【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第4分科会 「官製ワーキングプア」をつくらないために

 公務員定年退職者においては、2001年4月より再任用制度が導入され、正規職員より短い時間数を働くという形で再任用していますが、勤続年数が38年から42年と長期にわたり青森県に貢献してきた経験豊かな人的資源であるにもかかわらず、効率的な活用が図られていないのが現状です。雇用する側が再任用制度を前向きにとらえ、人的資源の有効活用に真剣に取り組むことを提案します。



再任用制度を前向きにとらえる


青森県本部/青森県職員労働組合 山谷 悦子

1. はじめに

 公務員定年退職者においては、年金制度の改正に伴い、年金支給制度が段階的に引き上げられ、2001年4月より再任用制度が導入されました。再任用希望者は、経済的理由や時間的余裕があること、また、まだ肉体的に活動年齢であり仕事をしていたいなどの理由から再任用を希望し、正規職員より短い時間数を働くという形で就労しています。
 青森県の場合、制度が導入されて8年間に延べ人数で615人(1年平均80人弱)、退職者41%が再任用されていますが、人手の足りない忙しい単純労務に配属され、これまでの経験が再任用の場で有効に活用されていないのが現状です。経験豊かで、仕事の全体像をみることができ、ものごとの善し悪しを判断できる有能な人財であるのに、物理的な処理業務にのみ雇用しているのは人的資源の多大な無駄使いであると思います。
 これまで、財政危機を乗りきるために数字上の経費節減に注力してきましたが、現有の人的資源を無駄にしないこと、つまり、効率的な人材活用を図ることにより経費節減となり、さらには人材育成にも効力を発揮することになると考えます。
 それには、雇用する側もそれだけの工夫が必要です。再任用制度を前向きにとらえ、要望を考慮した勤務体制を擁立し、居心地の良い、気持ちよく働ける職場環境の構築について、組織全体を中心に考えることを提案します。

2. 制度の利用状況

 別紙1 参照
○2001年から2009年までの退職者数2,268人のうち再任用を現実に行う職員は、数字上では1,481人です。
○実際では、8年間の再任用者延べ人員615人(約41.5%)となっています。
○毎年度の、退職して再任用できる職員は180人前後と考えられます。再任用期間が各採用人員で重複しますが、おおむねその年度退職した40人から60人程度が、当年の再任用についているのではないかと思われます。つまり、定年退職者のおおむね3人に1人は再任用で就労していることになります。

3. 再任用制度利用者実態調査

 別紙2 参照(聞き取り調査書)

4. 調査結果からよむ公務員退職者のライフスタイル

 日本の職場には、利益共同体というだけでなく、運命共同体的な面が強く、公務員を共同体でみるならまさに運命共同体です。それだけに、定年退職後にはさまざま面で喪失感がつきまとうと考えられます。肩書きと勤務先がかかれた名刺がなくなり、自分を証明できない、これまでその名刺により快く応対してくれた会社にも訪問できず、ゆくあてもなく、生活には困らないが、動きがとれぬまま、退屈な日々に苦しんでいる、という暗い表情が読みとれます。
 アメリカ人のストレスの原因としては、10中の9まで家族とか男女の関係などに関わるものがあげられ、勤務先との関係でストレスの原因となったのは「解雇」だけでした。一方、日本人の場合は、ほとんどの原因が勤務先や仕事にからむものであったとのことです。ということは、日本人は退職することによって、数多くのストレスの原因から解放されることにもなる。つまり、その面ではアメリカ人以上の解放感、ハッピィリタイアメントの実感があるはずです。その解放のよろこびを存分に味わうとともに、前向きに心をはずませてよいのではないだろうかと思われるのですが、現実はそうではありません。
 歳をとってからの生活を、働くことで維持するのか、あるいは年金に頼るのかを考えた場合、高齢化社会の進展は大きな問題として関心を集めつつあります。
 今日、若者の夢・希望に対する欲求は強く、第二、第三世代が第一世代の仕事を継ぐことはめずらしくなっています。特に公務員は収入が安定していることから、自分がかなえられなかった夢・希望を子どもに託してか教育費用捻出に鷹揚です。また第三世代の教育年数、教育費用が増えた結果、第二世代はその世代の子である第三世代をまだ育てている段階で、親である第一世代の扶養を始めなくてはならない状況となっています。さらに、第二世代の引退後は、今度は第三世代である孫の肩に祖父母、父母の第一、第二世代の扶養がのしかかってきかねない、そのような状況になっています。
 このような状況のなかで、現在の高齢者の現状を自分たちの将来の境遇に映しかえて、これは大変だと思う、高齢人口の増加、年金財政のパンクなどこれからますます状況は悪くなるのではないかという不安があります。
 本格的な高齢化時代というものをまだだれも経験したことがないという未知であるということそのものからくる不安等を抱えた条件付きリタイヤメントライフスタイルであると推察することができます。

5. 福祉関係業務でとらえた具体的施策例

 別紙3 参照

6. まとめ

 今日「再任用」ということばに対して現職職員の抱くイメージは、あまり明るいものではありません。再任用職員は短時間勤務であるが定数内として配属のため、正規職員は採用されず現職員の業務負担が増えることになります。実際に業務を担当しているが、間違いがあってもこれまで上司だったため指摘しにくい、勤務時間が短いため、急ぎの書類をまかせられない、パソコンがうまく使えないため業務をやりとりする際無駄な時間がかかる、まわりの職員が気をつかうというのが現実問題としてきこえてきます。
 しかし、定年退職者は、長年さまざまな業務をこなしてきたベテランの知識人たちです。現実の明るくないイメージを払拭できるような体制を早く整え、再任用職員が「引っ張りだこ」となるような県政を望みます。
 上手に年をとる、あるいは充実した人生を送るためには、具体的には①病気にかからず健康な身体を保ち、②精神的にも健全で、③活動的な生活 を指す三つの条件が必要とされます。うちどれか1つが欠けても駄目で、長い人生を生きているだけに、他の年代よりも一人ひとりの違いが大きくなっています。つまり、年をとるほど経済状態、健康状態、価値観や好みなどすべての面で、それまでの生き方や生活の違いがはっきり表れてくるのです。そして、そうした自分に満足していたり、自信を持っているため、自分の価値観や欲求がかなえられないと腹を立てます。長い人生を山坂を乗り越えてきたという自信と満足感を感じていて、自分たちのこれまでのガンバリが今日の繁栄を築いたという自負も強いのです。だからそのことに敬意を払ってほしいという気持ちを持っています。それらを考慮した雇用条件を策定することで、再任用者の第2の人生が充実したものとなるのではないでしょうか。
 長期にわたり青森県に貢献してきたひとたちであり、働くことを希望している再任用職員に対して、現職員と同等の扱いを心がけること、再任用の人たちからも、赴任先・業務内容の要望を聴取するなど働き手のニーズを考慮に入れながら、使用者側の意向(本来の行政目的)を果たす方法(労使の合意)を見出すことが必要です。
 制度が国からの申しつけであろうとも、人件費がかかっていることはいなめない事実です。自治体は、再任用制度に関する発想の転換をし、「ヤル気」を盛り上げ、「やりがいのある業務体制」を構築し、人的資源の有効活用について真剣に取り組むことが必須であると考えます。

別紙1 再任用制度利用状況

別紙2 聞き取り調査書

別紙3 福祉関係業務でとらえた具体的施策例