【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第13分科会 自治体からはじまる地域教育へのチャレンジ

自治体職員の役割と働き方の変化
〜学校職員としての地域防災への取り組み〜

京都府本部/京都市学校職員労働組合 植田 壽恵

1. 防災研修について

 学校内外の清掃・美化や施設の管理など、子どもたちの快適な教育環境を整備している学校管理用務員が組織する「京都市学校用務研究会」では、「子どもたちの安心・安全は我々が守る」を合言葉に、避難場所等となる学校の従事職員として、緊急時にスムーズに避難所運営を行う力を身に付け、管理用務員としてのさらなる資質向上を図ることを目的に、京都府警・京都市消防局・京都市防災危機管理室などの協力のもと、防災研修を行っております。

2. 学校用務研究会とは

 学校用務研究会は、管理用務員の一人一人の公教育に携わる者としての意識改革並びに教育環境整備に関する知識・技術の向上を図ることをめざし自主的な研究組織として、1996年に発足しました。
 学職労もこの用務研究会の中心的役割を担い、防災研修の他に、全市の管理用務員が協力し、一丸となって学校の整備・修理・塗装・補修などを行う「共同作業」や、塗装や補修など様々な作業内容を撮影し、各支部で集まり研修する「学校用務支部研修会」を教育委員会とも連携しながら実施しています。
 このような取り組みを現在まで継続的に実施し、管理用務員の意識改革に努めているところです。

「共同作業」

3. 防災研修の主な取り組み

@ 2010年12月
  防犯研修として防犯に関する講義や侵入者対策のロールプレイング(ほうきなど身近なものを使用した撃退等)を実施。
A 2011年12月
  緊急用の仮設トイレの組立訓練や段ボールを使った緊急時に役立つ簡易トイレづくりを実施。
B 2012年12月
  普通救命講習、自主防災器材と取扱訓練、防災クロスロードといった防災をゲーム感覚で学ぶことができる研修を実施。
C 2013年12月
  「京都盲ろう者ほほえみの会」の方々と連携を図り、視覚と聴覚に障害のある方への災害時の支援方法について、手話実技を取り入れた研修を実施。

 
「防災研修会」   「普通救命講習」

 
「仮設トイレ組立作業」   「京都盲ろう者ほほえみの会の方々との手話研修」

4. 防災研修を実施した背景

 2011年3月に発生した東日本大震災では、東北地方を中心に甚大な被害が発生するとともに、これまでの地震対策の転換を迫るものとなりました。京都市においては、南海トラフ巨大地震や花折断層による地震の発生頻度は極めて低いとされていますが、災害が発生し、いざという時に仮設トイレの実物を見たことがなければ、避難所施設に従事する職員として、地域住民に指導することは困難です。
 また、2013年9月に発生した台風18号では、床上・床下浸水などの被害により京都市内の学校への避難をされた方がおられました。この時、被害者の方の心の不安や苦しさを間近で感じ、何か自分たちでできることはないかという思いから、災害時の支援方法について、手話実技を取り入れた研修を実施いたしました。

5. 地域防災拠点に従事する管理用務員としての役割

 東日本大震災において、学校施設は児童生徒等の命を守っただけでなく、地域住民の緊急避難場所としても機能し、学校教育活動等の場としてのみならず、地域の防災拠点としても極めて重要な役割を果たすことが再認識されました。甚大な被害状況を踏まえ、京都市においても、老朽化対策や体育館が有する課題に対応し、「学校教育活動の場としてふさわしい防災機能強化型体育館」とするため、体育館の整備を計画的に推進していくとしています。
 ただし、ハード面の整備だけでは、防災には対応できないというのが現状です。防災対策は、ハード面とソフト面の適切な組み合わせが大切になります。
 ソフト面の整備として、避難所運営には地域コミュニティの形成は不可欠であり、その一助となるべく、管理用務員も保護者・地域と日頃から連携していくこと、また、警察・消防・教育委員会とも交流し相互理解を進めることが重要になります。
 また、障がい者や高齢者だけでなく、言語が不自由で情報を得にくい情報弱者は、避難所の情報や警報等が届きにくく、災害弱者になりやすくなります。災害弱者へは、公的な支援はもちろん、地域や周囲の人間の支援が必要なのはもちろんのこと、避難所となる学校で、日々の施設管理に携わる管理用務員も、災害弱者を生じさせない体制構築に向けた重要な役割を担えると考えています。
 そのためには、地域防災活動の中に管理用務員を位置づけ、災害時に学校が避難所になった場合、避難所の運営や救護活動、防災設備・機器の取り扱いを習得しておくことが、管理用務員に求められる役割になると考えます。

6. 学校安全について

 「子どもたちの安全・安心は我々が守る」を合言葉に、これまでも管理用務員で「防犯さすまた」を約800本作成し、各学校へ配布するなどの取り組みを行ってきました。
 そんな中、2012年4月に亀岡市で子どもたちが犠牲となる痛ましい事故が起きました。そこで、事故から1年を迎えるのに合わせ、2013年4月に通学路における「安心・安全」の一層の充実を図るため、京都府警察本部にもご協力いただき、車両等への注意喚起を図るための「飛び出しぼうや」の製作・設置を行いました。ドライバーに対して「止まれ」の合図になるよう、両手を挙げた姿にしています。
 また、「飛び出しぼうや」を全ての学校園の管理用務員が作成できるようマニュアル等も作成し、支部研修会で周知しております。子どもたちや保護者・市民に対する「安心・安全」な学校づくりへの意識向上につながっています。

 
「飛び出しぼうや製作風景」

2013年4月23日付 京都新聞

7. 「飛び出しぼうや」の愛称募集による安全啓発活動

 2014年3月には、学校用務研究会において、全市立学校の児童生徒に、「飛び出しぼうや」の愛称を募集しました。約650通もの応募があり、女の子を「とまるちゃん」男の子を「まもるくん」と愛称名を決定し、新聞等にも取り上げられました。
 また、愛称を考案した錦林小学校の児童お二人は、2014年4月、亀岡署で一日署長を務め、保育園で開かれた安全教室に参加し、交通事故に対する注意点等を園児に呼びかけました。このような取り組みが、京都市全体に広がり、ドライバーの方をはじめ、市民全体で子どもたちの「安心・安全」を守っていこうという啓発につながることを願っています。

「とまるちゃん・まもるくん」

2014年3月12日付 京都新聞

2014年4月5日付 京都新聞

8. これからの管理用務員について

 現在、管理用務員職種を取り巻く状況は非常に困難なものがあります。学職労では、1999年から新規採用を停止されております。また、2008年度から段階的に各学校の管理用務員を原則一人配置とし、人員配置の抑制も図られてきました。
 他都市では民間委託も進んできている状況であり、国は「民間にできることは民間に」との方針で、強力な指導を行っていると聞いています。さらに、子どもたちを取り巻く状況の変化、大規模災害や事故により、学校に求められる業務が複雑化・多様化しています。
 また、女性の管理用務員も増えてきております。男女共同参画が叫ばれるなか、男女の均等な機会と待遇を確保し、男女が共に働きやすい職場づくりに向けて、新たな職務内容や職場環境の在り方について、当局に提案し、前進していかなければなりません。
 こうした課題があるなか、管理用務員として、学校になくてはならない存在であるために、一層の一人一人の意識改革や、技能・専門性の向上が必要です。
 ますます複雑化する学校業務に対し、庶務的業務をはじめ教員へのサポート、問題を抱える子どもたちとの関わりなども、管理用務員が教員と連携しながら積極的に関わっていくことが、学校職種としての専門性を高め、学校になくてはならない存在になることにつながっていくと考えています。その一つとして、災害時の非常参集体制については、管理用務員を、学校長・教頭の次に位置づけ、非常時に備えた体制を整えております。
 「京都市学校用務研究会」では、防災研修だけではなく、毎月の「支部研修会」や夏期休業期間中に行う「共同作業」を行い、管理用務員の技能・資質を高められるよう日々努力しております。
 一番大切なことは、管理用務員一人一人が常日頃から「子どもたちの安心・安全は我々が守る」という高い意識を持ち、喫緊の教育課題に対し、「自分たちに何ができるのか」を考え、正面から向き合っていく姿勢であると思っています。