【要請レポート】

ふるさと回帰と地域再生

長野県本部/飯山市職員労働組合

1. 飯山市の概要

(1) 立地・気象
   長野市から北へ36km、新潟県との県境に位置している。
   関田山脈、三国山脈に連なる山系に囲まれ、その中央を千曲川(信濃川)が南から北に流れている。市域は、千曲川の沖積地を中心にした田園地帯と、中山間地とで構成されている。
   気候は、四季の変化がはっきりしており、冬は最深積雪平均が142cm、山間部では、450cmの豪雪地である。

(2) 交通アクセス
   平成9年に上信越自動車道の豊田飯山ICが供用開始され、北陸新幹線が長野まで開通したことにより、東京~飯山間の所要時間が車で3時間、JRで2時間30分に短縮され、交通アクセスが大幅に向上した。

(3) 農業の状況
   農業は飯山市の基幹産業であり、全世帯数に対する農家率は30%、この内専業農家が約18%、1種兼業農家が約17%と専業・1種兼業農家の比率が高い地域であるが、高齢化と農家人口の減少が顕著ある。
   生産額は、きのこ類が約50%、米、アスパラガスの順で、アスパラガスは全国1位の生産額を誇っています。

2. 背 景

(1) 飯山市東京事務所(故郷庵いいやま)のオープン  

 ① 平成13年6月東京都新宿区津久戸町(飯田橋)にオープン
 ② インターネットではできない「人」「心」「物」の顔の見える情報発信
  (情報の「情」にこだわり)
 ③ 「話したいことがある。あなたとそしてわたしの故郷を」……コンセプト
 ④ 事務所に和室と囲炉裏をつくり、ふるさと暮らしをPR

故郷庵いいやま(玄関)
故郷庵いいやま(和室:囲炉裏)

(2) グリーンツーリズム事業の推進
  ① 「地域の資源(宝もの)をいかした交流・体験による観光」
  ② 平成6年 飯山市グリーンツーリズム推進協議会の設置
  ③ 平成9年 なべくら高原森の家オープン(180名の市民インストラクターの養成)農家民宿を中心に自然体験教室を推進
  ④ 平成14年度 ホワイトシーズン(12月~3月)をグリーンシーズン(4月~11月)の入り込み客数が上回る。年間自然体験教室が54校となる

 
なべくら高原森の家
(ターミナルハウス)
同(コテージ)
アスパラ収穫体験
カヌー体験

(3) 映画「阿弥陀堂だより」のロケ地と全国公開
   年間130日の長期ロケ(13年度)……飯山市の四季を映し出す 
   映画の全国一斉公開(14年10月)……飯山市を全国にPR


冬の阿弥陀堂
ロケ地となった棚田(棚田百選)

(4) スローライフの時代を迎える
  ① …新しい生活のスタイル(以下 「スローライフイン掛川市」から)
   ア スローペース=自動車文明から歩行文化への転換で健康増進と交通安全
   イ スローウェア=和服、和紙、伝統工芸品を大事にする
   ウ スローフード=地産地消で食の安全と伝統食
   エ スローハウス=200年長持ちする木の家造り、健康住宅、木材需要喚起
   オ スローエイジング=一世紀一周間人生の実践
   カ スローインダストリー=丹精込めた農林水産業の振興,産品、安全な食材
   キ スローエデュケーション=大器晩成教育と子供達への声掛け運動、趣味
   ク スローライフ=ア~キの生活哲学、暮らし方、古来の技術文化
  ② …新しい旅のスタイル
   ア 目 的
    ・団体旅行 → 個人・グループ旅行
    ・メニューの画一化(旅行会社) → メニューの多様化(こだわり)
    ・物見遊山(名所旧跡) → 地域の歴史・文化・自然に触れる(体験)
    ・駆け足(つまみ食い)の旅 → 滞在型(ゆっくり過ごす)
   イ 土産(見る・買う)
    ・旅の証拠としての土産(買い物) → 思い出をものに託した土産
    ・物の魅力に惹かれて、買い物 → 街、人、物の物語に惹かれて
   ウ 食事
    ・めずらしい(贅沢な)もの → その土地固有のものを食べたい
   エ 宿泊
    ・ハード(宿泊施設等)が重要 → ソフト(もてなし)が重要

(5) 21世紀型の産業である「旅産業」の推進
   ― 14年9月に当選した木内市長の公約 ―
   交流人口の拡大から経済・地域の活性化
   (観光・商業・農業・工業・福祉・教育……の連携システムの構築)
  ① 「飯山応援団菜の花大使」を中心にした交流人口の拡大
   ・10万人構想を目標にホームページの設置
     (飯山に来ると得するプラン、プレゼント、メルマガ)

     http://www.iiyama-ouendan.net

  ② 「旅産業・にぎわい創出市民会議」の設置・・市民から提言
  ③ 日本一親切な市役所づくり

   参考:「飯山応援団菜の花大使」 ビラ

3. 飯山市ふるさと回帰支援センターの設立まで

(1) 「100万人のふるさと回帰・循環運動」との出会い
  ① 飯山市をロケ地とした映画「阿弥陀堂だより」のPR営業
    農水省、新聞、雑誌、各種団体……
  ② 連合の高橋公 社会政策局長と意気投合
   ・映画「阿弥陀堂だより」を上記運動に利用してほしい
   ・飯山を「モデル地区」にしてほしい
  ③ 14年11月 NPO法人ふるさと回帰支援センター(本部)設立

    http://www.furusatokaiki.net/

(2) 飯山市ふるさと回帰支援センターの設立
  ① 平成15年4月1日(ホームページは6月)

    http://www.furusato-iiyama.net

  ② IJU(移住)ターンの情報とサービスの一本化
  ③ 設立の理由
   ・ふるさと暮らしのニーズに応えられる窓口として期待
  ④ ふるさと回帰支援センター(本部)と中心とした全国ネットワークに期待

4. 飯山市ふるさと回帰支援センター

(1) 組織……飯山市グリーン・ツーリズム推進協議会のメンバーが兼ねる
         (飯山市、JA、商工会議所、区長会、観光協会、県出先機関)

(2) IJUターンの情報を一元化し、ホームページで情報発信
  ① 一時滞在(すこしだけ『いいやま』)……手軽な農業・自然体験ツアー
  ② 長期滞在(たっぷり『いいやま』)………田畑オーナー募集・ワーキングホリデー等就農情報
  ③ 定住(ずーっと『いいやま』)……………空き家・住宅分譲地紹介・IJUターン体験談、住宅建設相談
  ④ ふるさと暮らし相談室………………………ふるさと暮らしに向けての相談窓口

(3) 主な事業
  ① IJUターンの窓口を商工観光課に一本化し、関係課、土地開発公社、JA等との調整会議の開催
  ② ふるさと回帰支援センター(東京本部)の連絡調整、打合せ
  ③ 連続実践講座「飯山市ふるさ回帰セミナー」の開催
    とき: 9月・10月・11月・12月の第3水曜日 午後6時30分~9時
    場所: 飯山市東京事務所「故郷庵いいやま」
  ④ ふるさと暮らし体験ツアー
    3月に1泊2日のツアーを開催(今後季節ごとに年4回開催予定)

   参考資料:「飯山市ふるさと回帰支援センター」ビラ

5. ふるさと回帰から地域再生

(1) 飯山市の旅産業とふるさと回帰の関係
   「一番すみやすい土地が、もっともすぐれた観光地である」
  ① 都市生活者と飯山との関わり
    初期段階では、観光的要素が強く、それが次第に体験色(グリーン・ツーリズム)が強くなり、何度も訪れるうちに長期滞在、半定住、定住に結びつけてくると考えられる。(交流人口の拡大が大きな要素)

(2) 地域再生のポイント
  ① 住居(住宅)
   ア 空き民宿や空き家を有効活用
     新規希望者の住宅支援や古民家再生による住宅提供
   イ 住宅団地の利用
  ② 仕事(雇用)
   ア 移住希望者の生活基盤の確立。
     (基地を旅立つまでの、農のノウハウ等のバックアップ)
   イ 休耕地の利用
   ウ 加工食品などによる新たな起業・雇用
  ③ 生活(消費)
   ア 新規移住者の相談(頼る人がいない人へのサポート)
   イ 定住希望者の余暇生活の開発・提供
  ④ 人(元気)
   ア 地域の和を乱さず、むらづくりに参加していただく
   イ 新しい人材は、地域の活力となる
   ウ 魅力ある地域づくりで、田舎離れを防ぐ
  ⑤ 情報(自信)
   ア 生活者自体が情報発信となり、リアルな情報提供を行う
   イ 移住経験者との情報ネットワークづくりの推進
   ウ 田舎暮らしを始めている人からリアルな情報を提供していく

6. 移住希望者へ一言

(1) 移住とは、都市と農村との価値の共有
  ① 本来のグリーンツーリズムの精神である「人と人とが交流したり、地域の本物の文化などに触れて得られる感動」を共有する
  ② それは、ありふれた農村地域ならどこでも可能である

(2) 移住とは、自己実現の一つの方法
  ① 自分とは何か、生き方を考えるとき、ふるさと暮らしは一つの方法
  ② 都会は消費する社会であり、田舎は生産(つくる)する社会である
  ③ コミュニティ中で、自己表現ができる

(3) ふるさと暮らしの「経済学」
  ① 21世紀型の価値観の変化(スローライフの時代) 
  ② 環境や社会の貢献に新しい価値観
  ③ 年収が半分以下(例えば300万円以下)になっても、田舎では生活が可能であり、その分「心の所得」が上乗せされる→新しい価値観から生まれた新しい経済学(今後の低成長時代(所得の低下、労働時間の減少)に即した生き方でもある)