【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第2分科会 「ラッセーラー」だけじゃない 地域に根付いたねぶた(祭り)

 新型コロナウイルス感染拡大にともなう北海道独自の非常事態宣言以降、長期にわたる地域経済への影響が危惧されるなかで「自治労ができること」「地域のために何かできないか」との単組の動きを受けて、自治労北海道本部として単組・総支部で実施する地域支援活動への助成を実施した。公共サービス労働者で組織する労働組合として地域とどうかかわるかを再認識する取り組みとなった。



新型コロナ感染拡大下における地域支援活動の取り組み


北海道本部

1. はじめに

(1) 北海道独自の「緊急事態宣言」
 北海道では2020年1月28日に1例目の新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染者が発生。2月中旬以降、連日感染者数は拡大を続け、また、札幌市だけでなく道内各地で感染者が確認されるなか、北海道は2月26日には道内小中学校の一斉休校(2月27日~3月4日)、2月28日には北海道独自の「緊急事態宣言」を発出し、週末の外出自粛が求められた。
 4月12日には北海道と札幌市が「緊急共同宣言」を発出し、札幌市内における接触機会の低減や札幌市への往来自粛、接待をともなう飲食店等への外出自粛などが求められた。

(2) 地域支援活動実施の経過
① 9月までの主催集会の中止
 自治労北海道本部(以下、道本部)は、自治体職員・公共サービス職場の労働組合として、主催会議に関連して感染者が発生した場合の社会的影響や組合員・家族および地域住民の健康を守る観点、また緊急時の自治体職員の要員確保など、感染拡大・予防対策の徹底を労働組合としても十分に配慮することが重要と考え、6月に予定していた自治労道本部第131回中央委員会をはじめ9月末までの道本部主催の集会は開催しないことを判断し、4月10日付けで地方本部、単組・総支部に対して通知した。また、新型コロナの収束が見通せないなかで、個別オルグやテレビ会議システムの導入など、状況に応じ様々な手法で運動を継続することとした。
② 地域経済や地方自治を守るためにできること
 組合員の職場は、新型コロナにともなう対応、例年と大きく違った対応が求められ、混乱が生じていた。さらに一斉休校にともなう家庭的責務、自粛の求めと集まることへの自粛意識などにより、単組活動の停滞が余儀なくされた。
 一方で感染拡大の抑え込みによる経済への影響は、飲食業をはじめとしたあらゆる産業に広がり、地方自治体の経済を支えている地域商店街の経営悪化は深刻化し、自治体職員・公共サービス職場の労働組合として、自治労が地域救済の先頭に立つことの必要性や自治研究の見地から「地域経済や地方自治を守るためにできること」として、地域経済支援に動き出す単組も出てきていた。
③ 単組の地域支援活動に対する助成
 道本部は、自治労が進める自治研活動は、自らを含む地域住民が、生活圏に定着した基盤を確立することにあり、そのためには地域活性化の担い手と支え合う取り組みが、地方自治の観点からも重要なことと考え、単組・総支部が地域の非常事態に「自治労ができること」を追求した取り組みに対し、最大限のサポートを行うこととし、単組の地域支援活動に対して助成することを5月18日の第17回執行委員会で決定した。

2. 地域支援活動に対する助成の概要

(1) 助成対象
① 組合活動と連動した地域支援はもとより、地方自治の視点から地域活性化を目的とした取り組み。
② 地域商店から購入するお弁当やお茶など飲食物、地場産品や地域商品券の購入など、地域との連携を前提とした取り組み。
③ 同自治体内の単組・総支部・公共民間労組が共同で行う取り組み。

(2) 助成金額など
① 単組・総支部が取り組む地域支援活動に対し、必要経費の80%。
② 2020年度納入人員調査による単組・総支部の組合員数に応じて助成限度額を設定。
 【499人まで=150,000円】【500~999人=200,000円】【1,000人以上=300,000円】
③ 限度額に達するまでは、複数回申請することが可能。

(3) その他
① 助成の期間は8月末までの申請、9月末までの交付。
② 事前に「企画書」の提出、事後で「報告書(申請書)」の提出を求める。また実施要項や執行委員会資料、教宣紙の添付も求める。

3. どのように取り組まれたか

(1) 各単組の実施状況
 道本部申請ベースで全道230単組・総支部中、128単組・総支部で55%の単組で地域支援活動が展開された。
 活動の内訳としては①地域商品券・チケット等を組合員へ配布し、地域消費を喚起(69単組)、②地域飲食店でのテイクアウトや昼食弁当注文の斡旋・経費負担(27単組)、③自治体内商工事業者からの消費・購入への助成(17単組)、④飲食店等の利用に応じ券を配布し地場産品の抽選(11単組)、⑤新入組合員等の歓迎会・学習会などの組合活動内での飲食助成(9単組)、⑥自治体内業者を通じマスクを調達し組合員へ配布(5単組)、その他ろうきんサマーキャンペーン景品とのタイアップや、地域事業者支援のためのクラウドファンディングへの参加などが報告された(複数の活動を実施した単組もあった)。

(2) 取り組みの成果と課題
① 「地域のためになった」という充実感
 取り組み後の「報告書」のなかで、取り組みの成果・課題を求めた。
 「地域のためになった」との率直な成果が多く寄せられた。地域支援活動により事業者や自治体当局から「感謝の言葉」をもらったことも多く報告されており、さらに北海道新聞の地域面やその他の地方紙に取り組みを掲載される単組も多くあった。自治労以外の産別や管理職・町議会議員にも活動の幅を広げている単組もあり、地域や組合員に歓迎・賛同される取り組みとして単組執行部の充実感が伝わってきた。
 一方で、地域に直接足を運ぶことによって厳しい状況に置かれる地域事業者を目の当たりにし「継続した支援が必要」との課題、地元消費が主ではない観光産業への支援の課題もあげられた。
② 組合組織強化・組織化のツールとしての活用
 「組合への関心を持ってもらえた」「組合書記局に来てくれた」「コミュニケーションのきっかけとなった」と通常の取り組みに関わりの少ない組合員と関わるツールとしても地域支援活動は活用された。
 実際に組織化につなげた例も報告されており、さらに4月から制度開始した会計年度任用職員の今後の組織拡大への足掛かりとしている単組もあった。
③ 新型コロナ禍でも組合活動が継続
 地域支援活動を行うにあたり組合内部での企画・実施にかんする協議や了承についてオンラインを活用する単組もあり、新型コロナ感染拡大下での組合活動の手法を考えるきっかけにもなっている。そして、何より新型コロナ禍のなかでも多くの単組で組合活動が継続されてきたことが取り組みを通じて確認できた。

4. まとめ

 新型コロナは現在(2020年11月末)も収束の見通しが立たず、冬場に入り第3波ともいえる感染拡大期にある。日常生活における自粛も長期にわたっており、課題としてあげられた「継続した支援」が各単組でどのように取り組まれるかが重要となる。組合員アンケートを実施し今後の取り組みにつなげようとしている単組、「地域応援運動」と称し地場産品の斡旋を行う地域も出てきている。
 「新型コロナによる外出自粛→地域消費減退→地域を経済的に支援」というシンプルで伝えやすく、理解しやすい取り組みを通じ「地域のために何ができるか」という視点で多くの組合員が組合活動に結集できたことは成果である。
 各単組内での取り組み総括議論では、経済波及効果や取り組み手法の議論だけでなく、住民、組合員一人ひとり、さらには非組合員に対して「目に見える運動」として取り組まれた地域支援運動を、これまでの単組活動を見返す機会としても活用することを事務局としては要望したい。
 また、新型コロナ禍以前から地域経済は衰退し、住民生活へ様々な影響が出ていることを地域で公共サービスを担い、生活する自治労組合員は実感している。改めて「地域のために何ができるか」という視点であらゆる組合運動を取り組むことが必要である。