【自主レポート】

自治体の庁内率先行動は新たなステージへ
~省エネルギー対策における協働・連携の実効の確保に向けて~

大阪府本部/大阪市職員労働組合・都市環境局支部

 近年、地球的規模の環境課題として誰もが知るところとなった地球温暖化問題は、産業革命以降、人類が化石燃料等のエネルギーを大量に消費するようになったことが、最大の要因とされています。また、都市部で深刻な問題となっているヒートアイランド現象についても、緑地や水面の減少、舗装等による地表面の人工化、ビルの密集による通風障害とともに、人口排熱のもとであるエネルギー使用の増大が要因となっています。
 これらの2つの温暖化が冷房需要等によるエネルギー使用量の増大と熱汚染の拡大という悪循環を招いています。その防止策のひとつとして、省エネルギーの推進が急務とされており、環境自治体を目指す自治体労働者としてもその役割は小さくないといえます。

 1998年10月に公布された「地球温暖化対策の推進に関する法律」において、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務が明らかにされたことを受けて、大阪市では、1990年度に排出された温室効果ガス総排出量を基準に2010年度までに7%削減することを目指し、「大阪市地球温暖化対策地域推進計画」を策定されました。
 これとともに、大阪市自らが行う事務事業に伴う温室効果ガスの排出を抑制することを定めた「大阪市役所温室効果ガス排出抑制等実行計画」が策定され、現在、下水道事業や公営交通事業等での温室効果ガスの排出抑制のほか、オフィス系事業所では、「大阪市庁内環境保全行動計画(エコオフィス21)」に基づき「オフィス環境作戦」を作成し、職場実態に応じた環境保全行動をすべての職場で実践しているところです。

■「地球温暖化対策の推進に関する法律」の体系

※ 京都議定書発行の日から施行

■「大阪市地球温暖化対策地域推進計画」による温室効果ガス排出抑制効果

単位:千トン-CO
取組項目
基準年度
(1990年度)
2010年度
(未対策時)
2010年度
(対策後)





産業部門
10,452(100)
8,328( 80)
8,191( 78)
民生業務部門
4,502(100)
6,399(142)
5,178(115)
民生家庭部門
3,211(100)
3,783(118)
2,984( 93)
運輸部門
3,259(100)
3,798(117)
3,274(100)
廃棄物部門
674(100)
597( 89)
519( 77)
小  計
22,098(100)
22,905(104)
20,147( 91)
その他ガス
730(100)
2,331(319)
1,099(151)
合   計
22,827(100)
25,236(111)
21,246( 93)

(注) ( )内は基準年度を100とする指数。四捨五入の関係で、合計が合わないことがある。
   未対策時の2010年度の排出量は、現状のまま何も対策を講じなかった場合の推計量であり、民生業務、民生家庭、運輸部門での伸びが大きく、全体として増加すると推計している。

■大阪市庁内環境保全行動計画(エコオフィス21)

・昼休み時間の事務所等の不要な照明の消灯
・昼間の明るい時間帯の窓際照明の消灯
・使用しないOA機器のスイッチオフ
・省エネ型OA機器等の導入促進
・冷房負荷を増加させない工夫
・「サマーエコスタイル」の取組の徹底
・冷房設定温度(28℃)の管理の徹底  等

 温室効果ガスの排出抑制は事業者や国民にも求められています。大阪市では、市民・環境NPO、事業者、行政等が一体となって省エネルギー等さまざまな地球温暖化防止活動を推進するための体制として「なにわエコ会議」を発足させ、三者による協働の枠組みを整えました。
 市民には、これまで実施してきた環境家計簿「なにわエコライフ」認証制度の拡大普及を期待し、事業者には「エコアクション21(環境省)」を活用した簡易版環境マネジメントシステムの自主的な構築を呼びかけることとしています。
 しかし、大阪市では、民生部門(業務・家庭)のエネルギー需要が産業部門より大きく、とりわけ、中小企業においては、省エネに理解は示しても、景気の低迷が続く中、生産性に結びつかない取り組みには躊躇する傾向があると予想されます。
 したがって、行政は率先行動、事業者・市民は各主体の取り組みに期待というわけにはいかず、事業者に対する支援施策も必要です。

■大阪市と全国のエネルギー需要の内訳の比較(1996年度)

 

■大阪市域における部門別のエネルギー使用実績(1990年を100とした各年度の比率)

部門別エネルギー使用実績
(10億kcal)
 
1990年
1995年
1998年
産 業 
28,225
24,612
23,868
民生家庭
8,969
10,385
10,115
民生業務
11,609
12,590
13,692
運 輸 
10,883
11,784
11,958
合 計
60,405
60,298
60,586

 この点において、行政には、庁内率先行動で培ったノウハウがあります。庁内率先行動の結果を検証して、手間と効果のバランスに優れオフィス系事業所で即活用できるメニューを抽出し、事業者に提供することも支援策のひとつです。また、実際に取り組んだ事業者からの意見や感想等を支援策にフィードバックすることが重要と考えられます。
 例えば、現状の電力使用状況から、取り組み項目ごとの効果を料金で予測する機能と実践の進捗管理機能を兼ね合わせた省エネ支援ソフトを配布するといった方法が考えられます。
 これにより、ソフトの使用者は効果の高いメニューに集中して無理なく取り組むことができます。
 また、使用者からのソフトに関する感想や意見等を電子メールを通じてフィードバックすれば、メニューの見直しや庁内率先行動での試行等を経て継続的な改善を図ることも可能となり、行政―事業者間の協働による省エネ推進の大きな原動力となります。
 さらに、見直されたソフトウェアをアップグレード版としてウェブサイトに公開すれば、アップグレード版の頒布数の推移を追跡することで、取り組みが継続されていることを確認することも可能となります。

 この数年で、庁内率先行動に取り組む自治体は急激に増えました。今後は、これらの取り組みの成果を活かし、いかに事業所や家庭に広げていくかが課題となります。自治体各々の実情に即した取り組みはもとより、自治労内部での情報交換や協力を進め、さらには、自治労総体の取り組みも期待されます。

 「その室内は28℃ですか?自治労は地球温暖化対策に取り組み、環境自治体を目指す労働者の団体です。」そんなテレビCMが、夏場、休憩中の事業所や昼下がりの家庭に放映されるのも労働運動が担う社会的役割アピールする機会として大変意義深く、同時に自治体労働者一人ひとりの取り組みをやりがいのあるものにする目標や象徴としても期待されるところです。