【自主レポート】
市町村合併に伴う労働組合の取り組み
広島県本部/安芸高田市職員労働組合
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1. 高田郡6町の合併について
(1) 合併対策会議の発足までの経過
高田郡6町では、2001年5月15日、郡内各町長・各町議会議長合同会議を開催し、市町村合併の意見交換をし、6町が共に調査・研究し、様々な観点から合併について議論する組織の設立について協議した。6月19日には、第1回高田郡合併調査研究協議会を開催し、幹事会・専門部会を行い、2002年3月各町定例議会において、法定協議会設置の議会議決を受けて、2002年4月1日に高田郡法定合併協議会を設立した。
このような当局サイドの急速的な合併の取り組みに対して、高田郡町村職員労働組合(高田郡協)では、合併の是非を組合員に問いかける間もなく、2001年度から賃金・労働条件突き合せを行ってきましたが、当局の動きに対し、組合として非常に遅れをとっているという危機感の中、2002年1月31日に高田郡合併対策会議を発足しました。
合併対策会議には、①現業部会、②保育所・幼稚園部会、③賃金部会、④福利厚生部会、⑤教宣部会、⑥設立準備部会、⑦統一要求書作成部会の7部会をつくり、最低毎月1回の部会と部長会議を合併までの2年間行い、各町の状況の突き合わせ及び要求書の作成並びに法定協との交渉をしてきました。
(2) 各部会の活動状況
① 現業部会 現業部は、各町の給食調理員が中心で各町の実態の突合せから始めましたが、職員構成、運営実態、食数等あまりにも違いが多く突合せで相当な日数を費やしました。(ア)事前協議制の締結、(イ)給食業務の直営堅持、(ウ)正規職員の配置、(エ)各保育所調理場に栄養士の配置、(オ)中学校の給食実施、(カ)保育所給食の園内調理の基本6項目を要求しました。この間、今まで交流の少なかった給食調理員の全体学習会中心に活動してきました。
② 保育所・幼稚園部会 まず郡内の各保育所・幼稚園の実態について集約し、集約事項の検討からスタートし、(ア)直営堅持・統廃合は行わない。(イ)賃金・労働条件の変更は事前労使協議をする。(ウ)保育課を設置すること。(エ)クラス担任は、必ず正職員とする。(オ)園内調理の堅持。要求の基本項目と決定しました。第1回学習会では、向井副委員長を招き情勢の勉強をし、分散会では、土曜日保育について、早期延長保育について、保育課の設置について、今後の保育の在り方について、その他労働条件、施設設備について討議しました。第2回学習会では、部員の親睦を深めるとともに、各単組の実態把握、要求に向けての具体的根拠を出し合い討議しました。
第3回学習会では、県本部社福子育て支援部会桐山千歳部長を招いて学習会をしました。
③ 賃金部会 合併後最大の懸案事項となるモデル賃金表の作成のため、合併対策会議に先立ち高田郡協でモデル賃金の突合せを行い、各町の一番良い条件のラインを通り誰もが現在の水準を下回らないようモデル賃金表を作成しました。その後市レベルでの賃金表を鑑み5級制から8級制の賃金表に作り変えました。しかしながら、各町の実態を集約してみると同年齢で10号の格差が生じる職員も存在するため、合併までに各単組で合併後のモデル賃金表に近づけるため、年齢別賃金比較表を作成し、どのくらいの格差がありそれをどのように改善させるか交渉の場での資料も作りました。部会として譲れない要求項目として、(ア)同一年齢・同一賃金とすること。(イ)国公9級導入、誰もが8級到達。(ウ)初任給格付けを国公1-5とし、新昇格制度の完全運用をすること。(エ)現業・非現業同一賃金表とすること。を掲げてたたかいました。
④ 福利厚生部会 各町の労働条件のうち、休暇関係・手当関係の2項目に絞って突合せを行い、既得権利の集約をして最も良い条件の手当制度・休暇制度をモデルとして合併後の最低ラインとしてたたかいました。
⑤ 教宣部会 高田郡合併対策会議の発足に伴い、この会議の活動の内容を組合員の皆様にお知らせするために、「高田郡合併対策会議ニュース」を第1号から第6号まで発刊しました。各部会での活動内容及び要求項目等の決定事項をできるだけ組合員にリアルタイムで知らせ、組合員全員に行きわたるようにし、団結と意識の高揚に大変役立ったと思います。
⑥ 設立準備部会 最初に新組合設立にむけ、合併後各単組1名につき2万円を持ち寄ることを決め、新組合の組合費の徴収比率を給与月額の20/1000としました。その後、法定協との交渉にも中心的にかかわり、2004年2月27日いろいろな協議事項について最終覚書を交わしました。新組合設立については、新規約の作成・組合の組織統一方法等協議し、最終的には自治労安芸高田市職員労働組合への組織統一に関する協議書を6単組で調印して、旧の組合員は親組合に全員加盟することで、2004年3月1日に結成しました。
⑦ 統一要求書作成部会 各部会からの報告を受けて、統一要求書の作成から提出までを行いました。2002年3月1日には、6町長に合併に関わる基本事項と交渉機関を設置する要求書を提出、同じ内容の要請書を4月15日法定協会長へ提出しました。2002年10月1日に賃金部会・現業部会・保育所幼稚園部会の譲れない要求項目を含めた要求と新市における住民の利便性及び行政サービスの向上を図るため支所機能を充実させるように要求し、再度法定協に交渉期間を設置する要求書を提出、10月7日には、同内容の要請書を法定協会長へ提出した。2003年5月27日に高田郡6町の合併に向けての調印式が行われたのを機に、2003年5月30日には、法定協会長へ市町村合併にかかわる協議書を提出しました。協議書の内容は、前回要求した賃金部会・現業部会・保育所幼稚園部会の譲れない要求項目を含む、勤務労働条件の手当関係・休暇関係に係るものを要求しました。
2. 合併対策会議と法定合併協議会の交渉経過及び交渉内容について
(1) 要求書提出及び交渉経過
① 市町村合併にかかわる統一要求書提出(6町町長へ) 2002.3.1
② 市町村合併にかかわる要請書を法定協会長へ提出 2002.4.15
③ 市町村合併にかかわる要求書を各町長へ提出 2002.10.1
④ 市町村合併にかかわる要請書を法定協会長へ提出 2002.10.7
⑤ 合併対策会議と法定合併協議会長との対面式 2002.12.13
(合併協定書における「一般職の職員の身分の取扱い」について)
(今後の協議の方法について)
⑥ 第1回合併に係る事務事業調整案の協議について 2003.5.30
(新市の給料表、職及び職階について)
⑦ 市町村合併にかかわる協議書の提出 2003.5.30
⑧ 第2回合併関係6町・高田郡協合併についての協議 2003.6.16
(新市における行政職給料表について)
⑨ 第3回合併に係る職員労働組合との実務協議について 2003.7.4
(新市における行政職給料表及び職、職階及び新市の諸手当について)
⑩ 第4回合併に係る職員労働組合との実務協議について 2003.7.16
(新市における行政職給料表及び職、職階及び新市の諸手当について)
⑪ 第5回合併に係る職員労働組合との協議結果報告について 2003.10.23
(1・2・3・4回の協議の確認、新市の行政職給与制度の調整内容について)
⑫ 第6回合併に係る職員労働組合との実務協議について 2003.12.3
(新市における休暇制度・職専免規定・給与の再計算について)
⑬ 第7回合併に係る職員労働組合との実務協議について 2003.12.25
(12月3日の協議課題の整理について)
⑭ 第8回合併に係る職員労働組合との協議 覚書の確認及び調印 2004.2.27
(2) 交渉内容について
① 合併対策会議と法定合併協議会長との対面式について
2003年12月13日法定協議会と高田郡協の対面式において、合併協定書における「一般職の職員の身分の取扱い」について協議があり、今後の協議についてのフローが示されました。協議内容については、つぎのとおりでした。
一般職の職員の身分の取扱いについて
(1) 吉田町、八千代町、美土里町、高宮町、甲田町、向原町、安芸たかた広域連合、高田地区消防組合及び高田郡衛生施設管理組合の一般職の職員は、すべて新市の職員として引き継ぐものとする。
(2) 職員の職名及び職階については、合併時に統一するものとする。
(3) 給与制度については、合併時に統一するものとする。
なお、現職員の給与については、現給を保障し、合併後新市の給与制度との整合を図るよう調整するものとする。
(4) 合併後の職員数については、定員適正化計画を策定し、適正化をすすめるものとする。
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組合側からも、(ア)非常勤・嘱託職員の身分保障について。(イ)現給保障だけでなく、ライン保障もしてほしい。(ウ)退職手当について、合併前でも勧奨退職の扱いにしてほしい。(エ)合併前に各町の在職者調整を図ること。を要求しました。
② 第1回合併に係る事務事業調整案の協議について
2003年5月30日に第1回の協議がもたれ、新市における行政職給料表等について、(ア)給与制度に関わる原則、(イ)新市の給料表、職及び職階、(ウ)新市の給料表の調整原案について提示がありました。
③ 第2回合併関係6町・高田郡協合併についての協議
6月16日に5月30日の提示を受けて第2回協議を行い、組合側から、(ア)課長相当職は9級導入を行い、われわれ組合員に対しては、現行の郡内7級到達の現実を無視した6級止まりになることの矛盾。(イ)評価制度の完成度について。(ウ)この賃金表では合併機の混乱に乗じて人件費の切り下げを断行しているようにしか理解できない。(エ)現業職については、任用職の道さえ閉ざされている。この間、生活給として認められていたものが、新市になった時点でなぜ変わるのか。との指摘を行い交渉する。当局の回答は、合併は、最大の合理化である。そういう動きの中で、管理職も一般職も今までのとおりと言うわけにはいかない。今後、定員適正化計画等を作成して検討していく。現在の情勢で「わたり」7級到達は考えられない。という回答で物別れになりました。当日新市の諸手当等について、各種手当の調整内容も示されましたが、時間切れで交渉できませんでした。
④ 第3回合併に係る職員労働組合との実務協議について
7月4日に第3回の交渉を行い、組合側から引き続き課長相当職等管理職は9級導入を行い、組合員に対しては、現行の郡内7級到達の現実を無視した6級止まりになることの矛盾と現業と非現業の格差について引き続き交渉を行いました。回答として、現行の広島県の市レベルでは、運用面を含めれば三次市以外は全て7級レベルに到達している。このことを踏まえ運用面での7級到達について、次回少数(担当者級)で事務レベルでの協議をすることとした。又、現業・非現業の格差について、当局としても「現業も非現業も同じ到達級で運用する」ことを確認しました。
手当関係については、時間外勤務手当の算出・寒冷地手当・特殊勤務手当・通勤手当・55歳昇給停止についても協議しました。
⑤ 第4回合併に係る職員労働組合との実務協議について
7月16日事務レベルで新市行政職給料表及び職、職階について協議し、原則として任用によって現状の誰でも7級到達を確認しました。諸手当てについても満足のいくものではないけれども、妥結しました。
⑥ 第5回合併に係る職員労働組合との協議結果報告について
10月23日、4回の協議結果の行政職給与制度の調整内容及び諸手当制度について、最終報告を受け、お互いに確認しました。
⑦ 第6回合併に係る職員労働組合との実務協議について
12月3日、休暇制度・職専免規定・給与の再計算(経験年数換算表の取扱い・初号制限の取扱い・復元措置の取扱い)・標準昇給ライン・組合費の取扱いについて提示を受け協議する。
⑧ 第7回合併に係る職員労働組合との実務協議について
12月3日の提示案件についての課題の整理を行った。前歴計算の端数処理・再計算後の復元・職員派遣・組合事務所・組合専従について要求をしたが、新市の課題として処理され回答されなかった。
⑨ 第8回合併に係る職員労働組合との協議 覚書の確認及び調印
2004年2月27日いよいよ合併という前日、高田郡6町合併協議会 児玉更太郎会長と高田郡町村職員労働組合協議会 大川美嗣議長でこれまで協議・確認してきた事項について、覚書を交わしました。
3. 今後の課題
3月1日高田郡6町の組合は統合し、自治労安芸高田市職員労働組合を結成しました。法定協議会との協議では、新市の勤務労働条件の骨格を協議し、覚書を締結しましたが、旧単組間の格差は依然として残っており、当面する課題として賃金格差の是正が急がれ、2004年度における在職者調整を監視し、早急に具体的な是正を図るとともに、当局との交渉ルールの確立を行う必要があります。
当局との交渉にあたっての、組合の存立基盤は組織率にあります。安芸高田市職労の組織率は、概ね100%となっていますが、採用や人事異動によって組合員資格のある職員及び未加入組合員の加入を促し、組織率100%をめざします。
厚生事業の実施や青年、女性、現業各部の活動、また合併対策会議保育所・幼稚園部会の交流を契機とした専門職場における共通の課題整理などを活発に行い、組合員相互の信頼を深め、より広範な活動ができる環境の整備を図る必要があります。
新市長も4月18日に決定しましたので、着任交渉並びに合併対策会議で新市で調整となっていた給与の再計算(経験年数換算表の取扱い・初号制限の取扱い・復元措置の取扱い)や組合専従についても交渉しないといけません。
新市の現状は、表面上円滑な移行ができたようにみえます。しかし、内実は、決して楽観できる状況でないことは、すべての組合員の実感です。「住民に負担はかけられない」を胸に秘め、職員が無理を重ねているのが実感であろうと思います。真に合併して良かったと言えるよう、すみずみまで目配りのできる組合組織に充実させていきます。
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