【自主レポート】自治研活動部門奨励賞

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 越谷市職現業評議会は、職場の活性化運動と共に職員の意識改革に取り組んで来ました。これまでの活動をさらに進めて職の確立を推進し、市民から必要とされ信頼される職員をめざしています。その為には、市民との絆を作るきっかけになるようなイベントを開催し、私たちの仕事を理解していただく必要がありました。市民と一緒に楽しめた「市役所お仕事展」の報告を致します。



「市役所お仕事展」を開催して……
~現業職から市民への発信~

埼玉県本部/越谷市職員組合・現業評議会・事務局長 千葉 伸次

1. はじめに

(1) わたしたちの職場
 越谷市は埼玉県南東部にある人口約33万人余りのベットタウンです。2015年に中核市移行をめざしています。
 自治労越谷市職現業評議会は、越谷市役所で働く約2,600人の職員のうち現場で直接働く約340人の職員で組織されています。職種は多岐に渡り、清掃、学校給食や学校校務、公立保育所の所務主事や給食調理、道路維持管理など土木、自動車運転手、病院調理、医療業務員、施設維持管理、守衛など所属課は32余りあります。
 近年、全国的に公務員バッシングが叫ばれる中で私たちの働く現業職場は、単純労務を理由に直営から民間委託へ、さらに退職者不補充などで職場を縮小しようという風潮がありました。

(2) 職場活性化運動
 越谷現評はそれを打破するため、2004年頃より各職域での活性化運動に取り組んで来ました。具体的には夏期休業中の学童保育室への21日間の給食提供(給食センター)、公立保育所での主食提供による完全給食化(保育所調理)、ふれあい収集やゴミステーションのデータ管理化(リサイクルプラザ)、市民からの要望に迅速に対応できるように本庁にあった土木現業4課を1本化(維持管理課)など、市民の目線に立った新たな事業を展開して職員の意識改革に取り組んで来ました。
 その結果、現業職員の意識改革ができ職場活性がはじまり、従来の上から言われた仕事だけをするのではなく、現場から政策提起ができるようになりました。また、行政特有の縦割り行政に横串を刺すこともできました。
 しかしながら、一部の職域では少人数職場ということもあり活性化運動が進まない職域や活性化運動を早く始めた職域に停滞や慢性状態が出はじめました。


2. 試行錯誤
第1回「市役所お仕事展」2010年11月13日開催

(1) どうすれば……
 そんな中、やはり全体的な動きをしなければバッシングには勝てないと認識し、職域ごとにアンケートや職場集会などを開催し、現業総体での運動をしなければならないことや、総体での運動を、現業、非現業の差別なく行いたいという観点から、私たちの仕事を市民へアピールするイベントを開催しては?という意見が出されました。
 また、市民にどれだけ直営で事業が行われているか認知されていないという現実もあったため、現業総体でこれまで行ってきた活性化運動の集大成と市民へのアピールの場として、実行委員会形式での「市役所お仕事展」(現業展)を開催することにしました。


「市役所お仕事展」実行委員会の様子

(2) 「市役所お仕事展」開催  
 初年度(2010年)は、実行委員会の役員は各現業職域から選考された20人で構成し、約半年前から打ち合わせを重ね各職域からの出展に関して参加する職員と入念な準備をしました。組合は縁の下の力持ち的存在に徹し、第1回目は2010年11月13日に開催しました。
 来場者は、開催場所の立地条件の悪さから当初300人想定していましたが、快晴に恵まれた事もあり想定を大きく上回る900人近い市民の方々や越谷市長などの来賓者で会場は埋め尽くされました。
 会場では、維持管理課職員による「U字溝清掃実演」や水道企業団職員による「漏水修理実演」、リサイクルプラザ職員による「塵芥車へのごみ入れ体験」など、普段間近で見ることの少ない作業実演に来場者達も興味津々で見ていました。また、環境○×クイズやリサイクル容器を使った工作教室、ヨーヨー釣り、スーパーボールすくい、水鉄砲的当て、腕相撲大会、プロによる大道芸などのお遊びコーナーでは親子来場者の笑い声があふれていました。
 
維持管理課職員による作業実演(U字溝清掃)
学校校務員によるパネル展示及び工作コーナー


給食調理員が作った試食(揚げパン・豚汁)は大好評

(3) 継続事業化を決定
 スタンプラリーで試食できる揚げパンと豚汁(学校給食調理提供)も大盛況、保育所調理員が作ったおやつ試食白玉3色だんご)の美味しさに来場者は舌鼓を打ち、学校校務員などの職員が、この日のために作った花の苗やサツマイモ、堆肥も無料配布され、来場者からは「イベントが楽しかった」「市役所の現場の仕事がよく理解できた」などの多くの声を聞くことができました。
 当時の実行委員長は「前例のない取り組みだったため、実行委員会役員や参加スタッフも自分達だけでイベントを作り上げていくことに、不安や戸惑いの連続で、果たしてちゃんとイベントができるのかとても心配でした。しかし、当日参加した職員や来場された市民の方々がみんな笑顔で活き活きとしていた様子を見て、このイベントをやって本当に良かったと心から思いました」とイベント終了後に話していました。組合としては、これまで行ってきた現業活性化運動の集大成と活性化運動がなかなか進まずにいた職域の底上をすることができました。また、各職域が切磋琢磨し他の職域に負けじとイベントの企画・実施ができたことが良かったと思います。さらに、今まで関心のなかった他の職域が見られたりしたこと、組合主催ではなく実行委員会形式でのイベント開催、参加スタッフは全てボランティアとしたことにもかかわらず、当日は現業職員の約半数に当たる160人以上が参加して取り組めたことはとても評価できることと思います。
 開催したことで、多くの市民や市長、市議会議員(党派関係なく)の方々にも直営の重要性や仕事内容をアピールできたとも思います。これにより継続事業化とすることに決定しました。



保育士・学童指導員による工作・お遊びコーナーは
イベント終了まで多くの市民で賑わった

(4) 第2回「お仕事展」
 第2回目は、2011年11月19日に開催しました。今回は、現業職だけにとらわれず他の職域にも参加の声かけをし、保育士・学童保育指導員・保健師が参加することと市民と直接関わっている職域が新たに参加した事で、直営の良さをさらにアピールすることができました。今回も昨年同様に、半年前から実行委員会を立ち上げ取り組みました。また、このイベントに対して市が90万円の予算を付けてくれ、開催の意義を市として認めてもらう事ができました。(2010年はカンパ金で開催)
 2回目当日は、あいにくの雨にもかかわらず昨年と同様に多くの市民が来場してくれました。今回は、このイベントに対するアンケートを来場していただいた市民と参加スタッフに実施し、調査にも力を入れました。今後の活動の参考になるように、アンケートの結果はイベント終了後に集計し関係者に配布しました。また、参加した職域毎に「市役所お仕事展」新聞を作り機関誌に掲載し、現業職員以外の職員にもイベントの周知をはかりました。


特に興味を持ったもの(一部抜粋)

3. 今後について

 アンケートの結果も視野に入れて、今年度も「第3回市役所お仕事展」(2012年11月10日)が開催されることになり、5月から実行委員会が活動をしています。今回も職種が広がり、リサイクルプラザ、維持管理課の行政職員や消防職員などが参加します。当初考えていた現業職だけのイベントではなく、市全体の職域・職種のイベントになるように一歩ずつ近づいてきました。
 また、イベントの企画力を向上して楽しみながら私たちの仕事を理解していただけるようにしていきたいと考えております。
 今回のイベントには県や市が所有しているキャラクターの着ぐるみも参加するよう要請していて、昨年以上に親子で楽しめるイベントになる予定です。

来場者の感想(アンケートより一部抜粋)
・お仕事の大変さが分かった(10代)
・楽しかった。また来たい(10代)
・学校校務の仕事の多さが分かった(20代)
・作業している所も見られて良かった(20代)
・市の仕事もいろいろあり大変さも分かった(30代)
・子ども達が楽しみにしていてまた来年もやってほしい(30代)
・スタッフの方の笑顔と挨拶が素晴らしかった(40代)
・親子で楽しめ勉強にもなるイベントだった(40代)
・楽しい企画・実践に感謝
   市民に開かれた市の仕事理解に効果大(50代)
・今後とも毎年の開催をお願いします(50代)
・遊びを通して子どもが学べて良い(60代)
・皆さんの一生懸命さが伝わりました(60代)
・スタッフの一体感が素晴らしいです(年代不明)
・スタッフが元気よくやる姿と健闘にビックリ(年代不明)


4. おわりに

 このイベントを開催したことで、現業職員の中には仕事への意欲がでてきたり、今まで活性化運動が進まなかった職域で活性化が進みはじめたりと良い点が出てきました。また、職種間の垣根が消えたりして横のつながりが広まりつつあります。
 イベントを通して市民と話をすることで直接市民の意見や要望を聞くことができてとても刺激を受けることができました。また、自分達の仕事をアピールすることで、今まで知られていなかった市民サービスの面での直営の良さを認識していただけたと思います。これからは、このイベントを市民団体やNPO、地元商店街なども参加していただけるようなものにできればと考えています。
 越谷市職現業評議会は、創意工夫のアイデアを持ち直営だからこそできる「安全・安心な公共サービス」を提供するため、市民のみなさんとの絆を大切に考え取り組んでいきたいと思います。


 
「市役所お仕事展」新聞イベント全体編
「市役所お仕事展」学校校務編

市民アピールチラシコンクールで最優秀賞を受賞した告知チラシ
 
イベント当日に配ったパンフレット