【自主レポート】
大崎地方合併協議について
宮城県本部/古川地方自治研究センター・
研究員 豊嶋 正人(古川市議会議員)
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1. 合併協議会設置までの経過
2002年 |
7月22日 |
大崎1市9町合併事務研究会発足(助役・主管課長会議) |
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同時期 |
大崎東部6町合併研究会発足 |
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10月16日 |
大崎1市9町合併事務研究会に栗原2町参加 |
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12月5日 |
事務研究会報告書ダイジェスト版全世帯配布 |
2003年 |
2月17日 |
大崎地方市町村合併任意協議会設立準備会立ち上げ |
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2月28日 |
大崎地方市町村合併任意協議会設立総会 |
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3月1日 |
協議会事務局職員配置(事務局長以下8名) |
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3月13日 |
県知事へ合併重点地域指定について要請 |
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3月17日 |
県知事から合併重点地域指定通知受理 |
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瀬峰町から脱退届受理 |
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3月24日 |
古川市議会有志「住民が主人公を基本とする協議会運営を」とする要請書提出 |
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3月26日 |
協議会だより創刊号発行 全世帯配布 |
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4月1日 |
高清水町離脱 |
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事務局職員構成市町から2名ずつ派遣 |
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4月10日 |
第2回協議会(委員研修・古川市議会有志の要請書の取扱・今後のスケジュール等) |
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4月11日 |
1市6町合併に関する住民意向調査5,000人対象 |
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4月25日 |
協議会だより第2号発行 全世帯配布 |
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5月1日 |
南郷町・小牛田町離脱 |
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5月16日 |
第3回協議会(新市将来構想中間報告案・今後のスケジュール・合併協定項目案・合併の方式・合併の期日等) |
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5月26日 |
新市将来構想中間報告書配布 協議会だより第3号発行 |
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6月14日 |
第4回協議会(新市将来構想・法定協議会設置に係る基本的事項・日程、規約、体系、スケジュール、事業計画、協定書案等) |
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6月20日 |
新市将来構想報告書配布 |
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6月25日 |
協議会だより第4号発行 |
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6月28日 |
第5回協議会(幹事会・専門部会・分科会・事務局・財務・公印規程等) |
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6月30日 |
大崎地方合併協議会設置に係る関係市町議会の議決 |
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賛否の状況反対0―田尻町、反対1―松山、鹿島台、 |
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反対2―古川、岩出山、反対3―三本木、反対4―鳴子 |
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7月1日 |
大崎地方合併協議会設置 |
表1 構成自治体の人口(平成12年国勢調査)・面積・議員定数
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自治体
|
人 口(人)
|
面 積(km2)
|
議員定数(人)
|
古 川 市
|
72,897
|
134.14
|
26
|
鳴 子 町
|
9,289
|
326.10
|
16
|
岩出山町
|
14,169
|
140.70
|
20
|
三本木町
|
8,411
|
44.63
|
16
|
松 山 町
|
7,072
|
30.10
|
16
|
鹿島台町
|
14,058
|
54.05
|
18
|
田 尻 町
|
13,417
|
65.58
|
20
|
合 計
|
139,313
|
795.30
|
132
|
2. 大崎地方合併協議会の設置目的
「合併の是非も含めて、自由闊達に議論する場である。」ことを、2003年6月30日の「設置に関する議案審議」での市議会における質疑に対する答弁で確認した。
3. 合併の必要性
① 地方分権への対応
② 少子・高齢化への対応
③ 住民ニーズの広域化・高度化への対応
④ 厳しい財政状況への対応
合併研究会結成当初から上記4点のために「合併が必要だ」と主張してきたが、これらの課題にどれだけ意識した協定項目の協議となったのかは疑問である。
4. 財政計画の問題点
合併することによる財政効果として、財政規模の推移による差額を、合併後20年間で1,167億円、10年間で898億円(うち投資的経費充当可能一般財源111億円)としている。
表2 財政計画(平成17年度から36年度までの20年)
|
(単位:億円)
|
|
合 併
|
合併しない
|
|
合 併
|
合併しない
|
歳入総額 |
9,365
|
8,198
|
歳出総額 |
9,365
|
8,198
|
地方税 |
2,890
|
2,864
|
人件費 |
1,723
|
2,017
|
地方譲与税 |
184
|
184
|
物件費 |
853
|
1,065
|
地方交付税 |
3,504
|
3,259
|
扶助費 |
1,015
|
840
|
国庫支出金 |
763
|
431
|
補助費等 |
1,581
|
1,543
|
県支出金 |
368
|
375
|
公債費 |
1,253
|
707
|
地方債 |
604
|
36
|
積立金 |
163
|
133
|
合併特例債 |
361
|
-
|
繰出金 |
1,251
|
1,259
|
通常分 |
207
|
-
|
投資的経費 |
1,282
|
402
|
減税補てん債 |
36
|
36
|
一般財源充当分 |
313
|
370
|
◆平成14年度決算額及び平成15年度決算見込み額を基本とした。
◆合併した場合と、しない場合の差額は1,167億円 |
通常債分 |
356
|
-
|
負担金事業分 |
110
|
-
|
特例事業(個別) |
199
|
-
|
特例事業(一体) |
271
|
-
|
土地開発公社償還 |
32
|
32
|
地方交付税は、経済財政諮問会議の推計値(平成16年1月20日会議資料・内閣府作成)により算出。一本算定と算定替えの特例による差額は、11年間で235億円、その後5年間で47億円合計282億円。合併補正による上乗せ額は3.58億円を5年間計上。
特別交付税の包括的措置は、1年目5億円、2年目3億円、3年目2億円で合計10億円。
合併しない場合の公債費を、「17年度以降は、各市町の予定されている建設事業は凍結すると仮定」している。
そのため、投資的経費が合併した場合には1,282億円であるのに対し、合併しない場合は402億円と3分の1以下になっている。
合併しない場合は、それぞれの市町においては、総合計画等に基づいた事業が行われるはずである。
よって、今回の新市建設計画で協議された個別事業(合併前の市・町ごとの事業)費818億円は計上すべきであり、一体的事業として位置づけられた事業費(407億円)の一部も計上すべきである。
人件費は、住民サービスの提供に支障のない範囲で、類似団体程度の職員まで削減する場合、約360人の削減が期待できるとしている(10年間の定年退職者は、448名)が、計画通り削減できるのか、サービス低下にならないのかは疑問である。
議員定数は、132人から在任特例で4年間は53人、その後は34人。特別職等も24人削減可能。これは明らかに期待はできるが、一方、住民の声が十分に市政運営に届くのかという疑問はある。
5. 合併特例債
新市建設計画に位置づけられ、合併に必要となる事業に対し、合併年度から10年間、特例的な地方債が認められる。充当率は対象事業費の95%で、その元利償還の70%が交付税に参入される。
借入限度額は528億円であるが、調整目標額を400億円とし、協議の結果、一体性事業に200億円、地域別事業に200億円とし、地域別事業200億円の配分は、10億円を均等割りとし残りの130億円を人口割りとした。
その後の精査により、361億円(うち個別事業は128億円に減額、当初なかった基金38億円が加わる)とした。
区 分
|
地 域
|
総事業費
|
特例債充当額
|
件 数
|
|
古 川
|
33,738,481
|
4,185,900
|
33
|
|
松 山
|
6,319,760
|
793,200
|
15
|
|
三 本 木
|
4,464,734
|
1,840,700
|
16
|
個別事業
|
鹿 島 台
|
9,069,004
|
2,087,300
|
9
|
|
岩 出 山
|
12,016,721
|
1,588,700
|
35
|
|
鳴 子
|
7,162,125
|
300,400
|
10
|
|
田 尻
|
9,029,455
|
2,037,200
|
18
|
|
小 計
|
81,800,280
|
12,833,400
|
136
|
|
|
|
|
|
一体性事業
|
一体性事業
|
40,700,000
|
19,455,500
|
9
|
|
|
|
|
|
|
合 計
|
122,500,280
|
32,288,900
|
145
|
一体性事業とは、地域情報化推進事業、統合型地理情報システム(GIS)整備事業、新庁舎建設事業、環状道路・地域連携道路整備事業、高速道路ミニインターチェンジ整備事業、社会教育複合拠点施設整備事業、総合防災対策整備事業、地域医療等整備事業である。
表4 新市事業費(1,309億円)内訳
総事業費1,225億円+基金38億円+5%分19億円+利子27億円
|
単位:億円
|
|
合併特例債(361)+利子(27) |
合併特例債の5%分 |
地方債(通常・負担分) |
国 県
支出金 |
その他
一般財源 |
事業費内訳
|
388
|
19
|
481
|
262
|
159
|
地方交付税
措置分
|
272
|
|
137
|
|
|
国県支出金
|
|
|
|
262
|
|
新市の負担
|
116
|
19
|
344
|
|
159
|
新市の負担合計額 116+19+344+159=638億円
うち合併特例債に関する負担 116+19=135億円
地方交付税措置分272億円の財源保証はありません。
合併特例債事業の問題点
(1) 10年間で638億円の負担を伴う事業の実施、財政規模が大きくなったとしても可能だろうか。
(2) 70%が地方交付税措置されるといっても、16年度で6.5%、臨時財政対策債28.6%削減された状況から保障はない。(昭和の合併では、300億円の財政支援を示したが、実績は36億円)
(3) 「古川市財政健全化推進計画」(平成13年度から22年度)の冒頭で市長は、「地方分権の時代にあっては、従来のような『国頼み』『県頼み』の姿勢はもはや許されません。自治体という名前に恥じない、文字通りの『自治・自立』が必要です」。市長は、「合併特例債の活用」と言っているが、矛盾はしないだろうか。
6. 合併しない場合の財政計画
4月17日の第16回合併協議会に合併した場合としない場合の財政シミュレーションが出されたが、合併しない場合のデータは1市6町の集計値だった。
この2日前の15日、合併協議会事務局職員の匿名で、「資料や情報のかなりの部分を改ざんし、さも合併しないと大変なことになる。との嘘の資料を出している。……1市6町の個別の資料を出したら、3町(鹿島台・岩出山・鳴子)の財政破綻がマスコミや住民に明らかになるので絶対出さず、合併協議を乗り切り、3町をどのように救うかが首長会議の一番大事な話し合いになっており、将来の福祉や住民サービスなどは……」という内部告発が私を含む2人の議員に、合併しない場合1市6町の資料を添えて届けられた。
この告発を受け、古川市議会代表の委員に「個別の財政計画を求める」発言を依頼し発言してもらったが、休憩を取り協議したが、①歳入と歳出の年度が違う、②合併しない場合の市町の計画がない、③誤解を生じることもあり十分な説明が必要、との理由で次回(5月29日)まで検討するとの確認となった。
その後4月21日の市議会合併問題調査特別委員会で、内部告発があったことを明らかにしながら資料の提出を迫った結果、「提出する」との答弁を引き出し、5月15日の臨時の合併協議会開催を余儀なくされ公表することとなった。それによって明らかになったのが下記のデータである。
表5 合併しない場合の投資的経費に充てられる一般財源
|
単位:万円
|
|
個別事業を含めない
|
個別事業(10年間)を含めた場合
|
古 川
|
4,139,127
|
2,647,537
|
松 山
|
315,029
|
88,828
|
三 本 木
|
412,851
|
163,464
|
鹿 島 台
|
△ 71,886
|
△ 450,768
|
岩 出 山
|
△ 741,944
|
△ 1,053,364
|
鳴 子
|
△ 700,946
|
△ 933,991
|
田 尻
|
349,980
|
△ 142,697
|
(1) 合併しない場合の「投資的経費に充てられる一般財源」とは、推計手法では「歳入総額-投資的経費を除く歳出総額」としている。そして、現実を無視した「建設事業は凍結」を前提としている。
合併しない場合でも、一定の建設事業は実施しなければならず、その経費に一般財源を投入する必要があり、この試算以上の歳出が見込まれ、より赤字は大きくなるものと思われる。(赤字予算を組むことは避けなければならず、投資的事業はできないのはもちろんであるが、義務的経費も削減しなければ予算編成ができなくなる。)
(2) 自らつくった財政赤字は、自らの責任での支払い義務がある。その努力をしないで合併で新市に引き継ぐことは「責任放棄」ではないか。
7. 住民サービスと負担
市長は「古川市にとっては、ほぼ現状維持だろう」との認識。当初の「サービスは高く、負担は低く」という説明は何だったのか。
(1) 負担が低くなったもの
① 保育所の保育料
② 幼稚園の入園料 6,500円→3,000円 保育料 6,200円→5,000円
(2) サービス低下・負担の増
① 敬老祝金 80から99歳 5,000円(年)、100歳以上 10万円(年)は廃止、 100歳 100万円は記念品のみ
② 国民健康保険税 一人平均76,871円(15年度)が、17年度は基金取り崩しで68,000円とするが、18年度は推計値で78,097円となる。
③ 国保世帯の葬祭費 10万円が8万円に。
④ 障害者福祉タクシー・燃料助成 本人住民税非課税が、世帯全員が非課税に。
⑤ 障害者、乳幼児 入院時食事助成 廃止
⑥ 基本検診、各種がん検診 65歳以上69歳で医療受給者証を取得したもの・70歳以上・住民税非課税世帯無料が、1割負担に。
8. 住民意向調査の結果は
2004年6月実施(10,000人)
|
2003年6月(6,500人)
|
比較増減
|
①合併に賛成 |
19.82
|
36.8
|
①必要 |
46.7
|
△9.9
|
②どちらかといえば賛成 |
16.98
|
③合併に反対 |
26.19
|
44.7
|
②必要でない |
23.9
|
20.8
|
④どちらかといえば反対 |
18.50
|
⑤わからない・無回答 |
18.51
|
18.5
|
③その他 |
29.4
|
△10.9
|
2回の住民意向調査の結果を比較してみると、合併協議会の協議、協定項目の決定を踏まえた結果、わからない・無回答・その他が10.9ポイント減少、賛成・どちらかといえば賛成も9.9ポイント減少し、反対・どちらかといえば反対が20.8ポイント増加した。
① 賛成・どちらかといえば賛成を選んだ理由 |
順位
|
内 容
|
1 賛成 |
2 どちらかといえば賛成 |
合 計 |
%
|
1
|
16.今よりは良くなる |
354
|
216
|
570
|
38.64%
|
2
|
15.行財政の合理化が図られる |
217
|
112
|
329
|
22.31%
|
3
|
1.新市の名称が大崎市であることに不満 |
57
|
116
|
173
|
11.73%
|
4
|
17.時代の流れである |
43
|
68
|
111
|
7.53%
|
5
|
4.合併の組み合わせに不満である |
11
|
31
|
42
|
2.85%
|
6
|
2.新市のエリアが広すぎる |
1
|
31
|
32
|
2.17%
|
7
|
18.特に理由がない |
16
|
15
|
31
|
2.10%
|
8
|
10.負担が重くなる、サービスが低下する |
3
|
26
|
29
|
1.97%
|
9
|
9.メリット・デメリットが分からない |
|
24
|
24
|
1.63%
|
10
|
19.分からない |
|
14
|
14
|
0.95%
|
|
以下省略
|
|
|
|
|
|
合 計 |
737
|
738
|
1475
|
100.00%
|
② 反対・どちらかといえば反対を選んだ理由 |
順位
|
内 容
|
3 どちらかといえば反対 |
4 反対 |
合 計 |
%
|
1
|
1.新市の名称が大崎市であることに不満 |
326
|
593
|
919
|
22.38%
|
2
|
10.負担が重くなる、サービスが低下する |
250
|
432
|
682
|
16.61%
|
3
|
7.メリットがない(何も変わらない) |
151
|
382
|
533
|
12.98%
|
4
|
2.新市のエリアが広すぎる |
207
|
257
|
464
|
11.30%
|
5
|
3.赤字の自治体があるのが不満である |
55
|
177
|
232
|
5.65%
|
6
|
6.今の古川市のままが良い |
80
|
132
|
212
|
5.16%
|
7
|
11.財政状況が悪くなる |
41
|
163
|
204
|
4.97%
|
8
|
9.メリット・デメリットが分からない |
107
|
57
|
164
|
3.99%
|
9
|
4.合併の組み合わせに不満である |
57
|
102
|
159
|
3.87%
|
10
|
13.地域の特性が失われる |
70
|
75
|
145
|
3.53%
|
11
|
8.なぜ合併をするのか分からない |
42
|
50
|
92
|
2.24%
|
12
|
5.国・行政主導の合併推進である |
15
|
75
|
90
|
2.19%
|
13
|
14.合併協議に対する不満 |
15
|
41
|
56
|
1.36%
|
14
|
12.新設合併では不満である |
6
|
12
|
18
|
0.44%
|
|
以下省略
|
|
|
|
|
|
合 計
|
1,473
|
2,634
|
4,107
|
100.00%
|
それぞれの理由を多い順で見ると、賛成派は、◎今より良くなる、◎行財政の合理化が図られる、◎新市の名称が大崎市であることに不満である、◎時代の流れである、◎合併の組み合わせに不満、◎エリアが広すぎるとなっており、反対の理由になる項目が入っている。
一方反対派は、◎新市の名称が大崎市であることに不満である、◎負担が重くなり、サービスが低下する、◎メリットがない、◎エリアが広すぎる、◎赤字の自治体があるのが不満、◎今の古川のままが良い、◎財政状況が悪くなる、◎合併の組み合わせに不満、となっている。
|
賛成・どちらかといえば賛成 |
反対・どちらかといえば反対 |
わからない |
合 計
|
37.21
|
45.18
|
17.61
|
18~20歳代
|
28.97
|
49.92
|
21.11
|
30歳代
|
31.58
|
46.73
|
21.69
|
40歳代
|
32.67
|
50.55
|
16.78
|
50歳代
|
40.60
|
46.46
|
12.93
|
60歳代
|
44.39
|
43.06
|
12.56
|
70歳代
|
45.06
|
34.39
|
20.55
|
無回答
|
39.39
|
39.39
|
21.21
|
18歳以上50歳代までの各層で、反対が賛成を上回っている。
市長は平成15年6月定例議会答弁で、「住民投票をすべきだ」という質疑に対し、「住民意向調査の結果が拮抗した場合は、住民投票も視野に入れる」としてきた。
平成15年12月、市民団体から「住民生活やまちづくりにとって非常に大きな合併問題を、市長が繰り返し表明してきた住民主人公の立場で進めるため、①1市6町で異なる公共料金や各種税、医療、福祉、介護サービスの水準などが合併によってどうなるかの資料を十分に提供すること、②古川市が最終決定する前に、賛否を問う住民投票等の手立てを尽くす」ことを求める請願が出され、総務常任委員会に付託し審査が行われた。
請願者からは、合併に対する住民意向が盛り上がっていない状況を踏まえ、逐次協議内容を提供し、住民が判断できる状況をつくるべき趣旨の説明を受け、その判断手段として住民投票は絶対的なものではなく、無作為抽出など科学的で精度の高いアンケート調査で、住民意向を反映する方法を望むとの考えが示された。
執行部からは判断基準として「住民意向調査のみではなく、地区懇談会での意見や合併協議会での協議状況等を含め、総合的に判断したい」との見解が示された。
これを受け、総務常任委員会は、請願趣旨である十分な情報提供と最終判断するにあたっては、住民投票に限らず、年齢、性別、地域等を加味した無作為抽出での科学的で精度の高い住民意向調査の手だてを尽くし、その結果を尊重することは、合併の根幹と地域の枠組みを変え、市民生活に大きな影響をもたらすだけに、協働のまちづくりの面からも当然のことであるとの考えが示され、全員の意見の一致を見、請願は採択すべきものと決定され、本会議においても全会一致で採択された。
その後市長は、協定調印の判断基準として「地区懇談会での意見や合併協議会における協議状況、住民意向調査の結果を重要な判断基準として総合的に判断したい」と答弁している。
その結果、1万人を対象にした住民意向調査が実施され、6月28日、住民意向調査の結果が公開で開票が行われ、反対が賛成を上回る結果となった。
市長は即断を避け決断を先延ばし、7月29日の議員全員協議会において、「住民意向調査の結果を真摯に受け止め、熟慮に熟慮を重ねた結果、いまこそ行財政基盤の確立強化と効率化を念頭に、自立できる強固な自治体をつくり上げ、都市間競争に勝ち抜いていかなければならない。県土の均衡ある発展を目指し、県北の雄都を標榜する本市にとっても、合併なくして古川市はもとより大崎の将来はない。最終判断は古川市議会にゆだねたい。議員の皆様には現在の状況を十分に理解され、少なくともこの地域が埋没してしまうような事態につながる判断だけは避けていただきたい」とし、合併協定調印を行うことを表明した。8月21日には宮城県知事の立ち会いの中、1市6町の首長による合併協定書の調印式が行われた。
市長はこれまでの「市政の主人公は市民。合併も住民の意向を充分に尊重する」としてきた立場を放棄しており、今回の決断は「市民の意向」に背いたものとなっている。
9. 合併の判断は
以上、財政問題を中心に諸々の問題点を検証してきたが、合併そのものについて全面的に否定をするわけではないものの、住民意向調査の結果も踏まえ、今回の枠組みの中で、6町がどれだけ財政の厳しさを認識して財政健全化問題に取り組んでいるかが全然感じ取れないと判断している。
合併によって全てが解決できるという幻想にとらわれず、まず、それぞれの自治体が財政健全化に真剣に取り組み、「住民満足度」の高い、効率的・効果的で「自治・自立」の行政運営ができるような枠組みでの理想的合併を、じっくり時間をかけて検討すべきと考えるものです。
10. 議会の議決
9月1日、臨時議会が召集され、合併に関する4件の議案が提案され、最初の「廃置分合」に関する議案には9名による質疑が行われた後、反対4名、賛成3名が交互に討論を行った。
その後起立採決の結果、賛成10名、反対15名の賛成少数で否決となった。
ちなみに、他の6町の結果は松山町が賛成11反対3、三本木町が賛成9反対6、鹿島台町が賛成12反対5、岩出山町が賛成10反対7、鳴子町が賛成9反対6、田尻町が賛成18反対0、という結果となった。
この結果を受けて古川市長は、9月6日市議会議長に対して辞任届を提出、9月26日付で辞任することとなり、出直し市長選挙に立候補し、合併の是非を市民に問うこととなった。
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