【自主レポート】
「福井豪雨」職員組合の取り組み
福井県本部/自治労福井市職員労働組合 加畑 正和
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7月17日(土)深夜から18日(日)8時までの雨量は福井市で75ミリを記録した。また、降り始めからの雨量も198ミリに達した。この水害で足羽川春日付近の堤防が決壊し、家屋の倒壊や床上浸水が相次いだ。また、コンクリートの下敷きになるなど福井県内で3人が死亡、2人が行方不明となった。
収集資源センターでは、7月18日(日)8:30から「夏の福井を美しくする運動」により廃棄物受け入れを行っていたが、堤防決壊のニュースを聞き所属長の命により、収集資源センター職員が待機(19日3:00まで待機をしていた職員もいた。)となった。
7月19日(月:海の日)は勤務を要しない日ではあるが収集資源センター職員全員が12時から勤務となった。早く来た職員を中心に、被災地におけるごみ廃棄の方法を広報(広報の内容:被災ごみについては、分別をせずにごみステーションへ出すよう指示、15時から収集することを伝えた。畳・タンス・電化製品などの粗大ごみについては、最寄りの公園に出すようお願いした。)及び災害状況の調査をし、所属長に報告した。(2t車、軽トラック5~6台使用)
被災地を8地区にわけ15時から収集を開始するため収集車が収集資源センターを14時に出発、最終の収集車両帰着時間が20時半となった。
分別をせずにごみを排出するよう支持した理由には、水害ごみは分別できる状態ではなく、また衛生面に配慮し、一早くごみをなくすことを目的としたため。
クリーンセンターについても、受け入れ先をクリーンセンターに隣接した空き地を確保、野積み(主な理由:分別していないので処理が困難なため・車両の待ち時間の短縮)し対応、受け入れに対応するため職員配置については20日から特別体制を組み交代勤務の公休日に出勤することとなった。
自治労清掃部会副部会長と神戸市従の方から安否と状況の確認があり、神戸市従からは「ごみ収集車の災害支援車100台を出す意思がある。とりあえず担当課をとおして働きかける。」との連絡があった。1時間後「福井市の担当課に応援はいらないと断られたのだが、本当に大丈夫なの。」再確認の連絡が入り、すぐ収集資源センター所属長に連絡、所属長は受け入れる構えを見せた。この時点での行政ルート応援予定車両台数は金沢市4台(パッカー1台・2t平ボディ3台)、守山市2台(パッカー車)、神戸市9台(パッカー車5台・ダンプ車2台・ワゴン車2台)となった。21日午後から応援開始となる。
7月21日昼から行政ルートで神戸市より応援が入った。神戸市との業務前の打合せの中で、所属長が感じたと話していたことは、業務に対する姿勢が非常に良いこと。余りにも熱心で真剣で感謝してもしきれない。涙が出る思いだったそうだ。
センターの約半分の職員が早朝4:00出勤、4:30~ミーティングを行い、被災地みのり地区を中心にフェニックス通り歩道上の粗大ごみをパッカー車両8台で撤去した(~8:00)。7月21日(水)については資源ごみの回収日であり、直営は空き缶の収集を行った。また、空き缶収集が終了した車両から、公園に廃棄された粗大ごみを中心に回収を行った。また、早朝からの作業なので、途中1~2時間の休憩時間が与えられた。業務時間は18:00までとなった。
22日の業務については通常のごみ収集と公園や各拠点に排出された粗大ごみの回収を行った。私は主に畳を回収する作業にあたった。
22日の神戸市と収集資源センターとの会議の中で23日金曜日までの作業予定を立てたとの連絡が入った。その後、神戸市従支部長から「北海道で都市清掃部会をやっているから、応援が必要であるならばいつでもいってくれ、今ここで話をすれば動きが早いから」とアドバイスがあったが、この時点で自治労を通して支援要請すること話し合っている段階だと伝えた。(車両台数は未確定)
22日午後、収集資源センターで所属長・組合と話し合いをもち、応援を要請したい旨を伝えた。また、500台までの支援が可能(福井市職労委員長)と連絡があったことも伝えた。所属長は応援を要請することについては前向きではあったが、必要な車両台数については後の市民生活部の会議で決定し、報告を受けることとなっていた。
22日19時から、自治労県本部での福井豪雨への対策会議を行い、組合として支援要請の規模等の内容を協議していた。所属長から車両台数の返答がなかったので県本部の対策会議の中で市民や職員の健康を最優先し支援要請することを決定、車両台数を300台とした。あくまでも労働組合が主体に取り組むことと、支援依頼車両台数を所属長に報告した。
行政のレベルからすると組合の受け入れ体制については、低い水準だったと思うがごみを取っても取っても取りきれない。街中からごみがなくならない不満をぶつける市民もいる。職員も4日連続の時間外作業により心身共に限界に近い状況を考慮すると災害支援にすがるしかないと判断し支援を決断した。この後所属長と車両台数のやり取りが続いた。「30台でどうか」「間を取るわけではないが100台でどうか」など100分間にわたり電話で話しをした。組合としても「300台は県本部の会議で必要台数として決めたものであり、私の判断で変更(100台へ)するわけには行かない。協議する。」と電話を切った。
このやり取りの最中、らちがあかないと判断した市職労委員長が総務部長へ連絡。総務部長としての考え方と決断をお願いした。「担当課は、業務の過重で正確な判断ができない状況である。よろしくお願いしたい。」との内容であり、ごみ収集車300台の支援要請を進めることとなった。
23日14:00から県職員会館で、組合役員と市民生活部長より全権を任された所属長を交えて打合せを行う。(24日・25日当日の作業説明と収集車の基地割り振り他。)
終了後収集資源センターに戻り、災害発生以来今日まで現場で作業をし、状況を把握、また、各職員から情報を得ながら24日・25日の支援車用地図(A・B・C・D地区)作成を行う。
○各支援車収集区域に清掃職員を配置。収集資源センター職員18名配置。
○郊外地区(直営車両と一緒に収集:奈良県本部車両)の地図の作成、収集資源センター職員が地図を作成。収集資源センター職員6名配置。
○一乗地区(大阪市を中心とする各支援車両)収集資源センター職員2名配置
○収集区域地図の作成(組合役員:収集資源センターで行う、地区毎の配置車両台数については所属長と確認)~22:20
地図の作成時に支援申し込み車両台数を県本部へ確認(21:00、200台を超えたことを確認)このまま支援要請を止めることも考え、所属長に相談、「いまさら」と言われ、「再度300台になるまで募集すること伝えた。」県本部で大阪市従の方2名と地図の再編集を行う。予定車両台数(300台)と実際の車両台数(293台)に開きがあったため、県本部役員と私で収集区域ごとの車両台数再割り振りを行った。B地区担当の福井市職労書記長が一乗までのルート(大阪市従分)を作成。
7月24日3拠点(JAやしろ・県職員会館・中央卸売市場)にて9:00に集合、受付・弁当の配布・作業説明を行い10:00時から作業開始した。
JAやしろでは、奈良県本部が集合し直営部隊が同行、郊外地区の作業にあたる。
2府7県68単組、車両293台872人が3拠点に集結し、作業を開始した。準備不足で大まかな地図にもかかわらず、問い合わせがあったのは、「目的地付近の交差点名を教えてほしい」が5件と「廃棄場所の確認」が2件、「ごみが少ないのでごみがあるところを指示してほしい」が5件という内容であり大きな事故もなく、さすがはプロの仕事と感心した。
7月25日については、エリアを拡大した。大阪府本部・大阪市従分(50台は24日の収集場所を中心に収集。拡大した他のエリアの収集担当車155台はごみが少ないとの問い合わせがある。24日の収集エリアにごみが多く出ているのを現場から連絡(3件)あり、なめるように収集するよう指示した。他の車両は指示しなくてもごみが集積されている場所を探し収集していただいた。残りの車両88台は近隣の被災市町村での作業を県本部からお願いした。
2府7県55単組、車両205台、593人が福井市内を担当、12:00までの作業をお願いし、流れ解散となった。この日も大きな事故・トラブルなく最終車両15:00には終了した。
1. 今回の行動に対する所管
まずは、20日の神戸市役所からの応援申し出を福井市役所として断った経緯がある。現場の所属長はすぐに対応、神戸市従から応援に来ることになった。
しかし、20台~30台で収拾つくものでもなく、相当数の車両・人員が必要であったことは間違いない。
今回の件に関しては、職務が所属長に集中、指揮する防災本部では現場の状況が把握困難、判断を現場の所属長に委ねる。現場においては、主任・現場主幹が業務の手順把握や判断ができない状況から所属長に集中したため、所属長がパニックをおこしたと考えられる。
私たちも見切り発車的な決断に多少は罪悪感もありながら、市民のため(ごみを早く市街からなくす)職員のため(人数・車両台数が足りず収集が追いつかない。収集しても収集しても追いつかない状況から、現場の職員も疲労がたまっていた。)有効な手段だったと考えている。
様々な縛りに制約されている当局側の動きの鈍さを実感し、職員組合間の連携が縛りを超え的確な対応へつながったと感じた。
住民が昼食まで用意して支援自治体職員を待っていた。またその職員が「住民が待っているのでどうしてもごみを取ってあげなければならないので指示に従うのはその後になるが許してほしい。」とのやり取りがあったことを最後に報告したい。
この災害をとおして、行政は常日頃から現場で住民と関わることは勿論、現場の状況が的確に判断でき且つ、適正な対処の方法を考えられる訓練が必要であると考える。支援者・受け入れ側が共に日頃から現場で同じ作業をしており、また、自治労という組合を通して強い仲間意識があったことで、細部まで打合せしなくても互いに理解できたことが成功への素となったと考えている。
2. 7・18福井豪雨水害による復旧作業の取り組み報告
(1) 県内の水害の状況
7月18日(日)未明より降り続いた豪雨は、足羽川の堤防決壊をはじめ5つの市町村に対して大きな災害の爪跡を残しました。この豪雨により3名の尊い命を奪ったほか2名の方が行方不明になっています。一方、物的被害は家屋の全壊が69世帯、半壊が140世帯、床上浸水が4,330世帯、床下浸水が9,841世帯と大変甚大なものとなっています。〔7月27日現在〕
現在は、洪水からの復興を目指して該当市町村の職員をはじめ、たくさんの方が昼夜を通した取り組みが行われています。一日も早い復旧と復興を願っているとともに、私たちもその取り組みに持てる力を最大限に発揮していきます。
さて、被災日より数日が過ぎ、水没した家財などのごみが街路や公園に集積され、悪臭が漂い始めてきました。このごみの早急な処理が求められ、土日の対応を欠かすことができない状況になっていました。住民からの不満や自治体不信が高まっており、7月24日と25日にその対応が求められていました。
(2) 県本部の取り組み
県本部は、7月22日に被災した自治体の単組のお見舞いと激励にむかい、被害の状況や交通事情を確認しました。組合員や単組役員から「ごみを処理するトラックなどを確保してほしい」などの要望があり、自治労中央本部や県職・福井市職労との協議を行い、ごみ収集車やトラックの確保を求めて北信・東海・近畿に対し支援要請を行うこととしました。調整の結果、災害地域への支援隊を編成できると判断し、23日午前0時に支援行動を決定しました。
7月24日に来福する2府9県からの支援隊の行動をスムーズに行うために業務内容やその進め方、宿泊の確保とは配宿、弁当の手配などに明け方までかかり準備を進めました。
(3) 行政ルートでの調整
7月23日、福井県と協議を重ね「この支援行動は、労働組合が主体に取り組む」こととし、福井県知事より2府9県知事への支援要請を行うことを確認しました。知事の支援要請文は、県職が当該県職労に事前に説明・理解してもらった上で送付し、当該県職労から担当課に要請することになりました。近畿地連や東海地連・北信地連には、自治労本部から事前に説明がなされ、午前中より災害支援隊の確保が行われました。この手続きに対し、各県や自治体から質問や不満が福井県市町村課に寄せられ、県市町村課と県本部は24日午前0時までこの対応に迫られました。
(4) 2日間の復旧支援行動
7月24日は、午前9時に福井市内4ヵ所に分散して各県からの支援隊が結集し、割り当てられた地域へ復旧作業にあたりました。作業内容は、悪臭が漂い始めたごみや水没により使用できなくなった家財道具などが街路や公園に集積されており、その回収と運搬を行いました。作業終了を16時としましたが、大幅に超えて終えるところもありました。25日も前日と同様の作業を行いました。災害地域によっては、中間ごみ収集所で大量の可燃物・不燃物を分別するなどの作業を要し、ボランティアの人たちと行政、労働組合が一体となって連携した作業を進めることができました。全ての地域での作業を16時に終了し、行動県本部を18時に解散しました。
(5) 現在の状況
福井市……市内は、日常生活が確保されつつあると考える。郊外で甚大な被害が生じた地域は、道路の確保や砂礫の搬出を進めていて日常生活の確保にむけた取り組みが続いている。今後もさらに復旧作業が必要である。
鯖江市……郊外で甚大な被害が生じた地域は、道路の確保や砂礫の搬出を進めていて日常生活の確保にむけた取り組みが続いている。今後もさらに復旧作業が必要である。
美山町……同上
池田町……同上
大野市……同上
(6) 支援行動総括
今後の課題として、緊急事態であったとはいえ、行政支援で行うかボランティアで行うかを選別できない状況のため、重機借上げや人員派遣等において関係法令上問題が生じました。しかし、支援に駆けつけた仲間の思いや災害復旧という観点で考えれば、現在の関係法令では対応できず、改正を求める必要があると考えます。また、あまりにも短い準備期間であったことや自治労としての取り組みから出発したことから、知事からの支援要請文の処理やその対応に強引さがあったと思われ、災害時における行政支援としての行動を問われれば、災害支援派遣自治体が費やした費用を負担しなければどこがその負担を行うのかが問題となっています。
今回の行動の成果として労使協働の取り組みとして大きな成果を得たと思われます。しかし、今回の行動のほとんどは、自治労が行い、自治体は様々な制約の中、その機能を十分に発揮することはできませんでした。今回のような緊急な取り組みは、自治体より指揮命令系統がはっきりしている労働組合のほうがその成果を求めやすいと考えます。また、災害協力に対する組合員やそれぞれの自治体の対応は、大変積極的であり災害時に支援要請を行うことを躊躇すべきでないことを確信しました。
今後の取り組みとして、自治労福井県本部は、7月19日段階で、全組合員に対し、災害カンパと自治体支援ボランティアや連合のボランティアにできる限り参加するよう要請を行っており、今後も引き続き行います。今後、県外からの仲間の皆さんへの支援要請については、支援の申出のあった自治体に対して被災自治体から災害支援要請を行うこととします。しかし、市民が支援を求めているのにもかかわらず、被災自治体が災害対応について消極的な場合、自治労として当該自治体へ積極的に申入れ、その対応を求めていきます。
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