【要請レポート】
和歌山県の「緑の雇用事業」と和歌山県職労の地域活性化委員会の取り組み |
和歌山県本部/和歌山県職員労働組合・地域活性化委員会・事務局長 山西 毅治
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1. はじめに
和歌山県が実施する「緑の雇用事業」の紹介と和歌山県職労が実施している「社会貢献活動」─地域活性化委員会─の取り組みについて報告します。
2. 「緑の雇用事業」について― 都会から地方への架け橋 ―
(1) 和歌山県の森林、林業、山村の概況
和歌山県の森林面積は、364千haと県土の77%を占めており、林野率は全国6位である。森林面積の内95%が民有林で、その内訳は61%が人工林となっており、人工林の総蓄積は全国9位、なかでもヒノキの人工林率は全国1位と全国でも有数の森林資源量を誇る状況である。
森林は、木材生産のほか水源涵養や国土の保全、レクリエーションや癒しの場の提供、生物の多様性の確保の公益的機能を有しており、県民に様々な恵みをもたらしている。さらに、森林のCO2吸収能力は、地球温暖化防止のうえから大きくクローズアップされている。
林業については、近年の木材価格の低迷や人件費の高騰により、森林所有者や森林組合などの林業事業体の経営意欲が減退し、素材生産、間伐、造林等の実績が低下している。また、林業の担い手については昭和55年から比較すると約1/3に減少しているとともに高齢化が進んでいる。
以上のように、森林の果たす役割については地球規模でクローズアップされているにもかかわらず、全国規模で森林の荒廃が進んでいるのが現状である。
山村の現状については、高齢化と若年層の人口流出が続き、高齢者比率(65歳以上)は全県の22.3%に対し、過疎地域では34.5%(平成15年3月31日現在)となっている。過疎地域の高齢化の進行は全県より約15年程度先んじているものと推測される。昭和40年代から今日に至るまで交通通信体系の整備を中心にハード面の整備は充実してきており、ソフト面においても豊かで地域資源を活かしたふるさと産品の振興や地域交流の促進等幅広い取り組みが進みつつある。
また、近年は価値観の多様化により個性的なライフスタイルを求め山村過疎地域へのU、Iターン者が増加するなど地域の特性が見直されつつある。
(2) 緑の雇用事業
① 概 要
緑の雇用事業は、森林がもつ公益的機能に着目し、その環境保全事業を展開することによって新たな雇用を創出し、さらにこの雇用をステップに都市から人口流動をすすめ中山間地域の活性化を図る施策であり、平成13年9月、現木村和歌山県知事が全国に向け提唱したもである。
要するに(ア)地球温暖化防止の観点から森林のもつ機能を最大限に発揮させるため荒廃が進む森林を適正に整備していく(=環境保全)。(イ)この仕事に都会での失業者あるいは田舎志向の人を中心に従事してもらう(=雇用対策)。(ウ)都会からのIターンにより田舎の人口を増加させ活性化を図る(=地域活性化)。の一石三鳥の事業である。
具体的には、環境林整備として間伐、枝落とし、下草刈り、広葉樹植栽といった森林作業等によって雇用を創出しています。これらは、公有林のほか、森林所有者との森林環境保全協定を締結した森林を対象としています。ちなみに年収については、250万から400万程度である。
生活面については定住を促進すべく技術習得、起業支援等といった所得面での支援や生活基盤支援、地域交流支援、定住住宅支援といった住環境支援など様々な施策を実施している。
緑の雇用の就業希望者については、東京・名古屋・大阪等で就業相談会を開催するともに、受け入れ先である森林組合と希望者との面談会を開催し、両者の希望がマッチした場合、採用となる。平成14年度、15年度で275名のIターン者の方々が「緑の雇用」に就いている。
② 緑の雇用事業 フロー図
③ 緑の雇用就業フローチャート
④ 緑の雇用事業を実施する県庁内のシステム
平成13年9月の知事の提言を受け、平成14年度から農林水産部内にあった森林、林業、山村関係職場(林業振興課、森林整備課、山村振興課)に緑の雇用事業の総合的な調整、窓口として新ふるさと推進課を新たに設置、また山村振興課を定住促進課に名称変更するとともに農林水産部内に「緑の雇用推進局」を新設し、新ふるさと推進課、林業振興課、森林整備課、定住促進課の4課体制で事業を進行している。
各課の緑の雇用事業の分担は概ね下記のとおりである。
(もちろん緑の雇用事業以外の仕事もしています。)

⑤ 「緑の雇用事業」2年間の実績
平成15年度事業が終了し、15年度末で県内448名の方々の就労はもちろんのこと、Iターン者275名(森林作業257名、他自営業等で18名)の方々が県外から「新しいふるさと」を求めて本県で就労した。延べ雇用人数にすると約1,200名の新たな雇用を創出したことになる。
森林整備では、市町村と森林所有者が環境保全協定を結んで強度な間伐や広葉樹植林を行うことにより、生産目標が不明な森林、いわゆる荒廃した森林の混交林化や広葉樹林化を図っており、平成14年度で910ha、平成15年度で2,699ha、計3,609haの環境林整備を実現している。
この間、「都市から地方への人口流動」という緑の雇用事業の理念が小泉総理をはじめ多方面から賛同を得、「骨太の方針」や総理の所信表明の中での記載など国の施策としても認められた。その結果、予算面で、緑の雇用事業1年目の人を対象にした厚生労働省の「緊急雇用創出特別基金事業」の6ヶ月の雇用期間を森林整備事業に関しては、6ヶ月更新を可能し、農林水産省においては緑の雇用2年目の人を対象にした「緑の雇用担い手育成対策」を平成14年度補正予算として、また平成16年度当初予算では「緑の雇用担い手育成対策事業」として予算化した。また総務省においても、「緑の雇用担い手育成対策」を補完すべく地方財政処置(普通交付税等)を予算化した。この結果、緊急雇用対策で1年間、緑の雇用担い手育成対策で1年間、計2年間の雇用が実現できることとなった。
2年間の実績イメージ図
⑥ 定住に向かって
緑の雇用1年目、2年目については、前述のとおり、厚生労働省の緊急雇用創出事業と農林水産省の緑の雇用担い手育成対策事業により事業を実施してきたが、3年目については(例えば14年度採用者の16年度雇用分)、より高度な実践的技術研修を行う「環境林創造事業」(県、総務省の地方財政処置)を立ち上げ事業を実施している。
また、確実な定住に向け、森林作業の所得(年収200~400万円)に加え「ながら所得」(山仕事をしながら、米を作りながら、野菜をつくりながら、鳥を飼いながら、パートをしながら……)が得られるような支援事業を実施している。(農業、畜産業等への広がり)
さらに、緑の雇用事業が恒久的な事業として実行できるよう、国への働きかけを実施するとももに、Iターン者が自立し、和歌山県に定住できるよう各種の施策を実現していく。
⑦ Iターン者の声
「緑の雇用で本宮町にやってきて」
本宮町森林組合勤務の森林作業員の妻
何のあてもなかった職探しで、和歌山県の暖かく暮らしやすそうな印象と山仕事という未知の世界に惹かれて「緑の雇用」に応募したのが本宮町に来るきっかけになりました。
駆け足で巡った下見で、山・川・里・温泉、そして熊野本宮大社と、どれをとっても実に"いい塩梅"で、まさに"一目惚れ"でした。そして、実際に越してきて嬉しかったのは、この町の人々の"暖かい心"が、知る人もなく、右も左もわからない土地への転居(そのうえ、当時は身重で、幼児連れ)という不安を"アッ"という間に吹き飛ばしてくれたことでした。
引越の荷物を運ぶのを手伝って下さった方にはじまり、茶摘みをさせていだいたり、釜炒り茶の手ほどきを受けたり、食べきれないほどの掘りたての筍を持ってきて下さったり、野菜を届けてくださる方も。ひとりふたりではなく、買い物に出るにもままならぬ身に有り難さがしみました。
ご近所のご夫婦には、お鍋を借りたことに始まって、卵やお惣菜、鮎などもいただいて、食事をごちそうになることも度々、歯科へ通うたびに長女を預かって下さったり、まるで実家のように気楽におつきあいをさせていただき本当に心強く有り難く思っています。娘も、実の祖父母のようによくなついて、次女のお産の時にも1日面倒を見て下さり、その日のうちに誕生をお祝うお赤飯を炊いて持ってきて下さるなど、涙がでるほど嬉しい限りでした。
本宮町は、多種多様な経歴を持った移住者がおり、そうした"多様な個性"を否定しない、新参者でも好意的に受け入れてくれる"懐のひろさ・深さ"は、他の農山村でちょっと考えられない"移住者に居心地のいい"本宮の特色なのではと思います。また、本宮の魅力といえば、ごく小さな子供でも安心して遊べる川や摘み草のできる休耕田があちらこちらにあること、木をふんだんに使った保育園があること等も子育てするのにいい処だと実感できることです。それに、夕食後「今日はどこの温泉に行く?」などという話ができるのも本宮ならではのことです。ちなみに、今住んでいる定住促進住宅も、木の香あふれる日当たり抜群の平屋建てで、申し訳ないほど立派です。
Iターン組の核家族にとって、子供の成長を共に喜んでもらえる人のいること、見守ってくれる人のいることは大きな心の支えであり、実際に助けてもらうことも多くあります。夫の職場ではもちろんのこと、地域ぐるみで家族まるごと支えられて、助けられて本当に愉しく暮らさせていただいてます。この町に来られたご縁を有り難く思っています。
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「 星 の 数 に 驚 嘆 」
中辺路町森林組合作業員 37歳
早いもので中辺路町に引っ越してきて1年が経ちます。現在、4歳になる娘が話す言葉はすっかり中辺路の方言になっています。東京育ちの私が、娘を叱る時に使う「あかんで」(方言)の言葉の方が、まだ板に付いていないかもしれません。
この1年間「緑の雇用担い手育成対策」という研修事業などでひと通りの山仕事を経験しました。しかし、自然が相手の仕事はひとつとして同じものはありません。ある程度の自信は付きましたが、以前にも増して難しさや怖さも感じるようになりました。
生まれて初めて山仕事をすることになったきっかけは、一昨年の夏の東京都森林組合での緊急雇用対策でした。下草刈りと除伐を半年ほど行いました。そのときの充実感がすっかり気に入ってしまいました。山仕事を続けたいと思っていた時、和歌山県が「緑の雇用事業」を推進していることを知り、家族3人で移住してきました。元々、妻も私も東京の人の多さにはうんざりだったので、躊躇することはありませんでした。
中辺路町での冬の夜空に広がる星の数に驚嘆し、春の新緑の鮮やかさに目を奪われました。(それはまた、部屋の中に出現するムカデに大騒ぎする日々でもあるのですが……)
また、近くの住民の方からは、野菜を頂いたりして、暖かく迎えてもらっています。娘を連れて散歩していると「このあたりは、子供が少ないので小さい子供を連れてきてもらって嬉しいよ。」と声をかけられることも多くあります。ここは、地域全体が子供の成長を見守ってくれるようなところがあり、親としてはかなり安心できます。好きな仕事ができて、家族が健康で、自然に恵まれた素晴らしい土地で暮らしています。
この1年間は本当に短く感じられました。それだけ幸せだったのだろうと振り返っています。今、林業は大変な時期であり、先行き不安になることも多くありますが、まだまだ一人前ではない自分は、怪我をしないように気を抜かずに努力を重ねていくしかないと思って日々頑張っています。
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⑧ 地域の声
「緑の雇用事業に思うこと」
古座川町佐田在住
老人ばかりの山里に若い夫婦が住居を構えられたことは、空き住宅に灯がともり賑やかになり、地区にとっては活気が戻り大変喜ばしい限りであります。
Kさんは、近所つきあいも良く好評で、地区のイベントや奉仕作業にも進んで参加されるので、今や、地区の中でも貴重な存在と認められています。また休日には飲料水用山水のパイプの点検や一人暮らしのおばあさん宅の草刈りや掃除のお手伝いなど、ほほえましい光景も良く見受けられます。
しかも、当地で15年ぶりという朗報"赤ちゃんの誕生"も間近ということで、佐田地区は、二重の喜びに湧いてます。
このように若い人が徐々に増えて、古座川町が昔のように賑やかになってくれることを望んでやまないこの頃です。
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「小規模校にとって有り難い“緑の雇用”」
中辺路町近露 小学校勤務
近野小学校の児童34名のうち4名が緑の雇用事業で転校して来られ、特に1年生は、5名のうち2名が緑の雇用事業により来られた児童です。学校の活性化にとって、その存在は大きなものとなっています。
山村の小規模校にとって児童が増えるということは、何よりも有り難く、子供同士の人間関係づくりや社会性を培っていくうえで大きな役割を果たし、子供達の学習・生活にとって大変よい影響があります。
少人数学級では、クラスの人数が増えるほど、互いに影響を与え合い、互いに高め合って学習を深めていくことが出来ます。
また、転校して来た児童によって、子供達や私たちは、日頃当たり前に思っていた身近な自然のすばらしさを再認識させられています。
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⑨ そして、地域活性化、地域再生へ
「緑の雇用事業」は3年目をむかえた。年収は、200万から400万と決して十分ではない。しかし、ここには突き抜けるような真っ青な空、満天の星、鮮やかな新緑、澄み切った空気そして暖かい地域の人々の心がある。
「緑の雇用事業」で働く人々は、多様化する個性、スローライフの実践等が言われる中でやりがいのある仕事を求め、和歌山へ移住している。もちろん、それぞれの方がいろんな事情はあるでしょう。過酷な山仕事を体験し、収入は十分ではないが、それにかわるものがある。
多くの人がこの仕事を継続することを選択した。
過疎の地域では、昔のように子供の声がこだまする。廃校、複式学級にならずに済んだ。近所のお年寄りも若い人が増えていろいろとお願いすることもできる。過疎の地域がIターン者を心から迎えている。これが、現状です。
これこそが分科会のテーマである「地域再生」ではないでしょうか。
(3) 拡がりをみせる「緑の雇用」
① 新たな試み「企業の森」
前述で紹介した「緑の雇用事業」は人、個人が和歌山の森林を保全し、定住に向かうものですが、「企業の森」は、企業、労働組合が民間の活力により環境林整備、環境貢献の場の創造、交流による地域の活性化を進めるもので、環境貢献に関心の高い企業や労働組合が、地方自治体や個人の森林を所有または借り受けて地域とともに森林の保全を行うものです。
また、企業や労働組合、NPO等が森林保全に取り組むにあたり、植栽指導や植栽後の管理業務を地元森林組合に委託することで新たな雇用を発生させるとともに、定期的に訪れる企業や労働組合の関係者と地域住民との交流により都市と地方の相互理解を深めるものです。
② 企業の森の取り組み事例
ア 「UIゼンセン同盟ユニチカ労働組合」の取り組み
平成14年から「ユニチカ労働組合」が約2haの民有林にクヌギ・コナラ・クロガネモチなど約2,000本の植栽を実施するとともに、木工創作、椎茸植培の原木づくりや地域の歴史や伝統、森林の役割などの研修を実施した。
また、植栽後も組合員とその家族で下草刈りや木工に挑戦するなど森林環境整備を通じ、地域との交流を行っている。
イ 「関西電力労働組合」の取り組み
平成15年には、「関西電力労働組合」が町有林約1haを借り受け、サクラ・カエデ等の植栽を行い「関労ふれあいの森」事業として、新入組合員の研修や労働組合の地球環境保護に向けたボランティア活動の場として利用している。
ウ NPO法人「夢クラブ」の取り組み
平成16年には、少年野球等の振興を通じて、青少年の健全育成を図る団体NPO法人「夢クラブ」が、バットの材料であるアオダモ等の植栽を行いました。地域の野球少年が自分たちの子供や孫の世代のためにバット用材の植栽を進めることで、森林の管理と保全の心も未来に託すという取り組みである。
その他企業として初めて大阪ガスが16年8月に調印を行ったのをはじめ、連合和歌山も検討中である。
以上のように、参画をしている団体については、レクリエーション活動の場や研修、企業イメージのアップ、環境教育等で利用しているとともに、地域での交流を積極的に実施をしているところである。
拡がりをみせる「緑の雇用」(企業の森イメージ図)
3. 和歌山県職員労働組合の社会貢献活動-地域活性化委員会-の取り組み
(1) 社会貢献活動の意義、目的
和歌山県職労は組合員数4,448名 組織率99%であり、管理職等を除くほとんどの職員は、組合員である。
組合本部は執行委員長をはじめ、本部役員7名で構成され、その下に9支部(県庁、医大、振興局7)、3評議会(青年女性、現業、公営企業)で構成されている。
どこの組織でも同じであると思うが、組合を取り巻く情勢は大変厳しい。
賃金闘争では、守り一辺倒で給与カットの継続、挙げ句の果ては、マイナス勧告である。和歌山県職労も執行委員長を中心になんとかマイナスを最小限に食い止めるたたかいを行い、一定の成果をあげてきた。しかしながら、世間の現状から組合員に評価をもらえる内容で妥結しても、なかなか理解はできても、組合に対する期待度については低下をしていると言わざるを得ない。
現実、相次ぐ給与カットにより組合員をやめるもの、さらには自治労の不祥事が拍車をかけ、末端組織、直接組合員と接する支部を預かるものとして、(県庁支部)組合員の組合離れ、シラケムード、結集力の低下を肌身に感じているのが現状である。
過去から組織活動として、スポーツ大会や家族とともに参加できる事業を行ってきており、これらは効果を上げ今も継続しているが、組合員にとっては、今はもう「あって当たり前」の事業になっている。
この現状を打破するために、浮上してきたのが、「社会貢献活動」「地域活性化の活動」の強化である。
職員は、県民の生活の向上、県勢の浮揚を目的に仕事をしている。県職員の労働組合はその職員の集合体である。従って、労働組合もその一翼を担うべきものであり、職員、組合員に「社会貢献活動」の意義を訴え、職員の県政に対する気持ちによって多くの人に参加をしてもらう。
さらに、労働組合には当局にできないもの(労働組合の特色)が多くある。
① あらゆる職場、職種から動員が可能(組織力、動員力)
② ボランティアである
③ 直ちに実行が可能 等
この特色を活かし、県職員(公務員)の労働組合として、県や県民のための事業を企画し、組合員に参加をいただく。もちろん当局との連携は必要である。当局にもこの活動を実施することによってさらに労働組合の存在、力を認めさせることができる。
そして、組織の維持・強化、地域の活性化に繋げていきたいと考えている。
社会貢献活動イメージ図
(2) 具体的な社会貢献活動
① 阪神淡路大震災救援物資搬出活動
1995.1.17~ 50名 和歌山港
この活動は、震災後和歌山港に救援物資が集中し、当局では緊急に対応できないとのことで、組合(県庁支部)の方へ依頼があり、急遽動員をし、県内各地から集まる救援物資を船に積み込む作業及び神戸での積み下ろし作業を行った。
② ナホトカ号重油流出事故重油拭き取り作業
1997.2.5~10 116名 越前海岸
ボランティア休暇がちょうど制定されたこともあり、組合員からの提案で県職労として取り組んだ。
③ 南紀熊野体験博PR活動 熊野古道リレーウォーク(京都~新宮)
1999.3.20~5.21 298名
ナホトカ号の重油流出事故から「社会貢献活動」を県職労の運動の柱として意識するようになりました。ちょうど、県職労が50周年を迎えるにあたり、50周年記念事業として、現在の世界遺産登録のきっかけとなった熊野の歴史と南紀の観光をメインにした体験型の博覧会である「南紀熊野体験博」のPR活動を実施しました。
県職労は、熊野古道リレーウォーク実行委員会を組織し、その当時はまだ全ルートの正確なルートや距離、時間が不明ななかで、事前調査を行うとともに、平安時代に行った出立式の再現(京都城南宮)やルート沿いの主要ターミナルでのPRなどの企画、調査を綿密に行い、PRの効果が最大限に発揮できよう、また組合員が興味を持ち参加しやすように準備を行いました。
ア 目 的
a 南紀熊野体験博のPR
b 熊野古道、和歌山の魅力の発信
c 県職労の一層の団結
イ 実施内容
a 熊野古道リレーウォーク
組合員から参加者を募り、京都城南宮から和歌山新宮速玉大社まで熊野古道にある九十九王子を県職労の各支部がリレー形式で巡りながらPR活動を実施。
b イベント
団結式 |
─ 50周年記念式典にて ─ |
1999.3.20
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出立式 |
─ 京都城南宮 ─ |
4.17
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県庁前式典 |
─ 県庁正面玄関 ─ |
4.26
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激励会 |
─ 定期大会会場 ─ |
5.21
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到着式 |
─ 新宮速玉大社 ─ |
5.21
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記念植樹 |
─ 京都新熊野神社 ─ |
4.17
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─ 県庁正面玄関 ─ |
4.26
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─ 藤白神社(藤白王子) ─ |
4.28
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─ 十丈王子 ─ |
5.12
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出 立 式
京都城南宮
4.17
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c パンフレット配布 合計 60,000部
京都市内(京都御所、清水寺間) |
4.17
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京都駅 |
4.17
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天王寺駅 |
4.18
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ナンバ駅 |
4.18
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堺東駅 |
4.19
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関西空港 |
4.22
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泉佐野駅 |
4.22
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和歌山駅 |
4.26
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到 着 式
新宮速玉大社
5.21
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④ 7・18福井集中豪雨における救援活動
2004.7.24~25
自治労福井県本部の要請により、救援活動を実施した。県職労としても県当局に働きかけを行い、職員、作業用トラックを派遣した。
11名 道路維持車3台
(3) 現在実施している社会貢献活動
― 県職労世界遺産登録推進実行委員会の取り組み ―
① 概 要
「紀伊山地の霊場と参詣道」は本年7月1日に世界遺産に登録された。紀伊山地は、神話の時代から神々が鎮まる特別な地域として考えられていた。中国から伝来した「仏教」も、深い森林に覆われた紀伊山地の山々を阿弥陀仏や観音菩薩の「浄土」に見立て、仏が持つような能力を修得するための山岳修行の舞台とした。その結果、紀伊山地には、それぞれの期限や内容を異にする「吉野・大峯」、「熊野三山」「高野山」の三つの「山岳霊場」とそこに至る「参詣道」が生まれ、都をはじめとする全国から人々の訪れる所となり、日本の宗教・文化の発展と交流に大きな影響を及ぼすこととなった。「紀伊山地の霊場と参詣道」は、和歌山、奈良、三重の三県にまたがる「紀伊山地の自然」がなければ成立しなかった「山岳霊場」と「参詣道」、及び周囲を取り巻く「文化的景観」が主役であり、日本で唯一、世界でも類を見ない資産として価値の高いものである。また、それらが今なお連綿と民衆の中に息づいている点においても極めて貴重なものである。
県職労は、「社会貢献活動」の一環として、世界遺産登録推進実行委員会を立ち上げ、和歌山県にとって近年では最大のインパクトなる世界遺産の登録に向け、県職員の労働組合としてできることを実施してきた。
まず、考えたことは前述のように労働組合の特色を活かしたこと、労働組合にしかできないことをやろうということであった。
② 具体的な活動
ア 世界遺産登録区域内清掃作業
世界遺産登録にむけては、ユネスコから事前調査が行われます。区域内(特に参詣道)については、ハイカーや農林業者が利用しており、調査の結果、ゴミが全然ないという状況ではなかった。従って、人数を多く集められ、直ちに実行できるということから、積極的に当局に訴え、ユネスコの現地視察(エクスカージョン)の前日に高野山への参詣道である「町石道」の清掃作業を実施した。
2001.9.6 55名

イ 労働組合が世界遺産登録に関わった事例調査
自然遺産「白神山地」 自治労青森県本部、青森県、西目屋村
2002.11.27~28
前回の自治研集会にレポートの提出があった世界遺産「白神山地」に関して、青森県、自治労青森県本部、西目屋村を訪問し、登録前後の観光客の状況、世界遺産を持った行政側の現状、労働組合の果たした役割について、貴重な情報をいただいた。
ウ 世界遺産登録区域内エコウォーク
世界遺産登録がいよいよ秒読みになった段階で、世界遺産登録への職員、県民世論の喚起を促すことや県にとって大きなインパクトとなる世界遺産登録への参加意識の高揚、和歌山を訪れる人に感動をもって帰ってもらいたいということで、組合員を募集し「エコウォーク」というネーミングで区域内の参詣道の清掃作業を実施した。
a 高野山参詣道「高野町石道」エコウォーク
2003.10.11 38名
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このエコウォークの翌日、ユネスコの関係のNPO団体ICOMOSによりこの地域の現地調査があった。 |
b 熊野古道「滝尻王子」「近露王子」間エコウォーク
2004.3.20 60名
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熊野古道のメインルートのエコウォークを実施
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c 世界遺産区域内「一斉清掃」
7月1日の世界遺産登録直後に区域内の一斉清掃を実施。報道提供も行った。
2004.7.3 321名

エ 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」全国PR活動
7月1日の世界遺産登録以降、県観光振興課と共同で県の事業であるJR「ディスティネーションキャンペーン」の事前全国キャラバンを、現在実施している。内容については全国主要ターミナルにて、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」や和歌山観光パンフ等の配布である。
<実施日程>
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7/2、3
7/7
7/8
7/9
7/1
7/20
7/21
7/28
7/30
8/5
8/6
8/23
8/24
8/26
9/7
9/8
9/9
9/15
9/16
9/17 |
JR京都駅
JR大阪駅
JR三宮駅
JR天王寺駅
JR千葉駅
JR新宿駅
JR大宮駅
JR新大阪駅
JR金沢駅
JR名古屋駅
JR静岡駅
JR岡山駅
JR広島駅
JR博多駅
JR京都駅
JR品川駅
JR東京駅
JR天王寺駅
JR三宮駅
JR京都駅 |
(4) 効果とこれからの活動
組織の維持、強化をメインの目的に「社会貢献活動」を実施してきました。ボランティアという自らの気持ちで参加をし、県の職員であるという使命感をもって、日頃の自分の仕事ではできないような県民や地域に貢献できる活動ができるということで、参加者には、「組合ってなかなかいいことやるやん」と好評を得ているし、今までにないメンバーに参加をいただいていることや組合員からこんなことやったらというような声もでてきている。
また、当局からも「こんなこと組合にやってもらおう」ということで現実、前述の世界遺産の一斉清掃については、県側から組合に依頼のあったものであり、ディスティネーションキャンペーンでは当局と協働で実施をしている。
活動を通じて、少しずつではあるが組合員や県側の組合に対する期待感が、質・量とも変わってきたなと感じている。
地域の活性化という観点からは、フィールドが大きすぎて、なかなか感じることはできないが、個人の達成感がこれからいろんな取り組みに繋がってくると思っています。
これからは、今までのように「南紀熊野体験博」「世界遺産」などの一事業に合わせて実行委員会を作るのではなく、「地域活性化委員会」を組織し、いろんな「社会貢献活動」にリアルタイムで対応できるようにしている。また、県全体といった大きなフィールドでは従来どおり県当局と協働で行うことが、主となると思うが、地域といったスモールフィールドではNPOとの協働で実施をしていくことも今後視野に入れていきたい。
4. 最後に
今和歌山県には、テーマである「農山村の地域再生」を実行している「緑の雇用事業」と県にとって大きなインパクトととなる世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」がある。
「緑の雇用事業」は地球温暖化防止の大きな役割をもつ森林の保全といった地球規模のスケールと雇用対策の日本規模のスケールそして地域の活性化・再生といったスモールスケールのものを共有している事業である。
「世界遺産」は、地球人として先人達の遺産を我々の責任で受け継ぎ未来へ引き継ぐものであるが、地域にとっては大きな経済効果をもたらすものであり、大きな期待をかけている。
「緑の雇用事業」は「定住」「世界遺産」は「保護と観光、保護と地域振興という相反する面の両立」がキーワードになるだろう。
自治労の組合員全員が地域の活性化、地域の人々の生活の向上を目的に日頃仕事を行っている。その自分たちの仕事について意見を交換し、お互いに参考にしていく場がもっとあってもいいのかもしれません。自治労の定期大会、自治研集会など大きなイベントも地方で開催していただくのも大きな経済効果をもたらし、地域にとっては有り難いことですが、さらに目的や内容を絞り込んだシンポジウム的なことを自治労として実施をしていただき、地方公務員として、地方公務員の労働組合としての地域への取り組みや前述のキーワードの解決の参考とできればと考えます。
最後に、ぜひ今が旬の和歌山の地で世界遺産を肌で感じていただき、「地域活性化」や「環境問題」「観光」等のテーマで「地域活性化シンポジウム」「世界遺産シンポジウム」的なものを開催していただくことを要望して、レポートを終了します。
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