【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第11分科会 青森で探る「自治研のカタチ」

 高橋道政4期16年間の検証を踏まえ、長きにわたり対立選挙を続けてきた北海道における知事選挙の意義を考察し、2019年に知事となった鈴木直道氏の約1年程度の北海道行政の運営に対し、組合員アンケートの結果を踏まえて、全道庁労連としての対応方針を策定することを趣旨に議論を進めてきた。この1年間は新型コロナ対策が中心とならざるを得ない事情もあり、多くの検討課題は引き続き研究を継続する。



全道庁労連のめざす道政運営と
鈴木道政への対応について
―― 鈴木知事に対する組合員アンケート結果を踏まえ ――

北海道本部/全北海道庁労働組合連合会

1. はじめに

(1) 北海道の知事選挙は「保革」または「与野党」対立の歴史
 北海道においては、1947年の初の北海道庁長官選挙において、決選投票の末に全道庁労組の委員長を務めていた田中敏文氏が選出されました。田中知事の3期12年の後、1959年からの24年間、町村・堂垣内と続いた保守道政において、道内のいわゆる革新勢力はその都度候補者を擁立し、1983年横路孝弘知事を誕生するに至っています。その後、12年間の横路知事の後を受け、1995年から堀達也知事が8年間と20年間にわたって革新知事が担ってきました。
 しかし、2003年から、自民党が推薦する高橋知事が4期16年間、その後を受け、2019年に鈴木直道氏が知事となりました。この間の動きは他の都府県にはなく、「保守・革新」または「与野党」が対決型の選挙戦を繰り返してきており、過去の保守道政時代に負けても負けても知事候補を擁立してきた歴史がありましたが、その取り組みの過程において全道庁(労連)は知事との直接的な労使関係を有することから常に中心的な役割が求められてきました。

2. 高橋道政16年を経た北海道の現状と鈴木道政の主な特徴

(1) 高橋道政16年は財政事情による行政サービス低下の時代
 道財政の悪化が表面化したのは1990年代後半ですが、バブル経済崩壊後の景気悪化と1997年の北海道拓殖銀行の破綻などに対応するため、景気対策を名目とした財政発動が行われました。そのツケは当然にも後世代に送られていて、高橋道政時代は危機的な財政事情を理由にした「新たな行財政改革の取り組み」が大きな特徴となりました。結果として、道職員を機械的に4千人減らし、道民への負担を拡大し、あらゆる行政サービスの低下をもたらした時代であったといえます。

(2) 市町村から北海道はどう見られてきたか
 高橋道政は、政策面での新味や特徴はこれといって見当たらない代わりに、知事の政治基盤は自民党の政治権力と中央省庁頼みであったために、市町村合併や道州制特区など国との政策との関係では、極めて国に忠実な姿勢をとってきました。道政改革の最重要課題で「100年に一度の改革」と呼ばれ注目された支庁制度改革は、2001年3月に出された神原委員会(注1)の最終試案において、道庁の役割・使命は「広域的課題への対応と市町村行政のサポート」と位置づけ、支庁への大胆な権限委譲、そして「支庁改革は本庁改革」という視点が提言されていましたが、10年以上の期間と労力を費やしたにもかかわらず、改革は名称変更と所管区域の一部変更に変質しました。この支庁制度改革の失敗は、地域・市町村が求める役割と乖離し、道庁の存在感を低下させてしまい、「道庁スルー」という言葉がマスコミ報道されたことは記憶に新しいところです。この根本原因は高橋前知事の北海道自治の構築に対する理念の不在、そして、地域・市町村軽視の政治姿勢、同時に道民・市町村に基盤を置かず自らの与党勢力だけに頼る政治手法そのものにあったといえます。

(3) 鈴木知事の政治姿勢の基本は何か
 鈴木知事は歴代北海道知事の中にあって、初めて市町村長から知事に選ばれましたが、その政治姿勢の基本は、支持母体が自民党や北海道道内の経済団体ということから、高橋前知事と同様との見方もあります。ただし、高橋前知事が国の官僚出身であったことに対し、鈴木知事は東京都庁の職員であったこと、都庁の職員時代の交流人事により、夕張市に勤務した経験があったことなど、その経歴に大きな違いがあります。また、夕張市長へ初当選した際には連合北海道などの支持を得て、当選してきた経過にあることなどから、高橋前知事とは異なったスタイルや政治姿勢も期待されますが、最終的にその本質的な政治姿勢を見極めるためには、これから示される多種多様な課題に対する姿勢や政策などを分析する必要があります。

(4) 就任後1年間の北海道における課題について
 鈴木知事のこの1年間の道政運営は慎重な運営に徹していたという評価が学識関係者より出されているところで、道政における重要課題の判断については、回避をして決定を先送りしたといえます。典型的なのは統合型リゾート(IR)誘致に関する判断ですが、カジノを併設することに対し賛否が分かれて難しい判断が求められ、最終的に判断は土壇場のところで先送りしました。しかし、仮にIRを誘致しないのであれば、北海道の観光をどのような形で高め、経済や雇用の波及を進めるか一定明らかにするところを、何も示さず中途半端な形で済ませています。
 また、幌延深地層研究センターは、2000年に施行された北海道条例により(注2)、研究センターの設置は認めつつも、北海道、原子力機構、幌延町の三者で締結した三者協定により「特定放射性廃棄物の持込みは(中略)受け入れ難いこと」を宣言し、研究終了後は最終処分場や中間貯蔵施設に転用しないことを明確にしていました。こうした議論経過を踏まえるならば、様々な議論や住民との対話を行いつつ、計画延長の判断を行う必要がありましたが、さしたる議論も深めずに容認したという印象を与えています。
 さらに、寿都町や神恵内村が高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定に際し、自治体の判断として第一段階の文献調査へ応募することとなりましたが、この間の北海道の取り組みが問われた課題です。これは何もしなかった「前高橋知事の道政運営」に責任があるということはいうまでもありませんが、単なる国や該当自治体に対する批判だけでなく、該当自治体や周辺自治体とともに考え具体策を打ち出すような取り組みが求められています。

(5) 鈴木知事の基本政策と2020年度予算編成の特徴は
 知事選挙の公約で「あらゆるピンチをチャンスに」と掲げるものの、それを推進するために2019年9月に結成された北海道応援団会議の目的が何なのか、道政課題を進めるにあたって、どのように関わりを持つのかが不明確な位置づけとなっているため、目新しい政策が打ち出されるのか疑問があります。また、第二期地方創生総合戦略に関しては、関係人口の創出・拡大や北海道Society5.0の推進が意図されていますが、すでに総務省が示している考え方を踏襲するもので、AIやRPAの活用といっても鈴木カラーが表現されているとは言いがたいものです。
 また、2020年度の北海道予算編成の大きな特徴としては、2030年の北海道新幹線札幌開業をめざして、民族共生象徴空間ウポポイの開設、道内7空港一括民間委託、東京オリンピック、アドベンチャートラベル・ワールドサミットというイベント中心の取り組みを柱に据えた事業展開を進めることです。しかし、先の見えないコロナウイルス感染対策を最優先とせざるを得ないため、新年度早々から腰を折られる情勢の下でスタートしています。

(6) 道民の目に映る鈴木知事はどのようなものか
 北海道新聞が2020年10月23日~25日にかけて実施した全道世論調査において、1年半経過した鈴木知事の道政運営への評価は、「たいへん良い」「まあ良い」を合わせた支持派が83%に上り、4月に実施した前回調査から5ポイント減ったものの高い水準を維持したことが報道されました。核のごみの処分場建設を巡り、道の核抜き条例を踏まえ反対する知事の判断には評価する意見が85%に上っています。支持の理由は「政策の実現力」が32%と最多となり、新型コロナウイルス対応などが評価されたとみられるとしています。これは夕張市長時代からの手法として、一点に内外の注目を集め、そしてイメージ形成を行うことに長けており、知事就任後も、道議会新庁舎の喫煙所の設置問題や知事公館の廃止といった判断に現れているものと考えられ、まさしく一貫してマスメディアを通じた対外的なイメージ戦略の効果は高支持率に反映されているといえます。

3. 道庁内における鈴木知事の評価と鈴木知事との向き合い方

(1) 道庁内における鈴木知事の評価は
 2020年4月、全道庁労連は初めて鈴木知事に関するアンケートを組合員に実施しました。調査項目については、過去の知事着任時には期待するかどうかをたずねましたが、今回はストレートに「支持する」かどうか、同時に概ね着任後1年間における道政課題に対する評価も問いました。調査に協力いただいた組合員は5,693人で回収率は55.8%となりました。総括的な傾向としては、回答された組合員の48.7%が「支持する」、「支持しない」と答えた者は4.9%、残りの42.1%が「どちらともいえない」という回答でした。男女別に見てみると男性の45.6%に対し、女性がちょうど50.0%となって女性職員の支持がやや高めとなっています。年代別では40歳未満が総じて過半数を大きく上回る支持を得ている一方、40才以上は「どちらともいえない」が「支持する」を上回っています。支持すると回答した組合員のなかで政策と道政運営への評価を見ると多くの課題について2割から4割程度が評価はしている一方で、新型コロナウイルス感染拡大防止対策と若さ・人柄などの項目に対しては総じて7割を超える評価となりました。こうした回答は当選後の多くの政策課題に対しては総じて「評価するともしないとも言えず、わからない」としながら、全体として約5割近くが支持を表明するという道民の世論調査と似た傾向が示されています(詳細の調査結果は別記の報告書を参照のこと)。

(2) 道政運営にはいくつかのキーワードが存在
 一般的に道政運営には知事のリーダーシップ、政策決定システムと庁内体制、道議会との連携、世論形成への対応、緊張感を持った民主的労使関係など、それを形作るいくつかのキーワードが存在すると考えられます。鈴木知事の誕生後、僅か1年数ヶ月の取り組みを見て、これらの要素のすべてを総合的に判断することは非常に難しい側面もあり、研究課題が多岐にわたるため、連合北海道や自治労北海道本部等と連携し、自治研活動などを進めるなかで調査・研究を継続します。

(3) 鈴木知事に対しては労使関係、道庁の再生、個別政策への対応が評価の要素
 第一に労使間の関係を知事がどのように考えているかということです。前述したように昨年の着任交渉においては、民主的な労使関係・過去からの労使慣行の遵守という視点は確認してはいますが、高橋知事時代と同じように「労働組合を軽視する」姿勢が繰り返されないよう適切な民主的労使関係を構築する必要があります。また、知事報酬30%カット問題を職員へ要請することは考えていないことを明言しましたが、今後の北海道財政の見通しでは、6年先の2026年度以降には実質公債費率が、過去一番厳しかった2010年から2011年度水準まで引き上がることが予想されるため、いつの段階で行革優先の姿勢に転ずるか大きな危惧を抱くところであり、これからの動向を注視していく必要があります。
 第二に、高橋道政時代にリストラ一辺倒で疲弊してしまった道庁の職場を再生することができるかどうか鈴木知事の姿勢が問われています。道庁へ活力を取り戻し、様々な北海道における重要課題に対して、基礎自治体である市町村の仲間と課題を共有化し、ともに悩みながら政策を形にしていくという姿勢を明らかにすべきです。そのためにも、「働き方改革」がかけ声倒れとならないために働き続けられる職場環境へ作り直す姿勢を明確に示し、人員増を含めて道庁職員のいびつな世代構成の是正と人材育成を急ぐべきです。
 第三に、北海道が抱える個別の重点政策がどのように進められてくるのかということです。当面しての最重要課題はコロナウイルス感染防止対策と沈静後の道内の景気対策をはじめとした取り組みです。道民の命と生活を守ることは北海道行政の至上命題であり、これこそ国政と十分な連携のもとで地域の医療体制の崩壊を招かず対策を進めていくべきです。また、地域経済へのダメージは計り知れず、後追いではなく長期的視点に立った北海道としての積極的な政策を期待するところです。その他、人口減少下におけるJR問題などの地域公共交通政策や高齢化・少子化、地方の過疎化、そして、エネルギー政策では泊原発の再稼働の是非などの重要課題に対し、道民や市町村と信頼関係を構築しながら、イメージ戦略に頼らず真摯にむき合いながら判断し、道職員とともに取り組んでいく姿勢が必要です。

(4) 調査・研究を継続し、当面、現場目線で個別政策へのチェック機能を強化する
 全道庁労連が実施した「鈴木道政に関するアンケート」において、「支持する」組合員のなかでも5割から6割、「どちらともいえない」と答えた組合員の6割から8割は、鈴木知事の道政運営について「わからない」と回答しており、具体的な道政運営や政策実施の方向性などは明確には見えていないと言えます。
 このような現状を踏まえ私たちは"これまでと同様の保守道政"と現時点においては評価することができない鈴木知事の政治姿勢について、現場目線によるチェック機能を果たしていくことが必要と考えます。また、労働組合としては鈴木知事に対し包括的な判断を現時点で示すことが困難であるため、当面は、北海道が抱えるそれぞれの課題ごとに対して打ち出す個別政策に着目し、それぞれ判断していくこととします。

【別記】

鈴木道政に関するアンケート結果

1 調査の概要
(1) 調査の名称
(2) 調査の目的
(3) 調査項目
(4) 調査対象
(5) 調査時期
(6) 調査方法
(7) 回収方法
(8) 回収率

 アンケート回収数は5,693枚。組合員の回収率(5,693/10,195)=55.8%。
(組合員数は2020年4月1日現在)

2 質問と回答(若干の傾向と分析)
(1) 鈴木道政を支持する48.7%、支持しない4.9%、どちらともいえないが42.1%
 鈴木道政についての支持率調査は今回初めてとなりますが、調査に回答した組合員の48.7%が「支持する」と回答しました(図表1)。一方、「支持しない」と答えた者は4.9%、残りの42.1%が「どちらともいえない」という様子見の回答でした。男女別に見てみると男性の45.6%に対し、女性がちょうど50.0%となって女性職員の支持がやや高めとなっています。
 年代別では20才未満が70.4%、20以上~25才未満が62.8%と6割を超え、25以上~30才未満が59.3%、30代が58.1%と総じて過半数を大きく上回る支持を得ている一方、40才以上は「どちらともいえない」が「支持する」を上回っています。役職別では、主事・技師、主任・専門員の支持率が高く、専門主任以上の役職では「どちらともいえない」が「支持する」を上回っています。総じて傾向としては、若年層へ行くほど支持率は上がり、高年齢層においては、一定の支持はありつつも、支持・不支持の判断を見送る傾向にあります。
 注)一部の総支部・労組において、組織的な事情からフェイス調査を除いてアンケートを実施したところもあるため、全体の合計と男女、年代、役職などの合計が一部異なる場合があります。
 また、各総支部・労組における評価は図表2のとおりです。50%を超えて支持が高いのは空知、網走、根室、東京、札幌医大、道立病院の4総支部2労組ですが、サンプル数の少ない東京を除いて、札幌医科大学の支持率が極めて高く出ていますがフェイスでの分析ができないため、この場では全体的な比較にとどめます。

(2) 過去の道政における期待度の傾向はどうか
 過去の知事が交代した時点での調査の結果との比較を分析してみました。
 横路道政となった1983年は「横路知事が誕生したがどう思いますか?」という質問で、善し悪しを問う設問でした。7割近い組合員が「良かった(69.1%)」と回答し、否定的な「良くない」との回答は0.9%でした。一方で「なんともいえない」が29.1%と比較的高い割合で存在していました。1995年の堀道政は、基本的に横路道政の継承という要素が強く、新人候補同士の知事選挙において、過去に例のない大差で誕生したことに対して組合員の期待値を問いました。質問内容は「確かな改革をめざす堀知事の誕生についてどう思いますか?」とした内容で、結果は「期待する」(少しを含む)が半数を超え(55.3%)、「期待しない(あまりを含む)」は34.6%となりました。男女とも「期待する」が「期待しない」を大きく上回りましたが、期待値は女性より男性の方が高く、女性は判断保留する傾向が出されました。
 2003年の高橋道政では「高橋道政に期待するか」の設問に対して、「期待する」が33.9%、「期待しない」が23.8%、「なんともいえない」が39.1%でした。判断保留が4割に及んでいたことは、初めての女性知事であることや、高橋カラーは最初の段階ではほとんど見えなかったことなどからそのような回答となったと考えられます。
 以上のことから、鈴木道政に対する比較においては、質問内容が「鈴木知事を支持しますか?」としたこともあって、直接的に比較することはできませんが、横路道政や堀道政の期待感に比較して、高橋道政が非常に低い期待値でしたし、特に高橋知事においては、16年間幾度となく意識調査が行われたものの、道庁内部の支持率が極めて低い結果にとどまっていました。16年間続いた高橋道政との比較というスケールが30歳代中ば以降の組合員へ影響を与えているとの要素はありますが、一方では約4割が判断保留し、その上で「支持する」に5割近い組合員が回答していることの理由を見極めていく必要があります。

(3) 鈴木道政1年間の取り組みの評価は
 支持する者でも道政運営への評価は5割から6割は「わからない」
 そこで支持する・支持しない・どちらともいえないの回答区分と「Q2政策と道政運営への評価」についての回答をクロス集計して分析を深めていきます。
 支持すると回答した組合員のなかで政策と道政運営への評価を見ると①議会運営、②職員との関係、③労使関係、④幌延深地層研究所の継続容認、⑤北海道応援団会議の取り組み、⑥統合型リゾート(IR)誘致の判断棚上げ、⑦JR路線維持問題への取り組みの課題までは、支持するとした者の2割から4割程度が評価はしている一方で、IR誘致を除き5割から6割が「わからない」と判断を保留しています。特に⑧新型コロナウイルス感染拡大防止対策と⑩若さ・人柄などの項目に対する評価はそれぞれ88.4%、77.9%と極めて高いことが判明しました。他にも⑨行政手腕などの評価が53.4%に及んでいます。一方で当初からいわれていた⑪官邸などとのパイプは44.5%と「評価する」が高い反面、「わからない」が45.3%との結果が示されています。
 こうした回答は当選後の多くの政策課題に対しては総じて「評価するともしないとも言えず、わからない」としながら、全体として約5割近くの職員が支持を表明するという組合員の意識を示しています。
 また、支持の有無が「どちらともいえない」とした区分では、新型コロナウイルス対策以外の項目において、6割から8割以上の組合員から、評価するかどうか「わからない」とした回答になっていることは、僅か1年程度の道政の舵取りを見ただけでは判断ができないということが想定できます。

(4) 北海道知事に期待することは何か
 1位道民のトップリーダー、2位市町村から信頼される、3位職員の意欲を引き出せる
 今回、組合員層が北海道知事に期待することは何かという設問を設け、3つまで選択することとしました。②道民のトップリーダーとしての思想・哲学が39.2%、④道民・市町村から信頼される人が38.1%、⑦道職員の意欲と能力を引き出せる人が37.4%、と大きな差がなく上位3位までを占めました。これに③広く道民と連携して地域経営する能力、⑧現場感覚・現場主義に立脚する人が30%を超えてつづいています。高橋道政時に常に上位となっていた⑥安定的な行財政運営はそのあととなりました。
 鈴木道政は4期16年間続いた高橋道政を引き継ぐ形とはなっていますが、アンケートに答えた組合員の意識としては、高橋知事時代に多くの批判を受けた事象を中心に、特に30%を超えた5項目について、鈴木知事への期待がにじみ出ている結果と捉えることができます。

(5) 鈴木道政に対して、組合員はイメージ先行のふわっとした支持の傾向が強い
 新型コロナ感染対策においては、組合員層からは非常に高い評価を得ています。国よりもはやくに行った2月の独自の緊急事態宣言の発出や自粛の取り組みを評価しているのかもしれませんが、これは、かなり政治的なパフォーマンスの要素が強いといえます。当初、感染者の場所をふせたことで道民世論から批判を受けましたが、そのことも消え去られ、単に、雰囲気だけでの評価になっている可能性があります。
 また、「若さ・人柄など」の評価が高く、これは若さを評価しているのか、人柄を評価しているのか、あるいは両方を評価しているのか、設問上は明確には区分できませんが、若さは年齢を考慮すれば確実に判断できるものの、人柄については実際に会って会話しなければ判断できません。しかし、職員全員が知事と膝を交えて話をすることは現実的には不可能なことです。このような傾向は、前高橋知事のときも世論調査において同じような調査の傾向が見られましたが、まさに、こうした根拠の乏しいふわっとした支持こそ、選挙のときには強みを発揮することを私たちは過去の経験より学んでいます。
 従って、当面して労組の役割としては、鈴木道政に対する評価と判断を現在の時点で固めるのではなく、鈴木道政が個々の政策を推し進める都度に、現場の視点からチェックを行うことが重要であると考えます。



(注1) 神原委員会 堀道政時代の1999年1月に設置された「支庁制度検討委員会」(委員長・神原勝北大教授=当時)において、支庁の所管区域の見直しを視野に入れた議論が開始されました。この検討委員会を神原委員会と呼んでいます。
(注2) いわゆる核抜き条例とは堀道政時代の2000年(平成12年)10月に施行された「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」のことです。条文中に「特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難い」と初めて明記したもので、これをもって「核抜き条例」といわれています。