【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 「公共サービス基本法」の理念に則った「公共サービスの『質』」の維持・向上には行政責任と安定的な継続性を担保させる正規職員が不可欠であることを明確にする「『新直営堅持』を掲げた現業評議会運動を再構築する『再構築プラン』の策定」に関する取り組み報告。



大分県本部現業評議会運動の再構築プランについて


大分県本部/副執行委員長 井原  修

1. はじめに

 国や自治体の財政難を理由とした公務員人件費削減の圧力はきわめて高く、総務省の定員管理調査報告書によると、2010年段階の地方公務員総数は2,813,875人となり、そのうち技能労務職員総数は138,213人で過去20年における純減率は58%になっています。
 このように、現業職場・組合員に対する合理化は、全国的に歯止めを掛けることのできないまま、直営の現業職場と現業組合員数は減少の一途を辿っています。
 中央本部現業評議会は、現業統一闘争をはじめ「現業活性化」と「職の確立」を運動の柱に据えて取り組んでいますが、歯止めをかけるまでには至っておらず、現業組合員はピーク時の30万人から11万人と約3分の2に近い減少をしています。
 大分県内でも、ほとんどの自治体(一部自治体を除く)で現業職の採用を実施しておらず、民間委託や任用替え等によって、近年5年間の組織調査結果(2006~2011)をみても、約800人の現業組合員が減少し、現在では1,066人(2012年5月現在)となっています。
 このような中、私たち現場の声を伝える「現業運動」が混沌とした時代の中に埋没し、現業職場や現業組合員が自然消滅することだけは、断固として阻止しなければなりません。
 そのためにも、これまでの「現業運動」の理念や運動方針は失わないものの、理想と現実が乖離する運動によって、「直営堅持」を机上の空論にとどまらせてはいけないと考えました。
 大分県本部現業評議会は、「公共サービス基本法」の理念に則った「公共サービスの『質』」の維持・向上に、直営職場は不可欠であることを明確にし、その担い手には行政責任と安定的な継続性を担保させる正規職員が不可欠であることを明確にする「『新直営堅持』を掲げた現業評議会運動を再構築する『再構築プラン』の策定」に取り組むこととしました。


2. 現業評議会運動の再構築プランの策定および推進に向けた基本的な考え方

(1) 新たな時代を見据えた直営部門が担う役割の構築(新直営堅持)
 現在、どの自治体も公共サービスの民間委託を完全否定する事は困難な状況であり、民間委託の効果等を正確に検証し受け止める必要がありますが、財政的効果のみを追求し、直営理念を無くす事には警鐘をならすべきと考えます。
 今後は、良質な公共サービスの提供に必要となる持続可能な職場体制(正規・非正規・民間等のバランス)のあり方を検討し、その体制に直営(正規職員)が必要であると認められることが重要となります。最終的には、将来的な現業職場のあり方と職員配置計画を明確にする運動として構築し、現業評議会の新たな直営堅持としての取り組みをすすめます。

(2) 現業評議会運動の再構築にむけて
 これまで現業評議会運動が担った現業労働者の差別撤廃・地位向上・勤務労働条件の改善等の運動を総括し、時代に適応した「公共サービスの『質』」と「公共サービスに携わる労働者」を守る組織に発展する必要があります。
 具体的には、「公共サービス基本法」の理念を踏まえた現実的な制度政策要求を行う組織とするため、新たな運動の目的に、「良質な公共サービスを確実且つ適正に実行するために必要な環境の構築をめざす」こととし、その為には、政策決定の過程に現場の声を反映させる「労使による合意形成のシステム」を構築することをめざします。
 また、組合員範囲についても、非正規労働者の組織化を考慮した「現業部門の公共サービスに携わる者」と拡大できるような検討を行います。


3. 再構築プランの具体的な取り組み

(1) 現業統一闘争から人員確保闘争へ繋げる取り組み
<具体的な取り組み>
 ア.現業職員の将来的な不安を払拭し、安心して働ける職場作りを求めるため、単組・職場の課題を整理し改善に向けて取り組む。
 イ.「公共サービスの『質』」の維持・向上に必要な「直営職場・業務内容・職員数」等の将来像を明確にする「単組再構築プラン」を基本組織と現業評議会が連携し策定する。
 ウ.2012現業統一闘争において、現業職場の直営責任と役割を明確にする。また、「単組再構築プラン」を策定(予定含む)した単組は、「労使協議」の場を設置し、現業職場が担う「公共サービス」の将来像を労使で検討する。
 エ.必要な現業職員の配置は、専門的なノウハウの継承が出来る年齢構成とするため、人員確保闘争において職員配置や新規採用などの具体的計画を確認します。

(2) 単組再構築プラン策定にむけた県本部現業評議会の取り組み
<具体的な取り組み>
 ア.Q&A集を充実させ、単組再構築プラン策定のサポート体制を構築する。
 イ.県内の同業種・同職場や、任用替え等を行った類似する単組と意見交換の場を設置する。
 ウ.先進的な取り組み事例を有する単組を「モデル単組」に指定し、機関会議・学習会・意見交換等のオブザーバー参加や資料提供を行う。

(3) 再構築プラン推進重点単組の指定
<具体的な取り組み>
 ア.意見交換オルグの結果や、単組報告の内容を幹事会で議論する中、推進重点単組を指定する。
 イ.推進重点単組は、県本部現評・単組現評・基本組織で構成する意見交換の場を設置し、具体的な計画を「単組再構築プラン」として策定する。


4. 単組意見交換オルグでの意見(一部単組)

① <T市職労現業評議会>
【職場の現状】
 ア.保育所調理は3保育所を運営している。アレルギー対応については取り違え防止対策として、違う柄の食器をアレルギー児専用として用意し、つぎ分け時にラップをかけて名前を書いている。食育の一環として畑・プランターで野菜を栽培している。
 イ.学校主事については、小学校13校・中学校5校の内、職員4人、臨時・非常勤嘱託14人にて事務業務・環境整備業務に従事。
 ウ.養護老人ホームでは、現在、介護度4~1の入所者が多く特養化している傾向にある。認知症や持病(糖尿病等)の入所者が多数であり、支援員が生活指導等に苦慮している。また、祝祭日に感染症や急患があった場合にも出勤して対応をしている。調理員については、入所者の身体状況に合わせた食事の提供に努めている。(カリウム・減塩・計量ご飯・刻み食等)また、調理室の増改築により、3月からトレーの使用が可能となり個別の配膳が可能になった。2012年3月1日より1年を通しサービスができるよう、土日祝祭日の2人体制から3人体制に勤務形態を変えた。
【再構築プランについて】
 ア.出来ることから取り組み、現業職場の再構築へと繋げていこうと思う。
【民間委託の課題】
 ア.民間になって良かったのか悪かったのかの把握ができない。
 イ.民間委託になり、市の財政への効果がどれくらいあったのか検証をする必要がある。
②  <O市職労現業評議会>
【職場の現状と再構築プランについて】
 ア.清掃職場では、ごみ収集業務が中心の時代から、ごみに関する指導業務・啓発業務を行政責任として担う専門職員としての確立をめざしてきました。2013年度からは、住民の相談を受けやすくするために市民行政センターに職員配置(指導員)や、リサイクル計画等の作成を企画する清掃管理課への職員配置(指導員)等、これまでの業務に付加価値を加えることで、これまで以上に市民サービスの向上に寄与できると考えています。再構築プランの考え方と同一の方向性なので継続した取り組みによるさらなる公共サービスの向上を県本部と連携して取り組みたい。
 イ.給食職場(単独)においては、配置基準の見直しが行われているが、正規職員が減少する中にあって「給食の質」を低下させず向上させるための役割として、調理研修の責任者や非正規職員の監督的役割を正規職員に加えるとともに、複数校の応援職員等の調整を行うため市内3ブロックに「専門員」として正規職員を3人配置しています。
 ウ.学校主事職場については、職員配置基準の見直しによって非正規職員増となったが、専門的な技術の継承と、業務の質を維持・向上させるため「専門員」や「指導員」の配置をすることができた。


5. 全単組での単組再構築プランの策定にむけて

 再構築プランとは、現業運動を机上の空論とならないようにする具体的な行動計画です。
 具体的とは、現業職員の「将来的な不安の払拭」と、「公共サービスの『質』」の維持・向上に必要な職場の将来像を労使で明確にすることです。その将来像は、現場の声から積み上げることが重要です。「公共サービスの『質』」とは何かを真剣に考え、自らの役割と可能性を自ら発展させ付加価値のある公共サービスを実現する計画が単組の再構築プランとなります。
 再構築プランに取り組むことは、公共サービスが直営で運営されること、自治体職員が提供することを住民に認められることに繋がります。また、職員にとっては、質的向上をめざした取り組みの結果、住民サービスの寄与に貢献することが働き甲斐のある職場・業務となります。
 大分県本部現業評議会は、再構築プランによって現業職場の可能性を議論し、「公共サービスの『質』」を維持向上させることをめざします。