【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第9分科会 「やっぱはまりで、ぬぐだまる」(津軽弁)

 ペットの「飼育放棄」については、ペットブームが起きるたびに問題になってきました。2020年はコロナの外出自粛要請の影響でペットを飼う方が増え、また新たな飼育放棄が危惧されています。日本では、今も年間数万頭の犬や猫が「殺処分」されていますが、その中で私たちがどのような活動を行っているのか紹介します。



犬・猫の殺処分の現状と動物愛護団体の役割について


北海道本部/共和町職員組合・書記次長 中田 陽一

1. はじめに

 私と動物愛護団体の出会いは、町内での遺棄された子猫の対応に苦慮し、北海道に相談したところ、今の愛護団体を紹介され、子猫を保護していただいたのが出会いです。その後、子猫の行き先が気になり、団体の主催する譲渡会を訪れ、当時の代表に手伝ってほしいと誘われたのがはじまりです。もともと、犬や猫はもとより爬虫類などのエキゾチックアニマルも好きだったので、あくまでもボランティアとして参加することにしました。

2. 動物愛護団体の活動とは

 私たちの愛護団体で保護している犬・猫のほとんどが保健所の収容期限を過ぎたものや飼い主の病気などによる飼育放棄によるものです。里親が見つかるまでの間、自宅で飼養し、保護した犬や猫の健康状態によっては、動物病院に連れて行くことになります。基本的には、無駄な繁殖を防ぐため不妊・去勢手術を行います。
 劣悪な飼育環境で、飼育されていたせいか、咬む犬、おびえてケージから出てこない犬など様々です。それを慣らして里親に譲渡できる状態にするのも預かりボランティアの役割です。預かっている動物の責任もあり、預かりボランティアの活動にお休みはなく大変な仕事です。その分やりがいも感じます。里親さんへ旅立っていった時の喜びは預かりボランティアだったからこそ感じることができるのです。
 譲渡会は、新型コロナウイルス感染拡大以前は、月1回程度、札幌のホームセンターで行っていました。里親はあくまで先着順ではなく、飼育環境などを総合的に勘案し決定しています。もちろん、譲渡会を行っても、里親が決定しないこともあります。
 団体の運営経費は、寄付金や譲渡会の物販の売り上げで賄っています。保護期間が長くなると、それだけでエサ代や治療費などで会計を圧迫してしまいます。
 他の大きな愛護団体のように資金力やマンパワー不足のため、大々的に広告を出したりすることはできず、フェイスブックやインスタグラムなどSNSを中心に細々と情報を発信しています。また、メンバーも10人程度で皆、仕事の傍ら行っているため、全ての保護案件には対応できないのが実情です。

譲渡会の様子

自宅内での預かりの様子

3. 譲渡の流れ

 譲渡会会場で希望者と面接をします。飼育環境や家族構成などを確認し、家の写真などを送ってもらいスタッフと協議し、里親としての適正があるかどうかを判断します。あくまで、先着順ではなく多数応募があった場合でも断る場合もあります。里親として適正に飼育できると判断した場合、いよいよトライアルに向けて出発します。1週間程度のトライアルで問題なければ、晴れて正式譲渡となるわけです。過去にはこのトライアルの段階で、お断りされたケースもあり、こちらとしても正式譲渡になるまでは安心できません。譲渡費用としては、犬が三万円、猫一万円いただいています。現在は、譲渡会が開催できない状況を踏まえ、書類選考で譲渡を行っていますが、書類だけではなかなか判断が難しいところが多く、どのような方法で譲渡を進めていくのがいいのか模索をしているところです。

4. 全国の犬・猫の殺処分数の推移

 殺処分は、ペットに関する最も深刻な社会問題の一つで、2018年度の年間殺処分数は犬・猫合計で約3.8万頭(犬8千頭、猫3万頭)と言われています(下図)。これは、一日に換算すると殺処分される犬・猫が104頭にのぼるということになります。とはいえ、過去10年間の推移を見てみると、殺処分数は3分の1以下に減少しています。

5. 共和町での犬・猫の保護状況

 共和町は、基幹産業が農業ということで、納屋を併設している家庭が多く、猫が越冬しやすい環境にあります。また、野良猫をかわいそうと思い、餌やりをする人もいるせいか、野良猫に関する苦情が役場にも多く寄せられています。
 犬に関しては、狂犬病予防法の適用となるため、町でも捕獲することはできますが、野良猫に関しては、負傷動物以外は、法的な根拠がなく捕獲することはできず、自己防衛に努めてもらっているというのが現状です。
 犬に関しては、俗に言う野良犬は確認していませんが、放し飼いが原因で迷い犬となり、保護するケースがほとんどです。近年は、猫の遺棄も確認されており、終生飼養について普及啓発を図っていく必要があります。保護した犬や猫は、町で2日間公示したのち後志総合振興局で新たな飼い主探しを行うことになります。近年は、動物愛護精神の高揚により、後志管内の保健所では殺処分というのは基本的に行われていません。近年は高齢化により、70歳以上の人口構成比が高まり、今後のペット飼育を考える上でも、高齢者の動向を考慮する必要があると考えています。65歳以上の方から譲渡の希望があった場合、必ず保証人をつけてもらうようお願いしています。

 共和町での犬・猫の保護状況
年  度20152016201720182019
10

6. コロナ禍でのにわか「ペットブーム」

 今回の自粛生活をきっかけに、家庭にいる時間に動物との触れ合いを求めてペットを求める人が増えていますが、初めてペットの飼い主になる人も多く、「ペットとの生活感」の実態を理解していない中で、勢いでペットを購入するケースも増えているようです。ほとんどのペットショップでは、子犬や子猫しか取り扱っていません。確かに、子犬や子猫は家の中にいる時間が多いため、世話しやすいと考えがちです。しかし実際は、排泄の世話の頻度も多く、予防接種、去勢やマイクロチップの埋め込みなどについて考える必要があり、そうした費用負担があることも忘れてはならないのです。環境省の資料によると、飼育にかかる年間費用は一頭あたり犬で約36万円、猫で約18万円に上ります。ペットとの生活で、確かに多くの人が癒されています。しかし、同時に大きな責任を負うことを、もっと意識されるべきだと考えています。
 私は初めて犬や猫との生活を考えている人や、久しぶりに動物を飼いたいと思っている人には、まずボランティアとして、動物との生活に慣れ親しむことをお勧めしています。実際、私たちも含め多くの動物愛護団体は、様々な形でのボランティアを募っています。保護動物の一時預かりで、犬や猫の飼い主経験を積むのも、一つの方法です。多くの動物たちが、ペットとして幸せな時間を過ごせるよう、飼い主として強い意思を持って動物を飼う必要があることを改めて喚起したいと考えています。

7. まとめ

 保健所に収容された犬猫の中には、性質や健康等の事情により、すぐに一般家庭のペットとして譲渡できない子がいます。また、保健所の収容能力には限りがあり、動物には問題がなくても、長期の保管が難しくなることもあります。
 このような犬猫を迎え入れ、時間をかけて馴致や治療を施し、新しい飼い主を探すのが私たちの責務であると考えています。
 私たちの元では、保健所からだけではなく、行政では介入の難しい案件により保護された犬猫達も、新しい飼い主との出会いを待っています。しっぽのある家族を迎える際は、ぜひ譲渡会や団体ホームページなどをのぞいてみてください。
 動物愛護団体の飼養能力にも限りがあります。行き場のない動物すべてをレスキューできるわけではありません。どの動物を保護するかは、各団体がそれぞれの方針や能力に基づき判断しています。保健所への動物収容においては、常に殺処分の可能性があります。
 譲渡会が開催できない状況の中でどのように里親を募集していくかが活動を継続していく上で必要であると考えています。