【自主レポート】
職員労働組合としての市町村合併への対応
群馬県本部/邑楽町職員労働組合・青年婦人部 橋本 光規
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1. 邑楽町における合併の動き
現在の全国的な市町村合併の機運の中で、邑楽町も決して例外ではなかった。これまでの合併問題を巡る動きを時間の流れとともに追ってみると、概ね以下のとおりとなる。
平成12年8月 太田市周辺1市6町(太田市、尾島町、新田町、薮塚本町、千代田町、大泉町、邑楽町)にて合併問題懇談会が発足
平成14年1月 太田市周辺1市6町住民意向調査実施
平成14年4月 太田市周辺1市6町合併問題懇談会を、邑楽町が時期尚早として離脱
平成14年4月 館林邑楽1市5町(館林市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町)にて広域行政研究会が発足
平成14年10月 西邑楽三町(千代田町、大泉町、邑楽町)にて合併問題研究会が発足
平成14年10月~12月 町内にて地区別懇談会実施
平成15年1月 町内にて合併問題アンケート実施
平成15年3月 西邑楽三町任意合併協議会設立
平成15年9月 「西邑楽三町法定合併協議会設置」議案が議会定例会にて否決
平成15年11月 西邑楽三町合併推進の現職町長が、広域合併推進の新人に敗れる
平成16年1月 「西邑楽三町法定合併協議会設置」住民直接請求(署名簿の提出)
平成16年2月 住民直接請求に基づく「西邑楽三町法定合併協議会設置」議案が議会定例会にて再度否決
平成16年5月 「西邑楽三町法定合併協議会設置」の賛否を問う住民投票実施直接請求(署名簿の提出)
平成16年6月 住民直接請求に基づく「西邑楽三町法定合併協議会設置」の賛否を問う住民投票の結果、設置賛成が上回る
平成16年7月 西邑楽三町法定合併協議会設立
このような中で、平成14年10月から平成15年9月まで務めた職労執行部は、独自の合併問題アンケートの意見が割れたため、組合としては何ら合併問題に取り組まないこととした。しかしながら、平成15年10月よりの新執行部では、以下のような理由から、組合として何らかの取り組みが必要であると判断した。
① (旧)町執行部は、住民の十分な意思合意形成の過程を経ぬままに、一方的に西邑楽三町合併を押し進めようとしている(していた)。
② さいたま市、西東京市の組合幹部を招聘し、合併問題に関して講演を頂いたところ、両市とも全て対応が後手に回ったため、合併の是非自体を組合として議論できなかった。結果として当局の動きを追認することとなり、組合員にうつ病患者や自殺者まで出す結果となった。
③ 選挙戦のしこりから、西邑楽三町合併派と広域合併派に町が二分し、客観性を欠いた情報戦が繰り広げられているため、組合員が客観的且つ冷静に合併問題を捉えられるよう、必要最低限の知識の享受と情報の整理が必要である。
2. 青年婦人部組合員への対応
邑楽町職員労働組合内には30歳までの職員で構成する青年婦人部があり、基本組織(通称親組)とは別に独自の活動を行っている。組合員への学習活動も然りである。まずもって、青年婦人部の組合員に学習会を開催する事を手始めとした。
平成16年2月13日「合併問題勉強会」開催
内容)事前に西邑楽三町任意合併協議会作成「新市将来構想」及び住民有志の合併に関する意見広告を事前配布し、班別での講師への質疑応答とした。最後に班別の質疑内容を発表し、アンケートを行い、後日庁内ネットワーク上で公表した。
目的)合併に関する制度や基礎的な用語を理解することを目的とし、特定の枠組みへの誘導にならないよう注意を払った。
出席者数:21人/37人(出席率56.8%)
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アンケート結果
・合併の枠組み(括弧内は回答理由として主なもの)
単独 44.4%(合併してもメリットがない、住民サービスが低下)
西邑楽三町 33.3%(住民の意向が多かった、現実的)
館林広域 0%
太田広域 5.6%(財政的、事業的に魅力がある)
分からない 16.7%
・単独での不安は何か
財政面、社会資本整備の遅れ、住民サービスの低下
・合併した場合の不安は何か
住民サービスの低下、民間委託増大(職域の縮減)、地域の消滅
・今後組合に取り組んで欲しいこと
情報提供、合併が想定される西邑楽三町間での意思疎通(統一) |
3. 職員労働組合基本組織(親組)組合員への対応
基本組織では青年婦人部とは違い構成人数も多いため、同様な手法は取れないことから、限られた時間の中で効率的、且つ効果的に情報を伝える手法が必要であった。そこで、組合員の中から公募で選手を募り、合併賛成と反対に分かれての模擬ディベートを実施することとなった。
平成16年3月5日「合併問題ディベート」開催
内容)① 「邑楽町は合併すべきである」に賛成と反対に分かれ、各1チーム(5人ずつ)で対決する。
② チームの構成員は、個人的な意見とは関係なく編成する。
③ 判定は、会場の組合員全員で行う(拍手の多寡)。
④ 参加者にはアンケートへの記入をしてもらう。
目的)基本的には青年婦人部学習会と同様であるが、合併問題について組合員の関心を高め、またメリット・デメリットについて問題点を整理し、知識向上を図り、交渉能力、存在感を高めることとした。ここでも、どちらが正しいかではなく、あくまで論理の優劣を比べるゲームであることを強調した。
手順)① 肯定側立論(5分)
② 否定側立論(5分)
③ 作戦タイム(1分)
④ 否定側反対尋問(12分)
⑤ 作戦タイム(1分)
⑥ 肯定側反対尋問(12分)
⑦ 作戦タイム(1分)
⑧ 否定側最終弁論(5分)
⑨ 肯定側最終弁論(5分)
⑩ 判定
出席者数:84人/216人(出席率38.9%)
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判定結果
主催者側の目で見る限り、ディベートの結果としては合併肯定側の勝利であったが、会場の判定結果は合併否定側(単独)が勝利を収めた。これは、①組合員が、ディベートそのものを理解していない(論理の優劣ではなく、内容で判断した)、②個人的な思い入れが働いた、などの理由が考えられる。
最後にアンケートを実施したが、内容は、①ディベートを見た回数、②イベントへの感想(イベントとしての善し悪し、出場者への意見)、③ディベートを見て、合併について感じたこと(新しく知ったこと、今後の方向性についてなど)、④今後組合の学習会に期待するもの、以上四点に絞り、ここでも組合員に考えさせることを主眼においた。 |
4. 町執行部(町長はじめ町三役)への対応
平成15年11月の町長選挙により、町執行部は新体制になったため、職労の町に対する合併問題の取り組みも再度ゼロからのスタートとなった。基本的には文章による要求、文章による回答を求め、秋季確定闘争、春闘ともに合併に関する協議を組合と行うことを申し入れてきた。
また、それらとは別に、平成15年12月には自治労県本部、地域支部との連名で、「市町村合併に関する申入書」を提出した。内容は以下のとおりである。
① 今日までの経過と今後の予定について、住民及び職員団体へ十分な説明を行うこと
② 市町村合併後の職員の賃金・労働条件は、労使協議・合意の上決定すること
③ 一部事務組合、外郭団体の職員の身分を保障すること
5. 近隣自治体職員労働組合への対応
町との合併協議を行うに際して重要なことは、単組単位で交渉するのではなく、合併が想定される市町村の職労が統一して交渉に持ち込むことである。それを怠っては協議に失敗するとの認識が早くからあったため、単組同士で連絡を密にし、いつでも統一した行動が取れることを目標に、対応を考慮した。
邑楽町においては、現在合併が想定される最も有力な相手方自治体は大泉町と千代田町である。当町職労青年婦人部では、大泉町職労青年女性部、職労未組織の千代田町にあっては30歳以下の職員グループに、上記目的を達するため接触を試みた。今日現在行われた会合はまだ二度であるが、単組間に合併に関する意識の隔たりが少なからず存在することを痛感した。この合併問題に関する温度差を解消することを手始めに、今後も活動を継続したい。
なお、これとは別に組合基本組織では、平成16年6月邑楽町での「西邑楽三町法定合併協議会設置」の賛否を問う住民投票の結果を受けて、同月西邑楽三町での西邑楽合併対策委員会が設置された。今後は、「労使協議の当事者は、労働者側は構成三町の職員団体により構成される合同体、使用者は合併協議会とし、窓口を統一すること」を申し入れていく。
6. 今後の取り組み
現在の邑楽町の状況は、「西邑楽三町法定合併協議会設置の是非を問う住民投票」の影響で、西邑楽三町合併派と広域合併派に二分し、論理的、理性的な議論が欠如している。当町執行部の態度も不明瞭であり、まさに混沌とした状況が続いている。しかしながら、こういった状況であるからこそ、職員労働組合としては町執行部の動きに注視し、先行自治体の悲惨な二の舞にならぬよう、労働組合としての存在意義を高めていきたいと思う。
また、この合併問題に関しては、非常にデリケートな状況であるため、職員労働組合が地域と関わりを持つことには内部にも抵抗がある。しかし、最も多くの情報力と判断力を併せ持つ職員労働組合が、その知識を自分たちだけに留めておくことは罪ではないだろうか。これらを客観的、且つ公平に伝えていくことは難しいが、何らかの方法を模索し、悔いのない論議を住民とともに尽くして行ければと願う。
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