【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第3分科会 民間と連携した公共サービス

 常滑市における市役所宿日直窓口は、土日祝日の昼間を正規職員による直営で、夜間を外部委託により運営している。年々複雑化する行政サービスや、多様化する住民ニーズに対応するため、他自治体の運営状況を調査し、少ないコストで最大の効果を発揮する手法について、また、自治体職員の負担軽減や適正な報酬などについて考える。



役所の休日夜間窓口
―― 市民と職員に優しい窓口のしくみ ――

愛知県本部/常滑市職員連合労働組合

1. 常滑市の現状と課題

(1) 現 状
① 受付体制
 常滑市においては宿日直業務を正規職員と外部委託により実施している。土日祝日の昼間は、本庁勤務の管理職を除く正規職員170人が、2人ずつの当番制で勤務し、8時30分~17時までの8時間30分の勤務である。平日を含む全日の夜間は、常滑市シルバー人材センターに業務を委託しており、勤務は2人体制で全就業者数は10人、年間の委託料は約620万円となっている。
② 業務内容
 主な業務としては、法(戸籍事務取扱準則制定標準)によって定められた戸籍の届出(出生、婚姻、離婚、死亡)の受理、電話や来庁者からの問い合わせ対応、庁舎敷地内の見回りなどが主な業務である。また、死亡届の受理と合わせ、死体火葬許可や火葬場の使用許可なども必要になる。火葬場の使用許可には、使用料の受け取りが必要で、現金の取り扱いも発生している。特に、正規職員が担う朝から夕刻までは、届出の受け付け、電話の取り次ぎのみならず、観光、ごみの捨てかた、その他様々なことを調べて的確に回答しなければならない。

(2) 課 題
① 日直勤務数の増加
 近年、本庁勤務の正規職員が減少したことによって、日直業務を担当する職員数も減少し、当番のサイクルが短くなっており、全170人が2人体制で交代すると8か月ごとに当番がやってくることになる。ワークライフバランスを保つ上では、できる限り休日の出勤日数を削減したいが、職員数の減少はこのような弊害も生むことになっている。
② 勤務に対する対価
 日直業務の業務内容は、正規職員が正規の職務として開庁時間内に行っている業務内容と変わらない。違いがあるとすれば、戸籍の届出を受け付ける件数的な密度や、問い合わせへの対応に掛かる実労働の密度である。現在、日直業務8時間30分の拘束時間に対して職員に支払われている報酬は、国家公務員の手当に準拠して1勤務4,400円とされている。

2. 他市町の状況

(1) アンケート調査
① きっかけ
 この間、正規職員が担ってきた日直業務の在り方について、組合は当局に対して見直すよう要求している。具体的には、業務の委託化と、委託化が実現するまでの手当額の見直しである。当局側の回答としては、「日直業務を正規職員が担うことにより、きめ細やかな市民サービスを行うことができ、さらには他部署の業務に触れることで職員の能力アップが期待できるため、見直すことは無い。手当額についても、国家公務員の手当額に準拠する。」という内容である。これにより、サービスのレベルが委託業者より職員の方が優れているという事実確認、また、研修効果の確認、さらには国家公務員の日直業務と地方公務員の日直業務に差異は無いかの確認が必要となった。そこでまずは、多くの自治体では委託による運用を行っており、サービスの低下が発生しているのか調査したいと考えるようになった。
② アンケート調査
 自治労愛知県本部からアドバイスを仰ぎ、東海地連の4県本部を通じてアンケートを展開していただいた。1か月の調査期間を設定したところ、多くの単組から回答が寄せられ、最終的には43自治体のデータを得ることができた。
 ア 宿日直体制
  体制については、昼間と夜間に分け、(a)委託業者、(b)職員の直営、(c)委託と直営併用、の3つの選択肢で調査を行った。結果は以下のとおり。

  (a)委託業者 (b)職員の直営 (c)併 用 無回答
昼 間 自治体数 14 25
割 合 32.6% 55.8% 9.3% 2.3%
夜 間 自治体数 24 17
割 合 55.8% 39.5% 4.7% 2.3%

  昼間での委託率は32.6%であった。事前に予測していた数値より低い結果であり、旧来の方法で運用している自治体がまだ多く存在していることが分かった。反対に、夜間は直営での運営は委託の率を下回っている。来庁者数が比較的少ない夜間であれば、委託での運営が実施しやすいという判断であると考えられる。また、調査項目で設定しなかったが、後に記述する職員直営方法の内容を具体的に聞いた調査項目によると、会計年度任用職員がその業務を担っている自治体が比較的多いようである。
 イ 業務内容
  次の調査項目は、宿日直の業務内容である。国家公務員による日直業務についても内容に疑問があるが、同一の手当単価でも自治体によって内容がさまざまであることが予測されていた。業務ごとの実施自治体数と、実施割合は以下のとおりであった。

  (a)
戸籍
受理
(b)
住民票
異動
(c)
印鑑
証明
(d)
税証明
(e)
水道
予約
(f)
火葬場
許可
(g)
税関係
証明
(h)
問合せ
対応
(i)
庁舎
見回り
(j)
緊急
FAX
自治
体数
40 37 38 35 28
割合 93.0% 11.6% 9.3% 7.0% 7.0% 86.0% 7.0% 88.4% 81.4% 65.1%

  事前に予測したとおり、戸籍関係の届出の受理がメインの業務である。県庁など以外はすべての役所・役場において実施されている。また火葬場許可の問い合わせもめだつ。死亡届の受理と合わせて、休日でも受け付ける自治体が多いのであろう。その他のサービス内容は、住民票の移動届出の受理や、印鑑証明、税の証明、水道の閉開栓予約など、実施するサービスの水準が自治体ごとに様々であった。自由記述欄に記載していただいたものの中には、防災行政無線の放送や、公金の受け取りなどを行っている自治体もあった。また、証明発行を自動機で行っていると回答いただいた単組もあった。
 ウ 戸籍関係届出の受理
  次に、戸籍関係届出の受理、受領方法について聞いてみた結果、以下のとおりとなった。

  内容チェック、
記載方法の指導を実施
受け取るのみ 無回答
昼 間 自治体数 26 左のうち外部委託7
左のうち直営18
左のうち併用1
13 左のうち外部委託6
左のうち直営6
左のうち併用1
割 合 60.5%   30.2%   9.3%
夜 間 自治体数 19 左のうち外部委託9
左のうち直営10
左のうち併用0
22 左のうち外部委託14
左のうち直営6
左のうち併用2
割 合 44.2%   51.2%   4.7%

  戸籍関係届出があった場合、窓口で内容のチェックや記載方法の指導を行っている自治体は、昼間で60.5%、夜間で44.2%という結果であった。来庁者に対して細かい対応をしているのは昼間の窓口の方が多いということが判った。
  ここで気になるのは、宿日直の体制による違いがあるか、つまり職員が行うのか委託業者なのかによって対応に差がつくのかということである。この視点で見たところ、外部委託をしている自治体も直営の自治体も、内容チェックや記載方法の指導などの細かい対応をしている割合が高いが、その傾向は直営での対応の自治体の方が強くなるということであった。
 エ 委託先
  次に、委託先の種別を聞いてみた結果、以下のとおりとなった。

  警備会社 シルバー
人材センター
窓口業務の
専門業者
その他 合 計
自治体数 14 23
割 合 60.9% 17.4% 8.7% 13.0% 100.0%

  昼間又は夜間の一部でも委託化を行っているという自治体のうち、23の自治体のデータが集約できた。警備会社への委託が最も多く60.9%の自治体で行われている。併せて、委託料の額を聞いているが、2番目に多かったシルバー人材センターと比較して警備会社の方が割高になっているという印象を受けた。
  また、それぞれの従事者数を聞いてみたところ、ほとんどの事業者がこの業務に従事させている人数が4、5人から多くて15人程度でシフトを組んでいるような状況であることが分かった。
  さらに、委託の弊害があるかとの問いに対しては、「業者変更時の引継ぎ、倒産のリスク」や「正規職員の知識やスキルの低下」が挙げられた。
 オ 職員直営方式 
  次に、職員による直営の方法について、その人件費支出の基準を聞いてみた結果、以下のとおりとなった。

  手当単価 時間外単価 その他 無回答 合 計
自治体数 16 26
割 合 61.5% 7.7% 3.8% 26.9% 100.0%

  昼間又は夜間の一部でも直営による運営を行っている自治体のうち、人件費の支出を手当単価で行っていると回答した自治体が61.5%と最も多かった。直営の中でも、正規職員による場合と、会計年度任用職員による場合があることが分かった。これは事前に想定していなかったため、詳細なデータが無いが、従事者数などから想像すると、3分の1程度の自治体が会計年度任用職員に時間外窓口の運営を任せているのではと思われる。
  また、直営での運営に弊害があるかの問いには、「職員減少による負担の増加」と答えた自治体が5自治体であった。他には、「業務内容の複雑化」や、週休日の振り替えで対応している自治体では、多忙で振り替えができなかったり、所定の割増賃金が支払われていないなどの問題もあることが分かった。
 カ 宿日直に関係する設備 
  最後に、宿日直を行うスペースにどのような設備があるか聞いてみたところ42の自治体から回答をいただき、結果は以下のとおりとなった。

  ローカウンタ ハイカウンタ 電話 専用
トイレ
シャワー パソコン テレビ 冷蔵庫 エアコン 監視
モニタ
FAX
自治
体数
12 23 42 18 20 38 29 41 19 19
割合 28.6% 54.8% 100.0% 14.3% 42.9% 47.6% 90.4% 69.0% 97.6% 45.2% 45.2%

  業務を行う上で最低限必要だと思われる「電話」や、執務環境を整える意味で最低限必要な「エアコン」はほとんどの自治体で完備されているが、その他の設備は自治体によって差が出た。その他、仮眠スペースやキッチンがあると答えていただいた自治体もあった。

3. 考 察

 常滑市においては宿日直業務を正規職員と外部(シルバー人材センター)委託により実施してきた。日直の位置づけをどのようにするのか、職員の知識や能力を活かしサービスを提供するのか、研修の位置づけも加味するのか、何れにしても手当の金額が低いように思う等、様々な課題もあったが、これまで日直の在り方については、職員の休日を確保することや専門的な知識を持ち高度な対応ができる外部(警備会社等)に委託することが良いと考えていた。しかし、アンケート結果を踏まえ、改めて下記を考察するように至った。
① 日直を行うことは職員への研修効果があるという当局の主張については、8時間30分拘束した結果、膨大な役所の業務のほんの一部分について触れるのみという結果になるため、休日を割き時間を掛けた割には得られるスキルが少なく、研修としての効果は非常に限定的であると考える。
② サービスの質を上げるには、プロフェッショナルを育てることが効果的である。専門業者への外部委託が考えられるが費用面では高額となりやすい。そこで、少ない人数でシフトが組め、費用も抑えるためには、会計年度任用職員に時間外窓口を運営していただくのが、サービスの質を落とさないことからもより良い選択である。

4. 最後に

 今後は、常滑市役所の新庁舎への移転に合わせて検討するとしている当局の動向を注視していきたい。併せて、今回実施できなかったが、国家公務員の日直業務の状況について調査することで、手当額が妥当であるのかを考える必要もある。
 今回、「日直業務の在り方」という単組の課題の解決の糸口になればという気持ちで、他の自治体の現状についてアンケート調査を行い、多くの方々にご協力いただいたことは、非常にありがたいことであった。
 この課題が解決するまで、継続した取り組みを進めていきたいと考えている。