【自主レポート】

青山町における男女共同参画への
取り組みと、今後の展望

三重県本部/青山町職労

1. 序 論

 男女共同参画社会基本法には、「男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性にかんがみ、男女共同参画社会の形成に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。」とあり、社会は男性と女性を対等な構成員で共に責任を担うべきものであるとしている。
 なぜ基本法を定め男女共同参画社会の実現を目指す取り組みをしなければならないのか。それは、男性も女性も多様な生き方を選択できる「自己実現」できる社会になっていないからではないか。教育は男女平等に受けることができるが、家庭の中での男女の役割分担の偏りや職場での待遇もかなり違ったものとなっている。自治体で働く者とて同じである。組合活動においても役割分担の偏りや方針決定の場への女性の参画が少ない現状である。その原因の一つに女性自身が尻込みをしていることが挙げられるのも事実であるが、他方で女性の参画に周囲の偏見があったり、社会通念が男女共同参画の邪魔をしていることも多いのではないか。

2. 青山町での取り組み

 青山町では、男女共同参画の取り組みということで、平成7年1月に女性の地位向上をめざして第1回女性のつどいが開催された。それから毎年、実行委員会を組織し、第5回まで女性のつどいを開催してきた。
 実行委員会は、個人と各種団体の女性で組織され、職員労働組合からも数十名の組合員を送り出し、実行委員会に参画してきた。「一歩踏み出すために」というタイトルの講演と共に、女性が元気になる催しを目指し、エアロビクスの体験教室や、太極拳、3Bらくらく体操など、バイタリティー豊かな活動を住民と共に行ってきた。
 5回に及ぶ女性のつどいを基に、第6回からは、国の男女共同参画基本法及び三重県の男女共同参画推進条例の施行に伴い、つどいの名称を「けやきのつどい」に変更し、男女が共に参画するつどいとなった。内容も、男女が協力して取り組める身近な題材をと、寸劇を行った。会社や飲み屋での日常風景「イヤやったら、やめたらええやんか」と題して舞台を演じた。寸劇を鑑賞したあと、グループ討議に移り、日頃からの疑問や、日常何気なく行ってしまっている慣習に対する意識の違いについて、熱い討論が行われた。
 第8回では、実行委員が、子育て、介護、地域社会の各グループに分かれ、それぞれのグループで「こんな社会になったら……そのための方法は?」という『提言』を作成し、提言に賛同したつどいの参加者から署名をあつめる、アメリカカリフォルニア州の「ライティング(writing)」という形式で行い、その結果、参加者からたくさんの署名が集まり、また参加者によるまちづくりに対する新しい提言も出された。
 そして、それらを提言書としてまとめて町長に手渡した。
 第9回では、これらの提言・署名をもとに、追跡報告会や、①あなたのアンテナは、高い?低い?(男女の意識調査)、②生ゴミのコンポスト、③DVについて考えよう、④地元産物で特産品づくりの4つのワークショップを設置し参加者が積極的に話し合えるつどいを行った。
 第10回では、ひと(男)とひと(女)のつながりを大切に~食の文化祭家庭料理大集合をテーマに、食にまつわる講演会や、各家庭において、パートナーと一緒に作った手作り料理を持ち寄り、レシピや苦労話を添えて会場に展示を行った。料理の出品者の中には、「夫婦で料理を初めて作った」という方もいて、家庭における男女共同参画の一歩となったようだ。

3. アンケートにみる今の意識

 2004年6月に、役場職員を対象とした「女らしさ、男らしさにこだわりすぎてはいませんか?アンケート」を実施した。これは、日常生活や家族の意識の中に何気なく組み込まれている男女のあり方を、『A家族関係』『B家事』『C育児』『D介護ケア』『E仕事と家庭』『F余暇・社会活動』の6つの分野、合計30の質問に設定し、YES/NO形式の回答によって、意識の傾向を探るという趣旨である。1997年に20歳以上男女約300人を対象に行ったアンケートと同様の内容で、6年間の経過をもって意識にどのような変化があるかを知るという狙いも含まれている。
 今回のアンケートの結果を6年前のデータと比較して検証してみる。

A:家族関係のアンケートでは、家庭における男女の関係は対等かどうかが注目される。「夫を『主人』と呼ぶのは当然だ。YES/NO」という質問に対し、1997年調査では年代が上がるほど夫を「主人」と呼ぶのは当然だと思っていたが、2004年調査では年代的な傾向はうかがえないが、全体的にその割合は低くなっている。また、「妻は当然家の墓に入るものだ。YES/NO」という質問に対し、1997年調査では全年代とも半数以上が妻は夫の家の墓に入るものと思っており、年代が上がるほどその傾向は強かったが、2004年調査では男性では50代以上、女性では40代以上で半数を超えるに至り、夫の家の墓に入ると思う傾向は弱まっていると推測できる。

B:家事のアンケートでは、男性も家事をしているかどうかが注目される。「お茶は自分で入れる。YES/NO」という質問に対し、2004年調査で40~50代の男性のほとんどが自分で入れているのが特徴的である。家事の項目では全体的に年代的な傾向は見受けられない。また、「普段トイレ掃除をしている。YES/NO」という質問では、1997年調査及び2004年調査の両方で男性のほとんどがトイレ掃除をしていないことがうかがえる。

C:育児のアンケートでは、子育ての場面で男女に拘る意識がみられるかどうかが注目される。「女の子は淑やかに、男の子は逞しく育てる。YES/NO」という質問に対し、1997年調査では、男性の約7割が「女の子はしとやかに、男の子はたくましく」にこだわっていたが、2004年調査では3割余りと半減しており、女性に至っては2割を切っており、こだわりが無くなりつつある傾向がうかがえる。また、父親の育児参加を見れば、2004年の調査で男性が約1割、女性に至ってはほぼ0に近い状態となっており、男性の育児参加が増えている。また、「男の子より女の子の言葉づかいが気になり厳しく注意する」という質問に対し、1997年調査では、男性の約6割、女性の約5割が女の子の言葉づかいを気にしていたが、2004年調査では男性、女性とも約3割と減っており、近年男女の言葉づかいに差が無くなりつつある世相の反映ともとれる調査結果となった。

D:介護ケアのアンケートでは、誰が誰のためにやっているのが現状であるかが注目される。「家族のために自分を犠牲にする『耐える女』が理想だ。YES/NO」という質問に対し、1997年調査では、60代の男性の約6割が「耐える女」を理想としていたが、2004年調査では約3割と半減しており、男性全体でも全体の1割余りである。一方、女性は、2004年調査では全体で1割未満とほとんど「耐える女」という意識は持っていない。また、「親が倒れたら女性(娘や息子の妻)が退職して看病YES/NO」という質問に対し、上記項目の反面、2004年調査においても男性の50代の約4割が女性が看病すべきとの意識を持っている。しかし、A家族関係の調査項目の「経済力が女性の2倍以上」の男性が3割余りであったのと比べ約1割多く、経済力と「看病は女性」と直接的に結びつかないものと推測できる。

E:仕事と家庭のアンケートでは、仕事と家庭のバランスの男女の差に注目される。「『子育ても、いい仕事も』と悩む女性はわがままだ。YES/NO」という質問に対し、1997年調査では、「子育ても、いい仕事も」と考える女性を男性の約3割がわがままと考えていたが、2004年調査において50代以下ではほとんどその意識がなくなりつつある。また、「女性が両立に悩んでいたら「無理せず退職を」とアドバイスする。YES/NO」という質問に対し、仕事との両立に悩む女性に対し、退職を勧める男性が3割余りおり、「いい仕事には家庭を忘れるくらい」の項目の結果とほぼ等しく、男性の家事参加・分担が進んでいない現状がうかがえる。それはまた、女性の能力を発揮する機会を奪うことにもなるのではないだろうか。

F:余暇と社会のアンケートでは、レジャーや休日の過ごし方の男女の違いに注目される。「家族の休む休日、女性(妻)はかえって忙しい。YES/NO」という質問に対し、1997年調査では、女性の7割以上が家族の休む日は、女性がかえって忙しいと思っており、2004年調査でも約5割と2割減とはなったが、その思いは変わっていないと考えられる。また、「家族の中でボランティアや地域の活動に熱心なのは女性だけ。YES/NO」という質問に対し、1997年調査と2004年調査と比較して、男性、女性ともいずれも大きく意識の変化が現れている。これは、近年のボランティア意識の向上にあると推測できるが、2004年調査結果を見れば、その思いは男性が1割余りに対して、女性が2割余りと、いわゆる出合仕事を除けば、いまだに女性から見れば男性のボランティアや地域活動への参加が進んでいない現状がうかがえる。

4. 住民との意見交換に見る今の意識

(男女共同参画が家庭でどの程度進んでいるのかについて)
 年代によって相当考え方に違いがあることがうかがえる。また、家庭環境たとえば2世代、3世代同居なのか、共働き世帯なのか、子育て中なのかそれぞれの置かれている立場で意識に大きな開きがある。
 話し合いから、まだまだ、家意識、家長制度を引きずっている現象が多く見受けられた。

(住民自治は地域の中から生まれる。そのかぎを握るのは自治体で働く職員である。)
 行政は、地域の活性化や住民自治を進めようとしているが、なかなか進まないのが実態である。また、地域は、旧態依然で遅々として男女共同参画は進んでいない。
 ・「職員はサービス精神がない」「役場は入りにくい」等々の声を耳にするが、住民の役場に対する反発的な気持ちを協力的な気持ちに変えていくには、住民を味方にするよう持っていくには、どうすればいいのか。
 ・職員は世間が狭い。職員は自ら垣根を作っている。なぜそうなのか。地域の場へ出ると意見を求められた時、個人的な考え方でも公的な考え方ととられてしまう恐れがあるので、地域へ出て行くのが煩わしくなるのではないか。
 ・地域にかかわりを持とうとしない職員に、住民は協力をしないのではないか。
 ・地域にとって職員は、すばらしい人材なのだから、地域は、職員を活用したいと考えている。
 ・地域が男女共同参画に取り組めば、地域が活性化し、もっとすばらしいものになるのではないか。それは住民自治につながるのではないか。
等々の意見が出され、職員が、地域に根付いた活動を男女共同参画の視点ですることの重要性を私たちは認識した。

5. 結論と今後

 男女が、性別に関わりなく個性と能力を発揮する機会、社会のあらゆる分野の活動の場に参画する機会は、等しくあるべきで、もし格差があるのなら改善すべきである。
 男女共同参画社会を実現するのに、自治体は、あるいは職員は何をすべきなのか。
 ① 方針決定の場に女性の参画を促すには、まず、審議会や管理職に女性の登用を積極的にすることではないか。企業や地域社会における女性の登用を関係機関に積極的に働きかけることも大事なことではないか。
   しかし、女性の登用を推進するには、まず人材発掘や人材養成について取り組みが不可欠であり、それは、かなり時間を要することではあるが自治体は担わなければならない。
 ② 家庭における役割分担の偏りの是正は、啓発啓蒙活動によるしかない。
 ③ 職場における男女平等の待遇を築く活動は、組合としても特に力を入れなければならない。
 ④ 地域社会における男女共同参画を行政側も職員側も推進する。

 地域における男女共同参画を推進する活動の基本は、新しい地域づくり、新しいまちづくりを進めることになる。具体的には(1)平等に基づく人権を大切にするまちづくり(2)住民の意思を反映させる民主主義に基づくまちづくりである。
 女性にとって住みよい社会は男性にとっても住みよい社会である。老人にとって住みよい社会は若者にとっても住みよい社会である。子どもにとって住みよい社会は大人にとっても住みよい社会である。
 このことは、(1)平等に基づく人権を大切にするまちづくりそのものである。
 今、時代は地方分権の動きを活発化させている。自治体にとって、地域に住民自治をどう根付かせるかが大きな課題である。そのためには今までの行政運営の手法では限界があり、行政は住民からの要望対応型行政から、今後住民自治を確立するためのパートナーとしての行政へと変わっていかなければならない。また、職員と住民は、住民の自立・住民の自己決定・住民自ら責任を果す住民自治の実現に向けて取り組んでいかなければならない。住民は住民主権を名実ともに実践しなければならないし、議員まかせ、役場まかせにしていたまちづくり部分を自らの手で実行していかなければならない。
 男女共同参画社会づくりを推進することは、住民自治を推進することに繋がっていく。日々の生活に直結する住民自治のシステムづくりは、男性と女性が対等な構成員として、共に責任を担うべきシステムである。行政が担うべきもの、住民が担うべきもの、行政と住民が協働で担うべきものを我々は住民と議論を尽くし、共に模索しなければならない。これは当然ながら、地域の人々や地域の組織と連携しなければできないことである。このことは、(2)住民の意思を反映させる民主主義に基づくまちづくりである。
 今回のテーマに取り組む中で住民との意見交換会を行った際、住民側から出た意見に「職員は、地域に学ぶ機会をもっと持ってほしい」「職員自身も地域の住民であるという自覚をしてほしい」「地域で自分は何ができるかを各自が探ってほしい」というものがあった。
 職員側からは、「職員は一生懸命している。これ以上に何を求めるのか。正しい評価をしてほしい」というものであった。しかし、住民側は、「職員は、高い位置にいる。私たちのいるところまで降りてきてほしい」「いっしょに汗を流してない」という意見もあった。
 官と民をつなぐことができるのは、自治体で働く我々職員である。住民といっしょに考える。問題を提起し意見交換し議論を尽くすことで、住民自治をどのように進めていくかの解決策が見えてくるかもわからない。
 何よりもまず職員の意識を変えることである。
 すべての起案は一職員からである。住民に直接接するのも一人ひとりの職員である。その職員が、どんな意識でいるかは多方面に影響を与えるからである。
 そこで、職場におけるISOマネジメント活動に見るような、日々問題意識の喚起を促す取り組みも一つの方法として効果が上がるのではないかと考えられる。職員は、男女共同参画の意識をもって地域に関わりを持つことである。
 社会情勢の変化は激しいが、一人ひとりが生き生きとした多様な生き方ができる豊かな社会、活性化する地域、住民自治を築くため、住民と行政・市民と職員が、男女共同参画で、民主主義の議論を尽くせば、新しい形のまちづくりが、見えて来るのではないだろうか。

青山町における取り組み経過、県との共催事業

男女別総合評価の比較

アンケートにみる今の意識(6年前と比較)

ライティングにおいて出された提言一覧