【自主レポート】
環境にやさしいまちづくり
三重県県本部/名張市職員労働組合・副執行委員長 旭 久子
|
1. はじめに
平成17年3月までの合併期限が迫り、各市町村では合併に係る協議が進み、新しい市が誕生していますが、東海地区、近畿地区の中間位置にある三重県名張市は、上野市他5町村と伊賀市となることについての住民投票によって、単独の自治体として存続するということが確認され、単独市として歩んでいくこととなりました。
そして、財政状況の厳しい局面をむかえ、行財政改革を断行して21世紀にふさわしい行財政システムを早急に構築するため、市として市政一新プログラム改革項目実施計画61項目を作り、行政改革評価室を中心に取り組んでいます。
2. 新しいまちづくりにむけて
昭和40年代から名張市では大阪のベッドタウンとして住宅開発が進み、山が切り開かれ都市化が進むにつれ、ごみ排出量の増大、ダイオキシン、不法投棄等環境問題が住民の間で大きく取り上げられるようになってきました。
そこで、名張市は、2000年を「環境元年」と位置付け、4月からごみゼロ・リサイクル社会の実現のため「ごみリサイクル推進室」を設置、自ら環境ISO14001の認証を取得し、継続的に地球環境の保全に努めていました。
しかし、昨今の財政状況悪化により、資源ごみ集団回収補助制度、生ごみ処理機購入補助制度、ごみかご設置費補助制度が廃止になり、14年度実施予定のプラスチックごみの回収は、プラスチックの分別にはリサイクル施設の整備のための負担が大きいため凍結になりましたが、すでに各地区住民にごみの分別説明会を行って、十分理解を得ていたので不燃物として回収される燃やさないごみが増え、不燃物処理場が予定外の分量オーバーで、新清掃工場建設が必要になってきています。
また、三重県企業庁の「三重ごみ固形燃料(RDF)発電所」(多度町力尾)の事故から、焼却炉を考える会の市民の環境保全活動を行っている団体の集まり「環境ワーク」によってごみ問題シンポジウムが開催され、近隣市町村はRDFに参加をしていますが、名張市は直接焼却炉やRDF(ごみ固形燃料)化など資源率や減量化率、事業費を比べた結果参加しなかった事や名張市がガス化溶融方式(ごみを焼却せずに無酸素または低酸素の状態で蒸し焼きにしてガスと灰に分解、ガスをエネルギーとして高温で灰を溶かす方式)の計画をしていることについて、せっかく住民にごみのリサイクルができてきたのにだめになってしまうのではないかと市民が共に考え、各地区のゴミ回収の工夫を凝らした事例の発表も行われました。
この環境ワークとは、名張市が委託した名張市市民活動率先協働事業としてシンポジウム開催に向けて、「なばり廃食油リサイクルの会」「伊賀環境問題研究会」「名張市消費生活協議会」「アクション4」「みどりの木」の、5つの環境保全活動を行っている団体が集まって結成されたものです。この事業は、補助金事業ではできなかったことが市民活動事業として成功した事業であり、新しいまちづくりに向け市民活動が活発になり、名張市の顔を住民自らが作り出そうとしています。
新清掃工場の熱分解ガス化溶融炉方式を選択する理由として、ダイオキシンなど有害物質の発生を抑えられる、燃焼と溶融を一体的にするため効率が良い、処理過程で出る金属類を資源として回収できるなど利点がありますが、新しい技術のため長時間の運転実績が少ないため、専門家や住民らによる選定のための委員会を設置して、利点を比べ方式を決めていく方針を市議会に提案しました。この溶融炉方式は、高温であらゆる種類のゴミを一気に溶融して処理してしまおうという発想が強く見られます。しかし、「処理する」という発想では、問題を根本から解決することにはつながりません。
ゴミ問題の基本は、ゴミになるものをつくらないことにつきます。しかし、私たちは生きている限りモノをつくり続けざるをえませんからゴミになるモノをゼロにすることはできません。できる限り減らすことを目標にし、企業は「ゴミ削減」をテーマにした取り組みをして欲しいものです。
また、建設場所についても、これから住民を対象に、環境アセスメント(影響評価)を含めた事前調査をすることを先月説明し、住民と共に考えていくことになっています。
3. 三重県の環境にやさしい取り組みについて
三重県が環境省より受託を受けて、地球温暖化防止の新指針として、産業界だけでなく県民一人ひとりまで巻き込んだ「三重モデル」の構築を進めています。二酸化炭素削減努力をした県民に税金から補助金を提供する現行の制度などをエネルギーの提供側となる企業と消費する県民が互いにメリットを与え合うシステムに拡充することで、行政が後押ししなくても継続するサイクルの確立を目指しています。
削減モデルの内容は、
① エコポイントの拡充……現行では電力消費を一定量節約した県民にポイント制で補助金を支給する「エコポイント」。これをガスやレジ袋なども対象を広げるとともに、集めたポイントをスーパーマーケットなどで商品と交換できるようにする。
② パークアンドライド……スーパーなどの駐車場の一部を、通勤客の自家用車向けに貸し出すことで公共交通機関の利用を促す
③ 廃食油のリサイクル……店舗で使用した食用油をバイオディーゼル燃料(BDF)化し、自動車燃料として再利用するもの。ディーゼルエンジン自動車の代替燃料として再利用するもので、エンジン改造の費用がなく、出力も軽油と同等。酸性雨の原因となる硫黄酸化物が発生せず、黒煙も少ない“環境にやさしい燃料”と言われている。
④ エコベルマーク……環境に配慮した製品に交付される「エコベルマーク」についても、エコベルマーク協会の協力をあおぎ、消費者が集めたマークとメーカー側の商品・サービスの交換を図る。
⑤ 環境定期券……休日のバスなど利用客の少ない交通機関で、定期券を持つ本人と同伴者の運賃を割り引くなどして利用を喚起するもの。県内では三重交通が実施している。
そして、温暖化防止センターとして環境保全事業団を指定し、県内の地球温暖化防止拠点となり自動車や家庭の二酸化炭素排出削減を目指す事業やシンポジウム開催などを立案するための委員会を設置し、県民や有識者、企業の中から地球温暖化活動推進員を養成するほか、市町村などでつくる「地球温暖化対策地域協議会」を設立する方針です。
「地球温暖化」の現状は一般に知られるよりずっと深刻な問題です。このまま地球温暖化が進めば、地球に様々な悪影響を及ぼします。日本の南東約4,000kmの太平洋に浮かぶマーシャル諸島共和国が、地球温暖化による海面上昇で海に沈みつつあります。「1年前は異常がなかったのに、海岸のヤシの木が倒れてしまい、海面上昇は急速に進んでいる事を知ってほしい」と語っています。日本など先進国による二酸化炭素などの排出によって、小さな島国が消えようとしています。
地球温暖化とはわたしたちの孫の世代の人たちにツケを回して、今日に生きる私達が豊かな暮らしを送っていることの現れです。地球の使用料のツケ回しはやめて、私達今の世代から対策を始めることはもう避けて通れないのです。
4. 名張市職労の取り組みについて
子どもたちの未来に美しい自然都市名張を残すため私たちにできることは、合併してもしなくても、環境にやさしいまちづくりに取り組むことだと思います。
名張市において、廃食油の回収が3ヶ月に1回行われ、せっけんと肥料になっています。
琵琶湖の水質保全から始まったせっけん作りが、滋賀県愛東町で「イエロー菜の花エコ・プロジェクト」の取り組みとなり、全国に広がろうとしています。三重県では、いなべ市になった藤原町で廃食油から燃料化の取り組みがあります。地球温暖化ガスである二酸化炭素の排出量削減に大きく寄与し、環境に対する負荷の低いシステムであるこのプロジェクトとは、休耕田で菜の花を栽培し、搾った菜種油を使用後、バイオディーゼル燃料(BDF)に精製し自動車などの燃料にするものですが、様々な課題があります。
例えば、BDFの課税であったり、菜種栽培が農家の経営にとって魅力があるものにするにはどうすべきかだと思います。現状は、脱化石燃料・脱原発が政策として位置付けられておらず、軽油とBDFが同一に課税されています。また、農家の人が菜種を育てても生活していけるだけの保障もない。さらに、国内で使われている菜種の多くはカナダ国内の菜種の半分近くは遺伝子組み換え、不安感の残る組み換え作物が気付かないうちに国内に入ってくる危険性もあります。
最近では、このプロジェクトのサイクルの中に、間伐材などの原料を炉内で燃焼し、ガスを発生させて発電や熱利用につなげる循環型ガス炉の研究が特許申請されるまで制度が高められました。バイオマス変換式ガス発生炉装置(木質系ガス炉)の開発とは、間伐材や製材廃材をおがくず状に砕き、炉内で蒸し焼きにして水素ガスや一酸化炭素、メタンガスなどを発生させ、ガスの燃焼により発電や熱利用により冷暖房、温水装置などへの応用が可能で蒸し焼きの過程で除菌や殺虫効果のある木酢液もできます。
自分たちで考え、自分たちで作り出していくという「地域自立」を伴った「資源循環の形」、地域の問題を解決していくためには、多くの人々、多様な団体と共同が不可欠です。
こうした循環型社会作りを進めるなかで、経済の構造を一気に変えるのは大変です。現代文明を変えるには大きなパワーが必要です。現在の暮らし方は間違っていると感じている人がおかしいと気づき、江戸時代に戻ることはできないまでも江戸時代に学ぶことはたくさんあります。住民に共感を持ってもらい、参加してもらう。行政にも共感を広げる、さらに企業や事業者にも参加を広げていくということができれば「地域」は変わります。
もうひとつ考えていかなければならないことは、水環境にかかる水管理についてです。
下水道整備には建設に大きな費用がかかり、排水を流したらそれでおしまいということで、流した水についての責任がどこかにいってしまうという形です。あとは下水道処理場が処理してくれるという他人任せのシステムといえます。特に、水は毎日使い、毎日家庭から出て行きます。それがいい加減に管理されていたのでは川は汚れます。自分が出した排水は自分たちが責任を持って管理することが必要です。
しかし、下水道設置には時間とお金がかかります、高性能の合併浄化槽には単独浄化槽の設置に比べて費用が大きく上回るという問題があります。
滋賀県環境生活協働組合が発信している内容は、すべての家庭排水を流域下水道によって集中処理する方式なく、地域の実情に合った総合的な家庭浄化システム作りです。この水質保全の考えで、三重県飯南郡飯南町は合併処理浄化槽が各戸に整備がされるシステムづくりをし、生活排水処理事業の推進をしています。
名張市は公共下水道事業、農業集落排水事業で下水道整備が進んできましたが、財政問題で整備計画の遅れや受益者負担金の問題が生じてきています。
少しでも琵琶湖から始まった地域の自律と自立による資源循環の地域モデル「菜の花プロジェクト」を広められるよう、住民とのネットワークづくりをしていきたいと思います。
また、県の提案する三重モデルの早期確立のため市職員で協力し、推進していきます。
5. おわりに
国から地方に税源を委譲する一方、国庫補助金や地方交付税を減らす「三位一体改革」、税源が委譲されれば地域事業に合わせた行政サービスができると期待の高かった「三位一体改革」、ですが、16年度予算では税源委譲があまりないまま地方交付税が実質12%(全国で3兆円)削減されています。民でできることは民に任せていこうと、保育所の民間委託、給食の民間委託など質の向上が目的のためにはじめられたことが、市の財政難に伴って臨時職員のカットという苦しい状況におかれて、地方に働く弱者から削減の対象になっているのが現状です。地方から労働組合からもっと国に怒りの声を上げなくてはいけないのではないでしょうか。
市の行財政改革の61項目実施計画のうち、16項目の目標期日を延期すると議会に報告がありましたが、改革項目の実践に固執するのではなく、職員組合と十分に議論をし、改革項目の変更もあり得るとする立場で協議することを求めていきたいと思います。
|