【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 「大阪都構想」を掲げ昨年11月27日のいわゆるW選挙に勝利した橋下・大阪維新の会が進める、労働組合に対する人権侵害や組織破壊、福祉・教育・文化・市民活動などにおける公共サービスの切り捨て、大阪市解体に対して自治労大阪府本部・大阪市労連が取り組んだたたかいの経緯を素描し、こうしたポピュリスティックな政治状況を乗り越える労働運動を新しい市民運動の創出と連帯に展望する。



いま、大阪で起こっていること
「反ハシズム」から新しい市民運動の創出へ

大阪府本部/自治労大阪府本部・政策局 山口 勝己

1. 橋下・維新の会が大阪の自治と民主主義を破壊する

(1) 労働組合に対する破壊攻撃とこれに対抗する運動
① 憲法違反の組合攻撃に弁護団を結成し法的に対抗
  橋下大阪市長は、就任早々の施政方針で「公務員、公務員組合をのさばらせておくと、ギリシャのようになる」と表明し、団結権の侵害と人権侵害をスタートさせた。「大阪市の労働組合は政治団体だ」、「これまでの労働協約を破棄し、便宜供与をすべて廃止する」等の発言を繰り返し、組合支部スペースの使用取り消しや職員アンケートの強行、市役所本庁舎に組合事務所を持つ市労連、関係組合への組合事務所使用不許可処分と団体交渉拒否、チェックオフの廃止、会議室の使用不許可などを矢継ぎ早に行い、5月議会では、職員基本条例、7月議会では、職員の政治活動規制条例や労使関係条例などを制定し、府本部と大阪市従の連名ビラに対しては、「市の方針を市民に違うというなら、市役所を辞めればいい」などと憲法違反の暴言を行い、団結権と人権への侵害を続けている。
  府本部は2月1日に、「大阪府・市対策本部」を設置し、第129回中央委員会で、「橋下大阪市長による組合攻撃に対する声明」を出し、たたかいを本格化させた。2月11日には、自治労・市労連弁護団を発足させ、11人の体制で、大阪府労働委員会で4件(職員アンケート、チェックオフ、組合事務所は支配介入と団交拒否の2件)、大阪地裁で訴訟2件(組合事務所使用不許可取り消し、職員アンケート強制慰謝料請求)に取り組み、府労委が「アンケートの凍結」勧告を出すなどの成果もあげている。橋下市長が行う団結権侵害・人権侵害に対しては、法と正義に基づく権利闘争としてたたかうことが必要であり、また、職務命令と懲戒処分によって職員に恐怖心を植え付け、内部告発や職員の相互監視を奨励し、特別参与などが職員に直接指示を出すなど、市役所の指揮命令系統を意識的に破壊する橋下市長に対し、職員の命と人権を守るという視点で取り組みを進めている。
  第83回大阪地方メーデーでは、「橋下大阪市長による団結権侵害を断じて許すことはできない」との宣言が出された。また、市内第3ブロック決起集会や大阪公務労協主催の「民主的な公務員制度改革の実現と大阪市長による労働組合つぶしを許さない 総決起集会」、連合大阪法曹団、大阪労働者弁護団など在阪法曹8団体が主催した「手をつなごう市民と公務員、橋下市長に異議あり 6・25集会」などが開かれた。さらに職員アンケートの強行や政治活動規制条例に対しては、日弁連や大阪弁護士会、連合大阪法曹団、大阪労働者弁護団など多くの法曹団体から抗議や撤回を求める声明が出されるなど、大阪市労連や関係単組を支援する取り組みが広がっている。
② 公共民間労組への攻撃に市民サービス維持のたたかいと結合して取り組む
  橋下市長が進める大阪都構想や2重行政の解消、地下鉄・バスの民営化、予算削減や外郭団体の統廃合などが、人権や平和、福祉施策を切り捨て、市民へのサービスを低下させることから、市民サービスの切り捨てや低下を許さない取り組みを進めてきた。府本部は市内第2ブロック関係単組を中心に大阪市関連団体対策会議を1月16日に発足させ、これまで9回の会議を開き対策を進めてきた。予算編成に向けた「施策・事業の見直し(試案)」では、大阪市博物館の地方独立行政法人化、大阪市街地開発株式会社の完全民営化、大阪社会医療センターの病院部門の全廃、クレオ大阪の廃止、生涯学習センターの廃止、キッズプラザ運営補助廃止、プールの削減などが打ち出され、パブリックコメントでは、26,763件もの市民の批判が寄せられた。
  大阪市関連団体対策会議では、利用者をはじめ市民運動や民主党などの議会勢力、連合大阪、平和人権センターや部落解放大阪府民共闘をはじめ、広範な市民運動と連携して、取り組みを進めている。また、関連団体の職員の雇用と労働条件を守るためには、外郭団体の設置者である大阪市の責任は極めて重く、民主党市会議員団と連携して、大阪市会での質問や大阪市交渉に取り組んでいる。

(2) 公共サービス破壊の「市政改革プラン」に市民から抗議の声
 橋下市長が就任直後に接した大阪市改革プロジェクトチームは4月5日、「施策・事業の見直し(試案)」(以下、「試案」と略)を公表した。その内容は住民サービスを中心に104事業の見直しを行い、2012年度から3年間で総額548億円のカットを行うというものだ。市民生活に甚大な影響を及ぼすものであるが、ここでは各事業について詳細に触れることはできないので、3つの観点から総論的批判を加える。
 第一に、これは昨年の統一自治体選挙及び11月のW選挙において維新の会候補が公約としたことに対する明白な公約違反であるということだ。維新の会は統一自治体選挙でのマニフェストにおいて「特別区(自治区)は、現在大阪市が提供している住民サービスを全て(敬老パス制度を含む)を提供します」と明記しており、W選マニフェスト別添の「大阪都構想推進大綱」には「特別自治区には中核市並みの財源を保障する。現在大阪市で提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保障する」とされている。この公約は「大阪都構想」を推進することによって「現在」の住民サービスを切り下げることなしに大阪の財政再建を実現することを約束したものである。それができないのであれば、公約違反に対する釈明と謝罪がなければならない。
 第二に、ここまで急激な住民サービスの見直しを行わなければならない財政的根拠が薄弱であるということである。「試案」は「今後の財政収支概算(粗い試算)」(2012年2月版)において向こう10年にわたり年間約500億円の通常収支不足が見込まれることを施策・事業見直しの主要な根拠としている。しかし、この「試算」はこれまでの大阪市の中期的な財政収支概算と前提を異にしている。通常収支の均衡をめざすとして、いわゆる補てん財源を活用しない収支としたというのである。この理由を「将来世代に負担を先送りしないため」としているが補てん財源の活用がどうして将来世代に負担を先送りすることにつながるのかについて明確な説明はない。一般に大阪市の財政状況を見る場合、財政健全化法の4指標のうち実質赤字比率が早期健全化基準(11.25%)や財政再生基準(20%)を超えていく危険性が高かったがゆえに、2018(平成30)年度を目途に累積収支不足額をどう圧縮していくかという観点から検討されてきた。ちなみに平松市長は就任後、財政再建の取り組みを強め、2010年度決算においても単年度収支で黒字を維持するとともに、この1年間をとっても「中期的な財政収支概算(平成23年度予算版)」において約1,200億円と見込まれた2018(平成30)年度の累積収支不足額を約900億円にまで圧縮している。市民サービスを維持して財政再建が可能であることをいみじくも平松市政は示したともいえる。にもかかわらず橋下市長は、数字のトリックともいえる手段を弄してまで赤字額を膨らませ、それを理由に住民サービスの大幅な見直しを強行しようとしている。市民は監視を強めなければならない。
 第三に、市民が活動するための“場”や地域を支える公共人材の切り捨て、コミュニティを積極的に破壊する政策を進めようとしていることである。具体的に列挙すると、区民センター・老人福祉センター・各区屋内プール・各区スポーツセンターの箇所数削減、子育ていろいろ相談センターの廃止、市民交流センターの廃止、サテライトでの教育相談事業の廃止、不登校児童支援の通所事業の縮小、「学校元気アップ支援員」の有償ボランティア化(現状は非常勤嘱託職員)、長居障害者スポーツセンターの廃止、舞洲障害者スポーツセンターの宿泊施設廃止、青少年野外活動センター(3か所)の廃止、総合生涯学習センターおよび市民学習センター(4か所)の廃止、男女共同参画センター「クレオ大阪」(5か所)の廃止、キッズプラザの廃止、環境学習センター「生き生き地球館」の廃止、コミュニティ協会・社会福祉協議会への補助削減、大阪フィルハーモニー協会・文楽協会への助成金削減、地域生活支援ワーカーの削減(128人→24人)、地域ネットワーク推進員(小学校区単位)の廃止などである。これらの施設や専門的人材を必要とする事業が現在コミュニティにおいて果たしている機能を検証し、廃止や縮小が市民生活と地域コミュニティに及ぼす影響を具体的に示し反論していく必要があるだろう。
 また、「現役世代重視」を標榜し、高齢者施策の大幅な見直しを強行しようとしていることに高齢者から抗議の声が上がっている。
 この「試案」に対しては公表直後から、関係市民から反対の声が多くあげられ、大阪市議会市政改革特別委員会審議でも、与党である維新の会も含めて全会派から異論が噴出した。こうした状況を受けて、大阪市は4月16日から19日にかけて行った「試案」についての各局・区とのオープン議論を踏まえて策定するとしていた「市政改革プラン(素案)」を5月11日に公表し、その中で一定の原案修正を行った。しかし、この「素案」もパブリックコメントにおいて過去最高の28,399件の意見(うち94%にあたる26,763件が反対意見)が寄せられた。これを受けて大阪市は事業の見直し総額を399億4千万円に圧縮する見直しを行った6月27日に「市政改革プラン(案)」を公表し、7月臨時市会に臨んだ。市会議論の結果、「クレオ大阪中央館」の廃止撤回などの微修正を行い、大阪市は7月30日、3年間で394億6,100万円の削減を行うとした「市政改革プラン」を策定した。
  以上、「市政改革プラン」の問題点と策定過程を素描したが、一定の事業見直しの圧縮を図らせたものの、プランの持つ本質的問題は変わっていないことをまず押さえなければならない。その上で、市民が反対の声を上げだしたことに注目する必要がある。これらの見直しは主には来年度予算編成の課題であり、市民もまだあきらめてはいない。今後、市民と労働組合の運動をどう結合して広げていくかが課題と言えよう。

(3) 大阪市解体へのカウントダウン
 両首長は当選直後に政府関係者及び各中央政党幹部と会談のため上京し、「大阪都」構想実現に向けた協力を要請するとともに、協力を得られない場合は次期総選挙に維新の会として候補者擁立も辞さない構えを示した。その後、昨年12月27日に開催した第1回府市統合本部会議において、当面の獲得目標として、①第30次地方制度調査会の答申(2013年8月を想定)で大都市制度改革のための自治法改正を位置づけさせる、②法改正(2013年通常国会での改正を想定)後、速やかに新たな大都市制度を実施できるよう制度提案を府市でとりまとめ、議会を含めたコンセンサスを得る(2014年夏ごろ住民投票、2015年4月新制度移行を予定)、とした。また、「当面のロードマップ」において、「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会(以下、「協議会」と略)」設置条例案を大阪府議会、大阪市議会、堺市議会の2月議会で提案・議決を図り、4月に「協議会」を設置するとともに2011年度内に地方制度調査会への協議をスタートさせるとした。
 「協議会」設置条例案は、大阪府議会においては、2月23日に知事提案され、3月23日の本会議で維新の会、公明ほかの賛成で可決成立した。大阪市議会においては、3月2日に総務財政委員会に付託され、3月27日の委員会、28日の本会議において、維新の会、公明の賛成で可決成立した。しかし、竹山堺市長は3月3日、協議会への不参加を正式表明。維新の会は堺市議会に「協議会」設置条例案を議員提案したが、3月12日の総務財政委員会及び3月23日の本会議で否決した。以上により、4月から「協議会」は設置されたが、政令指定都市である堺市は不参加での発足となった。
 橋下市長は2月26日、地方制度調査会に出席し「大阪都構想」の説明を行った。その中で橋下市長は西尾勝会長の質問に答える形で、「新たな区」にも区議会を設置することを明らかにしたものの、再編後の「新たな広域自治体」及び「新たな区」の具体的な事務配分や税源配分、財政調整のあり方などの詳細な制度設計は示さなかった。また、住民投票については、実施する考えを明らかにしたものの、「区割りの問題で必要」との認識であり、区割り案について区ごとに反対が上回るところがあっても、大阪市民全体で賛成が上回れば確定できるとの考えを示しただけで、「都」制度移行=「大阪市」解体、「新たな区」への分割自体の是非を大阪市民という単位で意思表示できるか否かについては明確にしていない。その後地方制度調査会は精力的に会議を開催し、検討を行っているが、議事録を見る限りいわゆる「大阪都構想」には慎重な姿勢を崩していない。
 これに対し、中央政党の動きは急である。みんなの党は3月9日に地方自治法改正案を国会に提出。政令指定都市または政令指定都市と隣接近接する市町村で人口70万人以上であれば、市町村を廃止、特別区を設置し、道府県を都とすることができるとし、道府県及び関係市町村で「都・特別区設置協議会」を設置し、都と特別区の事務配分、財源配分と財政調整の案を策定し、各議会での議決があれば、住民投票すら要しない改正案となっている。一方、自民党は公明党と協議しつつ、大都市問題に関するプロジェクトチームが地方自治法改正案(特別区設置)のとりまとめ作業を進めていたが、4月18日に自公案として衆院に提出した。内容は、総人口100万人以上とし、特別区移行協議会を設置し、①特別区の設置時期、②特別区の区域、③都道府県と特別区の事務分担、④都道府県と特別区の税源配分及び財政調整、⑤特別区の議会議員定数、⑥都道府県及び特定市町村の財産及び債務の継承に関する事項、⑦都道府県及び特別市町村の職員の引き継ぎに関する事項、⑧その他重要事項を定めた「特別区移行協定書」を策定し、都道府県およびすべての特定市町村の議会での議決の後、住民投票を実施することとしている。住民投票においてすべての関係市町村でそれぞれの過半数の同意があった時移行協定書は確定するものとしている。また、民主党の地域主権調査会・大都市制度等ワーキングチームは4月11日に開催された総会において、「大都市地域における地方公共団体の設置等に関する特例法案(仮称)骨子(案)修正版」を提示し、地方自治法の改正は行わず、人口200万人以上の大都市(及びこれに隣接する市町村)で、当該市町村議会での議決と当該市町村での住民投票(府県全体の住民投票は不要とする)を経て「特別区」の設置が可能となる「手続き法」を今国会に提案し議員立法をめざす方針を示した。その後、民主・自民・公明・国民新・みんなの5党は、民主案を基本に、①政令市と隣接する市町村で構成される人口200万人以上の地域を対象に、市町村を廃止して「特別区」に再編できる、②関係自治体が、特別区の名称、区域などを定めた特別区設置協定書を作成し、議会での承認や住民投票を経て特別区を設置することができる、③事務配分、税源配分、財政調整については事前に総務大臣協議が必要、との内容で一本化に合意し、7月6日に法案提出、8月10日に衆院を通過した。参院審議は国会情勢が予断を許さない状況で、不透明であるが、政権与党である民主党は本来なら地制調の答申を待って、地方自治法改正の要否について責任を持った判断を行うという姿勢を示すべきであったのではないか。
 一方、法が成立した場合、ボールは大阪に投げ返されることになる。区割りや府と特別区の事務配分および税源配分、特別区間の財政調整制度など橋下・維新の会には明確な制度設計の提示と説明責任が求められる。官僚たちの動向も注視される。また大阪都構想を掲げる知事や市長を選んだのは間違いなく大阪市民であり、改めて住民投票でその真意が問われることになる。誰も第三者であることは許されない。大阪市解体のカウントダウンが始まるなかで、市民一人一人の見識が問われている。

2. 「反ハシズム」から新しい市民運動の創造へ

(1) 「現地」をつなぎ、自治の危機と希望を考える-府本部自治研集会
 本年5月18日から20日にかけて、「第15回自治研集会」は開催された。政権交代が実現し、「地域主権改革」への期待の中で開催された前回とは打って変わり、東日本大震災と大阪W選挙を経て、地方自治の危機とともに自治労の組織と運動に対する攻撃を肌に感じての開催となった。橋下・維新の会が提唱する「大阪都構想」におもねるように与野党を問わず中央政党は特別区設置のための法案策定作業を進めていた。一方で、普天間基地の辺野古移設や大飯原発の再稼働問題では自治体の主張に耳を貸さず、国家が前面に出ることで「決められる政治」を実現し政治への信頼を回復すると主張していた。自治の危機は政治の危機であり、大阪の危機は日本の危機でもある。しかし乗り越えるべき課題は危機の中でこそ顕現する。その課題を抉り出すことこそ今回の自治研集会のテーマであったと言えた。こうした問題意識から、テーマを「『現地』から考える地方自治の危機と希望」とし、福島・沖縄・大阪を結んで自治を考えることを試みた。シンポジウムでは、福島からは佐藤栄佐久前福島県知事、沖縄からは伊波洋一元宜野湾市長、大阪からは平松邦夫前大阪市長をお招きし、コーディネーターは中島岳志北海道大学准教授にお願いした。また、自治研プレ集会として、原発事故避難住民調査に取り組んでおられる今井照福島大教授をお招きし、講演会を開催した。7つの分科会では動物園の象の糞を肥料とし保育所などの菜園活動に生かし、実った野菜を園児たちが象にプレゼントする大阪市従の「リサイクルの輪」の実践、大阪市職の町会と協働した防災井戸掘り、八尾現労の里山運動、忠岡町職の忠岡町内美化活動など多くの市民協働の実践が報告された。また、天神橋筋商店のイベントスペース「天三おかげ館」をお借りして震災復興支援東北物産展や就労看護職員200万人体制確立署名活動にも取り組んだ。
 中島氏はシンポジウムの最後に、A.フロムを引用しながら、「何も引きうけず自由だけを求める心性は最もファシズム的なるものに近接する。私たちは何かを引き受けることによる自由を考えていかなければならない。あらゆる人を包摂しうる広がりを持った中間領域を形成し、社会を分厚くしていくことが、今のデモクラシーの危機に対する処方箋ではないか」とまとめられた。震災を機に「絆」という言葉がよく語られたが、人と人の絆はそうたやすく形成されるものではない。反面一度結びついた絆はそう簡単には断絶しない。公務員バッシングの渦中にあって、多くの市民の方が今回の自治研集会に駆けつけてくださった。その背景には組合員のたゆまない実践と市民協働の思いがある。自治の危機の中で私たち公務労働者と大阪の市民に問われているのは、「反ハシズム」運動ではなく新しい民主主義運動をそれぞれの立ち位置でもう一度耕していくことに他ならない。

(2) 市民運動の新たな動き――「AIBO(あいぼう)」の挑戦への支援・連帯
 7月10日、大阪市の北区内に小さな事務所がオープンした。名前を「AIBO(あいぼう)」という。Action・Incubation・Box・Osakaの頭文字をつなげたものだ。社会活動家として著名な湯浅誠氏が呼びかけ、大阪の若者たちが集まって設立された。AIBOは自ら特定の社会問題に取り組むのではなく、何らかの社会問題の解決に取り組もうとする市民やグループを支援することを目的としている。
 社会の問題に疑問や異論を持ち、自分の意見を発信したり、いろんな人とその問題について語り合いたいと思っても、どうしていいかわからないという人も多いのではないか。そうした市民と話すと組合事務所ではあたり前のコピー機や印刷機がいかに市民活動にとって重要なインフラであるかが再認識される。公的な会議室やホールの予約の仕方、チラシの作り方などのノウハウも同じだ。さらに育児や介護、多忙さを増す仕事などに追われ、思いはあっても結局行動に至らずに終わってしまい、疎外感だけをため込んでいる市民は多いはずだ。そうした市民にとっては、社会的権力を握っている側も、労働組合をはじめそこに異議申し立てをする手段を持っている側も、自分を疎外している社会システムを構成している側として同じように見えてしまう。そして彼ら彼女らが、労働組合などを攻撃することで強いリーダーシップを演出する政治家の支持へと流れてしまう。社会的弱者がポピュリズムに利用されていると言ってみても事態は変わらない。ともすればこうした指摘は上から目線からの侮蔑的な意見とも受けとられかねない。湯浅氏はこうしたいわば市民間の分断に抗して、繋がる回路を作らなくてはならないと主張しておられる。それは異議申し立ての手段を持っている社会運動の側から繋ぐ努力をしなければならないと。
 AIBOでは多様な市民活動の展開を支援した上で、これらの市民活動の担い手に呼び掛け11月23日から12月2日を集中ゾーンとして、多様な形態・規模での集会やイベントなど集中させ、「民意」の多様性を可視化させることをめざしている。自治労府本部もこうした市民主体の活動に呼応し、この期間に市民に私たちの政策をアピールする活動を集中的に展開すべく準備を始めた。
 「反ハシズム」から新しい市民運動の創造へ、府本部は市民とともに新たな一歩をめざす。