【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第7分科会 福祉、環境、農業…地域の宝を探し出せ

 昨今、保育士不足が全国的に問題になっているが、稲沢市も例外ではなく問題解決に取り組んでいる。
 その取り組みのなかの一つに、現場で働く保育士が中心となり「やってみたい」「保育の仕事って楽しそう」など、保育の魅力を潜在保育士や保育の仕事に興味を持っている人に発信することで、保育士不足の問題解決に取り組んできた。その活動の一部を紹介する。



こんな素敵な仕事ほかにない
―― 保育士の魅力を伝えて保育士不足の解消 ――

愛知県本部/稲沢市職員労働組合・保育士支部 小木曽隼人

1. 保育士不足の現状

 保育士不足の現状は、保育士免許は持っているが子育てとの両立が難しいと感じ、違う仕事やパートをしている、いわゆる潜在保育士の存在が大きな課題となっている。稲沢市では、そうした潜在保育士が子育てをしながら働くことができるよう4時間勤務や6時間勤務など様々な勤務形態をつくり、働きやすい環境を整えることで、非正規保育士ではあるが保育士確保に取り組んできている。しかし、十分な保育士確保に至っているとはいえず、こうした働きやすい環境や保育士の現状が周知できていないことが課題であったため、現役保育士がイベントで保育士の魅力をPRすることで問題解決の糸口につなげるためにこの取り組みをはじめた。

2. 取り組みの経過

(1) 「イナフィーナ」結成と初出演
 2016年、稲沢市の保育の魅力を発信して潜在保育士に興味を持ってもらうことで保育士不足の解消につなげていくため、数人の園長がリーダーとなり各園から保育士1人ずつを選出し約20人で「イナフィーナ」を結成してきた。

子どもフェスティバルでダンスを披露する保育士たち
 6月には稲沢市勤労福祉会館で稲沢市母親クラブ連絡協議会主催による小学生以下から高校生一般までを対象とした工作体験コーナーや化学実験コーナー、各種イベントなどを楽しめる子どもフェスティバルに初出演した。1か月前から担当の園長がリーダーとなり、子どもから大人まで楽しんでもらうことをねらいに出し物を考え、カップリングダンスとポッキーダンスを練習して披露した。最後に潜在保育士や学生に向けて保育士の子ども達と関わる楽しさややりがいなど魅力を伝えて保育士募集のPRをした。11月に開催された稲沢市主催の福祉まつりでは子どもたちも一緒に楽しめるようエビカニクスを踊り、子どもたちも一緒に楽しむ姿が見られた。

(2) 工夫と披露する場の増加
 2017年からは、見に来ているお客さんが楽しめるようサンシャイン池崎やブルゾンちえみなど旬のお笑いを取り入れたり、子どもたちも一緒に楽しめる戦隊ヒーローショーをモチーフにしたりと披露の幅を広げた。戦隊ヒーローショーはキューレンジャーが悪役を倒して平和を守るという内容で、大人も子どもも楽しみながら披露することができた。最後はWANIMAの『やってみよう』に踊りをつけて保育士の魅力も伝えていった。子どもフェスティバルが好評だったこともあり、8月の夏祭り、11月の福祉まつり、12月の楽しいクリスマス会など披露する場が増えていった。出演する保育士は1か月前に登録している約20人のメンバーからその都度決めるため、仕事終わりに何度か集まり、1から踊りや動きの確認をして披露するなど、メンバーの疲れも見られた。

仕事終わりに集まって練習に取り組む様子
出し物の随所に保育士募集や魅力などを取り入れてPR

(3) 板についた取り組みのなかで
 2018年は、昨年の活動をもとに稲沢市独自の戦隊ヒーローを作り広めていくこととし、稲沢市の魅力を取り入れた桜ピンク、松グリーン、銀杏イエローを正義の役として取り入れた。それぞれの持ち味の武器や花の特徴を取り入れて敵を倒すなど、取り組むなかで試行錯誤しながら決めていった。また、これまで披露する場では保育園児とその保護者が見に来てくれることが多かったため、子どもたちと一緒に楽しめるようドラえもんのキャラクターに扮し、ドラ顔じゃんけんも取り入れた。衣装は保育士が使えそうなものを持ち寄ったり、作ったりして仕上げていった。WANIMAの『やってみよう』はイナフィーナのエンディングの踊りとして毎回最後に披露するなど、取り組みも板についてきた。
 一方、3年間取り組んできたこの取り組みについて、仕事終わりに集まり練習することや休みの日に出演することに対して、保育士の負担になっているなどの意見が出され、今後も継続するか否かの話し合いになり、各保育園から1人が選出されることで強制的に参加している保育士もいることから、今後はイナフィーナに自主的に集まる保育士を中心にイベントに出演することにした。

会場の子どもたちも
ドラ顔ジャンケンで楽しむ様子

左から銀杏イエロー、桜ピンク、
松グリーン

(4) 自主的に集まり工夫
 2019年は、自主的にイナフィーナに集まる保育士を募り、イベントに参加することとした結果、10人程集まり毎回どういうものを披露するのかを話し合うなかで、見に来てくれる人や子どもたちも一緒に楽しめるよう、参加型で披露することにした。夏祭りではTT兄弟で観客のTを探す、ひげダンスをテーマにバランスや果物を刺すなど子どもたちにも参加してもらい一緒に楽しんだ。福祉まつりや健康フェスティバルではプレゼントがどの箱に入っているか当てるゲームなど、小学生も一緒になって楽しんでいた姿が見られた。

3. まとめと今後の課題

 イナフィーナの取り組みをとおして、保育の仕事に興味のある人や、潜在保育士など様々な人に保育士の魅力を伝えることができた。実際に採用試験の面接でイナフィーナに入りたいという人や、小論文でイナフィーナのことについて記述する人がいるなど、一定の影響を与えることができたと感じている。見に来ている子どもたちや大人など、みんなが楽しんでもらえることで保育士自身にも達成感や喜びにつながっている。また、イナフィーナに出演していた保育士は新人が多く参加していたこともあり、保育士同士のコミュニケーションの場として、保育士同士の交流を深めることができた。しかし、当局(保育課)としてはイナフィーナの活動は保育士に負担ではないかと懸念しているが、保育士不足の問題は行政も取り組むべき課題でもあり、正規職員の雇用増加や働きやすい環境づくりなど行政とも連携を図りながら、一人ひとりが課題に向き合い考えていくことでより良い職場環境づくりを進めていきたい。また、これからも保育士の魅力を発信していくことで社会問題となっている保育士不足の解消に少しでもつなげられたら幸いに思う。