【自主レポート】

地域とともに歩む子育て支援

三重県本部/鈴鹿市職員労働組合

1. はじめに

 近年、少子化傾向が急速に進み、社会にさまざまな影響を与えるとともに、特に子どもの健全な成長への影響が心配されています。
 鈴鹿市における幼児数の減少傾向は特に見られないものの、保護者の保育ニーズは保育時間の延長をはじめ幅広い子育て支援へと広がり、保育時間の長い園への入所希望は年々増加傾向にあります。
 また、当市の特徴として三世帯が同居して生活を送っている地域がある一方で、転勤者などの核家族が多く生活している地域もあります。当然、保育ニーズは多様化し、子育てに関しても相談相手がいない、見つけられないなどの問題も起こっています。
 現在、当市の保育所数は、公立10園、私立25園という状況ですが、多くの地域では定員以上の入所希望者があり、保育所数の確保という面では継続的な取り組みがのぞまれます。さらには、保育ニーズに応じた保育時間の検討、子育て支援センター機能の充実、施設面での整備にも努める必要があります。
 そのような中、2004年8月には鈴鹿市子育て支援センターが単独で開設され、市民のさまざまな子育て支援ニーズに対し、支援を行っていく予定です。
 そこで、わたくしたちは、保育士部会を通じて、今子育てを行っている親たちがどのようなニーズを持っているのか、どのようにすれば魅力ある保育所作りができるか、さらには公立保育所としての役割が果たせるかということについて考えてみました。

2. 親とともに子育てを集う

 1985年(S60年)に働きやすい職場作りや保育運動を考えていくために、保育所部会を立ち上げました。職場の要求書を作り、職員の労働条件の確保をしながら、保育運動の中では、入所対象児を持つ親が、保育所に対してどのようなことを期待しているか、子育てについてどう考えているか、1986年、牧田、合川、深伊沢地区にアンケートを配布しました。集計結果から、①乳幼児期に集団の中で子どもを育てたい。②その場所として、公立保育所に期待している。③その理由として、詰め込み主義でなくのびのびと保育してくれる。などの意見があり、また公立保育所の場所や保育内容を知らない人も多く、また、子どもに親がどう関わっていけばいいか、保育所で子どもたちがどう過ごしているかなど、親の悩みや公立保育所に対する認識不足や多様な要望が明らかになりました。
 そこで、乳幼児をもつ親を対象に、公立保育所のアピールとともに親と子育てを一緒に考えていけるようにと、1987年9月12日に「第一回子育てを考える市民の集い」を開催しました。子育て親育てとして、何が必要かを、具体的に且つ理論的にと講師を招いて講演会を行いました。講演会に参加してもらった親の悩みとして、いざ子どもを目の前にすると、「どう関わったらいいか解らない」また、「どんな遊びをしていったらいいか解らない」と戸惑うこともあり、感情で叱ってしまうことがありました。子育てのマニュアルを知りたい、具体的な関わり方を知りたい、触れ合い遊びを知りたい、という思いを考え、親子で触れ合う遊びやコンサートの講師を招くようになりました。
 1995年、学校給食調理員部会や用務員部会と合同で開催するのを機に、「子育てを考える市民の集い」から「ゆとり&ふれあい」と名をかえ、幅広い市民の催しにしました。
 「公立保育所とはどのような所なのか」「保育士の仕事とはどのような仕事なのか」と、もっと地域に根ざした集いになればと思い、保育士が自ら、保育士としての力を発揮できる内容を考え、「おもちゃ作り」「リース作り」「小麦粉粘土」等、親子で楽しむ遊びやまた、保育士による「劇」「ダンス」など見て楽しむものも交えながら、今親が何を求めているか、各園の意見をまとめて、工夫して「ゆとり&ふれあい」を行ってきました。しかし、回を重ねていくごとに、「遊ばせてもらったらいいわ」といったイベント参加型の意識が強くなってきたように思います。
 今後の課題として、低年齢児の参加も増えてきているため、そのニーズにあった子育て支援をしていかなければならないと考えています。親子の触れ合いを大切にし、ゆったりと遊べる場を作り、親も子もリフレッシュでき、暖かい雰囲気の中で相談できるような、公立保育所としての役目を担っていく「ゆとり&ふれあい」にしていきたいと思います。

3. 保育所における子育て支援

 地域の子どもたちが、等しくのびのびと、健やかに育ってほしいと思うのは、大人たちの共通の願いでもあり、また責務でもあります。しかし、子育ち、子育てをめぐる家庭環境、地域、自然、社会環境の変化により生じている様々な問題は、保育所入所児にかかわらず、すべての子どもや保護者に、新しい育ち合い、育て合いのシステムを地域に必要としています。それら保育ニーズは親の実態、地域によって様々であり、保育の必要性もことなります。各自治体がそれぞれの地域実態を踏まえて、保育ニーズを把握し、的確な「子育て支援・地域子ども計画」を策定することが求められています。
 当市の子育て支援事業は1995年4月より始まり、併設型で今年9年目を迎えます。それ以前に行われていた事業は、「地域に根ざす保育」を保育目標の1つに掲げ、鈴鹿市公立保育所10か園において、月1回の『遊ぼうデー』(親子参加)を行ってきました。各園の行事への参加・保育への参加(水遊び・手作りおもちゃ・発育測定・人形劇など)を行うことにより地域の親子の方々に大変喜ばれるものでした。中には、各園の遊ぼうデーの情報を求められる事も少なくありませんでした。
 そうした中で市当局より内容の充実に向けた方向性が出され、まず、保育所併設型として牧田保育所にて子育て支援センターが設立しました。9年間の事業内容として、イベント行事への参加の遊ぼうデーを月1回・自由に遊べる園庭開放を毎週水曜日に行いました。活動内容は、年々保護者のニーズに合わせて変化してきました。(別紙 資料1参照
 牧田保育所の地域性は、工場地帯でもあった為、転勤族の方が地域のふれあいを求めてこられたり、核家族の中での子育てで閉鎖的になってしまうため友達作りを求めてみえたり、小さい子を持つ女性の就職の受け入れ状況が少なかったりと保育所の遊ぼうデーを求める方が多くいました。
 「公園デビュー」という言葉がはやる時代背景もあり子どもの友達探し・母親自身の友達探し・安心して遊べる場が、保育所の遊ぼうデーでした。
 保護者と連携が定着し親同士の横のつながりや親からの情報を大切にするなかで「保育所内での事業だけでは、公立としての子育て支援の役割が足らないのではないのか?」と直接地域で困っている保護者のかたが多く見えることをキャッチし地域に出て行くことの必要性を感じていました。
 当時の支援保育士は、「在園児との交流を大切に」というねらいをもち、行っていましたが、保護者とのニーズの違いも感じとり、その思いを伝えるということだけにとどまってしまいました。次年度には、年間計画に保育所外での活動を取り入れました。まず地域のコミュニティーセンターを活用する事によって幅広いふれあいを求める事ができました。
 牧田保育所の子育て支援事業が、市民の方に定着することにより要求が増え、併設された当初は、一日あたり親子30組の参加でしたが、現在では要求の多い時は、毎回親子60組の参加があります。しかし需要人数が多くなると在園保育児との交流も出来ず人数制限を行なわなければならない状況にありました。またコミュニティーセンターに於いても、使用条件や大人を対象とした設備の中で安全性の確保がむずかしかくもありました。そんな条件の中でも工夫をこらし保護者のふれあい・子どものふれあいの中で保護者の子育ての悩みをゆったり話し合える場の保障やサークルへのつながりも作ってきました。
 こうした保育士の努力だけではなく、鈴鹿市の子育て支援事業の実態を私たち保育士部会からも伝える中で併設型から独立型で子育て支援のあり方を求めてきました。
 その結果、今年度、その事業の必要性も感じとり、現場の要求も兼ね独立子育て支援センターの設立を迎えることになりました。
 しかし施設面において、現場との調整が不十分であったため、決して満足のいくものではありません。このことを反省し、保育士部会を通して保育職場全体の問題として考えるようになってきました。また、「ゆとり&ふれあい」の中での市民アンケートの結果(別紙 資料2参照)や県内での子育て支援センターへの見学・意見交換会での内容をふまえて、当局との話し合いをもってきました。
 子育て支援の現状や、市民のニーズなどをふまえ、今後どのような子育て支援センターの内容を行なっていくか考えました。
・行政機関との連携
・各園との連携
・公的責任
・地域の共同子育て支援
・子育てを担う者が安心できるセンター
・充実した施設設備

4. おわりに

 子育て支援とは、家庭において子育ての教育力を回復するという考え方が、今現在も非常に強いです。母親が子育ての主な担い手になっている中で、「教育力を高める」ということは母親の子育て力を高めていくということになり、子育て中の母親が心理的に追い詰められることになりがちです。
 本来、子育ては、地域社会の中で多くの人に助けられてきたものであります。しかし、母親だけが子育てを押し付けられるようになり、母親の育児不安はますます高まるばかりです。子育て支援が母親のみの呼びかけにならず、地域の共同子育てを目指して、取り組んでいくことが必要です。
 父親だけでなく、地域のさまざまな人への呼びかけを作り出していく必要があり、母親を性別役割分業から解き放つ男女共生参画社会の構想に向けて、社会の意識を変えていけるような取り組みをしていきたいと思っています。

資料1 親子で遊ぼうデー

資料2 ゆとり&ふれあいアンケート結果(保育士部会)