【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-②分科会 地域で教育を支える~教育行政・生涯学習・スポーツ・文化~

学校用務員の実態と正規職員での配置の必要性とは


東京都本部/小金井市職員組合 島﨑 孝明

 

1. 学校用務員の状況

 義務教育である公立小中学校に配置されている学校用務員の人数は、文部科学省が行っている「平成19年度学校基本調査」によると、33,683校に対し31,131人(1校当たり平均0.901人)となっています。この人数(本務職員)は1990年の35,169校に対し39,915人(1校当たり平均1.13人)と比べると、学校数の減少を上回る削減になっています。
 昨年、自治労が行った調査では回答のあった16,224校に対し、正規職員は13,034人、再任用・再雇用職員は1,036人、非常勤・パート職員は2,402人、臨時・アルバイト職員が2,979人となっていて、非正規職員が33%を占めるまで増加しています。また、民間委託化がすすみ、144の自治体で導入しているという回答がありました。
 また、学校配置を引き揚げてしまう自治体も増加傾向にあります。
 教員や事務職員の人件費は国庫負担と定数基準で守られている一方で、学校用務員の人件費は各市町村で負担しなくてはなりません。地方交付税の算定基礎には各学校1人分が掲載されていますが、自治体経営が厳しい中、また総務省の退職者不補充方針のもとで削減の一途をたどっています。

2. 学校用務員の業務実態

【職務内容明確化の自治労モデル】
1. 環境整備に関する業務
 ① 校舎内外の清掃及び整備に関する作業
 ② 樹木、花壇、除草等の手入れに関する作業
 ③ 暖冷房、器具、燃料に関する作業
 ④ 施設、設備の補修及び整備の作業
 ⑤ 飼育動植物等教材関係の整備協力に関する作業
2. 管理運営に関する業務
 ① 文書送達受領等連絡に関する業務
 ② 外来者の受付、その他連絡に関する業務
 ③ 学校諸行事の準備並びに整備に関する作業
 ④ 補修工具等の備品の整備及び保管
3. その他

 学校用務員の業務内容は、かつては「小使」、「給仕」などと言われ雑用係として教員の身の回りの世話をすることが中心的でしたが、時代の変革に伴い、児童・生徒が安全で、安心して、快適に学校生活をおくるための教育環境の整備を行うという業務に移行してきました。
 そして1975年には学校教育法施行規則に「学校用務員は学校の環境整備その他の用務に従事する」を明記することとなりました。
 自治労では不明確な学校用務員の業務内容を、自治体ごとに明確にする取り組みを進めてきました。その結果、「職務内容の明確化の自治労モデル(下記参照)」をもとに、各自治体に即した内容を加味しながら、条例・規則に反映している自治体が数多くあります。
 また、「庁舎の用務員」と比較されることがありますが、業務内容は全くと言っていいほど違います。
 学校用務員の業務内容は独特で幅広く、かつ教育現場であると言うことから即応性が求められる業務です。校長・副校長・教頭からの指示・命令のもと他の教職員と協力・連携しながら環境整備を行う業務であり、経験的な専門職であるといえます。学校の教職員の一員として環境整備の立場から、学校の教育目標の実現を目指しているのです。この教育的環境整備を行う専門職員でありながら、現業職員=技能労務職員であるということで、簡易な業務と見られがちですが、臨時・アルバイト職員でつとまるとは言いにくく、短期雇用では業務レベルが大きくダウンしてしまいます。

3. 学校用務業務の民間委託化=アウトソーシングの違法性とは

 学校用務員の包括的な民間委託化=アウトソーシングについては「偽装請負」ではないかとの疑いがあり、是正されてきた経過があります。
 学校用務業務の受託先はシルバー人材センターかビルメンテナンス会社が多く、教育委員会と会社が仕様書を作成して請負委託契約を行っています。この場合、会社から配属された労働者は学校側からの指揮・命令は受けてはいけないことになっています。しかし、実態的には指揮・命令が行われていたり、仕様書自体に「その他校長の指示する業務」という項目は入っていたり、違法な実態および契約になっています。
 シルバー人材センターを所管する厚生労働省職業安定局はこうした実態について2004年3月に「作業内容(校舎内外の清掃、見回り、剪定など)や期間等が限定的・個別的になっており、かつ、指揮命令を受けずに独立して処理できるものになっていることが契約上担保される場合を除き受注」しない旨の通達を事業協会宛に出しています。
 学校用務業務の(包括的)委託=アウトソーシングは、校長・副校長・教頭との指揮・命令を前提せざるを得ないため「偽装請負」として違法状態になる危険性が多大にあります。

4. 公務員の正規職員として配置する意味・意義とは何か?

 同じ業務内容ならば民間に、と言う流れがある中で、なぜ公務員の正規職員で配置しなければならないかとの素朴な疑問があります。

(1) 学校運営への参画
 その答えはまず、正規職員だからこそ、学校運営への参画ができるという点です。学校によって違いはありますが、学校用務員は「整備」や「美化」、「庶務」といった校務分掌に位置づけられています。また、職員会議等に参加し、教員と一体になって子どもたちを育んでいます。
 学校は塾とは違い授業だけを行っていればいいという場所ではありません。義務教育9年間を通じ、社会人として自立できるような人間形成を行う場所です。ですから授業をしなくとも学校用務員というスタッフが必要なのです。
 教員免許がなくても、社会人として児童・生徒との直接的な関わりの中から、清掃方法を指導したり、ごみの分別を指導したり、破損してしまったものを一緒に修繕したりということが頻繁にあります。

(2) 教育的な環境整備
生徒と共に花壇づくり
 子どもはよくものを壊します。ものを壊しながら成長するといっても過言ではありません。集団生活です。誰が壊したか分からないときもあります。しかしそんなとき、いつまでも壊したままでは、またすぐ次のものが壊されます。
 きれいな校舎を保つには壊れたものを放置せず、すぐに修理することが肝心です。できれば壊した子どもと修理するか、子どもの目の前で修理することができれば、ものを大切にすることの大切さをより教えることにつながります。専門業者に頼むと見積もりから完了までゆうに1週間かかってしまいます。目の前で修理することもできません。用務員が即対応するというが大切だと考えています。
 きれいな校舎で教育を受けた子ども(しかも自分達できれいにしているという自覚を持つ子ども)は社会に出ても、きれいにしようという気持ちを持つものです。このようなことも含めて学校教育だと考えています。
 また、生活指導的な場面もあります。中学生になると中には教員のいうことを聞かない生徒も出てきます。そんな生徒がものを壊したとき、教員は用務員室に生徒を連れて謝りに来ます。生徒は教員のいうことは聞かなくても、自分の壊したものを用務員がなおしてくれるということが分かると素直に反省してくれます。直す人の気持ちになると壊してしまった自分の行動を反省するのではないでしょうか。これも用務員としての仕事の一部です。

(3) 安全・安心・快適・機能的な学校とは
 学校への不審者侵入の事件が多発し、校門を閉め、防犯カメラを取り付ける学校が増えました。しかし学校に訪れる人を不審者かどうか見分けるには常日頃学校にいて学校の流れが分かっている職員でなければ難しい部分があります。制服を着た警備員が学校の周辺をまわっていても抑止力にはなります。しかし、休み時間や体育の終わるたびに昇降口に鍵を閉め、それでも訪問する人には保護者か業者さんか施設の利用者か教育ボランティアか見分け、不審に思えば声をかけ反応を見ている職員が必要なのではないでしょうか?
 施設の整備は壊れたところを直すことだけではなく、より便利に快適に使えることが求められます。学校の流れや子どもの動線などが把握できているからこそ、先回りして整備できるのであって、その学校の目指すもの、学校のおかれている現在の課題、改善目標の実現に向けての計画などを把握している職員だからこそ、指示を受けてから処理するのではなく事前に準備できます。
 シックスクール症候群やアスベスト、ダイオキシンなど目に見えない物質から子ども達を守らなくてはなりません。専門家が点検に来ても見落としてしまうところでも、その学校にいて専門的な知識があるからこそ対応できることが多くあるのです。

(4) 児童・生徒とともに「環境学習・ごみ減量・資源化」
 学校のごみの処理が用務員の仕事になっている学校は多いと思います。学校から出るごみの多くは紙です。この紙を資源としてどう分別するかが学校のごみの減量につながります。ごみの集積場で孤軍奮闘していてもラチがあきません。教室や職員室に分別できる容器やシステムを作り、環境問題として児童・生徒に直接訴えかけます。
 また、自治体ごとに違う分別ルールについて、教員に頼まれ、ゲストティーチャーとして授業を行うこともあります。小学校4年生の生活科ではごみのことを学習しますし、総合学習の時間では環境問題を学習する学校が多くなっています。

 
ごみの分別の説明
 
樹木剪定枝のチップ化

5. 先進的な事例

 学校用務員職場では時代の変革に伴い、より質の高い公共サービスの供給を求めて、公務員だからこそできるサービスとは何かを追求してきています。そして新たな時代への対応と自らの意識改革を図りながら、同時に地域や保護者に対しても説明責任をはたし、外部からの評価制度(学校として)を取り入れてきています。

(1) 参考事例① 職務研修の実施
 学校用務職場では市町村教育委員会事務局と連携しながら様々な実技技能研修を行っています。自らが企画・立案・講師選定を行い、年間計画を立てながら、様々な研修を行っています。例えば床清掃・ワックス、ペンキ塗装、樹木剪定管理、電気関係、溶接、水道水周り、防災対応、防犯・不審者対応・さすまたの使い方などです。
 しかし課題があります。このような研修は自主性にまかされているため、各学校用務職場対応になっていることです。今後は都道府県単位でこのような研究会・研修会を計画・企画・実施できればと考えています。
 学校用務員の場合、調理師など専門的な資格がないため、このようなOJT研修でスキルアップを図っています。

(2) 参考事例② 環境問題への対応
 学校用務職場では環境問題の取り組みとして樹木の剪定した枝を燃やすのではなく、チップ化して学校内に撒いて、堆肥化させる取り組みをしている自治体が増えています。
 またこのような作業を数校の用務員が集まり、共同作業として実施しています。1校に1~2人の少数配置ですが、作業をとりまとめるリーダーを選任し、大勢で行った方が効率のいい作業を共同作業として実施しています。

(3) 参考事例③ 地域防災拠点の学校としての取り組み
 多くの自治体では学校を地域の避難所や防災の拠点にしています。そこで働く用務員が防災リーダーとして、防災機器の取り扱いや災害時の対応を研修しています。またAEDの設置が進む中で、救命救急の講習会に参加し、いざというときに備えています。 


 
教室床ワックス清掃研修
 
樹木の剪定研修
 
 
パソコン研修
 
トイレのタイル補修研修
     
   
上級救急救命講習会