【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第8分科会 青森から「食」の未来を考える

 「朝食に野菜のおかずを30回食べる」という「食育チャレンジ」を実施することで、毎食主食、主菜、副菜が揃う健康的な食習慣の定着と共に、保護者等家族全体の健康意識向上を目的とし、市教育委員会の協力のもと、市内8校の小学1年生児童を対象に夏休みの宿題として実施した。本レポートでは、チャレンジとともに実施したアンケート結果とあわせて、子どもとその保護者のチャレンジによる食行動の変化について報告する。



2019年度市内小学校と協働で実施する
「食育チャレンジ」
―― 朝食に野菜のおかずを30回たべよう ――

茨城県本部/茨城県南ブロック・牛久市職員組合 早坂 聡子

1. 実施概要

(1) 目 的
① 子ども自身が朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを食べる健康的な生活習慣を定着することができる
② 子どもの取り組みがきっかけとなり、家族みんなが健康への意識を高めることができる

(2) 対 象
 牛久市内小学校1年生743人

(3) 内 容
「食育にチャレンジ
① 朝食に野菜・いも・かいそう・きのこのおかずを30日食べる(連続でなくても可)
② 達成者に☆牛久市食育推進キャラクター「USHIKU野菜オーケストラ」の缶バッチを1個プレゼント
牛久市食育推進のための野菜キャラクター「USHIKU野菜オーケストラ」

 「USHIKU野菜オーケストラ」は、野菜に興味をもてるように、もっと野菜を好きになってもらえるように、野菜の栄養や特長を楽しく勉強できるように、という「ねがい」を込めて、牛久市栄養士部会(※)が企画しました。
(※)牛久市栄養士部会とは、公立保育園、小中学校、学校教育課、保健センターの栄養士で構成する食育普及を目的とした組織です。

(4) 実施時期
 夏休み期間

(5) 実施方法
 夏休みの宿題の一つとして実施

(6) 評価方法
① 参加及び達成状況
② アンケート結果 ①実施前②実施直後③実施3か月後(児童及び保護者対象)

2. 結 果

(1) 健康チャレンジ参加および達成状況

 

結果

A

児童数(対象者)

743人

B

提出数(参加者)

650人

C

達成数

488人

参加率(B/A)

87.5%

児童数からみた達成率(C/A)

65.7%

提出数からみた達成率(C/B)

75.1%


 児童数からみた参加率は約87.5%である。児童数からみた達成率は約65.7%となっている。提出数からみた達成率は約75.1%となっている。

(2) アンケート結果について

実施直後

実施後3か月

アンケート提出者数(割合)

650(87.5%)

575(74.3%)

参加して達成した

488(75.1%)

384(66.8%)

参加したが達成せず

162(25.0%)

118(20.5%)

参加しなかった

72(12.5%)

 実施前・直後アンケートは記録用紙と一体になっていたため、チャレンジ参加者のみの回答。実施後3か月アンケートは対象者全員に配布したため、夏休みに食育チャレンジに参加していない人からの回答も得られた。アンケート調査は、食育チャレンジ参加の効果を検証することを目的とし、以下の2点において検証した。
・食育チャレンジ参加者の継続性の変化
 実施3か月後アンケートは、「参加して達成した」「参加したが達成せず」に該当する、チャレンジ参加者502人を対象とした。
・比較対象群(実施3か月後アンケート回答者で、チャレンジ不参加者)との比較による検証
 アンケート結果は2018年度の結果を比較

① 朝食を「毎日食べる」と回答した割合

 

①実施前

②実施直後

③実施3か月後

比較対象群
(チャレンジ不参加者)

児童

75.7%

 ↓68.6%

↑84.6%

88.9%

保護者

69.4%

↓63.4%

↑75.1%

2018年度

84.1%

 77.9%

94.4%

 実施直後は減少したが、実施後3か月の方は「毎日食べる」と回答した割合は実施前よりも増加している。比較対象群(チャレンジ不参加者)と実施3か月後との差はみられない。

② 朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを「毎日食べる」と回答した割合

 

①実施前

②実施直後

③実施3か月後

比較対象群
(チャレンジ不参加者)

児童

18.9%

↑28.9%

↑20.1%

9.7%

保護者

19.5%

↑27.8%

↑18.5%

2018年度

12.1%

27.8%

24.0%

 実施直後は実施前に比べると、朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを「毎日食べる」と回答した割合は約1.5倍に増加している。実施直後と実施3か月後を比較すると、児童も保護者も減少しているが、児童においては実施前と比較すると3か月後は増加している。
 比較対象群(チャレンジ不参加者)は、参加者よりも割合は著しく下回っている。

③ 野菜を「とても好き」と回答した割合

 

①実施前

②実施直後

③実施3か月後

比較対象群
(チャレンジ不参加者)

児童

28.2%

↓27.5%

↑28.3%

27.8%

保護者

47.5%

↓45.7%

↑52.5%

2018年度

29.4%

34.1%

33.8%

 児童も保護者も、野菜を「とても好き」と回答した割合は、実施直後と比較すると減少しているが、実施3か月後は増加している。比較対象群(チャレンジ不参加者)は、参加者の実施前~実施3か月後と比較しても野菜を「とても好き」と回答している割合に差はない。

④ 良い生活習慣の定着につながったと「とても思う」「まあまあ思う」と回答した割合

 

①実施直後

③実施3か月後

比較対象群
(チャレンジ不参加者)

児童

50.9%

↓46.6%

15.3%

保護者

49.2%

↓38.8%

2018年度

62.3%

60.7%

 食育チャレンジによって、実施直後に良い生活習慣の定着につながったと「とても思う」「まあまあ思う」に回答している割合は、児童・保護者ともに約50%と半分の人が回答している。
 実施3か月後は、その割合が減少している。比較対象群においては、良い生活習慣の定着につながったと「とても思う」「まあまあ思う」と回答している割合は、15.3%と低い傾向にある。

⑤ チャレンジ後、継続している割合

 

人数

割合

チャレンジ達成者で継続を希望している人

284人

58.2%

チャレンジ達成者で継続希望なしの人

204人

41.8%

チャレンジ継続希望者のうち家族申し込みに発展している人

16人

5.6%

 食育チャレンジの達成者の半数以上は、継続を希望している。継続希望者で家族申し込みに発展した割合は5.6%となっている。

3. 考 察

(1) 健康チャレンジ参加者の継続性の変化
① 朝食及び朝食での野菜摂取行動の変化
 「朝食を毎日食べる」割合は、児童も保護者も、実施前、実施直後より実施3か月後の方が増加していた。時間を自由に使える夏休み期間より、学校生活が始まったことで3食食べるという規則正しい生活を送っていることがうかがえる。
 「朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを毎日食べる」割合は、実施前より実施直後は増加している。実施3か月後は直後に比べると減少がみられるが、児童においては実施前よりも増加しており、チャレンジにより朝食に野菜などを食べる習慣ができた者は、その後も継続できていることがうかがえる。保護者については、実施直後には増加がみられたが、実施3か月後には実施前よりも低くなっている。しかし、実施直後アンケートのご意見の中には、「朝から野菜を食べる意識が身についた」「継続していったらバランスのよい朝食が身についた」などといった意見もあり、主に朝食を用意している親の意識の変化につながっていることがうかがえる。児童においても、「野菜を食べて元気になって、よく遊べた」「野菜を食べると体も気持ちも元気になった」「これからもがんばりたい」などといった、朝食に野菜等を食べることへの前向きな意見もあった。児童の「朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを毎日食べる」割合がチャレンジ後に増加し、継続できているのも、朝食を用意する保護者の意識や習慣が変容した結果といえる。
② 野菜への関心の変化
 朝食に野菜を「毎日食べる」及び野菜が「とても好き」と回答した割合は、実施直後が低下したが、実施3か月後は増加している。一定期間継続し行動したことによって嗜好の変化を引き起こしていると考えられる。実施直後アンケートのご意見には、「積極的に野菜を食べたいと言うようになった」「野菜が好きになりました」などがあり、食育チャレンジが野菜に興味関心を持つきっかけになり、嗜好の変化をもたらしたことがうかがえる。
③ 健康への意識・関心の変化
 ご意見の中で、「あたりまえのように食べているけど、あらためて提示されると、大切なことだなと思うし、続けたいと思う」「栄養バランスを考えて食事を準備していたが、海藻やきのこは摂取量が少ないことがわかった」などがあり、チャレンジを実施したことで、参加者家族の朝食のスタイルを見直すきっかけとなっていることが考えられる。児童及び保護者ともに、チャレンジが良い生活習慣につながったと回答している割合は約50%と高く、健康への意識や関心が高まっていることがうかがえる。
 「日々の食事内容を見直す良い機会となりました」「偏りがちな食べ物に気づけて良かったです」の意見もあり、食育チャレンジは各々の健康への意識や関心に変化をもたらすのに一定の効果があるといえる。

(2) 比較対象群(実施3か月後アンケート回答者で、チャレンジ不参加者)との比較による検証
① 朝食及び朝食での野菜摂取行動について
 「朝食を毎日食べる」割合は、参加者と比較対象群で明らかな差はない。朝食を毎日食べる習慣は定着されていると考えられる。「朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを毎日食べる」割合は、参加者については、実施直後は増加し、実施3か月後には減少したが、実施前と比較すると増加している。しかし、比較対象群においては、「朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを毎日食べる」割合は著しく低いことから、生活習慣への定着には、食育チャレンジに参加することに一定の効果があるといえる。
② 野菜への関心ならびに健康への意識・関心について
 比較対象群は、参加者の実施前~実施3か月後と比較しても野菜を「とても好き」な割合には明らかな差はない。参加者はチャレンジを一定期間続けたため、実施3か月後は、比較対象群よりも、わずかに増加している。
 また、参加者の50%は、実施直後および実施3か月後においても、「食育チャレンジが良い生活習慣につながる」と「とても思う」「まあまあ思う」と回答しているが、比較対象群においては、「食育チャレンジが良い生活習慣につながる」と「とても思う」「まあまあ思う」と回答している割合は約15%となっている。
 一定期間継続してチャレンジすることが、嗜好の変化を引き起こし、野菜も好きになることがあるだけでなく、健康への意識や関心に変化をもたらすという結果を、チャレンジ前に示すことで、参加の動機につながると思われる。

(3) 波及効果について
 今回の食育チャレンジでは、達成者においてチャレンジの継続希望がある児童に、市で実施している健康チャレンジノートを缶バッジと一緒に配布している。達成者でチャレンジ継続希望の児童は284人(58.2%)であり、達成者でチャレンジを希望していない人は204人(41.8%)であった。健康チャレンジノート配布時に家族申し込みの案内も同封しているが、実際に申し込みがあった家族は5世帯で兄弟等も含め人数は16人と低い状況だった。
 昨年度は「かぞくde健康」に申し込みをした世帯は28世帯で、兄弟等含め86人であり、チャレンジを継続していた。昨年度は、食育チャレンジを達成した児童に、缶バッジと同時に家族も記入できる記録用紙も一緒に添付しており、更に継続を希望される場合、「かぞくde健康」として食育チャレンジのみに特化した簡易ノートを作成し、申請があった家族へ簡易ノートを郵送して対応をしていた。今年度は、食育チャレンジだけでなく、市で実施している健康チャレンジノートを配布したため、食育チャレンジの内容のみの案内ではなかった。健康チャレンジの内容には、運動・食育・地域のつながり・健診の健康に関連する4つの項目のチャレンジであり、単一項目のチャレンジでも可としているが、チャレンジ内容の案内が煩雑化したため、チャレンジ意欲が低下したのではないかと考えられる。「継続したい」と思ったときに申請せずにすぐに書き込めて、さらに食育のみにチャレンジ内容を絞って案内したことが、家族でチャレンジする意欲につながり、情報を絞って案内し、申請をしなくても実施できるような手軽さが継続につながっていくと考えられる。

4. まとめ

 学童期は家庭や教育によって基本的な習慣が身につく時期である。この時期に食育チャレンジを実施し、健康的な生活習慣を学習することによって、生活習慣の定着へと発展していくことが考えられる。2017年度から食育チャレンジが始まっており、昨年度は小学1年生及び一部小学校においては小学5年生も実施しているが、経年の実績から、より低学年が生活習慣の定着につながっていることがわかってきた。第3次食育推進基本計画では、朝食を欠食する子どもの割合を2020年までに0%を目標としている。食育チャレンジの結果から、朝食を毎日食べる割合はチャレンジ実施前よりも3か月後は増加している。食育チャレンジにおいて、一定期間チャレンジすることで、朝食を毎日食べる生活習慣の定着へとつながっていくと考えられる。
 健康的な生活習慣とは「1日3回主食・主菜・副菜をそろえた食事をする」ということが基本にある。また、健康日本21において、1日の野菜摂取目標量は6~7歳(小学1年生頃)で270gとされている。1日に推奨されている目標量を摂取するためには、朝から野菜を摂ることが必要不可欠である。今年度のアンケート結果より、朝食から副菜も食べることを定着させる取り組みとして「朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを食べる」チャレンジは、健康的な生活習慣の定着に一定の効果があるといえる。野菜が「とても好き」と回答した割合が増加していることは、行動変容に加えて大きな成果といえる。実施前から実施3か月後のアンケートより、嗜好は一定期間継続することで変化するといえる。チャレンジにより野菜を食べる機会が増え、それによりチャレンジ実施前より一つでも好きな野菜が増えることを期待したい。
 「朝食に野菜・いも・かいそう・きのこを毎日食べる」割合は、チャレンジ前より直後のほうが増加しているが、3か月後はやや減少している。朝食から野菜等を摂ることの必要性を認識しているご意見もあるが、「朝から用意するのが難しい」「毎日は難しい」という意見も多く、夏休み期間中のチャレンジにより朝食に野菜を食べる習慣がある程度できても、それを継続していくことは難しいことがうかがえる。毎日朝食を作る保護者が負担なく準備できることも「朝食に野菜を毎日食べる」ことを習慣化させるためには重要であるため、「食べやすい野菜の調理方法や簡単野菜レシピ」などを保護者へ配布し、家族にも朝食に野菜等を摂取する必要性を周知していくことが必要である。
 波及効果として、対象児童の家族のチャレンジ申し込みは、昨年度よりも低下している。昨年度の家族へのアプローチ方法の特長は、市で実施している健康チャレンジの中の食育チャレンジに焦点を絞って案内したこと、夏休み食育チャレンジ達成者には、その後の継続がすぐに取り組めるよう、缶バッジと一緒に家族が記入できるよう記録用紙を添付していたことである。今年度は、夏休み食育チャレンジの達成者で継続希望者には、市で実施している健康チャレンジ(運動・食育・地域のつながり・健診の4つの項目が含まれるチャレンジ)のチャレンジノートを配布しており、情報量が多く、また家族が実施する場合は申し込みをしてノートを入手してから、記録を始める必要があった。案内する内容の情報量、継続意欲があるときにすぐはじめられる手軽さが波及効果につながると考えられる。また、昨年度において、「かぞくde食育」にチャレンジしようと思った理由として、児童も保護者も「野菜オーケストラのバッジとバッグがほしかった」「望遠鏡がほしかった」などの景品獲得が動機になっていた。モチベーションも継続していくには、景品獲得も必要な要素といえる。子どもと親、兄弟等が一体となってチャレンジを実施することで、相乗効果が生まれ、家族でより健康的な生活習慣を継続することができる。家族へのアプローチを今後の課題としたい。
 2017年度から始まっている食育チャレンジを経年的に見たとき、健康的な生活習慣の継続に向けて、朝食に「野菜・いも・かいそう・きのこ」を食べるバランスの良い食事をすることで、生活習慣や嗜好の変化、健康への意識・関心が高まることがわかった。今後は、児童だけでなく、家族全体が朝食に野菜等を毎日とる割合が増加していけるよう、チャレンジ結果を、配布物などに盛り込み、参加しなかった方へも周知し、参加の動機付けを行っていく。また、取り組みやすく、さらに継続しやすい内容としたうえで、効果的な案内などを検討し、健康的な生活習慣の定着をはかっていきたい。