【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第9分科会 子どもと地域社会~子どもの居場所をつくるのは誰?~

 公立保育所における食育の取り組みについて、直営自園調理により保育士・栄養士・調理員が連携した子どもたちの食を守る取り組み実践報告。



別府市公立保育所の給食の取り組み


大分県本部/別府市職員労働組合 丸尾 康子

1. はじめに

 別府市には公立保育所が3ヶ所あり、そのすべての保育所で給食を直営自園調理しています。
 鶴見保育所(定員90人)では正規調理員2人・非常勤調理員2人・臨時調理員1人
 中央保育所(定員90人)では正規調理員2人・非常勤調理員2人・臨時調理員1人
 内竈保育所(定員60人)では正規調理員2人・非常勤調理員2人(非常勤 16日/月)
が勤務しています。鶴見保育所には正規職員の管理栄養士が勤務し、公立保育所の献立の作成や支援センターでの講話、親子クッキング、相談等、保育士とともに様々な食育の取り組みを行っています。

(1) アレルギー対応について
 アレルギーがある子どもには、医師の診断書を提出してもらい、安全面を考えて完全除去で提供するようにしています。(診断書の更新は年一度)提供時には、他の子どもの給食と分けてトレーにいれ、見ただけですぐに除去されている食材がわかるように、原材料を書いている用紙を一緒に置きます。調理員から給食を受け取る時に、保育士が確認を行い、その後、保育室で保育士全員に確認して、間違いのないように2重3重でチェックをします。
 現在、卵・乳・小麦・魚のアレルギーの子どもがいます。アレルギー食の対応では間違いをなくすだけでなく、アレルギーの子どもも食べれる、アレルギー対応食品を選んだり、見た目もあまり違いが出ないような調理をして配慮を行っています。

(2) 離乳食の対応について
 離乳食は前期・中期・後期・完了期として、6ヶ月から1歳半を完了のめやすに、個別の対応で進めています。事故を防ぐため、家庭で食べたことのある食材しか提供しないようにしています。食材を書いた献立を、前月に渡して、食べたことのない食材を保護者にチェックしてもらっています。家庭で食べて問題がない場合は、その都度聞き取りを行い、給食でも提供をしていきます。成長にあわせて食材が増えていくように、保護者支援も行っています。

(3) クッキングについて
 年長児のクラスは、年間を通して調理員と一緒にクッキングを行っています。内容は、だんご汁・夏野菜カレー・お月見団子・梅干作り等です。以前は年長児のクラスのみクッキングを行っていましたが、2018年から新たな取り組みとして、全年齢(クラス)で「季節の食材を見て、触れて、臭いで、感じて食材に興味を持ち、楽しく食べることにつなげたい」を目的に、1~4期別にテーマを用意して、各保育所で、年齢にあわせて食に触れることを計画しています。

1期 梅 2期 夏野菜 3期 さつま芋 4期 大根 人参 ざぼん
・梅は梅干、梅シロップ作り
・夏野菜、大根、人参は年長児が栽培したもの
・さつま芋は焼き芋など
・ざぼんは園庭に開所時に植えたもの

(4) 調理の安全面への配慮について
 調理を行う上で安全面でも様々な配慮が行われています。食材選びでは、国産のもので、野菜はできるだけ県産のものを選び、地産地消を行っています。野菜に関しては必ず3回洗いを行い、ノロウイルス対策として、加熱調理食品は、85℃以上で90秒間以上を確認して記録します。納品時の温度管理も行い、牛乳や肉類・魚介類は10℃未満で納品してもらい、その場で測って受け取り記録しています。これらは「大量調理衛生管理マニュアル」に基づき調理員が毎日行っています。保育所に勤務する全職員は毎月1回の検便を行い、給食の提供についても作ってから2時間以内に食べることを徹底しています。

(5) その他食育への取り組み
① 献立表掲示・配布
② ポスター掲示又はリーフレットの配布
③ 給食だよりの発行(月1回)
④ 給食実物の展示
⑤ 行事食の実施(誕生会・クリスマス会・ひな祭り・立食会等)
⑥ 野菜などの栽培
⑦ お箸の持ち方などへの取り組み
 他にも調理員は、子どもたちの食べる様子を毎日見に来てくれたり、検食簿の意見についても、より子どもたちが食べやすいように話し合いを持ち、改善して提供してくれています。月に一度「お弁当の日」というのもあり、その日は空のお弁当箱を持ってきてもらい、給食をお弁当箱の中に入れて、子どもたちは遠足気分で戸外で給食を食べています。また、給食試食会を行い、保護者の方にも、普段子どもたちが食べている給食を知ってもらい、食生活について考えるきっかけ作りになる取り組みを行っています。

2. おわりに

 これらの取り組みは、直営自園調理だからできることです。献立を作る、調理する、子どもたちに食べさせる、すべての職員が、お互いに連携できる今の体制はとても大切です。今後、別府市では栄養士や調理員の定年退職が迫っていますが、私たちは子どもたちのために、この体制を守って次の世代につなげていきたいと思っています。
 食育は子どもたちに食べる意欲を育てるとともに、健康面や安全面でもとても大切なことです。たくさんの経験を通して「食べる力」を育てるために、乳幼児期から様々な援助をしています。からだをたくさん動かす遊びを多く取り入れ、子ども自身が「お腹がすいた」という感覚がもてるように、1日の生活リズムの基本的な流れを確立したり、当番活動等で、友だちと一緒に準備し、楽しく食べれる環境作りをしています。「食」に感謝する心を育てるために、栽培した野菜をみんなで収穫してクッキングもしています。
 食べることは生きて行く上で重要なことです。栄養だけではなく、食材の臭いを嗅ぐことや、食材が調理される音を聞くこと、食材に触れて感触を感じることなど、食に関することは子どもたちの成長にも大きく関わってきます。これからも子どもたちがおいしく、楽しく、食べる事の喜びが感じられるように、調理員や栄養士と協力して子どもたちの食を守っていきたいと思います。