【第26回写真コンクール】久保田太一さん(岩手・一戸町職)の「逢いたくて逢いたくて」が特選に!

「第26回写真コンクール」の審査を7月15日、東京・自治労本部で行った。今回のテーマは「喜・楽」。応募総数150作品という激戦の中、計8作品が入賞した。特選に輝いたのは、久保田太一さん(岩手県・一戸町職)の「逢いたくて逢いたくて」。
特選(1点)
選評:ご実家のお母さんが自宅を訪れた時の写真だそうです。久保田さんは、お母さんが自宅に入る前から孫に逢いたかった様子を感じたそうです。窓際にいるお子さんはシルエットぎみにして、外から孫を満面の笑みで見つめるおばあちゃんにピント、露出を合わせ、中心のモチーフにしています。多くの作品が子どもさんを中心に置いている中で、おばあちゃんに焦点をあてたところに工夫を感じました。また、家族の中でのお子さんのあり様がよく伝わってきます。
入選(1点)
選評:お子さんが、おじいちゃんのあごひげのまねをして、「ひげじいさん〜」と歌っている様子を捉えた作品です。お子さんがおじいちゃんのひげのまねをして、楽しそうにしている様子が非常にかわいらしく撮られています。このかわいらしさは、お子さんがカメラを意識せず自然に撮られていることでうまく出ていると思います。良いスナップショットの例です。また、背景のパンダの置物を入れた構図が、画面全体にアクセントをつけています。
佳作(3点)
選評:離乳食を始めた頃の娘さんの写真だそうです。にこにこしたまん丸の顔に大きくあいた口がなんとも微笑ましいです。ひとくち食べては「もっとちょうだい!」とアピールしているようで、「この子の成長が私の喜びです」と佐藤さんは書かれています。見ている側もその喜びをおすそ分けしてもらったような気持ちになります。余計なことを考えず、気持ちのまま撮ったストレート写真の良さが出ている作品です。
選評:子どもたちが、公園でしゃぼん玉遊びをしている様子を撮った作品です。浅田さんは、「子どもたちが走りながらしゃぼん玉を飛ばす様子が踊っているようだった」とエピソードに書かれています。画面の中心に今まさにしゃぼん玉が出る瞬間を捉え、その周りにはいくつかのしゃぼん玉が写り、子どもの表情とその姿勢が躍動感を伝えます。絶妙なシャッターチャンスをものにした写真です。
選評:長男が7ヵ月の次男のまねをして舌を出していると、次男がいきなり長男にパンチを浴びせたところをうまく捉えた作品です。増田さんは、「弟が兄につっこみを入れるように見えるところが楽しくて応募した」と書いています。この兄弟のほのぼのとした関係が、写真を見る側にもよく伝わってきます。2枚の連続写真を組写真にした結果、非常に作品が立体的になっています。シャッターチャンスと、写真構成の良さがうまく出ている作品です。
努力賞(3点)
選評:写真の場所は、過去の水害で多くの犠牲者を出した加茂川だそうです。現在は、5月初旬からこいのぼりが上げられているということです。手前上部に大きくこいのぼりを、右下には小さく子どもたちを入れた、よく考えられたダイナミックな構図になっています。欲を言うと、もう少し寄って子どもたちを大きくしても良かったかと思います。状況が分からないのですが、川面を入れると臨場感がさらに出るのではないでしょうか。
選評:お母さんが自宅にある柿を収穫した時の写真だそうです。収穫した柿の入った大きなカゴを両手で持って、にこやかな表情で写っています。現在は、残念なことですが、このような重いものを持てなくなってしまったということです。お母さんの屈託のない表情が、いくつになっても二人の間にある親子関係を表しているような気がします。背景の植物の上の部分が写っていないことが、写真全体をシンプルにして印象を強くしています。
選評:大市さんによると、近くのコスモス畑を訪れた時、風景写真を狙ってファインダーを覗いていたら楽しそうな声に誘われて、思わずその方向へカメラをむけ、シャッターを切っていたということです。中央の女の子の表情とその仕草、それを見ている二人の子どもたちの視線などシャッターチャンスや構図のバランスなどが良い作品です。背景のぼかし具合もちょうどいいと思います。シャッターチャンスはいつ、どこにあるか分かりません。
講評:視野を広げれば、新たな発見があるはず
第26回写真コンクールのテーマは「喜・楽」でした。「日常の中にある喜びや楽しさ、身近にあるあなたにとっての『喜・楽』を撮ってください」ということでした。その結果、応募総数は例年になく沢山ありました。テーマが身近なものということが良かったのかもしれません。しかし、大部分の写真が、赤ちゃんや子どもを撮影したものでした。それ以外のものも、お孫さんなどと一緒におじいちゃん、おばあちゃんを撮ったものがほとんどでした。各賞の選考は、非常に困りました。それぞれの写真はそれぞれの「喜・楽」を捉えているのですが、被写体がみな同じ。さまざまな「喜・楽」を期待していた私としては、多少がっかりしたところもありました。そして、選考結果も赤ちゃん、子ども、お年寄りを撮影したものになりました。確かに、自分の周囲を見渡して、喜びや楽しさを探せば、すぐ目の前にあるお子さんたちの成長の様子になることはよく理解できます。それが悪いということではありません。しかし、もう少し視野を広げてみてはどうでしょうか。
例えば、職場の写真です。仕事場で撮ること自体が難しいのかもしれませんが、ほとんど職場の写真はありませんでした。仕事上のささやかな達成感など「喜・楽」に通じる何かはあるのではないでしょうか。また、現在の社会状況を考えた時に、さまざまな問題が山積みです。町内会やボランティア活動などの様子も被写体になると思います。周囲の事でも、もう少し社会との関わりのある「喜・楽」を見たかったです。そこにも、必ず喜びや楽しさがあるはずです。
審査員:鈴木邦弘さん(写真家)
雑誌や写真展を中心にフリーの写真家として活動。「世界」「週刊朝日」などに作品を発表。現在は月刊誌「世界」(岩波書店)の表紙に福島県の原発事故被災地を撮影した作品を連載中。93年「森の人・PYGMY」で第18回伊奈信男賞を受賞。日本写真芸術専門学校専任講師。自治労情宣セミナー分科会講師。日本写真家協会会員。
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