【要請レポート】

第33回愛知自治研集会
第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する

 とよたエコライフ倶楽部は、市民、事業者、行政の連携のもと、環境の保全と創造に向け、各々が役割を理解し実践することにより、市民一人ひとりに環境に配慮した行動を促すとともに、より多くの市民の参加を得て持続可能な循環型社会「環境のまち・とよた」の構築を目的とした協議会です。



とよたエコライフ倶楽部


愛知県本部/豊田市職員労働組合・執行委員長 足立 潔重

1. とよたエコライフ倶楽部の設立について

買物袋持参運動
 本市では、消費者、事業者及び行政との共働で、全市的な「買物袋持参運動」を展開しています。
 この運動は、単にレジ袋の削減にとどまらず、余分な包装を断るなど、ごみを元から断ち、資源を無駄にしない社会づくりを進めていくために、身近なことから取り組むものです。そして、この運動を契機に、環境にやさしい生活(エコライフ)が市民の間に広まり、商店や製品づくりも環境に配慮したものに変わっていくことをめざしています。
 この運動の推進母体として、1999年3月に市民・事業者・行政など69団体で「豊田市買物袋持参運動(エコライフ)推進協議会」が発足しました。2004年4月は、一層の市民参加と自主性を促すため「とよたエコライフ倶楽部」と改名、組織変更しました。

2. とよたエコライフ倶楽部の取り組み

(1) 豊田市共通シール(エコシール)制度
 豊田市共通シール制度は、買物の際にレジ袋を断るなど、環境にやさしい行動をするとシールがもらえ、それを貯めると金券として使用できる制度です。
 2008年度には、約90%のレジ袋辞退率と、市民のライフスタイルに買物袋持参が定着したことにより、2009年度末日をもって豊田市共通シールの発行を中止することとしました。
 2009年度の発行枚数は3,379,361枚でした。制度開始(2002年度)からの総発行枚数は61,639,520枚でした。
エコシール発行枚数推移
(枚)
年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
発行
枚数
4,479,475
4,737,910
5,381,740
5,779,048
6,218,670
10,076,767
21,586,549
3,379,361
※ 2009年5月末日をもって豊田市共通シールの発行は終了しました。

(2) レジ袋無料配布中止(レジ袋削減に関する協定)
 豊田市共通シール制度の継続の結果、買物袋の持参率は飛躍的に向上しました。
 2007年9月に開始した4店舗でのモデル事業を経て、2008年2月にとよたエコライフ倶楽部と34事業者70店舗が「レジ袋削減に関する協定」を締結し、2008年4月1日からレジ袋無料配布中止を本格実施しました。
 また、同年12月1日には新たにドラッグストア等10事業者28店舗と協定を締結し、レジ袋無料配布中止店舗が44事業者98店舗に拡大しました。
 2008年度は、毎月90%近いレジ袋辞退率となりました。なお、その後も90%近い辞退率を維持しています。

【レジ袋削減に関する協定内容】
・マイバッグ持参の呼びかけ、レジ袋無料配布の中止
・マイバッグ持参率70%以上の達成
・有償レジ袋収益金の社会還元
・貸出袋の提供

2009年度 レジ袋辞退率の推移
(単位:%)
業 種
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
平均
食料品店
89.6
89.8
89.9
89.6
89.4
89.7
89.3
89.4
89.5
89.3
89.5
89.7
89.6
ドラッグストア
87.5
88.0
88.0
90.3
87.0
87.1
86.6
86.2
85.9
86.2
86.3
86.3
87.1
その他店
96.0
96.7
96.8
96.2
96.2
96.3
96.0
96.2
96.7
97.3
97.8
96.8
96.6
全店平均
89.4
89.7
89.7
89.8
89.3
89.5
89.0
89.1
89.0
88.9
89.2
89.3
89.3

過去の年度別市内大型店舗における買物袋持参率の推移
(%)
業種/年度
運動前
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
食料品店
0.5
7.4
15.6
18.3
18.5
18.2
18.0
17.8
18.0
26.1
88.0
ドラッグストア
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
84.8
その他店
 
 
2.3
3.0
3.2
3.3
3.3
2.7
2.8
3.8
94.2
全店平均
 
 
12.2
15.4
15.6
15.4
15.2
14.7
15.1
21.1
88.0

2009年度(レジ袋無料配布中止開始年から2年目)の削減効果(協定店)
レジ袋削減枚数 3,222万枚
レジ袋削減重量 319t(1枚9.9gとして計算)
原料となる原油削減量 589,700リットル(1枚につき18.3mlとして計算)
処理費用の削減 1,065万円(焼却しなかったことによる費用削減)
CO削減量 1,003t(焼却しなかったことによる削減として算出)

(3) 出前講座
出前講座の様子
 エコライフ倶楽部会員が、市民の目線で「地球にやさしい暮らし方」を伝えることを目的として出前講座を行っています。楽しみながらエコライフを実践できるようなメニューを使い、自治区や学校、交流館など様々な場所で実施しています。
 2009年度は、46回の講座を実施し、22,573人にエコライフを伝えることができました。


出 前 講 座 一 覧
講   座   名
内         容
エコカルタを楽しもう カルタ取りを楽しみながら、エコライフについて考える
買い物ゲーム 買い物ゲームで、ごみの減量について考える
エコレンジャーショー エコレンジャーやこうもり男の出演するショーで、ごみの分別やリサイクルについて考える
ふろしきの活用術 ふろしきを使い、エコライフにすごす方法を学ぶ
容器の値段 リサイクルの流れ 缶やペットボトルなどの容器の値段や回収された資源の行方について考える
こしもの、からすみつくり 市販の食紅を使わず自然の素材で色づけしたこしものやからすみを作る
廃油のリサイクル 賞味期限が切れた油など、廃油を使って、石鹸やろうそくを作る
壊れた傘から小物づくり 壊れたり、いらなくなったかさ布で買い物袋やいろいろな小物を作る
牛乳パックを使った工作 牛乳パックを使って、「びっくり箱」や簡単にできる物を工作する
もったいないリサイクル講座 新聞や折込チラシを使って、ブローチやストラップを作る
家庭で取り組める簡単省エネ講座 各家庭で手軽に取り組める省エネのポイントやコツを学ぶ
エコライフすごろくを楽しもう エコライフすごろくの体験をとおし、身近な暮らしの中でできる環境の取り組みを考える
地球温暖化防止と私たちのくらし 地球温暖化のメカニズムを知り、私たちにできる環境への取り組みを具体的に考える
エコドライブを取り入れよう 地球に優しい運転の仕方、エコドライブのポイントを紹介

(4) とよたエコライフ賞
エコライフ賞表彰式
 買物袋持参運動をはじめエコライフの推進に貢献し、その功績が顕著なものを表彰することにより、持続可能な社会の実現に寄与することを目的として、環境にやさしい「地道」「ユニーク」「身近」な取り組みを募集し、優秀な取り組みに対して表彰します。
 2009年度は、72件の応募があり22件の個人・団体・学校・事業者を表彰しました。エコライフ大賞には、生徒が自主的に分別作業や資源回収を開始し、各教室での取り組みや授業での取り組み等、各活動へと発展し活発になってきている松平中学校が選ばれました。

(5) とよたエコポイントを活用した行動転換の促進
  豊田市共通シール制度終了後も市民の一層のエコライフ推進のために、CO削減の取り組みに重点を置いた新たな制度として、デジタル管理が可能な「とよたエコポイント制度」を2009年6月1日から開始しました。
 とよたエコポイント制度は、2005年愛・地球博で始まったEXPOエコマネーシステムを活用したポイント発行制度で、電子マネー等のFeliCa(フェリカ)チップの製造番号を利用してデジタル管理による電子ポイントを発行します。ポイント発行については幅広い層が対象となることを考慮し、電子ポイントだけではなく、市民に定着した「豊田市共通シール制度」を継承するオリジナルシール「GREENシール」によるポイントの発行も行っています。発行されたポイントは、EXPOエコマネーシステムを活用することで、名古屋市、日進市、長久手町、瀬戸市等周辺市町とのポイント相互利用も可能にしています。
 この制度を活かして、市民の消費行動、通勤、環境学習、ボランティア活動など様々な分野での環境配慮行動の促進、市民活動そのものの活性化、異なる活動分野の横断的連携の促進を図ります。


【とよたエコポイント発行対象内容】
・おいでんバス乗車(乗車1回につき1ポイント)
 基幹バス:中心市街地玄関口バス、豊田・渋谷線、旭・豊田線、下山・豊田線
 地域バス:藤岡地域バス(ふじバス)西市野々線(小型バスのみ)
・エコドライブ宣言(宣言すると1ポイント他)
・環境学習施設eco-T来館、講座受講
(来館1回につき1ポイント、受講1回につき1ポイント)
・とよたエコライフ倶楽部出前講座受講(受講1回につき1ポイント他)
・店舗におけるGREENシール発行(現在加盟店11事業者31店舗)

2009年度 とよたエコポイント発行状況
(単位:ポイント)
 
4~6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
合計
総合計
2,172
78,073
16,088
8,338
21,439
1,119
22,145
13,393
20,649
29,395
212,811

ポイント発行総数に対する電子ポイントでの発行状況
(件は件数、Pはポイント)
発行場所
4~6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
合計
eco-T
1,395
456
480
416
371
274
365
296
336
421
4,810
1,395
456
480
416
371
274
365
296
336
421
4,810
おいでんバス10台分
427
267
237
237
283
274
178
197
270
381
2,751
427
267
237
237
283
274
178
197
270
381
2,751
豊田市エコドライブ宣言
 
1,774
571
228
32
32
92
157
648
881
4,415
 
46,950
13,830
2,280
320
320
1,466
1,570
18,340
28,188
113,264
エコライフ倶楽部
 
 
 
22
33
1
16
7
10
8
97
 
 
 
22
33
1
61
25
50
135
327
アピタ豊田元町店
 
 
316
1
4
6
2
5
 
3
337
 
 
791
25
100
150
50
125
 
75
1,316
ジャスコ高橋店
 
 
 
 
 
 
1
 
168
1
170
 
 
 
 
 
 
25
 
406
25
456
ジャスコ豊田店
 
 
 
 
 
 
 
2
172
2
176
 
  
 
 
 
 
 
50
447
50
547
合 計
1,822
2,497
1,604
904
723
587
654
664
1,604
1,697
12,756
1,822
47,673
15,338
2,980
1,107
1,019
2,145
2,263
19,849
29,275
123,471

ポイント発行総数に対するGREENシールでの発行状況
発行場所
4~6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
合計
エコライフ倶楽部発行
(販売)
350
30,400
750
5,358
20,332
100
20,000
11,130
800
120
89,340

3. まとめ

 とよたエコライフ倶楽部は、1999年に買物袋持参運動をきっかけに、市民・事業者・行政など69団体で「豊田市買物袋持参運動推進協議会」として設立され、まさに共働のさきがけと言えます。啓発活動という地道な取り組みからスタートし、豊田市共通シール(エコシール)制度の活用、毎月20日を「マイバッグDAY」として精力的に啓発活動を実施するなど、継続的に買物袋の持参を市民に問いかけ、働きかけ、ごみ削減の象徴的といえるレジ袋の辞退を市民に促してきました。
 2004年には、買物袋持参運動だけにとどまらず、エコライフ全般に渡る活動への展開、自ら考え行動する組織への転換を図るべく、「とよたエコライフ倶楽部」と改名し、組織変更を実施しました。その後の活動は、市民生活が「エコライフ」に転換していくことを促すための幅広いものへと発展してきました。そして、2008年度には、レジ袋辞退率が約90%に達するなど、設立時の目的を達成するに至りました。
 また、現在は、これまでの活動に加え、COの削減を家族ぐるみで取り組むために、環境配慮行動の実施を家族単位で宣言してもらう「エコファミリー制度」を市と共働で推進しており、「豊田市の全世帯をエコファミリーにする」という極めて高い目標を掲げ活動しています。
 とよたエコライフ倶楽部は、市民・事業者・行政のそれぞれの得意な分野を活かし、またそれぞれの苦手な分野を補いあい、理想的な共働の姿を実践し、多くの成果をあげてきました。今後もさらに発展していくことが期待されます。