【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第1分科会 人口減少後の地域社会と政策 ~国が進めた政策の現状から考える~

 小牧市では、妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対して総合的相談支援を提供するワンストップ拠点として「子育て世代包括支援センター」を2018年9月に設置しました。これまで別々に実施していた専門職による支援を一つの場所で行うことで、専門職間の連携が強化され、利用者目線にたった一貫性・整合性のある支援に繋がっています。本レポートでは、小牧市子育て世代包括支援センターの取り組みについて報告します。



小牧市子育て世代包括支援センターの取り組み
―― 妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない
支援をめざして ――

愛知県本部/小牧市職員組合

1. はじめに

 2016年の「児童福祉法等の一部を改正する法律」において、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行う"子育て世代包括支援センター"が新たに規定されたことで、市町村は同センターを設置するように努めなければならないこととされました。
 子育て世代包括支援センターは、主に妊産婦及び乳幼児の実情を把握し、妊娠・出産・子育てに関する各種の相談に応じ、必要に応じて支援プランの策定や、地域の保健医療又は福祉に関する機関との連絡調整を行い、母子保健施策と子育て支援施策との一体的な提供を通じて、妊産婦及び乳幼児の健康の保持及び増進に関する包括的な支援を行うことにより、もっと地域の特性に応じた妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供する体制を構築することを目的とされています。
 小牧市では、2018年9月より名鉄小牧駅周辺再開発ビルの一部を改修し、新たに設置しました。

再開発ビル ラピオ

子育て世代包括支援センター(ラピオ3階)

2. 施設の概要

 小牧市の子育て世代包括支援センターでは、保健師などの専門的な見地から相談支援を行う母子保健型と、保育士などが当事者目線の寄り添い型の支援を行う基本型を同じ場所で行い、妊娠期からの子育て期にわたる切れ目の無い支援体制を充実させようとするものです。具体的には、これまで主に妊娠期から出産期においては「保健センター」(保健師)、子育て期は「子育て支援室」(保育士)、ひとり親、家庭児童相談や児童虐待などは「こども政策課」(社会福祉士等相談員)でそれぞれ別々に行っていた支援を、ひとつにすることで情報共有などの連携を図り、ワンストップの相談支援をめざしています。

(国作成資料を小牧市の状況に合わせて、加筆修正)
 
(1) 事業内容
 子育て世代包括支援センターでは、主に以下の業務を行っています。
① 親子健康手帳(母子健康手帳)の交付
② 低体重児の届出
③ 産後ケア事業
④ 利用者支援事業(相談事業)
⑤ 産前産後ヘルパー事業
⑥ ファミリー・サポート・センター
⑦ 一時預かり事業
⑧ 1stアニバーサリー事業
⑨ すくすくパオーンルーム(子育て支援室)

 小牧市では母子健康手帳を「子育て中のご両親の力になり、お子さんが自分自身のことを知り、大切にできる手帳」として親子健康手帳と名付け、学校・医療・保健・福祉分野などの関係者により作成しています。特徴として、中学生まで成長記録を記入できたり、子どもへのメッセージ欄を設け、成長過程でのエピソードなども記入できるようにしています。また、各年齢における育児アドバイスも掲載するなどの工夫をしており、教科書でも紹介されるなど高い評価を受けています。これまでは、保健センターと各支所で交付を行っていましたが、支所での交付は、家の近くで受領でき、便利な反面、保健師が直接対応できないために、必要なケアプランの作成に難しさを感じていました。小牧市では、子育て世代包括支援センター設置を機に親子健康手帳(母子健康手帳)の交付を1ヵ所に限定することで、妊娠初期に必ず保健師と接する機会を設けるとともに、出産や育児に対する期待や不安を受け止め、出産や育児、ひとり親などの経済的な相談など幅広い相談に対し、専門職がしっかり対応することが可能になりました。また、相談を受けるだけでなく、すべての交付カウンターから見える場所に、子育て支援室(すくすくパオーンルーム)を設けることで、出産後の育児をイメージしてもらい、近くに安心して子育てができる環境があるということを確認してもらっています。
 子育て世代包括支援センターの新規事業である「産後ケア事業」では、母親の体調不良や育児不安があり、家族から十分な援助が受けられない産後4ヵ月未満の母親とその乳児を対象に、市と契約している産婦人科医療機関等で、心身のケアや育児サポートなどきめ細かい支援を実施しています。現在、宿泊を伴う、ショートステイ、または、日帰りのデイケアの選択が可能で、利用者の状況に応じてサービスを使い分けてもらっています。
 産後は体調も崩れやすく、また、4ヵ月未満までのお世話は特に大変な時期です。安心して、産み育てられるように支援しています。
 同じく新規事業の「産前産後ヘルパー事業」は、妊娠中から産後6ヵ月にかけて、母親の体調不良などの理由により家事を行うことが困難で、家族からの援助も十分受けられない場合に、市が委託する事業者からヘルパーを自宅に派遣することで、家事援助を行う事業です。
 「一時預かり事業」では、これまで保育園等で冠婚葬祭等の際に一日単位で実施していた事業を、1回3時間までの短時間で行うものであり、緊急時等に限らず、通院や家の片づけ、ママ友とのランチ等、育児に疲れたときのリフレッシュにも積極的にご利用いただいています。また、ワンストップの相談支援の強みを活かし、時には保護者からの申込だけではなく、授乳相談や子育て支援室での子育て相談、ひとり親相談や家庭児童相談などから、職員が必要と感じる保護者に一時預かりを勧め、利用してもらうケースもあります。
 「1stアニバーサリー事業」は1歳の誕生日の節目にお祝いの品をプレゼントし、誕生日をお祝いします。お祝いの品は、絵本をプレゼントすることで、絵本の読み聞かせを通して、親と子の愛着形成を育むことを目的にするとともに、プレゼント受取りの来館をきっかけにアンケートや対面育児相談を行うことで、保護者の心配に寄り添い、必要な支援につなげています。この事業は、子育て世代包括支援センターだけではなく、概ね中学校区ごとに設置している地域の児童館でも行っており、これを機に身近な相談場所として子育て支援室や児童館の利用につなげることも目的のひとつです。
 「子育て支援室(すくすくパオーンルーム)」は、0歳~3歳までの子とその保護者が利用できる室内遊技場で、常駐する保育士や助産師等が、親子と一緒に触れ合いながら、子育てや育児の相談はもちろん、子どもとの遊び方や関わり方について、実際に子どもと関わる姿を見せながら教えるなど、様々な相談に気軽に応じています。窓口での相談とは異なり、子どもと遊びながら気軽に相談できることから、子育て支援室での育児相談は月平均100件を超えています。また、常駐する職員が、保護者の表情や子どもの発育等に気を配りながら積極的に関わるスタイルが、核家族化や地域との関わりの希薄化により相談する人が近くにいないことが多い現代のお母さん達に好評で、市外からも多くご利用いただいています。また、休日には父子のみの来所も多く、職員が一緒に遊んでくれることで安心して楽しく子どもと触れ合う時間を過ごしています。ほかにも、毎月の身長体重測定や誕生会、ママ友づくりサロン、父向けイクメン応援講座や祖父母、地域の方向けの孫育て応援講座など、利用者のニーズに応えられるよう努めています。

   

一時預かり事業

 

子育て支援室
(すくすくパオーンルーム)

3. まとめ

 以前は3世代、4世代で同居する家族が主流で、親戚や近隣住民など地域との関わりが強かったですが、現在は親と子の核家族が主流で、地域との関わりが希薄になっています。
 子育て世代包括支援センターは、これまで地域ぐるみで行ってきた子育て・子育ちの役割を担っていくために、専門職間の連携を強化し、また他機関との更なる連携を図り、支援者同士が手と手をつなぐことでお母さんや、親子の笑顔が少しでも増えることを願っています。