言い難い。今後の「道の駅」は、これらソフトとハードの両面から支援できる情報ステーション的な空間が確保されることが望ましい。

図-5 「道の駅」で情報端末を有す駅の割合
表-4 道の駅に設置が期待される情報機能
情報機能・設備 特徴
パンフレット・冊子 ほとんどの駅で据え置き配布。観光等情報の持ち運びが便利
掲示・掲示板 壁面等を利用して広く実施。利用者の目に留まりやすい
案内人・コンシェルジュ 従業員による人的対応で利用者の細やかなニーズの対応が可能
情報端末 情報提供の端末。利用者の操作による情報検索・入手が可能
リクエスト端末 利用者が道路規制等必要な情報を操作して入手する装置
(タッチパネル) 表示と入力の機能を備え、手等で触れて情報を引き出す
モニター  パソコン等のモニターで、インターネット情報が得られる
ITSスポット スポットに停車してITSスポット用のカーナビに情報提供
情報端末の中でも画像映像・電子情報が放映されるもの
マルチビジョン 道路状況の映像やTV映像、観光・地域情報の紹介等VTR
電光掲示板 電光掲示により、道路・観光・気象情報等を文字で提示する
公衆無線LAN 利用者のスマホや携帯電話、タブレット、ノートパソコンへのインターネット・メール等通信情報の提供
災害対策用通信システム 人工衛星、衛星通信車等を介して、災害時でも衛星通信回線を利用して被災現場との情報交換手段を確保する

(4) 地域連携機能の高度化
 地元との地域連携は、「道の駅」と地域振興の基本機能となり、以下に提言を示す。
① 道の駅サポータークラブの確立
  地元と利用者による「道の駅」を支援するファンクラブ的組織の確立が必要である。日ごろの利用促進、祭りやイベントへの参加、維持管理への協力、など様々なクラブ活動が考えられる。サポーターには道の駅から適宜メール配信で情報が送られる。
② 「道の駅」ポイントカードの導入と活用
  全国的な道の駅同士の連携では、道の駅の利用と売り上げ促進、道の駅同士の連携等の活性化を図るためにカード会社との提携による全国的なポイント制の導入を検討する。道の駅で購入すればポイントが加算される。ポイントにはエコマネー的価値があり、道の駅での清掃や奉仕活動がポイントになるシステムの導入を検討する。道の駅従業員にはボーナスポイントが加算されるなど従業員の福利厚生にも活用する。
③ 「道の駅」連携による道路ルートのサービス・イメージアップの向上
  「道の駅」同士の競合から共存をめざすために、同一道路ルートのサービス・景観向上等も含めた地域ブランド化を図る。商品の差別化、共同販促イベント、共同商品開発、休業日を同じにしない等のサービスの連携協力を図る。
④ 各都道府県における「道の駅」交流会組織の立ち上げ
  2012年には、全国「道の駅」連絡会事務局がたち上がり、遠野市や鹿島町で全国道の駅連絡会大会が開かれた。今後は、各都道府県単位で「道の駅」交流会組織が結成されて地域内の連携強化が図られ、利用者のサービスレベルを落とさないようにネットワークを持って活動することが望まれる。
⑤ 市町村の顔を有したコミュニティビジネスの拠点
  地方自治体や地元地域の顔として、地域資源を有効に活用し、特産品開発と販売などの農商工連携・コミュニティビジネスの拠点やビジターセンターとしての地域の案内機能を有す。道の駅商品の集落宅配や高齢者サービス等を行うことも検討に値する。また、まちの顔としての社会実験、イベントを実施するとともに、アンテナショップ的機能を確保して、地元の新商品、開発商品・発掘商品などをアピールして実験的に販売していくことが大事である。商品売り場に地元で生産されたブランドとなる商品はもとより、地元の新商品開発置場のコーナーを取り入れ、魅力と個性をアピールしていくことが肝要であろう。
⑥ 直売所の持続的発展(出荷の利便性と商品の安全性の確保)
  直売所は「道の駅」の集客拠点であり、農畜水産物の新鮮性、安全性、価格の安さが魅力となっている。しかし今後、農業従事者、出荷者の高齢化は免れず、自動車等による出荷方法に利便性と安全性が求められる。生産出荷者の農産物の共同出荷や庭先出荷サービス等のサービス向上および直売所での農水産物の新鮮性・安全性のチェック体制の強化や定期的に商品管理衛生講習会を登録者に行う等、安全性を高めることが必要である。出荷の利便性には、登録者同士が近隣でグループをつくり共同出荷する。各個人が、直売所まで出荷する手間を省き、ガソリン代節約によるコスト削減。訪問の際の高齢独居登録者の安否確認にも繋がる。また、6次産業化により「道の駅」の加工場で売れ残った農産物を加工・商品化して売り出せば、売れ残りを引き取る手間もなくなり資源を有効に活用できる。
  高知県黒潮町では、直売所の出荷登録者の庭先集荷サービス事業を社会実験で行った。軽トラックにより農山村の農家の庭先(集荷場所)に集まった作物の集荷と売れ残った商品の引き取り返却作業を行い、産業振興的効果、保健福祉的効果、地域活性化・集落維持の効果が現れており、このような今後の全国的な展開が期待される。
⑦ 「道の駅」ブランドを有するレストラン
  地元資源にこだわったおいしい郷土料理・バイキング・駅弁当、テイクアウト商品等の開発。「道の駅」のご当地グルメやB級グルメの積極的開発と販売促進の展開が一層求められる。ここでしか食べられない郷土料理と駅弁開発によるファミリーレストラン等の差別化が必要である。
⑧ 地域の足・交通ステーションとして
  バス停、コミュニティバス、デマンドバス等の駅、貸し自転車、電気自動車や携帯電話等の充電機能等 地域の生活交通サポートの更なる機能の強化、使い勝手の良いユニバーサルデザインの確保が重要と考えられる。

(5) 防災拠点・防災機能向上としての機能確保
 「道の駅」は、幹線道に面し、駐車場やトイレが整備され、災害時には避難場所としての利用が可能である。新潟県中越地震や東日本大震災では、避難拠点として「道の駅」が利用されたが、地震発生直後は電気や水が使用できなかったという問題点も指摘され、大地震や大津波の発生時でも避難機能を維持できるよう、事前に防災拠点化を進めておく必要がある。平常時の「道の駅」の3つの基本的機能を災害時にも活用し、それをベースとして災害対応性を強化することがより効果的と思われる。
 例えば、休憩機能では、トイレは、用水を確保して流すことができれば、災害時でも使用可能な防災トイレになる。駐車場は一時避難場所となり、余裕空間には飲料水備蓄タンクや地下貯水槽、非常用発電設備の整備が可能ならより万全に近くなる。
 情報発信機能では、電源確保によるTV情報等の入手、非常時に通信手段が途絶えても、道路情報、迂回路情報や気象情報、災害情報の発信、安否情報の提供等、衛星通信等利用しても可能になる情報入手の免疫力が望まれる。
 地域連携機能では、まずは地元自治体と防災協定を締結し、予算確保を維持しながらも、非常時の防災対応ガイドラインを決めておくことが望ましい。地元自治会との防災連携や自主防災組織、道の駅同士の防災連携により協力し合える体制づくりが望まれる。また救援物資の中継や配布等も重要である。
 その他非常時のリスク防止の支援として、医療情報の提供、AED・救急箱等の設置、交通安全情報、防犯サポート、子どもの見守り、警察官等立ち寄り場所指定などのリスク防止機能の確保が望まれる。

7. 終わりに

 わが国の地域振興施策は、欧州のグリーンツーリズム、仏のエコミュージアムなど外国発の施策が多い中で、「道の駅」はわが国発のオリジナル版である。中国やタイ、ケニアでは世界銀行が融資して、道の駅が作られてきた。世界銀行がGuidelinesも策定し、今後世界中にノウハウが輸出され広がっていく可能性があり、国際的に日本の地域振興施策の誇りになることが期待される。お手本として持続的発展がなされるために、一層の全国的な道の駅連携を強め、道の駅サービス指標とチェック体制によるPDCAサイクルにより、道路利用者と地元地域へのサービス水準を向上させて、顧客満足度CSを高め、集客を図り、売り上げの促進と地域振興に結び付けていくことが今後とも重要であろう。