【自主レポート】
前橋市職労・学校分会では、学校用務技士がどのように子供たちの学校生活に関わって行けるか、子供たちのために何ができるかを模索してきました。ひとつの結論として出たものが、子供たちが安心して学べる環境創りです。わたしたちはそのために具体的に何をしたらよいかを議論してきました。 (1) 一つ目はストーブガード造りの取り組みです。前橋市の学校では冬季の暖房器具に主に灯油ストーブを使用しています。そのため、小学校などではストーブガードを設置しないと危険な状況が発生してしまいます。従来は市販のものを使用していましたが、見栄えはいいのですが、あまり丈夫とはいえず、元気な子供たちの前ではしばしば壊れることがありました。かつて1シーズンのうちに何回も用務技士が修理を行い使ってきましたが、元々が貧弱な造りのためあまり長持ちせず、すぐに買い替えなければならない状況でした。しかし1セット約2万円という高価なもので、学校には教室がたくさんあり予算的に多数買い換えるというわけにはいきませんでした。私たちは市教委と相談を行い、なんとかもっと丈夫で安価なものは無いか探しましたが残念ながら見つかりませんでした。そこで役員・技士長で相談を行い、「無いものは造ってしまおう」というわけで、ストーブガードの自主制作プロジェクトがスタートしました。 (2) 二つ目は教室や廊下の壁に張ってある壁紙です。前橋市の学校は、教室内の壁と廊下の教室側の壁はすべてクロス張り仕様となっており普段、児童・生徒の描いた絵や書道の作品・ポスター・壁新聞などの展示をするのに大変便利に使われています。しかし、画鋲を何回も抜き差ししているうちに引っ掛けて破れてしまったりします。破れが小さなうちは用務技士がのりをつけて補修していましたが、経年変化でひび割れてきたり、生徒のいたずらで大きくはがされてしまうこともたまにありました。全面張替えは、使用されているクロスが裏面布付きの厚く重い物であるため、その学校の用務技士だけでは困難で、また業者に依頼すればかなり費用がかかってしまいます。そのまま放置すると見栄えが悪いばかりでなく、環境の乱れは心の乱れで子供たちにも悪影響となります。そこで技士長を中心とした共同作業により壁紙の張り替えを行う事を提案しました。また切り売りで買うと単価が上がってしまう壁紙用クロスも100メーターひと巻きで買うとぐっと安く買えました。実際の作業は技士長の指揮のもと数名でクロスを持ち上げ一気に貼り付けてしまい手早くしわを伸ばすという手順によりスピーディに仕上げることができました。仕上がりは、さすがにプロ並というわけにはいきませんでしたが、既に何回も作業を行っておりかなり腕も上達してきました。壁紙の張り替え前と後の見た目の違いは歴然としており、作業を行った学校では校長をはじめ多くの先生方からもたいへん喜ばれています。 (3) 三つ目はローリングタワーを使った体育館の天井の補修および蛍光管の取り替え作業です。従来は業者に頼み修繕を行っていましたが、櫓を組んでの高所作業となるため、かなり経費がかかっていました。そのため依頼は年一回と限られており業者の作業を行った後壊れた天井や切れた蛍光灯が修理されるのは約1年後となっていました。学校の体育館は社会教育の場として、地域の人たちが仕事を終えた後の活動の場としてあらゆるスポーツを楽しんだりまた各種大会にむけ練習をするために貸し出されています。そして小学校の体育館は若干天井が低く、また天井の材質が石膏ボードなので、バレーボールなどでたまに天井を壊してしまうのは仕方の無いこととは思いますが、その後早急に修理をしないと、石膏ボードの破片が落ちてきたりして危険であり、また地域の行事などを行う時も見栄えも悪いままとなります。また蛍光灯が切れているとその周辺が暗くなり、バドミントンのシャトルが見えなかったりして運動するのに不都合が生じてしまうだけではなく怪我の原因ともなり大変危険でした。そのため特に夜間使用する地域の人たちにはいままで申し訳ない思いでいっぱいでした。 (4) 四つ目は児童・生徒が使う教室にある机と椅子の修理です。いままでも溶接のはずれなどは随時用務技士が修理を行っていましたが、机・椅子が多少壊れても報告しない児童・生徒が多く、よほど使えなくならない限り修理依頼はほとんどありませんでした。毎年、夏季休業に入るまえに、教室内の机・椅子のチェックを行い、壊れているものを終業式の日に玄関前に集めておくと業者が取りに来て修理して持ってくる、という流れでした。しかし修理費用がかなりの高額となっていたり、修理してくれるのは特定のメーカーの製品だけというのも問題でした。そのため修理してもらえないメーカーのものは用務技士が修理を行っていましたが、机・椅子のパイプは薄くこれを溶接するには一定の技術が必要でした。そこで、どうせ修理するならすべて自分たちで行うことを提案しました。また技士長を中心とした共同作業で行うことで技術面をカバーすることができます。また従来行っていた溶接のはがれの補修に加え、ゴムキャップの取り替えや机の天板や椅子の背板・座板の取り替えも手がけることとしました。これにより高額な修理費は材料費のみとなり大幅な経費の削減ができました。さらに用務技士の溶接技術の向上に加え、机・椅子の補修部品も準備できたので、いままで子供たちに不自由な思いをさせていたことが大幅に解消されました。これにより子供たちは嫌な思いをせず学業に専念できるようになったと思います。 (5) 最後に危機管理体制の確立です。近年全国で学校に不審者が侵入する事件が多発しており、中には児童・生徒を殺傷するというような大変凶悪な犯罪まで起きています。この問題に対処するために自分たちで何が出来るかを話し合いました。まず、子供たちが登校する時間帯に校門に立ち、不審者が侵入するのを防ぐ取り組みを始めました。さらに朝会や職員会議など教職員が子供たちに目がとどかない時間帯を中心に校地内の巡回を行い、常に不審者への監視を行う取り組みも行っています。そして子供たちが下校時にも周囲に目を配り安全確保に努めています。さらに警察関係から講師を招き安全対策について講義を行ってもらい、不審者にどう対応したらよいかなどをケースごとに学習しています。 以上5点取り組みを報告いたしましたが、子供たちが安心して学校生活が過ごせるためにこれ以外にもたくさんの取り組みを行っています。この取り組みにより、前橋の子供たちが少しでも不安を持たず、充実した学校生活が送れることを願ってやみません。 |