「アジア子どもの家」プロジェクト
― 5年間の活動成果と今後の課題 ―

自治労「アジア子どもの家」運営委員会


はじめに

 自治労が「アジア子どもの家」プロジェクトに着手してから、はや5年を経過した。この間数多くの組合員がさまざまな形で活動に参加し、事業は大きく発展してきた。
 プロジェクトは2000年3月をもって第1ステージを締めくくり、4月からは向こう3ヵ年の第2ステージとして新たな展開を見せている。
 自治労総体の取り組みでありながら必ずしも各県本部・各単組に事業内容やその成果が十分理解されているとはいえない現状を反省しつつ、これまでの経過を報告するとともに、第2ステージの課題を提起したい。

 

Ⅰ 第1ステージの活動経過(事業展開)とその総括

1. プロジェクトの基本的視点と活動目標
  「アジア子どもの家」とは、自治労が結成40周年を記念する国際協力事業として1994年2月の中央委員会で取り組みを決定し、1年間の調査・準備活動を経て、対象国をインドシナ三国(ベトナム・ラオス・カンボジア)に定め、95年から具体的な活動を開始したプロジェクトである。
  この活動は、「MUPAC(アジアの人々との相互理解)」をスローガンとした2度(91年:フィリピン、93年:極東ロシア)にわたる労働組合版ピースボートの派遣など、自治労がそれまで取り組んできた国際連帯活動での問題意識に根ざしたものである。
  即ち、自治労の「アジア子どもの家」活動とは、欧米の先進的取り組みに学ぶ式の調査・交流派遣一辺倒を脱して、我々もその一員である「アジア」に着目し、資金援助やハコモノ援助にとどまらず、「一般組合員の直接参加」で、当該各国の「子どもの健全な育成」にむけての環境整備に、「継続的な」支援・協力活動をするというものである。
  具体的には、当該国政府機関・地方機関や日本のNGOとの提携協力のもとに、各国ごとに子どもを取り巻く課題と活動ニーズに応えた、地域に開かれた子どものための施設(アジア子どもの家)を建設し、運営を行ってきた。
  自治労は、「アジア子どもの家」事業を取り組むにあたって、提携するNGOや当該各国の事業責任者たちと協議し、以下の基本的視点を共通のものとした。
 ① 市場経済導入に伴う急激な社会変化がしわ寄せされる形で、インドシナ三国の子どもを巡る状況は非常に厳しいものであること。
 ② 各国の歴史的経緯や政治・経済・社会状況の違いによって子どもを巡る状況が異なり、問題が多岐に及んでいること。したがって、「アジア子どもの家」に求められる活動領域と支援内容、及び対象児童も各国ごとに異なること。
 ③ 各施設の受け入れ児童の数には制約があり、限られた人的・財政的リソースでニーズに全面的に対応することは不可能であること。
 ④ したがって、「アジア子どもの家」の活動は、各々の国で子どものための“活動(事業)モデル”となりうる内容とし、“地方への拡大-ネットワーク化”を志向。その“センターとしての機能を担う”ものをめざすこと。
 ⑤ そうした諸機能の確立と共に、運営面でも財政面でも5年をメドに“自立化”を追求すること。
  2000年3月のプロジェクト終了を前にして、自治労は提携NGOあるいは相手国のカウンターパートと共に、各事業の設立意義と「モデル化」「地方展開・ネットワーク化」「センター化」「自立化」をキーワードにした事業目標に基づき、活動経過と現下の到達状況を個々に総括することにより2000年以降の新たな提携・協力関係について、1年間様々な議論を積み重ねてきた。
  各「アジア子どもの家」事業の取り組みと到達状況を目標にてらして検証してみたところ、①国情とりわけ財政状況、②施設の性格、規模及び運営方法、③行政当局との関係性、④提携NGOのプロジェクト遂行上の手法、⑤担当者の具体的な関わり方、⑥「自立」課題の受け止め方、⑦プロジェクト進展状況の把握の仕方、などにより、以下のとおり相違が生じている。

2. ベトナム「子どもの家」
 (1) 設   立 1995年8月
 (2) 所 在 地 ハイフォン市(ベトナム第3位の人口をもつ北部の港町)
 (3) 建物の概要 総床面積30,294㎡(コンクリート3階建て)
 (4) 提携NGO 日本国際ボランティアセンター(略称/JVC)
 (5) 現地の提携機関 ハイフォン市人民委員会(管轄/児童保護委員会)
 (6) 事業対象児童
   ハイフォン市レチャン区、主にニエムギア町(「子どもの家」所在地)の6~15歳(一部の活動は18歳まで)までの困難な状況にある児童(保護者とともに生活できる条件にない児童。小学校未就学または中途退学児童、被虐待児童、児童労働を課されている児童、家族状況・経済状況が困難である児童。)
 (7) 事業目的
   困難な状況にある児童に対して、衣食住の提供、初等教育、職業訓練、仕事の紹介などの活動を実施することにより、児童が保護者・地域と共に安定して生活できるための基盤を整えることができるようになる。
 (8) 事業内容
  ① 子どもの居住(一時保護及び長期保護)― 一時保護施設及び養護施設的機能
  ② 識字クラス(未就学児童、中途退学児童への基礎教育)、6歳児クラス(就学準備教育)
  ③ 職業訓練・製品製作(洋裁、刺繍、ほうき製作、理容)
  ④ 文化・スポーツ活動(絵画、踊り、サッカー・図書室)
  ⑤ 児童相談(ハイフォン市児童相談センターの支所的機能)
 (9) 設立意義、事業目標への到達状況
  ① 上記のように、ベトナム・ハイフォン「子どもの家」は小規模ながら多様な事業内容(サービス機能)をもつ複合施設であり、活動を通じて多くの困難な状況下にある児童を適切な時期に支援することができた。
  ② 自治労はベトナム側の要請を受け「子どもの家」スタッフに対する文化活動の技術指導や「子どもの教育講座」研修を担当する目的で、97年4月から1年間東京・町田市職の組合員を長期派遣した。また、95年・98年の2度にわたり、「子どもの家」関係者の長期日本研修(日本語研修と児童福祉関連職場の実習)を受け入れた。その成果は目覚ましく、運営・活動面での自立はほぼ達成している。
  ③ しかしながら、居住している児童が家族の元に帰ること、また自立して生活することが難しい状況がある。この問題を解決するために、親代わりになる保護者(祖父母あるいは親戚)との話し合いを緊密にしているが、「子どもの家」で受け入れている一時保護の対象児童そのものが、貧困・麻薬・売春等が原因で家庭崩壊状況にあるきわめて過酷な背景を持つ子どもたちだけに、なかなか安心して帰せる条件が整わず、結果として長期間保護せざるを得ない。したがって、困難な状況に直面している子どもを新規に受け入れることができないというジレンマに陥っている。
    年長児童の子どもには職業訓練を実施し、自立して生活できるように支援しているが、職業訓練のプログラムを終了しても、それを活かして仕事に就ける機会が極めて少ない。アジア経済危機以降失業率が極めて高いベトナムの社会状況では、就業斡旋が困難である。
  ④ 「子どもの家」での活動が刺激になって、社会組織や行政の子供たちに対する支援策が拡大・発展した具体的事例として、98年4月からハイフォン市が児童保護委員会の管轄下で「児童相談センター」を開設した。自治労はベトナム側から出された日本の先進的な取り組みに学びたいという要請に応え、社会福祉評議会を中心にこれまで4回大都市の児童相談所職員を現地に派遣して、地域相談員や担当者たちへの指導にあたってきた。また、ハイフォン市は「子どもの家」をモデルにホンバン区(市内4行政区の一つ)に「子どもの家(ストリートチルドレンのための保護施設)」を設立した。
  ⑤ 財政的自立に向けて、「子どもの家」スタッフ、市児童保護委員会の担当者、JVCハイフォン事務所長の真摯な取り組みの結果、その目途はほぼ立ちつつある。具体的には、ベトナムの高金利政策を背景に「子どもの家」基金を創設し、すでに最終的な目標額の2/3を確保したこと。また、市当局の負担する運営費割合も年々増加していることがあげられる。
  ⑥ 職業訓練と連動した製品販売や寄付金集めのイベントなど、「子どもの家」独自に収益事業を展開したり、職員の賃金・労働条件の切り下げなど、涙ぐましい努力も見られる。自治労は全国保育集会や各県本部大会などの資料袋として刺繍袋を発注し、製品販売に協力した。

3. ラオス「子どもの家」
 (1) 設   立 1996年7月
 (2) 所 在 地 首都ビエンチャン市
 (3) 建物の概要 総床面積 1,053㎡(コンクリート2階建て)
 (4) 提携NGO シャンティ国際ボランティア会(略称/SVA)
 (5) 現地の提携機関 ラオス政府情報文化省(管轄/大衆文芸局)、教育省(管轄/一般教育及び幼児教育局)
 (6) 事業対象児童
   ビエンチャン市内に居住する5歳から15歳までの児童
 (7) 事業内容
   子どもの健全な育成に寄与する総合的な教育文化活動(「子どもの家」内の常設図書館での読書推進活動、ラオス固有の音楽・踊り・織物など伝統文化教室活動及び情操教育活動(18クラス設置)、教材開発活動
 (8) 設立意義・事業目標への到達状況
  ① ラオス政府が進める「読書推進活動」に協力して「子どもの家」内に常設図書館を設け、読書環境の充実を図ってきた。主要な活動としては、ラオス国立図書館やSVAの支援のもとに、日本の絵本をラオス語訳し、蔵書をふやすと共に、絵本の研究をしたり「おはなし会」の定例開催でスタッフの知識・技術を向上させてきた。また、日本から贈呈された移動図書館車を利用し、国立図書館スタッフらを中心とするビエンチャン市内と農村地域への人形劇のキャラバン活動も活発に展開してきた。
  ② 登録会員制度のもとに、ラオスの伝統文化の保存と継承、情操教育を目的とした多様々な教室を開催。週末に開かれるこれら教室は、いずれも活況を呈している。舞踊・音楽部門では、タイで開催される「アジア子ども文化祭」に毎年参加しているのをはじめ、ラオス国内での様々な催しに参加。また、絵画部門では内外のコンクールに出品し、たびたび入賞。98年3月には自治労中国地連の招きで10人の子どもが日本を訪れ、日本の中学生たちと文化やスポーツの交流を行った。教室での日常活動や公演など発表の機会を通じて、子どもたちにラオス人としての誇りと自信を持たせるという、所期の事業目的は達成しているといえる。
  ③ モデル化、地方展開・ネットワーク化、センター化に関しては、3国間で最も意識的に追求してきたと判断され、それらの到達点は予想を超えて高いものがあった。ビエンチャンの「子どもの家」がモデルになって、すでにルアンパバーンなどラオス国内6県でCCC(Children Culture Center=こども文化センター)がつくられ、更に3県が開設準備を進めている。ビエンチャン市内の他地域にも開設への要望がある。開設に際して、また開設後の運営に関して「子どもの家」に相談が寄せられたり、「子どもの家」が他CCCのスタッフ研修の場となったり、スタッフの相互交流の橋渡しをするなど、センター機能が発揮されている。運営面での自立化は、ほぼ達成されていると判断できる。施設や事業の拡大指向は全くなく、むしろ地方・地域への展開・定着を追求して、モデル・センターとしての役割に徹する姿勢が明確である。
  ④ 財政面での自立化に関しては、現在のところかなり困難な状況である。UNICEFなどの国連機関の援助や日本のODAの活用など、現地関係者は努力しているものの、ラオス経済がきわめて悪い状況では、政府からの予算増は望むべくもなく、会費徴収や製品販売、寄付金集めをはじめとする自主財源の確保が焦眉の課題である。

4. カンボジア「子どもの家」
 (1) 設   立 1997年5月
 (2) 所 在 地 首都プノンペン市
 (3) 建物の概要 総床面積 149,599㎡(コンクリート2階建て・一部平屋建て)
 (4) 提携NGO シャンティ国際ボランティア会(略称/SVA)
 (5) 現地の提携機関 カンボジア政府教育・青年・スポーツ省(以下「教育省」)
 (6) 事業対象児童
   プノンペン市内に居住する15歳以下の幼児・児童(貧困地域を含む)
 (7) 事業内容
  ① 幼稚園(3歳児、4歳児、5歳児各クラス)
  ② 児童館活動(移動図書館、児童相談、プレイルーム)
 (8) 設立意義、事業目標への到達状況
  ① カンボジア唯一の「国立幼稚園教員養成学校(以下PTTC)」の敷地内に、「アジア子どもの家(以下ACC)」を付属施設として設置し、学生の実習機会の提供など、日常的な相互交流を通じてカンボジアの幼児教育の質的な向上と地方への波及効果の促進を所期の目的としたものだが、開所後わずか3年しか経っておらず、その間に政変や国政選挙の実施など社会的な問題が重なったこともあって、ACCの活動は未だ軌道に乗ったとはいえない段階にある。
  ② 自治労はカンボジアにおける「アジア子どもの家」事業の支援範囲をACCに限定し、(双方納得の)スタートをしたが、PTTCの付属施設・同敷地という施設の性格上、支援範囲の切り分けが実際上むずかしく、運営面での二重構造など様々な問題が顕在化している。
  ③ 国家財政の圧倒的に多くの部分が国際機関や外国からの借款・援助に頼っている状況下で、しかも就学前教育に対する理解も薄く国家予算がほとんどつかない(96-97年度の政府教育予算のうち、幼稚園教育予算はわずか2.53%にすぎず、その95%が給与関連に充当)実態のもとでは、経済的自立への道は厳しい。
  ④ 活動面では、事業の実施主体であるカンボジア教育省の機構上の問題(PTTCとACCの所管局が異なっている)や、PTTCと提携NGOであるSVA現地事務所の調整上の問題等が重なり、軸足がなかなか定まらず、ACCの事業展開のあり方をめぐる自治労・SVA・カンボジア側の三者協議が、継続的に続けられてきた経緯がある。
  ⑤ 一方、ACCの幼稚園活動、貧困地域への移動図書館活動等によって、これまで子供の教育に無関心であった親や地域住民の意識変革等、着実な成果もあげている。

5. 自治労としての取り組み
  三国の「アジア子どもの家」に対する自治労の関わり方の基本方針としては、「自立」を共通目標に、それに向けての円滑な施設運営と活動基盤の整備・人材育成への直接・間接のサポートであり、その役割を担うに当たって、組合員の自発的意志・主体的活動を尊重してきた。
  具体的には、各々の施設への運営・活動資金の提供であり、これは、「コーヒー一杯分の支援」をスローガンにした組合員による毎年の「国際連帯救援カンパ」から賄われている。
  また、ソフト面での支援としては、毎年の評価会議等を通じた施設運営・活動方針等への助言、現地スタッフの半年間に及ぶ来日研修の受け入れ、児童福祉分野等で専門性を有する組合員の長期・短期の現地派遣等である。
  地連や県本部・単組レベルでは、スタディ・ツアーを実施し、現地スタッフや子どもたちと交流したり、現地の地域状況を直接見聞することで、組合員の自発的意志を促す契機となり、その後の発展的交流として、新たな活動を展開している事例がいくつか出てきた。

 (1) 「アジア子どもの家」に係る自治労の財政支出
   自治労は「アジア子どもの家」プロジェクトの開始以来、過去5年間で総額約2億1千8百万円を各「子どもの家」事業に投じてきた。これは主要に「国際連帯救援カンパ」から賄われているものである。
   費用負担として、三国の施設建設に総額約6千8百万円、運営経費として三国の「子どもの家」に毎年各々平均1千万円、5ヵ年で1億5千万円を支出してきた。
 (2) 「アジア子どもの家」運営委員会と事務局体制
   自治労の「アジア子どもの家」運営委員会は、自治労本部副委員長を運営委員長に、3名の副運営委員長(自治労本部財政局長・自治労事業本部事務局長・自治労共済専務理事)、各地連代表1名(計9名)、自治労本部の関係局役員(5名)で構成。国際局長を事務局長とし、事務局次長は政治政策局長、国際局が事務局を担ってきた。
 (3) 「アジア子どもの家」関係者の日本研修受け入れ
  ① 日本研修の経過
    自治労は三国の「子どもの家」関係スタッフを日本に招聘し、日本ILO協会が途上国支援の一環として「国際技能開発計画」に基づき実施する研修制度を活用して、原則半年の研修受け入れをこれまで3回行ってきた。
    第1回は、1995年5月~11月(ベトナムのみ96年4月まで)。第2回は1998年1月から7月。そして、第3回は1999年5月~11月。
  ② 研修受け入れの目的と内容
   日本研修は、第一義的には日本の子どもを取り巻く社会的状況や子どもに対する日本の行政サービスの実態を施設見学や職場実習をとおして学び、帰国後各々の「子どもの家」活動の発展・推進に役立てることを目的にしたものである。
    また、日本語を実地に学び、日本語でのコミュニケーション手段を多少なりとも身につけることで、日本からのスタディ・ツアー等の「子どもの家」訪問者との対応に役立ててもらうことが、第二の目的である。
    それらの目的に基づき、研修の前半3ヵ月は日本語の基礎的な集中訓練期間とし、後半3ヵ月は実務研修期間としている。
    過去2回は、研修生の大半が各「アジア子どもの家」の責任者として管理運営部門を担う立場にあったことから、受け入れる自治労としては、日本の児童福祉サービスの現状を広範に学んでもらうことに実務研修の主眼をおいた。
    第3回研修では、若い現場スタッフを日本に派遣してもらい、児童館活動など、できる限り個々の担当業務に引きつけた実践的な内容とした。
  ③ 日本研修の成果
    日本で研修を受けた「アジア子どもの家」関係者9名は、帰国後、スタッフへの報告会を定期的に開催するなどして自らの経験を全体化する努力をしており、具体的成果は施設運営面・活動面で随所に現れている。
    成果は、当該研修生や送り出した各「子どもの家」だけにとどまらない。彼らを受け入れた自治体職場でも、ベトナム・ラオス・カンボジアの研修生と、ある期間共に活動し、話し合うことを通して、スタッフ(自治労組合員)たちが新たな刺激を受け、自らが担う児童福祉の仕事の意義・双方の子どもたちの置かれた状況を客観的に見つめ直すことができるからである。
    また、研修生を受け入れたことが、ベトナム・ラオス・カンボジア三国への関心の高まり、自治労の取り組んでいる「アジア子どもの家」活動への主体的参加意欲を促すきっかけになったということも報告されている。
 (4) 専門家の派遣
  ① 保育専門家の長期派遣
    自治労は、現地の強い要望に応えて、97年4月に半年の予定で、組合員の中から保育・社会教育活動の専門家(自治労東京都本部町田市職の白坂久美子さん)をベトナム「子どもの家」に派遣した。
    就学前教育・学童保育の専門家として、現地スタッフに対する文化活動の技術指導や「子どもの教育講座」担当が主な任務であり、本人の熱意あふれる活動が現地で高く評価された。
    ベトナム側から派遣期間延長要請が出されたことから、自治労本部は、自治労東京都本部や町田市職と共に、町田市当局に働きかけ、98年3月までの期間延長が認められた。
  ② 児童相談専門家の短期派遣
    ベトナム「子どもの家」事業を提携実施しているハイフォン市児童保護委員会が、子どもを取り巻く深刻な状況に対応しようと98年4月に児童相談業務を開始、自治労に専門家の派遣を要請してきた。自治労は「児童相談業務に関する日本の専門的技術や多様な取り組み経験に学びたい」というベトナム側の熱意に応え、98年11月児童相談業務に携わる大都市(札幌・東京・横浜・大阪)の組合員ら5人を現地に派遣し、アドバイザーとして地元関係者のトレーニングに参加してもらった。
    その成果をふまえて継続的な支援活動を行う事とし、1年間の総括をもとに「地域活動拠点の整備を図る」という方針を打ち出した現地の児童保護委員会の責任者、市児童保護委員会の実務担当者及び「子どもの家」スタッフらと、99年4月に今後の具体的なサポートのあり方、支援スケジュールの大枠について協議をした。
    その一環として、市内4地域の相談員を対象とした2回のトレーニングコースに組合員(99年7月は札幌市職と大阪市職から計3名、11月は東京都職と自治労横浜計3名)を派遣し、専門家の立場で相談活動の基礎知識(相談の方法や児童心理)に関するレクチャーを行った。
  ③ 専門家派遣の今後の可能性
    自治労がベトナム側と共に取り組んだ長期・短期の専門家派遣は、当該専門家はむろん、送り出す側・受け入れ側双方の関係者の熱意と努力、関係各方面の理解と協力によって実現した。そして、「子どもの家」の活動とハイフォン市児童保護行政の推進に大きな成果をあげている。
    ラオス、カンボジアではまだ取り組まれていないが、今後の「子どもの家」をめぐる提携・協力関係を考えるにあたって、自治労からのソフト面での支援策の重要な柱と位置づけられる。
 (5) スタディ・ツアーの実施
  ① スタディ・ツアーの実施状況
    各国への「子どもの家」訪問を中心とした自治労各クラス(各地連・県本部・単組等)からのスタディ・ツアーがこの5年間で、60回以上実施され、のべ800人を上回る組合員が参加している。
    単なる親善訪問ではなく、ワークショップを開催したり、子どもたちやスタッフとスポーツをしたり共同作業をするなど、自治労「アジア子どもの家」事業がめざす「組合員参加型」の運動理念が形になりつつある。
    なかでも、自治労の「まんが集団」というサークルの仲間が96年2月と97年7月の2回、ベトナム「子どもの家」を訪問し、屋内の壁画製作を行ったり、子どもたちを対象に似顔絵バッジづくりや絵画コンテストを実施して好評を博したことは、特筆に値する。
    カンボジアについては、2年前の内戦勃発による治安上の懸念から、自治労はしばらくスタディ・ツアーの実施を見送ってきたが、ようやく政情が安定してきたことから、組合員のカンボジア訪問を奨励。99年10月の関東甲地連を皮切りに、地連・県本部レべルのスタディ・ツアーが次々と実施されている。
  ② スタディ・ツアーの成果
    「百聞は一見にしかず」とは、スタディ・ツアーの成果をまさに言い表した一言である。一度でもツアーを派遣したことのある地連・県本部・単組の、自治労「アジア子どもの家」活動に寄せる理解・関心度が高いことは、各「アジア子どもの家」の運営資金の原資である、例年の「国際連帯救援カンパ」の集約実績に如実に現れている。
    また、1回の訪問にとどまらず、ラオスの図書館活動への支援、ラオス・リンサン村の学校整備事業への支援や農業支援プロジェクトのたち上げ、ベトナム・ハイフォン市への車いすの寄贈など、その後の継続的・発展的な交流へとつながっている。
    一方、自治労が各種スタディ・ツアーを実施し、ワークショップなど現地ニーズに対応した実際的な活動を行うことが、各「子どもの家」スタッフの意識改革や技能向上に好影響をもたらしている。

6. 関連プロジェクト
  「アジア子どもの家」の取り組みを進めていく中から、農村の自立と経済的安定という新たな問題意識が生れ、自治労本部はかねて大阪府本部との交流があり、意欲的に新しい農村づくりを模索していたラオスのリンサン村をその対象とする、農業支援プロジェクトを95年9月から取り組んだ。
  具体的には、乾期でも水田での作付けを可能にしてコメの増収を図ることをプロジェクトの第一の目標とし、タイ東北部におけるコメの技術指導等で実績のある岡山大学農学部の協力のもとに、自治労の「農ネット」の活動家が中心になって現地調査と村民との共同作業による計画づくりの作業を重ねた。そして、工事が中断したままになっている国営水路に支線水路をめぐらすこととした。これに賛同した自治労横浜が尽力して、横浜市と横浜建設業協会の3者によるパックホーの現地への寄贈が行われた。
  また、中国地連も98年11月に実施したラオススタディ・ツアーの際に、リンサン村を訪問。農業関係の活動家を中心に村民への技術支援を行った。
  パックホーは有効に機能し、灌漑工事は順調に進んで、その結果、乾期米の水田は従来の三倍強の120ヘクタールに拡大した。そして、パックホー稼働後初めての収穫(99年4月末)は570トンに達した。
  雨だけに頼る農業から、生産計画が可能な農業への転換、また、パックホーの共同管理・運営や灌漑工事の共同作業を通じて、村の共働ルールつくりも始まっている。

7. 県本部・単組独自の取り組み
  地連や県本部・単組レベルでスタディ・ツアーを実施し、現地スタッフや子どもたちと交流したり、現地の地域状況を直接見聞することで、組合員の自発的意志を促す契機となり、その後の発展的交流として、新たな活動を展開している事例がいくつかある。
 ① 大阪府本部では、教育支援を中心としたラオス・リンサン村との交流活動を4年間継続的に展開した。校舎や図書館の建設、学校農園づくりを中心に村の総合的な発展と人材育成を目的とした活動は、府本部の組合員の主体的参加で進められた。スタディ・ツアーは4年間に5回に及び、プロジェクトの締めくくりとして、99年8月には、リンサン村から4名の代表を日本に招聘し、友好を深めた。
 ② 中国地連は、96年の代表団ラオス訪問を契機に、98年3月ラオスの「子どもの家」に学ぶ子どもたち10人を日本に招待し、ラオスと日本の伝統文化の交流や日本の中学生たちとのスポーツ交流・意見交歓会を実現し、組織の枠を越えた草の根外交の発展へと大きな成果をあげた。
 ③ 東京都立川市と名古屋市から、当該単組の仲介により、活動廃止で不要になった図書館車がラオス「子どもの家」に贈られ、移動図書館活動(本の読み聞かせや人形劇公演)を担って活躍している。
 ④ 東京都本部はベトナム「子どもの家」訪問を機に、現地に車イスを送ったり、「子どもの家」の刺繍製品の頒布活動を続けている。

 

Ⅱ 第2ステージの事業展開と今後の課題

1. 自治労としての取り組みの基本方向
  結成40周年記念としての「アジア子どもの家」プロジェクト第1ステージは、2000年3月をもって終了した。しかしながら、これまでの取り組み経過と各「子どもの家」事業の到達状況を考え、また、自治労の新たな運動領域として、若い組合員を組合に結集させる大きな可能性を含んでいることから、各プロジェクトを継続し、第2ステージとして展開することを2000年1月の中央委員会で機関決定した。
  「アジア子どもの家」事業を新たに開始するに際して、自治労は以下の方向性を基本とした。

 (1) 「結成40周年記念の事業」としては終止符を打ち、第2ステージとしての各「アジア子どもの家」事業契約期間は、2000年4月から向こう3年間とする。“3年間”というのは、「アジア子どもの家」事業を展開するにあたり掲げてきた4つのキー・ワード(「モデル化」「地方展開・ネットワーク化」「センター化」「自立化」)が現時点では十分達成されたとは言い難い状況であっても、3年ののちには、三国とも一定の目途が立つという予測に基づくものである。
 (2) 過去5年間の総括を踏まえ、支援の重点を“カネ”(運営・活動資金提供)から“ヒト”(各「アジア子どもの家」事業に必要な専門的技術・技能の移転。具体的には日本からの専門家派遣、各国からの研修生の受け入れ、スタディ・ツアー実施と現地でのワークショップ開催等)にできる限り、移していく。
 (3) 専門家派遣による技術・技能の移転対象の職域を、これまで実績のある社会福祉職場から医療・教育・農業分野等にさらに拡げることにより、自治労組合員の各「アジア子どもの家」事業への参画・現地との交流の裾野を拡大する。
 (4) 自治労本部から地連へ、地連から各県本部・単組へと、より職場組合員に近いレベルに自治労としての取り組みを近づけることとし、そのために「アジア子どもの家」運営委員会を問題意識の共有化と議論の深化の場として、有効に機能させる。

2. 第2ステージ・3ヵ年計画への具体的対応
 (1) 合意書の締結
   ベトナム・ラオス・カンボジア現地の各提携機関と提携NGOから出された、2000年4月から2003年3月までの3ヵ年計画案とそれに基づく支援要請に対して、自治労としては現時点における個別の事業目標到達状況と国情をふまえ、厳密に対応することとした。第2ステージ開始に際して関係者間で合意すべきは「子どもの家」を中核とした各国の子どもに対する事業(活動)の将来展望であり、3年後の到達目標は当然それを視野に入れたものである。
 (2) 評価会議の開催
   第2ステージにおける事業(活動)の進捗状況をチェックし、その後の対応策を三者(ベトナムは現地政府機関と自治労の二者)で真摯に協議する場として、個別評価会議をこれまでどおり毎年各現地で開催する。三国「アジア子どもの家」関係者の経験交流と学びあいの場として、これまで年に1度各国持ち回りで開催してきた合同評価会議のあり方を見直すこととした。
 (3) 「アジア子どもの家」現地関係者の日本研修の実施
  ① 「アジア子どもの家」現地スタッフの日本研修を、第2ステージにおいても引き続き実施するものとし、初年度として2000年5月から半年の予定で、ラオスの「子どもの家」副所長のカムサワン・ペップトーンさんとカンボジア「子どもの家」の幼稚園教師ケム・ソパウさんを受け入れ、3ヵ月の日本語研修ののち、8月から実務研修に入った。
    カムサワンさんについては福岡県本部と福岡市現業労組の協力のもとに、福岡市の児童に関する各種社会教育施設で1ヵ月の研修を実施し、ソパウさんについては島根県本部と松江市職、鳥取県本部と東郷町職の協力のもとに、松江市と東郷町の保育所及び幼稚園で各々1ヵ月の研修を行った。
  ② ベトナム・ハイフォン市児童保護委員会からは、長期研修に代わるものとして、「アジア子どもの家」プロジェクト責任者のゴー・ティ・タインさんと市児童相談所担当者のカオ・ティ・ハさんに対する短期日本研修受け入れの強い要請があり、東京都本部と都庁職民政局支部の協力のもとに、2000年6月~7月、東京都児童相談センターを中心にした実務研修を実施した。児童相談所を中心とした児童保護行政の有り様と児童相談業務のノウハウを実地に学ぶことで、更に現地関係者の理解は深まった。
 (4) 専門家の派遣
  ① ベトナム・ハイフォン市より児童相談関係者へのトレーニング開催に際して、自治労から児童相談専門家を年2回程度派遣して欲しい旨の支援要請があり、これに応えて、2000年9月30日~10月9日、北海道本部札幌市職と東京都本部都庁職の組合員2名を現地での「スーパーバイザー育成トレーニング」の講師として派遣した。
    また、カンボジアヘも2001年1月に大阪市職から図書館事業・社会教育専門の組合員の短期派遣を予定している。
  ② 派遣に当たっては、当該国の事業推進目的に即した人的支援ニーズに的確に応えるべきは無論だが、幾多の専門分野の組合員を擁し、人材豊富な自治労としては、当該国の関係者や提携NGOに対して派遣職域の拡大も提起する。
  ③ 専門家派遣の裾野の拡大を図る上でハードルとなるのが、派遣費用問題と組合員の派遣期間中の身分保障問題である。それを解決する一例として、自治省・(財)自治体国際化協会の「自治体国際協力専門家派遣事業」に各単組が自治体当局に働きかけて、職員(組合員)を応募させるという方法がある。2000年10月のベトナム派遣については札幌市職が、2001年1月のカンボジア派遣については大阪市職が、当局の理解を得てこの方法を採用することとなった。
 (5) 関連プロジェクトの推進
  ① ラオス・リンサン村の農業支援事業は、自治労農ネット、中国地連、自治労横浜などの多大な協力で大きな成果をあげてきていることから、その自治労的位置づけを明確にし、今後の具体的支援の展開方法を協議する。
 (6) 地連・県本部・単組独自の取り組み
  ① 栃木県本部が、99年10月の第50回定期大会を記念して、「アジア子どもの家」のあるベトナム・ハイフォン市の貧困家庭の児童を対象に300万円の「奨学基金創設」を決議。奨学金の支給対象枠と基金の管理運営のあり方等について、自治労本部を通じ、ハイフォン市児童保護委員会等、現地関係機関と協議を進め、初年度の対象者18名を決定。2000年10月に第1回支給を行った。この計画は「アジア子どもの家」事業に端を発した栃木県本部独自のプロジェクトであり、労働組合の国際協力事業のあり方を提起する先駆的取り組みといえる。
  ② 京都府本部が結成10周年記念事業としてカンボジア「子どもの家」に車輌を寄贈し、2000年9月に正式に引き渡された。車輌は移動図書館活動やスタッフの地方への移動手段として早速活用されている。
  ③ 近畿地連が2000年3月にラオスとカンボジアの2班に分けて、また九州地連が同年4月にラオス・カンボジアへのスタディ・ツアーを実施。両地連ともメンバーには看護・公衆衛生関係の組合員が加わり、現地で児童への衛生指導のあり方等のワークショップを開催した。今後の専門家派遣への可能性を探る新たな試みといえる。
 (7) 「アジア子どもの家」経験交流集会(仮称)の開催
  ① 各現地への専門家派遣や、地連・県本部・単組独自のスタディ・ツアー実施。各「子どもの家」スタッフの日本研修における現場実習の受け入れ等、様々な形で自治労組合員の「アジア子どもの家」との交流・活動参加が進んでいる。
    お互いの経験を報告しあい、「アジア子どもの家」の取り組みや、自治労の様々なレベルでの国際協力活動の更なる推進にむけて、率直な問題提起やそれをもとにした意見交換の場として、自治労組合員を対象にした「アジア子どもの家」経験交流集会(仮称)の実現を図りたい。

3. 各「子どもの家」プロジェクトの課題
 (1) ベトナム「子どもの家」事業
  ① プロジェクト第2ステージの対象がレチャン区ニエムギア町にある「子どもの家」の事業から、ハイフォン市内全域の「特に困難な状況にある子どもへの支援」事業へと拡大した。その中軸をなすのが「児童相談事業」である。自治労のサポート体制としては、現地への専門家派遣を中心に、これまでの児童相談派遣者のネットワーク化を図り、情報交換を密にしてより強固なものにしていく必要がある。
  ② 提携NGOのJVCが第1ステージの終了をもって撤退し、2000年4月から自治労と現地当局・関係者との直接的な提携・協力関係となった。日常的な連絡調整を軌道に乗せるには、言葉の壁を克服する条件整備が急務である。
  ③ スタディ・ツアー等の日本からの訪問者に対しては、「子どもの家」スタッフが日本語で対応できるよう努力を重ねているが、まだ十分とはいえない。日本語を話す現地スタッフの育成・人材確保は、専門家派遣を中心とした児童相談業務への継続的支援という観点からも、重要な課題である。
  ④ 市予算の大幅増額や「アジア子どもの家」基金設立などで、経済的自立への目途は経ちつつあるが、安定的な自主財源の確保と職業訓練の機会拡大の両面から「子どもの家」刺繍袋の自治労サイドの購入拡大が求められている。自治労本部・各県本部の主催する各種集会・機関会議等の資料袋として、毎年運動サイクルに合わせて定期的に現地に大量発注することで、安定的・計画的な生産が可能となることから理解と協力を求めていきたい。
 (2) ラオス「子どもの家」事業
  ① ラオス現地と提携NGOのSVAから示された2000年以降の「アジア子どもの家」運営計画案では経済的自立に向けて現地サイドでの主体的努力を続けるとし、ビエンチャン「子どもの家(子ども文化センター:略称CCC)」の管理する直接運営費については、2000-2001年には前年度予算の20%を、2001-2002年には前年度予算の40%を、2002-2003年には60%を自主財源でまかなうとのことで、自治労に対する支援要請金額は段階的に削減となっている。しかしながら、自主財源の確保がかなり困難であり、政府からの資金援助も望めない状況では、計画倒れに終わる懸念がある。
  ② 現地では「アジア子どもの家」の新たな活動として、親や教師、CCC関係者向けの子どもに関する各種セミナー、障害児を対象とした実態調査活動を開始するとし、そのための専門家(保健所職員や児童心理、障害児関係等)の短期派遣が自治労に要請されている。
  ③ ラオス国内でのCCC活動を更に根づかせ、発展させるために、現在のビエンチャン「アジア子どもの家」から地方へ、自治労組合員による具体的支援の対象範囲拡大が検討課題である。施設設備や指導者の配置においてビエンチャン「子どもの家」との格差が著しい。
 (3) カンボジア「子どもの家」事業
  ① 幼児教育のセンター機能の強化
    プノンペン「アジア子どもの家(ACC)」では従来の幼稚園運営と児童館活動から一歩踏み出して、教員養成部門 (TTC)との連携強化を図り(“TTCの付属機関である”という位置づけの下、“カンボジアのあるべき幼児教育”の体系化を担うハード・ソフト両面の役割を明確に打ちだした)、カンボジアの幼児教育活動に関するモデル及び研究並びに情報交換の拠点(センター)としての機能強化を、2000年以降の新たな活動目標と定めた。そして、全国で幼児教育・保育活動を担っているTTC卒業生や、プノンペン市内の他の中核幼稚園(コア・クラスター)・保育園・託児所関係者とのネットワークを形成していくこととした。具体的取り組みは、以下のとおりである。
   (イ) 付属幼稚園をカンボジアの都市と農村で実施可能な幼児教育と保育活動の研究と実践の場として位置づけ、TTCの教官並びに学生が日常的に活用する。
   (ロ) 幼稚園教員養成学校の卒業生を対象とするワークショップの開催。その目的は、カンボジア各地で幼児教育・保育を担っている卒業生に対するフォローアップと彼らからのフィードアップによる地方の保育・幼児教育の現状理解、それをふまえカンボジアで必要とされる幼児教育・保育の共同研究である。
   (ハ) 従来取り組んできたプノンペン市内の巡回図書館活動を発展させて、プノンペン市で試験採用されているクラスター幼稚園制度(6~7の幼稚園をグループ化し、そこに一つのコア幼稚園を設定し、コア幼稚園で取り組んだ改善活動を他の幼稚園に広げようとする制度)を活用し、コア幼稚園への移動図書館活動を積極的に実施し、ACCの教育活動の普及を図る。
   (ニ) 従来の児童館施設は、幼稚園付属の図書館、教材開発センターとして位置づける。
   (ホ) 毎週木曜日に「子どもの家」の園庭・図書室・プレイルームを地域の子どもたちに開放して、本の読み聞かせや読書指導、遊びの指導、伝統舞踊・音楽の指導等を行う。
  ② 経済的自立のための方策
    現地では以下の方策を掲げているが、いずれも自主財源の決め手には程遠い状況である。
   (イ)  ACC、TTCの職員への給与補填を段階的に削減する。
   (ロ) 園児の半数(負担能力のある家庭の子弟)から学費を得る。
   (ハ) ワークショップやセミナーの開催、調査活動は複数の援助団体との共同実施体制を確立。
   (ニ) 在籍園児と卒園児の父母等による支援組織を設立する。