【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第12分科会 昨日までの働き方…ちょっと立ち止まって考え直してみませんか?

 市の政策推進と組合員の健康増進、市の職員として、地域の一員として、組合員のためにほんの少し工夫しました。組合の関わる「働き方改革」と地域活性化モデルの可能性の追求、小さいことからコツコツと地道に頑張っています。組合発「スニーカービズ」を通じた「誰もが健康で働きやすい職場づくり」の提案です。



行政と職場と労働組合の協働
―― 市役所発 全ては
「誰もが健康で働きやすい職場づくり」 のため ――

愛知県本部/岡崎市職員組合

1. なぜ健康に着目? ~背景~

(1) 「歩いて健康」「食べて健康」スマートウェルネスシティ
 岡崎市では、そこに暮らすことで「健幸」になれるまち「スマートウェルネスシティ」を推進し、「歩いて健康」「食べて健康」を合言葉にさまざまな健康づくりの取り組みを行っている。これまでにスマートウェルネスシティ首長研究会やスポーツ庁の取り組み「FUN+WALK PROJECT」への参画、議員立法による岡崎市健康基本条例の制定など市全体で健康づくりへの意識を高める取り組みを行っており、健康寿命の引上げ、糖尿病有病者の減少、健康に対する無関心層へのアプローチとして、各種イベントや地域の資源(「QURUWA戦略」や額田地区の豊かな自然など)を活用したクアオルトを展開し「健幸都市岡崎」の実現をめざしている。

(2) 働き方改革の試行
 昨今「働き方改革」が声高に叫ばれている。岡崎市では、総合政策部企画課において、個人のデスクをなくし、職員が自由に使う打ち合わせ用の共用テーブルだけにして職員の席を固定せず、働きやすい職場づくりをめざす「フリーアドレス」を試行導入した。席が決まっていないため、同じプロジェクトを勧める仲間同士で座ったり、上司が隣に座ったりし、打ち合わせや上司同僚への確認・報告など時間が短縮されたとのことである。
 また、現在策定中の総合計画の中においても少子高齢化社会の到来、社会保障制度の崩壊、労働力・担い手の不足などから、このままでは老年人口1人を支える生産年齢人口が少なくなってしまうため、前期高齢者世代になっても働き続けることを視野に入れた施策を行っていくことが必要と位置付けており、自治体においても働き方改革の推進が不可欠として働き方改革を今後推進していくとのことである。

(3) 「誰もが健康で働きやすい職場づくり」
 岡崎市職員組合では、2020年度運動方針の柱のひとつとして「誰もが健康で働きやすい職場づくり」を打ち出した。これはツール(テレワーク、オフィス改革、AI、RPAなど)に偏りがちな「働き方改革」に対し、今後訪れることが予測される高齢化社会においても職員がいつまでも健康で働ける職場づくりを継続していくことが、賃金・労働条件と並ぶ活動として今こそ重要視すべきだと打ち出したものである。これは結果的に労働条件・環境の改善と共通する部分が多くあり、総労働時間短縮、ワーク・ライフ・バランスの実現にも通ずる部分があり、人事院勧告に左右される私達自治体職員の賃金闘争よりも、確実に進めていける活動の一つであると考えている。

2. 市職員発 「スニーカービズ」の取り組み

 組合では、運動方針に基づき「誰もが健康で働きやすい職場づくり」を実践するため、保健所の推進する「スニーカービズ」に着目した。市職員を対象として2019年8月19日(月)からスニーカービズの取り組みが急遽行われ、毎月19日は「スニーカー通勤の日」(職員がスニーカーなどの歩きやすい靴で通勤する日)となったため、何らかの形で協力し、職員の健康増進を推進できないかと検討を行った。
 執行部役員から率先してスニーカーで出勤することを行うことは当然ではあるが、なかなか組合の取り組みとしてPR力に欠けることなどもあり、日頃様々なものを斡旋販売している強みを利用し、スニーカービズを側面から推しあげるスニーカーそのものを販売することを職員に向け宣伝することにした。

(1) 行政としての役割
 市職員は市役所に雇用されている労働者という側面よりも、行政側の立ち位置が日頃、市民からも厳しい目で見られている。その両面を打ち出すことができ、また行政から行っていくという趣旨に賛同できる取り組みばかりではない中、今回のスニーカービズの推進は労働者側の側面からも賛同し、積極的に推進していくことに価値を見いだせると考えている。

(2) 市職員が実践するということ
 市役所と言えばとにかく「堅い」のイメージと思いがちですが、役所の職員が「クール・ビズ」などを積極的に実践すると、意外に他への波及効果も高いことは周知の事実であり、実際に職員が夏場にノーネクタイ、ポロシャツ着用等をすると、仕事で来庁する事業者も最初は堅めのクール・ビズだったものが、最近ではTPOを踏まえつつ、我々職員と同等、時にはそれ以上のクール・ビズが実践されている。スニーカービズもスーツなどにスニーカーは似合わないと思っている人も多く存在する中、ミスマッチで楽しむ人も多いとされ、市の職員が仕事中のファッションとして楽しんでもらうというやり方も次の段階で提案したいと考えている。

(3) 市内事業者に販売の依頼
 まず、「とにかく早くやらないと意味がない」と考え、岡崎市内のスポーツ店とタイアップし、組合員向けの販売商品を検討してもらった。オリンピックゴールドパートナーでもある「アシックスジャパン」の協力も得ることができ、PR力の向上にもつながる目処がつき、実施に向け準備を進めた。これまでにも地元企業の豆乳を定期的に斡旋販売しており組合員からも好評であることから、スニーカーの斡旋販売を市内の事業者が販売を行うことで、執行部役員の業務軽減に資する以外にも地域活性化や地元での消費という観点で、市の職員としての役割も果たすことができる仕組みは他の案件にもつなげることができる。

3. 実 践

 「スニーカービズ」の取り組みも「クール・ビズ」の期間中が服装的にも取り組みやすいであろうと考え、準備期間もあまりない中、保健所、企画課の賛同・協力も得て、職員組合による斡旋販売の準備を行った。

 斡旋販売会場に何も持たずに来ても、気に入ったものがあればその場で購入できるよう、事業者によるカード決済や組合費とまとめて天引きできる仕組みなどを用い、興味を持った人がこの機会を逃さないよう手段を講じた。気になる価格であるが、斡旋販売はその場にアシックスによるフィッター(靴のアドバイザー)もおり、また気に入るまで試着も可能な状況で、その場で購入したほうがお得だと思わせる価格設定にするよう事業者に求めた。もちろん、ネットなどで値段を調べて同じものを購入したほうが安いことが多いと思われるが、それでは今回の意義が半減してしまうため、アシックスジャパンにも価格面での協力を要請した。
 当日は朝始業前通勤時間帯に執行部役員と企画課職員によるチラシ配布を行い、組合員、管理職問わず呼びかけを行った成果もあり、昼休みを中心に多くの来場者があった。フィッターによる試着も自分にあった一足を知ることができ、特に昼休み時間は常に人の動きがあり、ネット販売はもちろん、量販店に購入に行く以上のメリットを感じさせることができた。この1日の開催で42足売り上げることができ、事業者などと設定をしていた目標は概ね達成できたと分析している。

4. これから

(1) 振り返り
 8月の「市職員によるスニーカービズ」の発表後、保健所などからのオファーもあり、急ぎ準備を開始したこともあり、斡旋会場内での企画にテーマと齟齬が生じる、スニーカービズの良さのPR不足などの課題も生じた。後に反省点をまとめ次回の機会には是非実践をしていきたいと考えている。
① テーマとの齟齬
 「スニーカービズ」をテーマとして開催したが、事業者が運動具店であったこと、事前の陳列商品の内容確認ができていなかったことから、派手目のランニングシューズなどが目立つ商品レイアウトであったため、「スニーカービズ」との関連性を来場者にアピールする商品にPR不足を感じた。ただし、ウォーキングやランニングに対する関心が高いせいか、ランニングシューズの売上や関心の高さもうかがわれたため、影響は少なかったと考える。またオリンピックに関連したシューズ、ウェア、グッズなどは売れ行きこそ芳しくないものの、関心の高さが窺えた。
② スニーカービズを紹介するコンテンツの不足
 これは例えばマネキンやポスターなどで、ビジネスで着用可能なコーディネートなどをPRすることができなかった。例えばスーツやスラックスなどと合わせるのはこのようなスニーカーが合うなどのコーディネートがうまくPRできれば、もう少し関心をもってもらうことができたかもしれない。
③ 周知期間の短さ
 「クール・ビズ」期間のほうが、服装のコーディネートも容易でありその期間(10月末まで)に間に合わせたこともあり、検討時間や周知期間が十分取れなかった。事前に機関紙などで特集が可能であれば、もう少しPR効果が現れたのではないかと思われる。

(2) 効 果
 このイベントや保健所のしつこいくらいのPRも功を奏したか、相当の人がスニーカーを履いて仕事をしているように見える。実際に組合役員も率先してスニーカーを履いて通勤、仕事を行っており、管理職などにおいてもスーツにスニーカーなどという姿も見られるようになった。当然TPOもあるため一概に全員というわけにはなかなかいかないが、少しずつではあるものの浸透が図られていることを確信している。履き心地や作りがスニーカーの革靴もあり、そちらもスニーカー候のスタイルが抵抗のある世代に一定の浸透があるらしく、今回の取り組みが斬新すぎると感じている層には抵抗なく受入れしてもらえるのではないだろうか。

(3) これから
 数々の反省点はあったものの、初めての取り組み、準備期間が短かった状況を考慮すると上々の滑り出しだと評価する。また今回は市内の事業者に協力をいただき、それなりに地域活性化に貢献することもできたと考えている。このように様々なステークホルダーがwin-winとなる取り組みは間に「組合員のために」を利益(=非営利)とする労働組合があってこそ成り立つのではないかとも考える。またこの取り組みは他の労働組合にも紹介し、当然だが同じ仕組みを行ってもらうことができるようにもなっており、地域で行えば、場合によっては地域活性化に資する可能性も秘めている。
 これから迎えるであろう高齢化社会、それに伴う労働環境や条件の変化は今後じわりじわりと実感させられるものになるであろう。そのときに「誰もが健康で働きやすい職場」となっているか、公共サービスを提供する私達のワーク・ライフ・バランスは保つことができているか、今後も追求していきたい。