地方交付税と地方税の課題(前編)

地方交付税制度は、自治体間の財源格差をならすとともに、どこに住んでいようとも人びとが一定の生活水準を維持し得るよう財源を保障するものである。両者は分かちがたく結びつきつつ、渾然一体となって私たちの生活を支えている。しかし、国の債務危機が進展する中で地方交付税は批判の対象となり、財源保障機能の行く末が危ぶまれている。本稿では、地方交付税の基本的な仕組みを振り返りつつ、国・地方の対立の背景を論じ、自治体の財源保障の将来的な課題を論じる。
改めて地方交付税とは?
人は、誰しもが実り豊かな生を生きたいと願っている。
性別、財産の多寡、障害の有無、生まれなど、さまざまな「偶然」が人生を左右するが、社会の側は人びとがより「人間らしく」、より平等に生きられるようにでき得る限りの準備をする。これが、福祉国家の核となる理念である。
福祉国家は、人間であれば等しく有する共通のニーズを満たすための諸制度よりなっているが、本稿で論じる地方交付税は、その中でも最も重要なものの一つである。
地方交付税の役割は、自治体間の財源格差をならすとともに、どこに住んでいようとも人びとが一定の生活水準を維持し得るよう財源を保障するところにある。
前者を財政調整機能、後者を財源保障機能ともいうが、両者が分かちがたく結びつき、渾然一体となっているところが肝心である。
人びとがどこにいても「平等」に暮らすことができれば、すなわち、自治体間で財政調整がなされていればそれで良いではないかと思われるかもしれないが、「等しく貧しい」ではあまり意味はない。
人間らしい生活水準を保障することもまた肝要である。
例えば、どこの地域に住んでいようと、医療、子育て、介護、生活保護など、さまざまな社会保障制度の恩恵を私たちが等しく享受できるのは、地方交付税によるところが大きい。
このように、地方交付税はわが国の福祉国家には必要不可欠のものである。
しかし、後述するように、地方交付税に対しては現在、国(主として財務省)から厳しい批判の目がむけられている。こうした問題を理解するためには、やや複雑なところもあるかもしれないが、地方交付税の運営の仕組みについて理解する必要がある。
この点について見ていくことにしよう。
※後編は4月10日(月)に更新
東北学院大学准教授 佐藤滋(さとう しげる)
東北学院大学経済学部共生社会経済学科(専門:財政学、地方財政論)。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期修了。経済学博士。著書に『租税抵抗の財政学』岩波書店、2014年(古市将人との共著)がある。
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