【自主レポート】
地球温暖化防止に向けた取り組み
三重県本部/明和町職員労働組合
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1. はじめに
地球温暖化問題とは、人の活動に伴って発生する『温室効果ガス』の大気中の濃度が増加することにより、地球全体として、地表及び大気の温度が追加的に上昇し、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすものであり、その予想される影響の大きさから見て、まさに人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つである。
地球温暖化を防止するためには、その原因となる温室効果ガスの排出削減が不可欠であり、1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)においては、長期的・継続的な排出削減の第一歩として、先進国の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六ふっ化硫黄の6物質)の排出量について法的拘束力のある数値目標を盛り込んだ『京都議定書』が採択され、その中で、日本は、『温室効果ガスの総排出量を2008年から2012年までの第1約束期間に1990年レベルから6%削減』するとの目標が定められた。
それに伴い、日本では、1999年4月に地球温暖化対策の推進に関する法律を施行し、地球温暖化対策の推進が図られている。この法律では、自治体に対して、自らの事務及び事業における温室効果ガスの排出削減等のための措置に関する計画(実行計画)の策定が義務付けられた。
このことに伴い、明和町では、環境への負荷の低減を図るとともに、町民一人ひとりが地球規模の視点で環境保全への自主的な取り組みを促進することを目的として、2002年3月に『明和町地球温暖化対策実行計画』を策定し、今現在、地球温暖化防止に向けて取り組んでいるところである。
明和町の職員として働く私たち町職労としても、地球温暖化問題については、人類の生存基盤に関わる重要な環境問題と捉え、今回、地球温暖化防止に向けた取り組みを行うこととし、ここにその取り組みの経過と結果を報告する。
2. 明和町の取り組み
地球温暖化対策への具体的な取り組みとしては、ISOの認証取得と、地球温暖化対策実行計画の策定の大きく2つに分けることができる。その中で、明和町は、当初ISOの認証取得をしてはとの動きもあったが、ISOはその維持及び更新に費用がかかることや近隣町村の状況等も踏まえ、地球温暖化対策実行計画を策定し、取り組むこととなった。
同実行計画を策定する前に、2001年11月に明和町地球温暖化対策推進会議設置要綱を施行し、地球温暖化対策に関連する施策を全庁的に推進するための明和町地球温暖化対策推進会議(以下、「推進会議」という)を設置し、会長には助役を、副会長には収入役を、各委員には、各課・室・局長をもって充てた。また、同実行計画を策定するにあたり、現状把握のための調査や、同計画の検討等を行うために明和町地球温暖化対策推進部会(以下「推進部会」という)を設置し、部会員及び推進員を各部署、幼稚園及び保育所から選出してもらった。計画の策定においては、推進部会が中心となり、計画策定までに4回の部会を開催し、2000年11月から2001年10月までの1年間を基準年として、温室効果ガスの原因となる電気使用量やガソリン使用量などの調査を実施し、その調査の結果をもとに部会を開催した。その内容を踏まえ、2002年3月の推進会議において明和町地球温暖化対策実行計画を策定した。当町の温室効果ガスは、福祉・学校関連機関の施設が多いことから、電気使用量との関連が大きく、今後、IT化の浸透に伴い予想されるOA機器への依存度が高まることを踏まえると、簡単には削減は難しいものではあるが、1年間に1%の削減を基本目標とし、5ヵ年計画の最終年度の2006年度には基準年の温室効果ガスの総排出量と比べて5%以上を削減する目標を掲げた。この数値目標を達成するための具体的な取り組みの一例としては、『エアコン使用については、冷房は28℃以上、暖房は20℃以下の設定温度を徹底する』『昼休み時における照明の消灯を徹底する』などで、全職員がそれぞれの部署において、日常業務の中で具体的に実行する内容となっている。このことが実行されているかどうかを把握するため、総務課では、町の各施設での電気使用量などの現況を3ヵ月ごとに調査しているところである。また、この具体的な取り組みについて、職員一人ひとりが自己評価をし、その内容を把握するため、各部署の推進員が毎月月末にこれらの具体的な内容を記したチェックシートを回覧方式で取りまとめ、その内容を地球温暖化対策の事務局である総務課へ報告し、定期的に開催される推進部会の中でその内容を分析・評価し、事後の対策を講じている。
今年度で計画策定から3年目の段階ということもあり、2002年度は基準年と比較して約3.5%の温室効果ガスの削減に成功したものの、続く2003年度には、まだ集計段階ではあるが、若干の増加に転じる結果となる模様である。このことから、2004年度においては、2003年度の増加に転じた原因を把握し、必要な対策を講じ、さらなる地球温暖化防止へのステップアップとしての取り組みを進めようとしているところである。
なお、現在までの明和町の取り組みとしては、役場内部の取り組みばかりであり、『明和町地球温暖化対策実行計画』の主旨の「町民一人ひとりが地球規模の視点で環境保全への自主的な取り組みを促進する」という目的を達成していくためには、町民を含めた取り組みをどう展開していくかが大きな課題となって残っているところである。
3. 町職労としての取り組み
これまでに、述べてきたとおり明和町では、1998年の「地球温暖化対策の推進に関する法律」の施行に伴い、2002年度から『明和町地球温暖化対策実行計画』を策定し、実行計画に基づき各課から地球温暖化防止対策推進部会員1名と推進委員1名をそれぞれ選出してもらい、電気使用量の削減や、廃棄物の減量化などに取り組んできた。
しかしながら、地球温暖化防止の意識が、職員全体に浸透していたかどうかというと大きな疑問を抱かざるをえない状況であった。町の実行計画に基づく職場での取り組みについては、濃淡はあるものの誰しもが取り組んできてはいるが、職場以外の場での取り組みは、殆どなされていない状況であった。
町職労としてもそうであった。町職労にとって環境問題は、平和運動と同じく重要な課題であるとして取り組みを行ってきた。町職労では10年近く前から、社会奉仕活動の一環として、毎年町内の海岸の清掃活動に取り組んできた。しかしながら、地球温暖化対策については、独自の取り組みはおろか、町とタイアップした取り組みすら行ってきていない状況にあった。
地球の温暖化防止については、述べるまでもないが、私たちの子孫や、地球上の命ある全てのものに対して、どんな地球を残してあげられるかという全世界的な大きな課題である。しかしながら、全世界的な課題であるからこそ、一人ひとりの人間が取り組んでいかなければならないものであり、私たちの日々の小さな努力の積み重ねが重要となってくる課題でもある。
そう言ったことから、町職労としても2004年に自治労本部の自治研集会のモデル単組として指定されたことを良い契機として、今回、地球温暖化防止に向けた取り組みを行うこととした。
まず、2003年11月に行われた町職労の第46回定期大会において方針を提起し、具体的な取り組みについては、執行委員会で協議し進めていくことを承認いただいた。その後行われた第1回執行委員会では、具体的に進めていくためにどのような体制で取り組んでいくかの協議がなされた。町職労の執行部の人員は、委員長1名、副委員長2名、書記長1名、書記次長1名の計5名の四役と執行委員15名の合計20名となっており、執行委員で構成する組織部、教宣部、賃対部、調査部という専門部を配置している。こう言った体制の中で、今回の地球温暖化防止対策については、調査部の2名と調査部担当四役の副委員長1名、書記長1名の4名が中心となって企画立案を行うことが決定された。
このことを受け調査部では、具体的な取り組みの検討に入った。検討していく中で、確認されたことは、「取り組みには、組合員でできることと、組合でやれること、組合が要望し町でやってもらうことの3つがある」ということと、「組合員に対しての押し付けになってはならない。あくまで自主的な参加とし、意識の高揚を図ることを最大の目的とする。」ということであった。このことを基本に、取り組みの案を提示し、執行委員会で協議した結果、以下の具体的な取り組みを行うことを決定した。
具体的な取り組み
(1) 組合員が取り組むこと
① 自動車以外での通勤の実践
② エコパック運動の実践
③ 各種団体が実施する取り組みへの参加
(2) 組合が実施すること
① 「エコアクション明和町職労」の実施
② 町有施設への節水コマの設置
③ 組合新聞による啓発
④ ステッカーによる啓発
⑤ 学習会の開催
⑥ アンケートの実施
(3) 町への要求
① 公用車へのエコカーの導入
② 紙リサイクルの徹底
4. 町職労の取り組みの検証
(1)の「組合員が取り組むこと」については、先にも述べたとおり、あくまで組合員の自主性に任せるものであり、強要するものではない。しかし、組合としては、組合新聞などを通して意識の醸成や啓発を行っていく中で推進していくことが必要と考え、具体的な取り組みとして取り上げたものである。これについては、実績について調査をすると組合員に強制感が生まれる可能性もあり把握していないが、「自動車以外での通勤の実践」については、健康志向ともあいまって、自転車通勤が若干増えたように見受けられる。
次に(2)の「組合が実施すること」であるが、6点にわたって取り組むこととした。①の「エコアクション明和町職労」については、町職労で考えた独自の取り組みであり、資料1で募集用紙を添付しているが、要は組合員が各家庭において節電に取り組んでもらうことにより、地球温暖化防止について少しでも考えてもらえれば、という思いで取り組んだものである。町職労として悩んだのは、ただ単に組合から節電を呼びかけるだけでは、(1)の「組合員が取り組むこと」になってしまうことから、自主的な参加とはするものの、何とか組合員の多くの方に取り組んでもらう手立てはないのかということであった。そこで発見したのが、三重県の「環境創造活動を進める三重県民の会」が実施した「夏のエコポイント2003」であった。「夏のエコポイント2003」は、10世帯以上のグループで参加し、電気の使用量を昨年より減らすと、その割合に応じてグループに支援金が支給されるという、①地球温暖化に貢献、②電気代を節約、③グループで支援金をゲット、という一石三鳥をねらった企画であった。これを模して町職労として考えたのが「エコアクション明和町職労」である。1月の検針日の翌日から4月の検針日までの3ヵ月間の電気使用量を昨年の同月間の使用量よりも削減してもらい、削減率の高かった上位3人には賞品を、また、参加者全員に参加賞を渡すという内容で実施した。参加については、組合新聞とともに配布したチラシによる呼びかけと執行委員からの声かけに加え、町にもお願いし町のインターネットの掲示板にも載せ周知を行ったところであるが、参加者は組合員全体の約20%の34人と少なかった。周知の徹底に努めたつもりであったが、「エコアクション明和町職労」募集後の4月に実施した町職労のアンケート(資料2)を見ると27%の方が取り組みについて知らなかったと答えており、今後の課題として重く受け止めておきたい。また「知っているが参加していない」方の意見を見てみると、「節電できないと思った」という回答が31%と最も多く、入り口の段階で消極的な考えであったことが分かった。執行委員会では、「節電できるかどうかは結果であり、多くの方に参加してもらって意識を醸成することに重点を置いて呼びかけよう」と確認していたことであるが、組合員に伝わっておらず、このことについても反省していかなければならないところである。その次に多かった回答としては、16%の方が「家庭の電気使用料を知られたくなかった」というものであった。プライバシーの保護についても、執行委員会では、十分に気をつけていくことを確認していたことであり残念な回答であった。しかし、参加していただいた方の実績としては、参加した理由の「組合活動に協力しようと思った」40%、「地球温暖化防止に貢献しようと思った」36%からも分かるように、2月から4月の3ヵ月トータルで最も節電した方は、35.6%という好成績を出され、上位の4人が20%を超える削減を達成するという結果となった。その他の参加者も殆どの方が削減を達成されており、企画をした者として本当にうれしい結果となった。また「今後組合が具体的な環境問題に対する取り組みを行った場合、参加したいか」の問いに対し、「必ず参加したい」「取り組みの内容によっては参加したい」をあわせて、回答者の86%の方が肯定的な考えを示しており、意識の高揚と今後の活動への大きなステップとなったことが実感できるものとなった。
次に、②の「町有施設への節水コマの設置」であるが、節水が直接地球の温暖化防止に繋がるものではないが、このことも意識の高揚の一環として取り組むこととした。節水コマの設置については、3月の下旬から4月の上旬にかけ取り付け作業を行った。作業は、調査部を中心とした執行委員で行い、役場や中央公民館、体育館、幼稚園、保育所に計313個取り付けた。アンケートを見ると回答者の72%の方が取り付けたこと知っており、「設置することは知っていた」をあわせると78%の方がこの取り組みを知っていたという結果となった。周知にあまり力を入れていなかったにもかかわらず、こういったアンケート結果が出たことに驚いているところである。節水の実績については、設置して間もないため、正確な検証はできないが、節水の傾向が見られる施設もあり、今後も推移を見守っていきたい。
施設名
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設置個数
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03年3月使用量(m3)
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03年4月使用量(m3)
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04年3月使用量(m3)
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04年4月使用量(m3)
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役場庁舎 |
8
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96
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133
|
104
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120
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中央公民館 |
17
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150
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154
|
149
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179
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総合体育館 |
16
|
188
|
210
|
213
|
263
|
曙幼稚園 |
21
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51
|
28
|
49
|
21
|
暁幼稚園 |
16
|
45
|
21
|
38
|
19
|
双葉幼稚園 |
30
|
38
|
20
|
42
|
19
|
旭ヶ丘幼稚園 |
23
|
84
|
42
|
93
|
56
|
斎宮幼稚園 |
53
|
392
|
234
|
286
|
114
|
ささふえ保育所 |
28
|
256
|
229
|
294
|
254
|
みどり保育所 |
53
|
320
|
285
|
368
|
320
|
なりひら保育所 |
48
|
214
|
213
|
267
|
218
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計
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313
|
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-
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-
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-
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その他の「組合が実施すること」の取り組みであるが、「組合新聞による啓発」については、町職労では1ヵ月に1回の発行を目標に組合新聞を出しており、その新聞に地球温暖化防止を呼びかける標語を毎号載せているところである。「アンケートの実施」についても、資料2で照会しているところであるが、「ステッカーによる啓発」、「学習会の実施」については、まだ実施しておらず、早急に取り組んでいきたいと思っている。「ステッカーによる啓発」については、標語を記載したマグネット版のものを手作りで作成する計画であり、それを組合の所有する組合車や当町の公用車に貼付する予定である。
次に(3)の「町への要求」であるが、これについては、2004年春闘の統一要求書の中で要求項目として取り上げ、要求を行った。その結果、①の「公用車へのエコカーの導入」については、「2004年度で導入する」との回答を引き出すことができた。②の「紙リサイクルの徹底」については、以前より町が紙のリサイクルボックスを設置して分別、リサイクルに取り組んできているところであったが、その徹底がなされていないため要求したものであった。これについても、「リサイクルボックスによる分別等の推進に併せ、紙使用量の削減等も徹底する」との回答を得ることができた。
5. まとめ
これまで述べてきたように、地球温暖化の防止については、明和町では2002年度から、町職労としては今回はじめて具体的な取り組みを展開してきたところであるが、アンケートを見ると、町の取り組みにしても「あまり知らない」、「まったく知らない」をあわせて28%の回答があり、周知が行き届いていない点が浮き彫りとなった。アンケートでは、職場別の集計を行わなかったので推測の域は出ないところであるが、周知するということに限って言えば、本庁職員にはパソコンが一人に1台配置されており、インターネットの掲示板も設置されていることから、ある程度情報が行き届いていると思われる。しかし、幼稚園、保育所などの施設では、施設の1台のパソコンにしか情報が流れないようになっているのに加え、現業職場にいたってはパソコンが配備されていない状況であり、周知が難しくなっていることが原因であると考えられる。これらのハード的な整備の状況をいかに補って周知していくかが今後の大きな課題である。
しかし、周知が行き届いていても、周知だけではそれまでである。周知徹底した上で、いかに意識の高揚を図っていくかが最も重要となってくるのである。私たちの日常生活によって排出される温室効果ガスの排出量は増加傾向にあるということからしても、個人のレベルでいかに地球温暖化防止に取り組んでいくかが求められてきており、一人ひとりの意識の改善が必要となってきている。つまり、町の取り組みに対して町職員として取り組んでいくことももちろん大切であるが、もう一歩進んで、一個人レベルで何ができるかという意識の醸成が求められているのである。
今回の自治研活動を契機とした取り組みにより、執行委員を初めとした組合員の何人かに意識の変化があったのは事実であるが、決してまだ十分なものではないと思っている。町職労としては、全ての組合員の一人ひとりに地球環境保全の意識を醸成するために、今回の種々の取り組みを通して得た成果と反省点を踏まえ、町ともタイアップしながら今後も活動を進めていき、地球温暖化防止に寄与していきたいと考えている。ちなみに、先にも紹介した「環境創造活動を進める三重県民の会」の「夏のエコポイント」が今年も行われることから、広く組合員に紹介し、参加を募っていくことも計画しているところである。
(資料1)エコアクション明和町職労
(資料2)地球温暖化防止に関するアンケート
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