【自主レポート】

2003「まちかどウオッチング」実践

徳島県本部/上板町教育委員会 黒川  健

1. はじめに

 上板では同和問題の解決に向けてさまざまな施策を実施しましたが、今日までの取り組みによって生活環境の改善等の物的事業面においては一定の成果を収めてまいりました。しかし、進学率、就労等の格差は依然として存在いたします。また、結婚差別も解消してきていますが、結婚後の生活には曲折が多いと言われています。また、差別落書きは依然として根深いものがあります。したがって、同和問題の解決には多くの課題が山積しております。そして、町民の人権が守られて、住んで良かったと思えるような町づくりをするには、人権教育の充実は避けて通れないという認識のもとに実施した「まちかどウオッチング」は2回目の実施となりました。

2. 「まちかどウオッチング」の意義

 1998年に実施した「上板町住民意識調査」において、町が実施するさまざまな住民啓発事業については住民の参加意欲が低いことが判明いたしました。そこで、新しい試みとして小地域を対象とした小地域住民学習会「まちかどウオッチング」を2001年に実施し、2回目は1年の準備期間を経て2003年に実施しました。

3. 「まちかどウオッチング」の実施組織と実施方法

 町長を本部長とする「上板町人権啓発推進本部」が統括して、その推進組織として、「関係者事務局会議」と「班長会議」があります。「事務局」は人権課と教育委員会が担当し、事務的処理と研修を実施します。また、実施についての詳細の決定は「班内会議」で処理します。実施方法ですが、町内138支部を102個所に区分して実施しました。啓発担当者は行政職員152名、教職員79名22班を組織して、班長が支部長と交渉して開催日時、開催場所を決定して各戸に案内文書を配布します。

4. 2003「まちかどウオッチング」の啓発主題

 主題  ― ねたみ意識の克服 ―
 本町は同和対策事業に関して密度の濃い成果を上げてきました。しかし、事業の進行中や事業後に生じた誤解が「ねたみ」意識を膨らませてきました。また、郡内の他の町と比較してねたみの度合いが強いのは、啓発場面での住民への説明の密度の違いからきていると考えられます。そして、ねたみ意識の克服が住民の差別意識の克服に大きな役割を果たすと考えてこの主題を設定しました。

5. 実施までの経過と開催状況

 実施までに行政職員の研修を5回×2、関係事務局会議4回、班長会議3回、班別研修2回、行政職員・教育職員の合同研修会1回×3の事前準備をして2004年2月1日より3月31日までに「まちかどウオッチング」を実施しました。そして、出席戸数は1,012戸(参加率23.5%)で一会場最大参加戸数は36戸、最小参加戸数1戸でした。しかし、10支部で開催不可となりました。

6. 話し合われた内容

 ① 差別の実態に関する事柄
 ② 差別の解消を目指した事柄
 ③ 行政の施策に関する事柄
 ④ 現状認識に関する事柄
 ⑤ 配付資料に関する事柄
 ⑥ 開催方法に関する事柄

7. 2003「まちかどウオッチング」の統括

 厳しい差別の現実は継続していますし、ねたみ意識は各年齢層ごとに存在します。それらを解消する試みの一つとして同和対策事業の内容説明をすると多くの人が理解を示しました。また、同和対策事業の成果は町民の共有財産であり、多くの恩恵も受けているという評価もありました。しかし、特別措置法が失効して同和問題はなくなったと思っている町民も多いのが現状です。このような上板町の現状から、人権問題の啓発の中核に同和問題を位置づけて、今後とも「まちかどウオッチング」を計画的、継続的に実施する必要があります。