【自主レポート】
「女(ひと)と男(ひと)、性別にしばら
れない生き方を支援するための三和村
男女共同参画推進条例」について
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新潟県本部/三和村役場・総務課・行政係 秋山 友江
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1. 三和村における男女共同参画の取り組みについて
(1) 女性政策への取り組み経過
① 平成4年度~11年度 「女性セミナー開催」
ア 目 的: 女性が自分らしく自分の人生を生き、一人ひとりが地域の主人公になっていくために3年間の継続セミナーとして実施
イ 担 当: 教育委員会(3年間の継続事業で2回実施)
第1回 平成4~6年
第2回 平成9~11年
ウ 成 果: 女性セミナー卒業生が、自主グループ(出会いの会 会員20名)をつくり活動を開始。現在も積極的に自分自身のため、地域のため活動を展開中。
・ 平成11年度 女性政策担当課を総務課に移す。
② 平成12年度 「男女共同参画に関する意識調査実施」(回収率 74%)
ア 目 的: 村民の男女共同参画に関する意識を把握し、男女共同参画社会実現に向けた村の施策に活用するとともに、男女共同参画計画策定の資料とする。
イ 対象者: 満20歳から75歳までの男女500人(無作為抽出法)
ウ 調査結果: 抜粋
a 家庭や結婚などに関する考え方
女性は仕事を持つのは良いが家事・育児はきちんとすべきである。に賛成する人が、80%と多い。
次いで、「男の子は男らしく、女の子は女の子らしくが良いか」が76.3%となっている。
b 男女の地位の平等について
地域の中で「男性のほうが優遇されている」という人が、男女ともに44.9%となっている。また、「男女平等」であると答えたのは男性35.6%に対し女性は23.5%と少ない。
「男性優遇」の認識は、全体で「社会習慣(しきたり)について」が最も多く60%、次が「職場の中」で56.2%となっている。
「平等」の認識は、全体で「学校教育の場」が一番多く61.4%となっている。
c 「男女共同参画社会」を推進していくためには、どんな施策に力を入れていくべきか
全体では、「高齢者老人のための施設や介護サービスの充実」が最も多く次いで、「保育施設、サービスの充実」「男女平等の意識啓発活動の充実」となっている。
性別では、男性は「男女共同参画計画の策定、条例の制定」が多く、女性は「育児、介護」が多くなっている。
③ 平成12年度 第4次総合計画に女性プラン策定を明記
④ 平成13年度 男女共同参画計画策定委員会を設置し、計画策定を検討
⑤ 平成14年度 三和村男女共同参画計画策定
ア 村民参加の計画づくり: 計画づくりのプロセスが意識啓発につながる。
a 女性委員を中心に非常に熱心に連夜夜遅くまで検討を重ねた。
b 委託業者を入れないで手づくりの計画とした。
c 委員の意見すべてをできるだけ盛り込むように努めた。
d 家庭の中の暴力については、夫、恋人だけでなく舅、親戚などの家族まで対象とした。
イ 計画の特徴:
a 女性の人権擁護に関して三和村独自の視点により、地域特性を多く盛り込んだ計画。
b 計画の進行管理と評価の実施。
計画達成度を指標などで示し公表するとともに、「政策効果」評価と「事務事業」評価の実施。特に行政における38項目の重点事務・事業については、所管課が責任を持って目標達成・実践評価を実施すること。小規模自治体ならではの地域・行政総ぐるみによる活動展開ができる。
c 計画推進のためのネットワークづくり。原点は、地域に暮す住民一人ひとりの知識と認識が大切で、そこから実践が生まれる。まずは、地域社会(町内会単位)で、女性が役職等につき社会参加することから始めている。
d 女性のための総合相談窓口の設置→女性に対する暴力の根絶のため、女性が何でも気安く来ることができる窓口を設置。
⑥ 平成15年4月 男女共同参画推進条例検討委員会を設置し、条例案を検討
⑦ 平成15年12月 「女(ひと)と男(ひと)、性別にしばられない生き方を支援するための三和村男女共同参画推進条例」制定
ア 条例の特徴:
a 責務の中に地縁団体の責務を明記したこと。
・ 多くの条例は、事業者等の中に地縁団体も含めているが、農村地域においては、集落や地域の各種団体において、まだまだ根強く男女間においてさまざまな差別があるため、あえて地縁団体の責務について明らかにした。
b 権利侵害禁止の中に家庭の中におけるあらゆる暴力的行為を加えたこと。
・ 他の条例の中には、配偶者間とか男女間という表現をしているところが多いが、三世代同居という家庭環境の多い地域においては、嫁、姑、舅間でも暴力的行為が発生するため表現のしかたに配慮した。
c 基本施策で人材育成、表彰、模範的就業措置を盛り込んだこと。
・ 男女共同参画社会の推進は、人づくりが基本であることから積極的に人材を育成することを条例の中で規定した。
・ 就業における措置では、村が範を示すための施策を盛り込んだ。また、タイトルも単に「三和村男女共同参画推進条例」とするのではなく、読んだだけで条例の目的がわかるように意識して長くした。さらに、条例検討委員12名のうち大学教授が1名だけで、あとはすべて公募等に応じた住民ということも他にはあまり例がない。専門的知識については詳しくなかったかもしれないが、地域の実情を十分に知り得ている委員だったため、地域にあった住民参加型条例案を提言できた。
⑧ 平成16年度の新規事業
ア 女性相談:
・ 計画書に基づき、女性を対象としたあらゆる相談の窓口を開設した。
相談日は、毎月1回 第一土曜日 午前10時から午後4時まで相談員は、1名(村外者)で女性。
イ モデル集落助成事業:
・ 農村地域においては、最も身近な集落内で、まだまだ男女共同参画に関する意識の浸透が難しく、また今後どうやって取り組んでいったら良いのかわからないといったことが悩みとなっているため、村では今年度モデル集落を募集し、活動に対し助成を行いながら推進体制の確立を図っている。
ウ 地域推進員の設置
・ 地域における男女共同参画に関する意識の高揚を図るため地域推進員を設置。
2. 役場職員の状況
・全職員の男女数と女性の占める割合
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男 性
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女 性
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女性の割合
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平成5年度
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51人
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43人
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44.8%
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平成10年度
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50人
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49人
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49.5%
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平成15年度
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42人
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55人
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56.7%
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・課長職の男女数と女性の占める割合
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男 性
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女 性
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女性の割合
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平成5年度
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9人
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0人
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0%
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平成10年度
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9人
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0人
|
0%
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平成15年度
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7人
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3人
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30%
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・係長級の男女数と女性の占める割合
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男 性
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女 性
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女性の割合
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平成5年度
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12人
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4人
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25.5%
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平成10年度
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10人
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10人
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50.0%
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平成15年度
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11人
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7人
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38.9%
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※ 職員数は、年々女性職員の方が多くなってきており、係長級をはじめ管理職への女性登用も積極的に行われている。
※ 日頃から、男女平等は基より、同じ職場に働く全職員が平等の考えで、職員研修等へも積極的に参加させている。
3. 今後に向けて
男女共同参画については、長い歴史の中で築かれてきた習慣しきたりを改善しなければ何も始まらず、そこには、住民一人ひとりの意識改革が大きなキーワードとなってくる。
また、法律などが着実に整備されてきても、最も身近なところまでは行き届いていないのが現実となっている。
さらに、住民あるいは村の担当者で男女共同参画を唱えてもなかなか前進は難しく、それが今、多くの自治体では大きな悩みとなっているのではないだろうか。
三和村の場合においては、村長自身も積極的に男女共同参画推進を目指し取り組んでいることと、住民の中にも積極的に活動を進めている団体、個人がおり、互いに協力し合い、この3年で計画書と条例の整備を整えることができ、急速に男女共同参画に向けた取り組みが図ることができたのではないかと思う。
これからの課題としては、やはり地域を担う住民一人ひとりの男女共同参画に向けた意識改革ではないかと思う。男も女も性別、年齢にこだわらず互いに人権を尊重し、認め合い、協力し合うことにより男女共同参画社会が成り立ってくるのではないだろうか。当村のように昔ながらの社会慣行で築かれ根強く残っている固定的役割分担意識を改めるには、まず自分の身近な周りから考え家庭、地域、職場などできるところから男女共同参画に取り組むことが大切だと思う。男女共同参画は、生まれてから死ぬまで、まさに人生そのものであり、今最大の課題となっている。これから一人ひとりの意識を高め、人、地域を変えるには、長い時間がかかるかもしれない。しかし、地域をつくり、支え、発展させるのは、一人ひとりの力であり、そこに男女共同参画の果たす役割は非常に大きいのもがあると考える。
三和村も今後は、男女共同参画計画並びに条例を基に、地域、住民、企業との連携体制を確立し、互いの情報交換を行う中で協力し合い「まちづくり、ひとづくり」から一層の男女共同参画を進め「男女が平等・対等を前提に、性別に関係なくお互いの協力の下で個性や能力を十分に発揮できる社会」を目指していきたいと考えている。
女(ひと)と男(ひと)、性別にしばられない生き方を支援するための三和村男女共同参画推進条例
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