とばごみゼロアクション

三重県本部/鳥羽市役所職員労働組合・環境研究会

 

1. はじめに

 これまで人類は、その生存基盤である地球環境の恩恵を受けてめざましい発展を遂げ、先進国を中心に、物質的な豊かさや便利で快適な生活を享受している。
 その一方で、文明の発展による人間活動の増大、急激な人口の増加によって、資源、エネルギー消費の増加や食糧生産の増大等、環境に対する負荷が地球規模で拡大し、その結果、大気中の温室効果ガスの増加、成層圏オゾンの減少、酸性雨、土壌の劣化、森林の減少、生物多様性の喪失、砂漠化等、地球全体あるいは地球上の広範な地域で同時に進行する様々な環境問題に人類は直面している。
 それら多くの環境問題の中でも、ごみ問題は一番身近で深刻な環境問題となっている。
 そうした中で、鳥羽市においてもごみ問題は深刻な状況であり、既存施設におけるダイオキシン問題等で大変苦慮している現状である。このままでは、廃棄物処理のために多額の財政投入を余儀なくされ、自治体運営が困難を極めることが予想される。
 ごみは、多く処理すればするほど経費がかさみ、環境への負荷も増幅する。それらを解決するためには、まずごみ自体を減量化するとともに、家庭や事業所から排出されるごみの分別・排出方法等を創意工夫し、ごみを出さないことが大切である。
 ごみは日常生活を行うにあたって、誰もが常に関わるものである。行政とか処理業者など誰かに一方的に責任を押し付けることなく、全体の問題としてそれぞれが責任を果たし、ごみのない社会を実現したい。

2. 環境研究会の目的

 ① ごみ問題を通じて、市民参加のまちづくりを考える。
 ② 自ら行動を起こして、ごみのない社会を目指す。(資源循環型社会の創造)
 ③ 脱焼却のための方法を検討する。
 ④ どうしても出てくるごみの効率的な処理を考える。

3. ごみ処理の現状

(1) 鳥羽市の実態(別紙1)

  鳥羽市におけるごみ量実態

(2) 焼却処理実績量
  鳥羽市の全施設における焼却量実績を下記の表に示した。
  可燃ごみの焼却量はさほど変化していないことがわかる。

    焼却処理実績

項 目 / 年 度 平成6年度 平成7年度 平成8年度 平成9年度
焼却量(t/年) 14,980 14,432 14,645 14,720
前 年 比(%) 96.3% 96.3% 101.5% 100.5%

資料:一般廃棄物処理事業のまとめ(平成9年度)

(3) ごみ質の現状分析
  鳥羽市のごみ質及び三重県平均を下記の表に示した。
  三重県平均と比較すると、ごみ質の種類組成において厨芥類の割合が高いことがわかる。このことから鳥羽市の可燃性ごみは、生ごみが多い。
  従って、ごみの減量化のために、生ごみのコンポスト化が有効な減量化施策と判断できる。

    鳥羽市のごみ質及び三重県平均

(4) ごみ処理経費
  鳥羽市と三重県のごみ1t当たり及び人口1人当たりの経費内訳を平成9年度の実績で比較すると、下記の表に示したとおり、1人当りの経費の項目等で三重県平均より処理経費が上回っている。

      ごみ処理経費(平成9年度)

4. 環境研究会取り組み報告(別紙2)

 鳥羽市の焼却処理されるごみは、平成10年度実績で家庭系ごみ:事業系ごみ=49:51と約半々である。「ごみ家計簿」の取り組みから、生ごみ処理機を導入した家庭では、重量が約2分の1に減少する。また清掃センターに持ち込まれる事業系ごみの中に、生ごみの占める比率は、家庭系ごみよりも高いと思われ、生ごみ対策が必要である。

5. とばごみゼロアクション

 目的を達成するために、下記の「とばごみゼロアクション」を提案する。

(1) 生ごみの減量化対策
  鳥羽市のごみの特徴は生ごみが多いこと。ごみ減量化のポイントは生ごみにある。
 ① 家庭用生ごみ処理機の普及。(生ごみ処理機補助金請求の簡素化)
 ② 事業者(ホテル関係等)への生ごみ処理機の普及。
 ③ 行政として生ごみ分別回収。集中コンポスト化の検討。
 ④ コンポスト(有機肥料)の活用。

 農業への利用
 市民を対象に、休耕田などを活用して「有機農園」を提供する。休日に、耕作できる程度の広さの土地を区画整理し、指導員を配置する。また、年に一度の収穫祭などのイベントも企画する。当面のコンポストは、中央共同調理場のものを園芸センターで完熟堆肥としたものを利用する。
 「花いっぱい運動」を行う。
 例えば、離島でのごみ分別の取り組みは進んでおり、意識も高い。離島をモデル地区に指定し「ゼロエミッション」の取り組みを行う。

※「ゼロエミッション」
     ある産業から出るすべての廃乗物を、他の分野の原材料として活用することで、あらゆる廃乗物をゼロにすることを目指す構想のこと。屋久島ゼロエミッション構想などがある。

(2) 収集方法の改革
  2000年4月から本格実施される容器包装リサイクル法や将来のことを考えると、分別の種類は非常に多くなると思われる。これまでの収集方法では、ごみを出す住民も回収する行政も大変苦労する。したがって今後の収集方法について、基本的な考え方を提案する。
 ① 常設ステーションを設置する。

 ステーションから直接リサイクル業者へ引き渡す。
 住民は、いつでもごみを出すことが出来る。
【ごみの種類は、検討する。(例・新聞紙、ダンボール、缶、布など)】
 ステーションの設置数は、自治会等と十分協議する。

 ② 店頭回収の協力要請と協力店のネットワーク化を推進する。
 ③ 可燃ごみの収集回数は、週3回から2回にする。(分別を徹底すれば、週1回も可能。)
 ④ 常設ステーションを活用し、不燃ごみ収集は出来る限り減らす。ただしごみを出すことが困難な家庭等については、福祉収集を行う。

(3) 啓発活動の推進
  排出されたごみを収集・運搬、処理、処分するだけでは、増加し続けるごみの問題を解決することにはならず、住民一人ひとりに分別排出の重要牲や資源の有効活用についての啓発の充実が大切である。また、住民、事業者、行政が一体となって問題の解決に向けて取り組む必要がある。そのためにも、情報の公開や積極的な啓発が必要である。
 ① 鳥羽市を美しくする条例(ごみポイ捨て防止条例)の周知徹底を図るために、全市民が参加する環境美化の日、「ごみゼロの日」を設定する。(例:みどりの日4/29、ごみゼロの日5/30)
 ② 「鳥羽市廃棄物減量等推進委員」制度を活用し、地域での指導や機関紙の編集、リサイクルの研究等を行う。

(4) 環境教育の充実
  鳥羽市内の小・中学校において環境教育を充実させる必要がある。一般廃棄物の中間処理過程・資源ごみのリサイクル工程・容器包装廃棄物など具体的かつ高度な環境教育を行うことを検討する。また、小学校における自由研究課題に環境問題を推奨する。
  一方、住民・事業者がごみ問題に関心を持ち、自己の責任と役割を十分理解し、地域社会全体として意識の熟成を図るため、各種団体等に対する啓発やインターネットなどによる環境の情報提供を行い、ごみ問題に関する知識の浸透や環境学習の促進を図る。

(5) リサイクル工房の設置
  使えるものが、ごみとしてたくさん廃棄されている。資源循環のための中心的な活動の拠点として「リサイクル工房」を設置する。「リサイクル工房」では、リサイクル可能な品物を市民が持ち込み、再利用可能にするための製品づくりや展示販売を行う。
 ① リサイクル品を展示、保管、加工する場所は、市が責任を持って設置する。
 ② 運営は、ボランティアが主体となる。
 ③ 完成品の展示と啓発のために、リサイクルフェスティバルやフリーマーケットなどを行う。

(6) 最終処分場のあり方
  鳥羽市の一般廃棄物最終処分場の設置は、斜水設備が不十分で現在の基準では不適切である。鳥羽市清掃センター最終処分場は、埋め立てを開始して以来約18年を経過しており、焼却場から排出される焼却残 の埋立ても行っているため、近郊民家へのダイオキシン類の飛散等が懸念されている。
  したがって、これまでの埋め立て処理されてきた廃棄物を再度処理することが必要であり、現時点での処理方法は、ガス化溶融炉で行うことが望ましい。

(7) 市役所職場での取り組み
  環境に対する職員の意識改革と快適な職場づくりのために行動する。
 ① グリーン購入の徹底
 ② 紙の両面使用の徹底
 ③ 職員研修(環境教育)
 ④ 公用車両の集中管理と低公害車の導入
 ⑤ エコオフィスの研究
 ⑥ 国際環境規格ISO14001の取得

(8) ごみゼロプロジェクトの設置
 ① メンバーの構成は、市民(公募)、企業、行政の代表者とする。
 ② ごみゼロのまちづくりを実現するために、市民参画を得て検討、研究する。

(9) 環境自治体づくりプロジェクトの設置
 ① 行政の施策を、すべて環境に配慮したものとするためのプロジェクトを庁内に設置する。また上記ごみゼロプロジェクトヘの提案内容も検討する。

6. まとめ

 環境研究会では、これまでのごみに対する処理の方法では、次々と厳しくなる環境基準を達成することや、市民の期待に応えられないという認識に立ち、先進地視察や環境家計簿の取り組みを行い、熱心に議論しレポートにまとめた。研究会の議論では、
 ① ごみが環境に与える影響は非常に大きい。
 ② 地域での取り組みだけでは限界があり、ごみゼロ社会を目指した法整備が急務である。
 ③ 将来的には、ごみを焼却することは不可能になると思われる。
との結論に達した。
 地球温暖化を防止するために、CO
の削減が必要となっている観点からも、極力ごみを焼却することを止めるべきであり、ごみは限りなくゼロにすることが大切である。そのための廃棄物行政を推進することや、企業や住民もそのことを理解しごみを出さないようにすることが必要である。
 鳥羽には素晴らしい自然がたくさん残されている。鳥羽を訪れる多くの観光客はこの自然に魅かれて訪れているのではないだろうか。
 ごみ問題は、マイナスのイメージが大きいが、『とばごみゼロアクション』が実現できれば、活気あふれる鳥羽市が実現できると確信している。
 今こそ行政の改革や市民の参画が求められている。鳥羽市として環境自治体づくりを推進し、市民とともに行動しなければならない。