【自主レポート】
ビデオ作品「電車を楽しみ、公共交通を考えよー会」
福井県本部/丹南市民自治研究センター
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1. 活動の企画目的
私達の「丹南市民自治研センター」は福井県の中央部である丹南地域(武生市など2市11町村)を対象として設置されている市民活動センターであり、自治労加盟組合と連携しているが、財政や組織的には完全に独立している市民活動団体である。(会員120名で市内のNPO市民活動センターに加盟)
それ故に、活動の領域を特に定めることはせず、地域課題ならば何でもとりあげ、気軽に各種市民団体と連携、協力して取り組むスタイルが定着している。
今回の「電車を楽しみ、公共交通を考えよー会」は、今日の地方鉄道が経営的にもきわめて厳しい状況に追い込まれており、その事が一方では、地方の活力を失わせ、自治体のまちづくり計画にも多大な影響を与え、また更なる過疎化を促進するという状況にあることから、自治研センターとしても、地域と公共交通の問題を市民と地域全体に問題提起したいと考えて企画したものである。
企画にあたっては、どこでも行われている、ホールのような箱物の中でシンポジウムや講演会というスタイルではなく、電車に親しんでもらう、実際に乗ってもらう、先ずは「言葉より、体験だ」という考え方で、一連の企画を全て電車の中で行うこととした。
2. 具体的な企画内容
具体的な企画内容は次のように決めた。
第1部 皆で聞こう電車の話 (武生新駅に停車中の電車の中で)
○電車今昔物語……福井鉄道の関係者より
○暮らしと地域からみる電車の姿……ふくい路面電車とまちづくりの会
第2部 車内談義 私達が考える電車活性化
○武生新駅から福井市の田原町駅までの車中で(45分の所要時間)わいわい、がやがや、テーブルトーク
その中での意見は、終点の田原町で停車中にグループ毎に発表
第3部 自由に楽しく交流会
○田原町から武生新駅までの間ビール、お茶、お菓子で盛り上がろうー (主催者で少々準備)
各自、持ち込み自由でどおーんと楽しく
3. 各種団体との連携と協力
このような企画を成功させるには、いろんな課題があったが、先ず第一は電車をこのような形で運行できるか、どうかという問題であった。電車運行を依頼する福井鉄道は武生市と鯖江市、福井市を結ぶ「福武線」をもつ地方鉄道であり本社は武生市にある。
会社への協力要請は共催団体に加盟している福井鉄道労働組合と武生市職員組合の組織内議員である武生市議(民主党.元議長)の尽力で全面協力の約束が得られた。
当日の「貸切り特別電車」の運行については、電車(二両連結型)と構内の使用、臨時ダイヤ編成、電車内への机の設置、電車の今昔などの説明など大変な協力をいただくこととなった。
この活動の周知方法は、自治労の職員組合や地域の労働組合、丹南市民自治研センターが加盟し日頃から仲良くしている幾つかのNPO団体などへはチラシを配布して参加協力や周知を図ったが、一般市民への周知ではマスコミ各社と地元のCATVに頼るしかなかった。新聞折込みをする資金は無いので記事としての掲載や、お知らせニュースなどでの協力を要請した。
結果として、予想以上の周知が成功し、市民から多くの問い合わせや参加申し込みが行われた。ただ電車の定員(座席数)が決まっているので先着順で締め切ることとなった。
共催団体は、地域の労働団体である「平和センター」となった。これは武生市職員組合も加盟しており、事務局長も受け持っていることからスムーズに共催が決まり、当日の参加者確保と財政面での支援が得られた。また後援は武生市にお願いした。開催の目的に地域と公共交通の問題を上げているので、その担当課を通して後援依頼をして決まった。
4. ビデオ作品になった経過
今回の自治研集会に報告するビデオは地元のCATVである「丹南ケーブルテレビ」が自主的に作成してくれた30分の特別企画番組の作品である。
私達の企画に対して、これは地域の課題としてもニュースとしても面白いとの判断をしていただいた上で、特別の企画番組として制作したい旨の話が持ち込まれ、私たちとしては有り難い事と快諾した。
作品は丹南地域全域に一週間の間に数回の放映がなされ、かなりの反響を呼んだ。正直に言って私達では30分作品を作るなど技術的にも財政的にも出来ないことであり、この企画を支援してもらった「丹南ケーブル」にはとても感謝している。実現の背景には企画の面白さと、これまでの地域密着型の多くの活動を通じてのセンターに対する信頼と日頃からの友好的な付き合いの積み重ねだと思っている。
5. 当日の状況とその後の動き
これは全てビデオの中に収録されているので、ぜひご覧いただきたい。参加者は70名あまり(二両の連結電車の定員いっぱい)で、企画どおり全てが予定通り上々の状態で進行した。参加者からも好評であった。県内の主要マスコミ(新聞、テレビ)全てが取材し大きく報道された。
福井県では、「福井鉄道」と「えちぜん鉄道」に対する各自治体の支援についての対策が進められている。例えば両者の福井市内駅での相互乗り入れ、各沿線自治体の支援強化、市民団体の時刻表作成、市民団体と私達との意見交換会の実施、支援組織の結成などである。
また、私達の企画を参考にしたような「車内シンポジウム」や「電車に乗って映画に行こう」などが、その後、他市で実施された。
私達のセンターとしては、このような経過を見た場合に当初の目的はそれなりに果たせたものと考えている。私達のセンターは「特定の課題の運動体ではなく、地域の学び舎」というのが基本姿勢である。
その意味では、今回の企画も予想以上に地域にインパクトを与えたものであり、電車の活用方法についても全国で初めてのケースとの評価も聞いている。
「行政の枠から抜け出して素直に市民と地域課題を考え学んでいく」その中からこそ、行政と市民の本音の対話と協働の輪が出来る。
私達は多くの実践的な活動の中で、その方針の正しさを実感している。
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