【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第6分科会 使って 広めて 愛して 守ろう公共交通

雲南市の持続可能なまちづくり
―― 地域公共交通編 ――

島根県本部/雲南市職員労働組合・自治研対策部

1. 雲南市の現状について

 雲南市の面積 553.18km2、人口39,032人(2015年国勢調査)うち、65歳以上の老齢人口が占める割合は36.5%。2045年日本の高齢化率36.8%(国立社会保障・人口問題研究所調査による)であるため、雲南市は、日本の25年先の高齢化社会である。
 「課題先進地」から「課題解決先進地」へ
 雲南市は、持続可能なまちづくりに向け、さまざまなチャレンジに取り組み、人口の急激な減少を食い止める挑戦を続けている。2019年3月、「雲南市チャレンジ推進条例」を制定し、市内外からチャレンジへの参画を推進することにより、さらに官民一体となったチャレンジの加速を図っている。
 一方で、雲南市の公共交通は、JR木次線が大東町・加茂町・木次町を結んでいるものの、市町村合併以前に民間バス運行会社が全て撤退しており、市内全域を本市が運営する市民バス(1乗車200円)とデマンドタクシー(1乗車300円)で運行している。市民バスは定時定路線型で、デマンドタクシーも予約型ではあるものの、定時型で運行している。市民バスの利用者は主に、通学で利用する児童・学生や、通院・買い物で利用する高齢者。人口減少の波を受け、特に学生が減っていることから、利用者は年々減少傾向にある。市民バスとデマンドタクシーは年間約19万人が利用し、運行経費は約2億円、運賃収入はわずか1,500万円程度に留まっている。利用者が減少する中、行政コスト削減及び利用者の満足度向上、並びに交通空白地の解消等の観点から、市民バスからデマンドタクシーへの切り替えを進め、2013年4月の実証運行から始まり、2018年1月には市内全域(運行エリアは各町単位)でデマンドタクシーが運行するようになった。本市ほどの市域を抱えながら、市内全域でデマンドタクシーが普及している自治体は珍しい。デマンドタクシーのメリットとして、ドアtoドアで目的地へ行けることは勿論、タクシー事業者の運行支援に繋がっている側面もある。ただし、デマンドタクシーが運行するのは平日のみ。高齢者以外の利用はほとんど無く、現役世代には身近な存在でないことから、認知度や利用方法の周知は十分に行き届いていない。タクシー事業者も運転手不足が深刻化する中、デマンドタクシーの新たな活用方法、あるいはこれに代わる他の手法も今後検討していく必要がある。

2. 課題発見のための行政職員アンケート実施

(1) アンケート概要
① 調査実施状況
 調査方法:青年部、女性部へアンケート用紙配布による無記名回答方式
 調査期間:2018年11月~12月
 調査対象:雲南市職員組合青年部・女性部
② 回答状況
対象数 有効回答数 有効回答率
168 107 63.7%

③ アンケート結果の活用について
 職場の課題、地域の課題を見直すために、自治研活動の参考とする。
④ アンケート内容
 具体的な提案ご意見、または、あてはまる箇所へチェックをお願いします。
 問1 職場の改善、庁舎内の改善すべきところはありますか?(自由記述)
 問2 雲南市で、もっとここは改善したほうがいいなと思うことはありますか?(複数回答可)
  □行政運営 □地域活動 □公共交通 □子育て環境 □福祉サービス
  □その他(       )
 問3 具体的なご意見ご提案等をお聞かせください。(自由記述)
 問4 雲南市民の方から、「もっとここは改善したほうがいい」と言われたことはありますか?
(複数回答可)
  □行政運営 □地域活動 □公共交通 □子育て環境 □福祉サービス
  □その他(       )
 問5 具体的なご意見ご提案等をお聞かせください。(自由記述)

(2) 調査結果(抜粋)
 問2 雲南市で、もっとここは改善したほうがいいなと思うことはありますか?(複数回答可)
 問3 具体的なご意見ご提案等をお聞かせください。(自由記述)
  ※公共交通に関する意見のみ抜粋
  ・バスがもっと充実するとよいと思う。
  ・今年度「キョロパス※1」の利用期間が拡充されとてもありがたく思います。が土日祝日の市民バスは便数が限られ(時間的にも)なかなか利用する機会がないのがちょっと残念です。
  ・松江から夜帰ろうと思うと、早い時間のバスや汽車しかない
  ・公共交通、土日も市民バスを運行する。市民バスの便数を増やす。

※1 キョロパスとは……
 市内の小・中学生が、市民バス・だんだんタクシー(デマンド型乗合タクシー)・デマンド型バスに自由に乗ることができるパスポート制度「ふるさと雲南キョロキョロ探検パスポート事業」を実施。
 2017年までは、夏休み限定の事業だったが、2018年から年間で利用できるように拡充された。

 問4 雲南市民の方から、「もっとここは改善したほうがいい」と言われたことはありますか?
 (複数回答可)
 問5 具体的なご意見ご提案等をお聞かせください。(自由記述)
  ※公共交通に関する意見のみ抜粋
  ・バスの便が減り、使いにくい。病院受診や買い物に出るにもちょうどいい時間の便がない。
  ・市民バスとJRの乗り継ぎがうまくできない
  ・木次線(JR)の存続は大丈夫?
  ・土日も市民バスを運行してほしい。
  ・市民バスの便数を増やしてほしい。
  ・高齢になって車の免許を返納したいが、車に乗らないと通院も買い物もできなくなるため、危ないと思いつつも運転しているという話をよく聞きます。提案はありませんがなんとかならないでしょうか。

(3) アンケートの分析
 地域の課題について、行政職員が、改善したほうが良いと思う項目は、「子育て環境」、「公共交通」、「行政運営」の順だった。
 一方、市民からのご意見が多い項目は、「子育て環境」、「公共交通」、「行政運営」が同数。
 自由記述欄では、市民バスの便数、JRとの接続等についての意見が多く、JR木次線の運行時間、存続についても危惧されている。
 市民バスやだんだんタクシー、JR木次線の便数を増やして欲しいとの回答が目立ったが、そもそも、「どこからどう乗れば、何時にどこへ行けるのか」という周知が行き届いておらず、職員の理解が進んでいないと思われる。そこには、広い市域をカバーするために網目のように張り巡らせてある公共交通のアナログの難易度の高さがあると考えられるため、Googleマップ等を活用したバスデータのオープン化が必要かもしれない。また、「こういう風に利用しました」という公共交通の使い方のアナウンスを広報誌等で情報発信していく必要もあると考えられる。例えば、他市町への会議にJR木次線に乗って移動するとか、職場の飲み会に公共交通を利用するのも良いと思う。市民バスなら、わずか1乗車200円。行政コストの面からも、単に「便数を増やす」という安直なクレームに行き着くのではなく、既存の公共交通をどう活用するか、「乗って守ろう」を合言葉に、みんなで考えていく必要がある。

3. 自治研究対策部の取り組み

 自治研対策本部では、JR木次線の利用促進と、組合員同士や家族との交流を目的に、3年前から、鳥取三朝温泉へ山陰の冬の味覚「カニ」と温泉を堪能するJR西日本の「かにカニ日帰りエクスプレス」ツアーへの参加を企画している。
 本年は、平日と休日を2回実施し、参加した職員から、「久しぶりにJR木次線に乗った。」、「仕事以外の話ができて有意義だった。」、「家族も一緒に交流でき、有意義な時間を過ごすことができた。」などの感想があった。また、ツアー参加後、家族旅行で「かにカニ日帰りエクスプレス」へ参加した。毎年恒例の行事となったなどの感想もあった。
 今後も、このような公共交通機関を利用する企画をたて、「乗って守ろう」を合言葉にした取り組みを行っていこうと思う。

4. まとめ

 今回のアンケートで、職員も市民も、公共交通の課題意識が高いと感じた。今後、自治研対策本部も課題を精査し、公共交通の現状を理解すること、次に、既存の公共交通をどう活用するか考えること、そして実際に行動することを目標に取り組みを進めていきたいと思う。