【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第4分科会 「官製ワーキングプア」をつくらないために

 自治労京都府職員労働組合では、昨年11月、京都府で働く臨時・非常勤・嘱託職員に対し、仕事の内容や雇用期間、賃金・労働条件、労働組合への関心などについてアンケート調査を行いました。アンケートの回答からは、継続雇用に対する強い不安や、賃金・労働条件に対する不公平感が根強いことがわかりました。紙面の都合上、このレポートでは、非正規が担う仕事の内容や、賃金・労働条件の不満・不安を中心に報告します。



「臨時・非常勤・嘱託職員アンケート調査結果」報告


京都府本部/自治労京都府関係職員労働組合 井上  茂

 自治労京都府職員労働組合では、昨年11月、京都府で働く臨時・非常勤・嘱託職員に対し、仕事の内容や雇用期間、賃金・労働条件、労働組合への関心などについて、アンケート調査を行いました。アンケートの回答からは、契約期間は1年未満が最も多く、本来、正規職員が担うはずの恒常的な仕事をしている人が半数以上を占めました。また、賃金等の労働条件に対しては、不満を感じている人も半数以上を占め、なかでも任期満了後の継続雇用が大きな不安の要素となっていることがうかがえます。アンケートの結果からは、
① 3年間の雇用後も、希望者には雇用を延長するシステムの確立。
② 職務の内容や勤続年数に応じて、昇給制度の確立や一時金を支給すること。
③ 臨職・非常勤職員の年休・雇用保険等について、現場まかせでなく、人事当局として責任ある部署を確立すること。
等が必要であると考えられます。以下、アンケート結果について報告します。

1. 回答者の概要

(1) 調査の概要
 調査期間は2009年11月1日~11月30日。調査対象は京都府に勤務する臨時・非常勤・嘱託職員126人。回答者数は84人でした。回答者の年齢は、30歳代が36.9%と最も多く、次いで40歳代、20歳代です。性別は、女性が84.5%、男性が15.5%と、女性が多くを占めました。

(2) 職場・雇用形態
 現在、働いている職場で最も多かったのが「本庁」、次いで「出先機関」となっています。また仕事の内容は、「一般事務」が84.5%と圧倒的に多く、専門職はわずか10.7%にすぎませんでした。雇用形態では「臨時職員」79.8%、「非常勤職員」3.6%です。

(3) 勤務の日数・時間・年数・契約期間
 1週間の勤務日数(平均)は、回答者の88.1%が「5日」と回答し、1日の勤務時間(平均)は、90.5%の人が正規雇用と同じ「7時間以上」働いていました。
 今の仕事の勤務年数は(同じ仕事で継続)は、「1年以上2年未満」28.6%で、次いで「1年未満」21.4%となっています。しかし、臨時的仕事に就いている人が多いにもかかわらず、「2年以上5年未満」が17.9%、「5年以上10年未満」「10年以上」の人もあわせると8.3%もいて、長年にわたって非正規を雇用している実態があります。
 今の仕事の契約期間は(採用の期間)で最も多かったのは、「6カ月以上12カ月未満」44%ですが、「2カ月以上6カ月未満」も40.5%と、ほぼ同じ割合でした。更新期間に中断がある場合の中断期間については、回答者数が非常に少なく、「1日」が3.6%、「6カ月」が2.4%でした。「1日」の中断期間というのは、継続雇用と同様です。そういう職場や仕事は、本来、正規職員が担うべきで、正規職員が不足しているのであれば、非正規ではなく正規として、新規の雇用を考える必要があります。


2. 一時金・昇給・交通費について

 一時金は、81.0%の人が「ない」と回答しています。昇給についても、「ない」人が61.9%、交通費は、「ある」が31%、「ない」が35.7%と、ほぼ同じ割合です。日本の場合、一時金は本給と同様に、生活していくうえでの必要な賃金となっています。非正規の場合、時間給そのものが生活給とはなっていないうえに、一時金もなく、正規と非正規の間に大きな賃金格差が生まれています。

3. 雇用保険・社会保険の加入状況について

 雇用保険には77.4%が、社会保険には81.0%が加入していました。雇用保険の加入要件は、1年以上継続して雇用が見込まれること、契約期間の定めがあっても、契約の更新により1年以上の継続雇用が見込まれる場合、65歳に達した日以後に新たに雇用される者でないことなどです。社会保険の加入要件は、所定労働日数及び所定労働時間が一般社員のおおむね4分の3以上であること。また、日々雇い入れられる人、臨時に使用される人で2カ月以内の期間を定めて使用される人、季節的業務に使用される人、臨時的事業の事業所に使用される人以外の人は、加入できます。回答者は、勤務日数が「週5日」が88.1%、1日の労働時間が「7時間以上」の人が90.5%いることから考えると、加入率が高いのは当然の結果だといえます。


4. 仕事の内容について

(1) 仕事の内容
 仕事の内容が「恒常的」と回答した人が57.1%もいました。地方公務員法の定めによれば、緊急か臨時的な仕事でなければならないはずですが、「恒常的」という回答が多いのは、本来、正規職員が担う職務に非正規労働者を雇用していることがうかがわれます。改めて非正規職員の雇用の仕方を点検する必要があるといえます。


(2) 本来、職員がするべき仕事か
 日々の仕事は、本来、京都の職員がやるべき仕事だと思うかどうか聞いたところ、「そう思う」と回答した人が25%いるのは、注目すべき結果です。最も多かったのは、「どちらとも言えない」46.4%でした。


(3) 仕事のやりがい
 仕事にやりがいを感じているかどうかについては、「感じる」が33.3%、「少し感じる」が33.3%と、合わせて66.6%の人が「やりがい」を感じています。仕事のやりがいは、賃金・労働条件に左右されるというより、達成感を得られるかどうかが左右します。仕事にやりがいを感じている人が多いのは、それだけ仕事が達成感の得られる重要な内容だと考えられます。


5. 年次有給休暇について

 年次有給休暇を「とれている」人は56%と、半数以上を占めました。反面、「取ったことがない」10.7%、「年休がない」15.5%でした。
 また、年休をとれない理由では、無回答が多く、「雰囲気が取りにくい」が7.1%と最も多い結果となりました。正規職員でも、年休を100%取得する人は非常に少ないと思われますが、非正規においても同様の課題があることがわかりました。


6. 賃金等の労働条件や仕事の上での不満・不安

 賃金等の労働条件や仕事の上での不満は、「いつも感じる」人が26.2%、「たまに感じる」人が35.7%と、不満を感じる人は合わせて61.9%にのぼりました。
 任期期間満了前になると、継続任用されるかどうか不安になるかどうか聞いたところ、「不安になる」は66.7%と、多くの人が不安を感じている結果となりました。その背景には、仕事にやりがいを感じていることや、非正規であっても仕事がなくなれば、生活がなりたたなくなる人が多く存在することが考えられます。非正規雇用者は、こうした不満を相談したり、解決するための手段をもたない場合がほとんどであるため、必要な対策が求められます。
 また、現在の賃金・労働条件について感じていることについて、複数選択で答えてもらいました。そのなかで一番多かったのは、「継続雇用の希望」(63.1%)でした。これは、上記の回答とも符合する結果で、任期が定められている職場は、いかに働く人にとって安定感を喪失しているかを示しています。次に多いのが「一時金の支給」(54.3%)で、一時金が賃金格差を感じる大きな要因になっていることがうかがわれます。その他、賃金面では、「昇給がない」「賃金が安い」がそれぞれ25%、「通勤手当がほしい」(21.4%)などがあがっています。
 待遇面では、「正職への採用希望」が40.5%です。現在、非正規で働いている人は、非正規という働き方を希望して職に就いた人ばかりではないことがわかります。
 その他、「(非正規として)立場の明確化」(27.4%)、「正職の仕事をさせるな」(8.3%)と回答する人もいて、非正規の仕事の内容を、改めて見直す必要があります。



7. 労働組合について

 最後に、臨時・非常勤・嘱託職員の労働組合の必要性について聞いてみました。
 労働組合を「絶対必要」15.5%、「あれば良い」は42.9%で、合わせると58.4%が必要だと感じています。「必要がない」と明確に否定した人は4.8%でした。「わからない」と回答した人は、労働組合がどういう役割を担っているのかについて、あまり知識をもっていないためと考えられます。
 今後、組合活動(組合説明会)に参加したいかどうかについては、「参加を希望」する人が3.6%で、前述の労働組合が「絶対必要」と回答した15.5%に比べて少なくなっています。また、労働組合は「必要がない」と回答した人が4.8%しかいないにもかかわらず、「参加したくない」が31.0%となっています。「無回答」も33.3%と、上記の回答と矛盾する結果となったのは、必要性を感じていてもすぐに加入することには躊躇したり、雇用期間の短さや賃金の低さから労働組合に加入するメリットを感じない、また契約期間の終了が間近に迫っている人もいるためではないかと考えられます。
 一方、「組合活動はわからないが会議は参加してみたい」人が32.1%にものぼることは注目されます。労働組合から積極的にアプローチして、説明できる機会を設けていくとともに、不満や悩みを話し合い、相談できる労働組合となることが求められています。


8. アンケートの「自由記入欄」から

 アンケートでは、自由に記入できる欄を設けたところ、たくさんの記述がありましたが、その中から特徴的なものを下記に列挙します。
<契約期間>
・3年間の雇用の後は、行く先等を相談できる環境がほしい。3年目になると仕事にも慣れ、良くできる人が多くなっているので、延長してほしい。可能な限り長くいたい。
・12月末で任期が切れるが、担当職員から同じ部内で臨職の空きがあれば継続を検討する(1カ月前位)と聞いた。任期後の継続更新希望者には、同じ部内ではなく、全庁を対象にした雇用への道があるといい。
・契約更新は、1週間前にならなければわからない。今まで2回更新があったが、1度目は3日前に自分から問い合わせてわかった。2度目は1週間前。もし、更新されなければたちまち失業となる。生活のために働いているのだから、2週間前までには答えをだしてほしい。正規職員は手厚い保障があるが、非正規にはない。
<賃金>
・能力があれば、臨時職員であっても給与等の待遇が良くなるチャンスがあってもいいと思う。
・仕事は楽しいし、職場も好き、だけど今の給料では暮らしていけない。
・正規職員に比べると、仕事内容や勤務時間(残業がないなど)の点で、今の賃金でも仕方がないと思う反面、今は親と同居しているのでなんとか生活しているが、一人暮らしになったら絶対暮らしていけない。せめて継続して働けるような環境にしてほしい。
・正規職員と同じように働いてほしいと言われるが、ボーナスもなく賃金も低いのに納得できない。
・年末年始の休暇やお盆がある月は、出勤日数が少ないので給与が少なく、辛い。ボーナスは無理としても、月給制にしてほしい。
<労働環境>
・職員から差別的な言動や対応があった場合は、セクハラやパワハラ同様に、罰せられる体制がほしい。
・一生懸命仕事をしているのに、正職員から「自分たちの残業代がカットされて臨時職員を雇っているのだからしっかり働け」と言われた。好きで臨時職員をやっているわけじゃない。
・人間としての扱いをしてほしい。自分が反対の立場になったときにどう思うのか考えたことがあるのか。
・年休を使いづらい雰囲気がある。上の人は肩書きを利用して威圧的だ。賃金が低すぎる。交通費の支給がないのはおかしい。不満だらけだ。雰囲気が悪すぎる。
・今の職場は恵まれていると思うが、ここでの仕事が終わった後に次につながるかどうか疑問。もっと人を育てるという考えをもってもらいたい。
・臨職の中には仕事ができる人もいる。そういう人材を契約期間が終了したからといって切ってしまうのではなく、正規職員までは無理でも準職員みたいなポストで働き続けることができればと思う。
・正規職員は公務員としての自覚を持ち、もっと真面目に働いてほしい。バイトに仕事を押しつけ、本人は休憩しているのはおかしい。