【論文】

第38回地方自治研究全国集会
第1分科会 人口減少後の地域社会と政策 ~国が進めた政策の現状から考える~

 筆者は増加する公営合同墓の実態を把握するため、道内自治体の導入状況や使用要件などを調査し、『北海道自治研究 2019年8月号』に掲載した。その後も新聞報道で再三取り上げられるなど公営合同墓導入の動きは活発であることから、今回、継続調査を実施した。



継続調査からみる北海道内公営合同墓の傾向


北海道本部/公益社団法人北海道地方自治研究所 髙野  譲

はじめに

 筆者は『北海道自治研究607号』にて、北海道内(以下、「道内」とする。)の市町村で2018年度までに導入・供用された公営合同墓の状況や収容可能数、使用要件などの実態、調査から浮かび上がった課題を明らかにした(以下、「前回調査」とする。)(注1)。その後もインターネットで「合同墓」と検索すると、道内に限らず全国各地で公営合同墓の設置・供用(以下、「導入」とする。)が続いている。
 本稿では、最初に2019年度内に道内自治体で導入された公営合同墓の現状を確認し、前回調査で漏れていた福島町及び小清水町(以下、「本調査」とする。)、さらに胆振東部地震で断念していた厚真町への調査も実施した。この結果から道内公営合同墓の傾向を明らかにすることを目的としている。

1. 本調査で対象とした道内公営合同墓

(1) 調査方法
 設置有無については、前回対象となった31自治体を除く148自治体の墓地条例や墓地管理条例などから公営合同墓設置の有無を確認する例規集調査で行った。例規集調査で公営合同墓を設置していることが確認できた自治体に対しては、後掲した質問項目を送付しメール調査も行っている。なお、前回調査の結果を踏まえ、質問には①合同墓の形状、②使用申し込みの際の抽選有無、③現在の収容数と状況、④設置に際し地元仏教会との協議有無の4項目を追加し、それ以外の質問項目も文言を一部修正した(注2)。メール調査とは別に、導入自治体の富良野市、浦河町へヒアリング調査の機会を得たため、前回調査と同様に導入経緯や収容可能数の算出根拠などを確認した。

(2) 公営合同墓の現状
 前回調査で導入は確認されていた厚真町を除くと、本調査では導入順に福島町、清里町、留萌市、大空町、富良野市、斜里町、むかわ町、石狩市、新ひだか町、浦河町の10市町の公営合同墓が対象となった(図表2)。また、メール調査及び例規集調査を整理するため、前回調査と同様に要件等を記した「道内公営合同墓要件等一覧表」(以下、「要件等一覧表」)を作成した(図表1)。なお、本調査対象となった自治体は塗りつぶしとした。また、要件等一覧表を始め、図表については後述する道内の公営合同墓現状での比較及び紙幅の都合上、前回調査分と一体で作成していることをご了承願いたい。
① 自治体規模別の状況
 自治体規模別の導入状況では、その他市が3、町が7であった。なお、今回も公営合同墓を導入した村はなかった(図表2-1)。
 人口規模別の設置状況では、人口1万人~5万人未満が5自治体と最も多く、以下5千人~1万人未満と3千人~5千人未満が各2自治体、人口5万人~10万人未満が1自治体であった(図表2-1)。こうしたところからも人口が少ない小規模自治体での導入が進んでいることが確認できる。
 総合振興局・振興局別ではオホーツク管内で3自治体、日高管内2自治体、石狩管内1自治体、渡島管内1自治体、胆振管内1自治体、留萌管内1自治体、上川管内1自治体である(図表2-2)。
② 供用開始月
 前回調査では公営合同墓が導入されて以降、どのように増加したのかを把握する目的で年度ごとの使用開始時期の状況を一覧表化したが、今回は10自治体に限られることから供用開始月で判断した。ここから留萌市、富良野市、斜里町、大空町のような年度替わりである4月から5月に供用開始する自治体と、福島町、清里町、むかわ町、石狩市、新ひだか町、浦河町のような夏から秋頃にかけて供用開始とする自治体に二分されることが確認できた。
③ 名称の状況
 公営合同墓の名称として一番多かったのは、「合葬墓・合葬式墓地」で4自治体、「合同納骨塚」が3自治体、「合同墓」が2自治体、「共同墓」が1自治体、であった。大空町のパブリックコメントでは「(仮)大空町合葬墓条例制定について」として実施し、運用指針となる条例も「大空町合葬墓条例」だが、メール調査では合同納骨塚と回答を受けたため、「塚」として分類した。一方、名称を「墓」と「塚」で比較した場合、「墓」は7自治体、「塚」が3自治体で、圧倒的に「墓」が多い結果となった。
④ 形状及び収容可能数の設定
 本調査で最も収容可能数の多かったのは石狩市の3,000体で、斜里町の700体が最少であった。平均収容可能数は約1,290体となった。なお、むかわ町については、各450体収容可能な公営合同墓を町内2カ所設置しているので、収容可能数は合算した900体として判断している(注3)
 収容可能数は500体~999体及び1,000体~1,499体、1,500~1,999体が各3自治体で、と最も多く、3,000~4,999体が1自治体であった。この結果から、本調査で対象とした道内公営合同墓では1,000体~2,000体程度の収容可能数を有する公営合同墓の導入が多いことが確認できた。
⑤ 使用要件の状況
 本調査で対象となった公営合同墓では以下のような要件が規定されていた(図表1)。
1. 申請者が設置自治体に住所を有している方(年数条件含む)
2. 申請者が設置自治体に本籍を有している方
3. 申請者が過去、設置自治体に住所を有していた方(年数条件含む)
4. 申請者が過去、設置自治体に本籍を有していた方
5. 死亡者が過去、設置自治体に住所を有していた方(年数条件含む)
6. 死亡者が過去、設置自治体に本籍を有していた方
7. 焼骨管理者が設置自治体に住所を有している方
8. 過去、設置自治体に住所を有していた方の焼骨管理者
9. 過去、設置自治体に本籍を有していた方の焼骨管理者
10. 設置自治体の公営墓地を返却し、合同墓へ改葬する方
11. 寺院など当該自治体の区域内にある墳墓から改葬する方
12. 設置自治体に親族のいる方
13. 首長が認める場合
14. 生前予約を希望する方
 その中で最も多かった使用要件は「設置自治体の公営墓地を返却し、合同墓への改葬」で、10自治体すべてで規定されていた。前回調査で寺院納骨堂から改葬について使用要件として明記すべきと指摘したが、本調査では2自治体でそれを規定する公営合同墓が確認できた。とは言え、使用要件は前回調査と同様に(ア)申請者や焼骨管理者が設置自治体に住民登録をしているか本籍を有している場合、(イ)申請者や焼骨管理者が過去に住民や本籍を有していた場合、(ウ)公営墓地から改葬する場合、という三要件に整理できるのではないだろうか。
⑥ 使用料・管理費の状況
 前回調査と同様に、設置自治体の住民利用を基準とし、焼骨1体あたりの使用料に管理費を徴収する場合の金額は同費用を合算した額を判断基準とした。本調査の対象となった公営合同墓の使用料で、最も高い使用料・管理費を徴収するのは留萌市の30,000円で、最も安い使用料・管理費は大空町の9,500円、平均額では14,350円となった。
⑦ 生前予約制度の有無
 本調査で対象となった8自治体中、2自治体で生前予約制度を有していた。また、前回調査と同様に誰もが生前予約制度を無条件で利用できるわけではなく、例えば、大空町では(ア)現に住所ないし本籍を有する、あるいは(イ)過去に住所ないし本籍を有し、(ウ)町内に親族がいる、(エ)満65歳以上の方など制限が課されていた。
⑧ 個人記名墓碑の設置状況
 前回調査では、個人記名墓碑や電子墓碑の導入が増えていることを指摘したが、本調査では福島町と浦河町の2自治体のみ設置で、設置していない自治体と二分する傾向となった。
⑨ 地元仏教会との協議等
 前回調査の際、いくつかの自治体から「導入に際し、地元仏教会などと協議をした」と回答を受けたため、本調査では質問事項にこの項目を盛り込んだ。調査結果から10自治体中、5自治体で協議をしていることが明らかになった。ただし、富良野市のように事業説明をして理解が得られた事例や、浦河町のように自治体側が協議の場を設けても地元仏教会が「民業圧迫だ」などの理由で参加を拒否し(注4)、協議すらできなかったケースもあるなど対応は様々であった。
 一方で、留萌市や新ひだか町のように一切協議等をせず導入した自治体もある。今回導入された自治体はすべて地方部であり、都市部と異なり寺院数が少ない(注5)。このような地域で安価に納骨できる公営合同墓ができ、寺院納骨堂からの改葬も増えれば、寺院経営を圧迫する可能性は否定できない。寺院とのトラブルを避けるため、敢えて仏教会などとの協議をせずに事業を進めることも必要なのかもしれない。

2. 道内公営合同墓の傾向

 本項では前回調査に本調査の結果を加え分析することで(以下、「継続調査」とする。)、現段階における道内公営合同墓の傾向を明らかにしたい。

(1) 設置に関する面
① 導入している自治体規模の傾向
 前回調査では、人口が多く合葬需要も高い都市部で公営合同墓の導入が進んでいると明らかにした。その一方で、人口が少ない小規模自治体でも合葬需要は高いが、導入に際し建設費と使用料設定が課題になるのでは、と指摘した。ところが、継続調査からは小規模自治体で導入が進んでいることが明らかになった。実際、前回調査で自治体種類別のうち、「町」で導入したのは9.3%だったが、本調査を加えると14.7%に上昇している。また、人口規模別の設置自治体割合で見ても、3千人~5千人未満が6.7%から11.1%に、5千人~1万人未満は4.4%が8.9%に、1万人~5万人未満では33.3%から45.2%に上昇している。そして、5万人~10万人未満に至っては83.3%から100%となった(図表2-1)。また、留萌市や浦河町といった振興局所在地をはじめ、富良野市、新ひだか町といった地域で政治・経済の中心となっている拠点自治体で導入されたのは、新たな傾向と言えるのではないだろうか。
 そして、継続調査では総合振興局・振興局管内の導入自治体に占める割合が石狩管内で75.0%(前回調査62.5%)、渡島管内と胆振管内で各54.5%(前回調査時は各45.5%)となり、50%を超えた。さらに、前回調査では27.8%だったオホーツク管内も44.4%に上昇している(図表2-2)。導入済みの北見市や網走市、美幌町、小清水町の周辺自治体である清里町、斜里町、大空町にて導入されたことは、政策波及と言えるのではないだろうか。さらに、前回調査ではなかった日高及び留萌管内でも導入されている。他方で、継続調査でも檜山、宗谷、釧路の各管内では導入がなかったため、地域的偏在が目立つようになってきている。
② 年度別の導入傾向
 年度別の導入状況では、前回調査の対象だった2017年度の11自治体が最も多いが、継続調査から2019年度が8自治体と2番目に多い年度であることが明らかになった。こうした点からも公営合同墓の需要が高まっていると言えよう。さらに、未導入自治体議会の一般質問等で取り上げられており、議事録を確認すると行政側からは導入に前向きな回答を得ているケースが多いようである(注6)。今回、議会側から公営合同墓導入の質問をした浦河町議会飯田美和子議員にヒアリングする機会を得たため、質問に至った理由などを調査した。
 飯田議員によれば、支持者住民から「独身のまま亡くなった後のことを考えると不安である。町営の共同墓を整備してほしい」との声がきっかけとなり、2015年(平成27年)12月議会の一般質問にて(ア)町に寄せられる共同墓やお墓の要望、(イ)共同墓に関する相談対応状況、(ウ)町営墓地の提供状況、(エ)共同墓に対する町の考え方、(オ)今後の墓地に関する町の考え方を確認した。町側から「共同墓に関する問い合わせには寺院納骨堂や公営・民営の共同墓を紹介しているが、お墓の継承が難しい、子どもたちに面倒を掛けたくないという声が多くあり、共同墓に限らず墓地のあり方や埋葬方法を調査研究していきたい」と回答を受けた。
 その後、『議会だより うらかわNo159号』に一般質問の要約内容と町側の回答が掲載されると、様々な住民から「ぜひ作って欲しい」「早く作って欲しい」などの声を掛けられることが多くなり、公営合同墓の重要性と早期の必要性を実感したという。導入後、住民からは「困っていたので助かった」という声や利用に関する相談が寄せられており、関心は高いと述べていたが、保守系の議員からは他者の焼骨と一緒に納骨することへの抵抗感を示す声があったようである。
 また、導入に関して言えば、合併前の行政区域に公営合同墓を各1基導入したむかわ町の取り組みが注目される。前回調査でも北見市や岩見沢市など市町村合併した自治体で導入されていたが、こうした動きは見られなかった。むかわ町に経緯を確認したところ「当初、2021年度を目処に公営合同墓を導入する計画だったが、2018年の胆振東部地震で導入を早めた。旧鵡川町市街地から旧穂別町市街地まで距離が30キロ以上離れているため、当初から住民利便性を考え合併前の行政区域にある霊園へ各1基導入する計画だった」と回答を得た。他方で大空町のパブリックコメントを確認すると、「旧東藻琴地区にも整備してほしい」と意見が出されており(注7)、市町村合併をした自治体で導入する場合、場所選定が問題となることは間違いないようである。住民と十分な協議が必要と言えよう。
③ 名称の傾向
 継続調査での名称状況を改めて確認すると、一番多かった名称は「合同納骨塚」で13自治体、「合葬墓・合葬式墓地」10自治体、「合同墓・合同墓地」が9自治体、「共同墓」6自治体、「名称等」2自治体、「市民墓」1自治体との結果になった。やはり、道内では合同納骨塚の名称が好まれているようである。本調査でヒアリングを実施した富良野市担当者より「ある自治体から聞いた話だが、地元仏教会に対し『合同墓』と命名することを報告したところ、『そもそも墓と名乗れるのは寺院だけ』と一蹴され、やむを得ず『合同塚』に改名した」という興味深い話を伺うことができた。
 恐らく、初期に公営合同墓を導入した自治体でこうした出来事があった結果、「塚」が波及したものと考えられる。ただ、名称を「合葬墓・合葬式墓地」とする公営合同墓が前回の6自治体から10自治体に増えていることから、今後は「合葬墓」に統一化していくのかもしれない。
④ 収容可能数の傾向
 前回調査の中で、公営合同墓導入直後から申し込みが殺到し、設定した収容可能数を超えるのではと心配している自治体が多かったため、継続調査で改めて収容可能数の傾向及び人口と収容可能数との関係を確認した。いずれも基準とした人口は、道庁公開の2019年1月1日現在の住民基本台帳人口を利用している。これまでの傾向通り、人口が多い自治体ほど、収容可能数も多くなる傾向が見られた(図表3-1)。また、前回調査と同じく人口が少ない自治体で、収容可能数の人口に占める割合が高くなっている傾向にも変化はなかった(図表3-2)。
 そして、前回調査と同様に高齢化と収容可能数の関係も調査した(図表3-3)。高齢者人口及び割合の数値についても道庁のデータを利用したが、こちらについても前回調査と同様に人口が少なく、高齢化率は3割を超え、人口の割に収容可能数が多い公営合同墓で数値が高くなるという傾向に変化はなかった。ちなみに清里町は収容可能数/高齢者人口割合が100%を超えており、高齢者人口から考えれば過剰な収容数とも言える規模である。以上、継続調査においても人口と収容可能数の傾向は確認できたものの、適正な収容可能数までは導きだすことができなかった。
 ちなみに、今回ヒアリング調査をした富良野市では、先行自治体である恵庭市、北広島市など、人口が同規模の公営合同墓を参照として収容可能数を算出していた。一方の浦河町は「当町の合葬墓は1,000体だが、焼骨をそのままカロートに投入するのではなく、焼骨を粉末状にしてから投入しているので、収容数の心配はほとんどしていません」との興味深い回答を得た。担当者に対し、焼骨を粉末状にしている理由を確認したところ「合同墓を建設し寄贈した石材会社から、『今後は焼骨を粉末状にするのが主流となり、これによってカロート容積も小さくすることも可能。さらに、カロート内部を地面と接するようにすれば、粉末状にした焼骨はいずれ土に還る。したがって、収容可能数は1,000体程度で十分』と提案され、町もそれを受け入れるかたちになった」と回答を受けた。
 筆者が調査した限り、道内で焼骨を粉末状にして埋葬しているのは、浦河町が唯一の事例と思われるが、道外では千葉県習志野市が検討をしている(注8)。また、厚真町は道内では珍しい納骨堂型の公営合同墓であるため、収容体数が100体と少ない。筆者が担当者に確認したところ、約5年間納骨堂で保管されたのち、別所にある収容施設に合葬するという(注9)
 以上、継続調査で言えるのは需要予測よりも容量の大きいカロートを準備しておくのが賢明であるが、多死社会の到来で需要予測自体が難しくなるのは間違いない。あるいは建設費用や場所などの制約で大容量カロートが建設できない場合を考えると、今後は浦河町のような焼骨を収縮化した上で埋葬する公営合同墓の検討も必要であろう。ちなみに焼骨を収縮化する技術としては、粉末化以外にも焼骨を圧縮し焼成化という方法もあるが(注10)、焼骨の粉末化などは利用者負担が大きくなるというデメリットもある(注11)。したがって、これからの公営合同墓はカロート容量と埋葬の形態が重要となってくるのではないだろうか。
⑤ 使用料・管理費の傾向
 継続調査での使用料の平均額は14,339円で(図表1)、前回調査の平均額が14,335円であったことから、使用料などに大きな変化はなかった。ただ、今回ヒアリングを実施した富良野市がそうであったように、近年の傾向として、公営合同墓の建設費は使用料・管理費でまかなうことが主流となりつつある(注12)。したがって、建設資材、人件費の上昇が使用料に転嫁し値上がりする可能性は高い。また、前述の浦河町のように、構造物自体は寄贈であり建設費を要しなかったとしても、焼骨を粉末化する費用として使用料を25,000円と設定しているところもある。安価で安心して利用できることが魅力であることを考えれば、使用料上昇を抑制する方向も考える必要があるのかもしれないが、道外では10万円を越える使用料を課す公営合同墓が多数あることから、早急に道外調査を行い、その結果を踏まえて適正な管理費を検討してみたい。
⑥ 個人記名板の傾向
 前回調査で個人記名板の設置は新たなニーズと指摘したが、継続調査から導入が進んでいないことが明らかになった。記名板を導入する公営合同墓が少ない理由としては、前述の使用料とは別に費用がかかることなどが考えられるが、記名板を有する自治体に対し、利用の申し込み数など実態調査が必要なのかもしれない。

(2) 前回調査で浮かび上がった課題の調査
① 本籍地による使用要件
 筆者は前回調査で、本籍地を使用要件とした場合、利用料・管理費が安価な自治体に転籍して利用するという不適切な利用の可能性があるのではないかと指摘し、さらなる調査の必要性を示した。今回の継続調査で本籍地を使用要件としている富良野市及び浦河町でヒアリング機会を得たことから、担当者に理由を確認したところ、以下のような回答を受けた。
 ア 富良野市
  本籍地を使用要件とする恵庭市など先行自治体の制度を参考とした。転籍制度を利用した不適切な申し込みは、確かに考えられる。しかしながら、建設費を利用者による受益者負担としているため、富良野市に転籍し、利用の申し込みをしたとしても、住民に不利益とまでは言えない。現段階でそうした利用申し込みはないが、仮にそのような申し込みがあっても拒否することはない。むしろ、埋葬された方の親族などが納骨やお参り等で富良野市に来て、宿泊や飲食などをしてくれれば地域活性化にも繋がると考えている。
 イ 浦河町
  知内町など先行自治体の使用要件を参照としたため、本籍地を要件としたが、転籍制度を利用した不適切な申し込みの想定はしていなかった。そう言われると、浦河町とゆかりがあるのか釈然としない、あるいは疑問を感じる申し込みがあるのは事実。ただ、厳格な運用をして、使いにくいのも利用者にとって困る。現段階では多数の申し込みがある訳ではないため、申込者に対ししっかりと事情を聞くようにした上で利用の判断をしている。
 2自治体のヒアリングをまとめると、本籍地を使用要件とした理由は先行自治体を参考としたためで、筆者の指摘した転籍制度を悪用した不適切な利用については、どちらも建設に際し税金は使われていなかったものの、判断は分かれていた。ただ、税金で建設した場合は不適切な利用を避けなければならないであろうし、それ以上に申込者と応対する職員が「受理していいのだろうか」と疑問を感じながら事務処理をすることは避けなければならない。そう考えると、前回調査の対象となった八雲町のように誰でも利用可能とし、使用料は住民よりも高額設定とする方が住民理解を得られ、職員も対応しやすいのではないか。一方で、利用対象を広げると富良野市が指摘するような地域活性化効果も考えられる。これからは地域経済への波及効果も考慮した導入・運営が必要となるのかもしれない。

むすびにかえて

 継続調査からも多死社会の到来や高齢者を中心とする墓石維持の負担感、家族観の変化などを考えれば、公営合同墓は自治体の規模にかかわらず取り組まなければならない政策ということは明らかになった。さらに、2020年度からは猿払村にも設置され(注13)、これまで公営合同墓がなかった道内に32ある人口3千人未満の自治体でも導入されている。しかしながら、これまで同規模の自治体に導入がなかったことを踏まえれば、波及するかも含め動向を注視していく必要があるのではないだろうか。
 さらに、市町村合併をした自治体では設置場所が問題となることも確認できた。住民感情を考えれば生まれた地、あるいはゆかりある地へ埋葬したいと望むのは当然であり、合併前の地域にも公営合同墓が欲しいという要望が出てくることは容易に想定できる。そもそも道内の場合、合併後の面積が広大かつ、車社会であるが故に自治体内の公共交通機関が整備されていないことも少なくない。そう考えると、むかわ町の事例は市町村合併した自治体での参考事例となるが、市町村合併で求められた行政の効率化とは真逆の対応であることも指摘せざるを得ない。
 収容可能数についても、焼骨の粉末化によってカロート容積を小さくできる動きが明らかになったものの、その費用など課題も多い。そして、筆者が前回調査で「不適切な利用につながる」と指摘した本籍地を使用要件とする公営合同墓について、ヒアリング調査から柔軟に取扱いしていることは確認できたが、改めて本籍地を使用要件としている自治体のみ調査を行い、実態を明らかにする必要があるのかもしれない。
 道内では、前述した猿払村以外にも興部町や遠軽町、今金町などで導入が続いている。今後も多死社会に向けた自治体政策の一つである公営合同墓調査・研究を継続していきたい(注14)



【注】
(注1) 髙野譲、「北海道内公営合同墓の現状と課題」、『北海道自治研究第607号』、2019年。
(注2) なお、前回調査の質問事項は次のとおり。問1:貴自治体で設置している自治体合同墓の名称をお教え願えますか 問2:使用対象などについてお尋ねします
①.使用要件(例えば、申請者が住所を有する者など。なお、使用要件はすべて例示願います)、②.使用料(管理費)、③.設置の年月日、④.生前予約の有無、⑤.墓碑に記名板等の設置有無、⑥.焼骨収容数(体)。
(注3) むかわ町は各450体の合同墓を町内2地区に各1基導入している。
(注4) 浦河町では、仏教会とは協議できなかったものの意見書を受領したこと、教会や新興宗教との協議はできたため、協議済みにカウントした。
(注5) 浦河町担当者によれば、町内には5寺院あるという。
(注6) 例えば、2019年9月3日に開会した「令和元年第7回栗山町議会定例会」において、佐藤則男議員から佐々木学町長に対し、合葬墓の設置を検討しているのかを問う質問がなされ、町長からは「本町におきましては、現時点で合葬墓の整備計画はございませんが、今後アンケート等による町民ニーズの把握や他自治体が運営する合葬墓の調査等も行った上で、その必要性を検討してまいりたいと考えておりますので、ご理解いただきたいと思います」と回答がなされている。
(注7) 大空町、「(仮)合葬墓条例(案)意見等検討結果」、2018年。
(注8) 筆者が2020年2月に習志野市役所で公営合同墓調査をした際、担当者から「当初の需要予測より多く申し込みがあり、現在は抽選制としている。それでもカロート容量が埋まりつつあるので、今後は焼骨を粉末状にして埋葬することも検討している」と聞いている。
(注9) 現在の収容状況を確認したところ、2020年9月17日現在88体収容されており、近年中に納骨されている焼骨を行旅死亡人など埋葬している合葬施設に移動させる予定である、と回答を受けた。
(注10) 「エターナルプレート」などと呼ばれている。費用は15万円程度である。
(注11) 浦河町に使用料25,000円の内訳を確認したところ、ほぼ全てが焼骨の粉末化費用であると回答を受けた。なお、粉末化は合同墓を寄贈した石材会社が実施し、納骨も同社に委託しているため、通常よりは安価に粉末化ができているとのことである。筆者がインターネットで検索したところ、焼骨を粉末化する場合、量に応じて価格が異なってくるようだが、概ね30,000円~60,000円程度であったため、浦河町の使用料は安価と言えるのかもしれない。
(注12) 富良野市の使用料は17,000円と平均額以上だが、住民からは「高額だ」という声は出ていないとのことである。
(注13) 道庁統計課によれば猿払村の人口は2019.1.1現在で、2,745人。
(注14) 本稿執筆に際し、調査対象となった道内自治体の担当者には厚くお礼申し上げる。特に新型コロナウィルス感染拡大となりつつある中、ヒアリングに協力していただいた浦河町及び同町議会飯田美和子議員、また、急なヒアリングの申し出を快く引き受けていただいた富良野市に対しては、改めてお礼申し上げる。なお、本稿の内容については、筆者に全て責任がある。

「質問事項」
問1 貴自治体で設置している自治体合同墓(合葬墓)の名称をお教え願えますか
問2 合同墓(合葬墓)の形状・形態をお教え願えますか
 (記載例:カロート型、納骨堂型、樹木型など。例えば、納骨堂から一定年数経過でカロートや地下室に埋葬とする場合は移行型(納骨堂→カロート)とご回答願います)
問3 使用対象などについてお尋ねします
①.使用要件
(記載例:以下のいずれかの要件を満たすこと
 ・1年以上〇〇市に住所を有し、お骨を管理されている方
 ・〇〇市に住んでいたことがある故人のお骨を管理されている方
 ・〇〇市の市営墓地から合同墓にお骨を移そうとする方
なお、使用要件はすべて例示願います
②.焼骨一体あたりの使用料(管理費を要する場合は、管理費も記載願います)
③.供用開始の年月日
④.生前予約制度の有無
⑤.故人の氏名等を記載した記名板等の設置有無
⑥.供用開始時点での焼骨収容可能数(体)
⑦.使用申込に際し、抽選の有無
⑧.現在の収容数及び焼骨の収容状況(袋などに入れて収容、あるいはカロートなどに直接投入)
⑨.公営合同墓の設置・供用に際し、自治体内にある仏教会などとの協議有無