【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第12分科会 昨日までの働き方…ちょっと立ち止まって考え直してみませんか?

 苫小牧市職労自治研推進委員会は、2020年3月に市職労組合員を対象に職場アンケート調査を実施した。アンケート調査の目的は、近年増加傾向にある職員のメンタルヘルス上の理由による休職や不本意な早期退職の原因を探り、これを防ぐ方策を見出すためだった。調査結果からは、職場環境の改善が差し迫った課題であることが浮き彫りになった。



職場アンケートを職場環境の改善につなげたい!!

 

北海道本部/苫小牧市役所職員労働組合・自治研推進委員会

1. ある日の自治研の会合

 「次は何に取り組もうか……」 ある日の苫小牧市職労自治研推進委員会(以下「苫小牧自治研」という。)の会合では、何とはなしにそんな会話をしていた。ちょうど苫小牧市が強力に推進していたIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致見送りを鈴木知事が表明したので、ホッとして気が緩んでいた時期でもあった。
 それまで苫小牧自治研では、「IRの誘致の是非は住民投票で決めるべき」という内容の提言を発表した後、市民有志が立ち上げた市民団体の署名集めにどう協力するかなどということを議論していた。その反動もあってか、その場には何となく「次は職場の問題に目を向けたい。」というような空気感があった。
 誰とはなしに「最近メンタルで休む職員多いよね。」という話が出た。「若手で辞める職員も多くないか。」と会話が続く。どうやらその場にいたメンバーは全員同じ実感を持っていたようだ。実際のところはどうなのか、調べてみることになった。

図1 精神疾患による長期病気休暇取得者及び休職者の推移

2. 調べてみたら……

 早速、安全衛生委員会の資料などを頼りに調べてみた。結果はやはり実感どおりで、メンタルによる病休者・休職者の数も若手の退職者の数も、ここ数年急激に伸びていた。(図1図2参照)
 この結果はある程度予想していたとはいえ、私たちにとってかなり衝撃的だった。なぜこのようなことになったのか、何とかしないとこのままでは市役所はダメになる……この時点で次に取り組む課題は決まった。「まずは職場アンケートを実施して実態をつかもう!!

図2 若年層における年度別退職者推移 (消防、病院医療職を除く)

3. アンケート実施

 アンケートは上下水道部、市立病院、消防本部を除く市各部局と苫小牧港管理組合の市職労組合員897人を対象に2020年3月下旬に実施し、775人から回答を得た。回収率は86.4%だった。主な結果は以下のとおりである。※Q1、Q2の結果は割愛している。

4. アンケート結果から見えてきたこと

 アンケートでは7つの質問を設定し、「職場の雰囲気」「仕事のやりがい」「パワハラの有無」「セクハラの有無」「こころに負担を抱えているか」「退職を考えたことがあるか」についてそれぞれ回答してもらった。Q7は自由記載とした。
 その結果、「職場の雰囲気」「仕事のやりがい」では肯定的な回答が多かったものの、およそ1割がパワハラを受けたと回答し、セクハラの存在も明らかになった。また、こころに大きな負担を抱えているとの回答がおよそ3割、退職を考えたことがあるとの回答が4割近くに上った。これは驚くべき数字だった。
 パワハラ、セクハラを誰から受けたかとの問いに対して、最も多かった回答はいずれも「上司」で、次に「同僚」が続いた。こころの負担となっている原因や退職を考えた理由は、「職場の雰囲気・人間関係」「仕事がきつい、労働時間が長い」「仕事が面白くない・やりがいがない」といった職場環境に起因するものが上位にきている。
 また、自由記載には、137人の書き込みがあった。目立つのは上司に対する不満で、次に人事のあり方が多く、日頃職場や仕事に対しての不満が蓄積されていることを実感させられた。
 アンケート結果からは、職場環境の改善が差し迫った課題であることが浮き彫りになった。このままでは新規採用の応募が減っても仕方ないだろうし、せっかく採用され希望に満ちて職場に配置される新採用職員への背信ということになるかもしれない。深刻な状況である。市役所を何とかしなくてはならないという思いが強くなった。苫小牧自治研では、そのような切実な思いで職場環境を改善するためにどうしたらよいか、問題点への対策を検討し、報告書にまとめた。

5. 問題点への対策

 アンケート結果を受けて、報告書の中で提案した問題点への対策の概要は以下のとおりである。

(1) パワハラ・セクハラへの真剣な対応を
 まずは市当局(以下単に「当局」という。)による実態把握と進行中の案件への対処が不可欠だ。その上で、研修や相談窓口などの再発防止・解決策の確実な実施が必要だ。組合も相談機能を強化しなければならない。また、当局は立場の弱い非正規職員の待遇にも気を使うべき。

(2) 人員を増やすこと
 職場環境改善のためには人員増を図るべき。優先するのは時間外勤務が多かったり、病休者が頻繁に発生しているような困難職場だ。また、負の連鎖を防ぐため、病気休暇が一定期間を経過した場合に加配で職員を配置するルール作りが必要だ。

(3) 仕事のやりがい向上のために
① できる限り職員本人の希望を聞き、資質・能力に合った仕事に就けるような制度設計など異動のあり方の見直し。(職員に身近な所属長の人事関与を強めるなど)
② 部下の仕事内容や心身の状態を把握するなど管理職が役割を果たす。
③ 苦情対応等で職員を孤立させない取り組みやチームワークを重視した仕事の仕方など、仕事に対する嫌悪感の軽減を図る。

(4) こころの健康問題の解決に向けて
 発生させない対策(職場での気づき、相談窓口の充実)と発生した後の対策(職場復帰プログラムの浸透)が重要だ。また、休職中の異動に対する柔軟な対応や、職場や仕事に多様性を確保することも必要だ。

6. 報告書を当局に提出

 完成した『職場アンケート調査結果報告書』は、2020年10月組合執行部を通じて当局に提出し、職場実態に向き合い積極的に善処するよう求めた。また、市政記者クラブに投げ込みしたところ、北海道新聞と苫小牧民報から取材を受け、それぞれ記事になった。当局も同じ記事の中で「市としても(管理職を含めた)職員アンケートを行い、実態を分析しながら改善に取り組みたい。」という意向を表明した。市の部長会議でも取り上げられ、報告書をもとに何らかの対策を検討するようだ。今後の動向に注目したい。多くの組合員に協力してもらったアンケートをもとに、自治研活動として問題点の原因を探り対策を提案したことが、少しでも職場環境の改善に役立つかもしれない。これで終わりとせず、引き続き取り組みを進めていくことが大切と考えている。