【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第2分科会 地方財政を考える

 2012年5月に、自治労空知地方本部主催の財政セミナーが行われ、そのセミナーに参加し、地方財政について学習しました。財政健全化法の施行により、事業会計などを含む連結実質赤字比率の考え方が盛り込まれることとなり、砂川市においても、まちづくりの核となっている市立病院の経営問題などを抱えているため、市職員として財政についての認識を深めるべく、自らのまちの財政分析を行うことにしました。



砂川市の財政分析


北海道本部/砂川市職員労働組合・自治研推進委員会 米谷 和敏

1. はじめに

 砂川市は北海道のほぼ中央に位置し、東は夕張山系を境に赤平市、歌志内市、上砂川町に隣接した丘陵地帯が続き、西は石狩川を挟んで新十津川町、浦臼町に、北は空知川を挟んで滝川市、そして南は奈井江町に隣接した平地地帯が広がっています。東西に約10.5km、南北に約12.7km、総面積は78.69km2あり、市街中心部は平地地帯で南北に細長く展開し、中央には基幹道ともいうべき国道12号のほか、JR函館本線や道央自動車道がそれぞれ南北に伸び、豊かな緑と水に囲まれた商工農のバランスがとれたまちです。人口は、最も多かったときには4万人を超えていましたが、1949年に上砂川が分町し、直後は2万3千人台となりました。その後、工業の進展に伴い人口が増加。1958年に市制が施行され、翌59年には32,495人と市制開始後のピークに達しました。以降はさまざまな要因から減少を余儀なくされ、2012年3月31日現在で18,740人(9,125世帯 男性8,737人 女性10,003人)となっています。

2. 市の財政状況および分析

(1) 2010年度決算状況
 2010年度の決算においては、歳出面で、小中学校の耐震化を終え、学校耐震化率100%の達成や、国の経済対策に呼応した交付金事業等の活用により事業を確保しつつ、歳入面では、自主財源の根幹である市税は、法人市民税は伸びたものの、個人市民税が大幅に落ち込み、3年連続の減収となっていますが、地方交付税、臨時財政対策債が増額となった結果、財政調整基金を取り崩すことなく財政運営を行うことができています。これは行財政改革や公債費負担適正化計画に基づき着実にスリム化してきた成果と、交付税や臨時財政対策債の依存財源が大幅に増額となったためです。

(2) 2010年健全化判断比率等について
① 実質赤字比率
  黒字か赤字かを判断する指標で標準財政規模(人口、面積等から算定する当該団体の標準的な一般財源の規模)に対する比率であり、これが生じた場合には赤字の早期解消を図る必要があります。
  砂川市の場合は黒字のため、数値は公表していません。
② 連結実質赤字比率
  実質赤字比率を特別会計・企業会計を含めた全会計に適用したものです。これも実質赤字比率と同様赤字が生じた場合は早期解消を図る必要があります。
  砂川市の場合は黒字のため、数値は公表していません。
③ 実質公債費比率
  年収に占める年間の借金返済額の割合を示したものです。一般会計等が負担する元利償還金などの、標準財政規模に対する比率であり、18%を超えると地方債を発行する際に許可が必要となり、25%を超えると一部の起債発行が制限されます。
  砂川市は、18.9%と高い比率になっていますが、公債費負担適正化計画を作成し、2012年度までに18%未満となるよう適正化に努めているところです。
④ 将来負担比率
  将来見込まれる負債が年収の何年分に相当するかを示した割合です。この比率が高い場合、今後の財政運営が圧迫される等の問題が生じてくる可能性があります。
  砂川市は、109.7%と早期健全化基準には達していません。
⑤ 資金不足比率
  公営企業の資金不足を、公営企業の財政規模である料金収入の規模と比較して指標化し、経営状況の深刻度を示します。
  砂川市は、資金不足はありませんでした。

図1:砂川市における健全化判断比率等の対象


図2:砂川市における各指標の位置状況


(3) 財政分析に関するその他の指標等について
① 財政力指数
  地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値。財政力指数が高いほど、普通交付税算定上の留保財源が大きいことになり、財源に余裕があるといえます。単年度の財政力指数が1を超える団体は普通交付税の不交付団体となります。
  砂川市は、長引く景気の低迷や人口の減少による産業の衰退などから税収入の減少が続き、財政基盤が弱く、類似団体平均を下回っています。
② 経常収支比率
  地方公共団体の財政構造の弾力性を判断するための指標で、人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費(経常的経費)に充当された一般財源の額が、地方税、普通交付税を中心とする毎年度経常的に収入される一般財源(経常一般財源)、減税補てん債及び臨時財政対策債の合計額に占める割合です。
 この指標は、経常的経費に経常一般財源収入がどの程度充当されているかを見るものであり、比率が高いほど財政構造の硬直化が進んでいることを表します。一般的に市の場合は75%~80%が妥当とされています。この率が高ければ高いほど新しい事業(施策)を実施する余力はなくなります。
  砂川市は、行財政改革による人件費等の削減、補償金免除の繰上償還や公債費負担適正化計画の確実な実施により類似団体平均を下回っています。
③ ラスパイレス指数
  市(地方公務員)の給与水準を、国(国家公務員)の給与水準と比較するために用いる統計上の指数。国家公務員の職員構成を基準として学歴別、経験年数別に平均給与月額を比較し、国家公務員の給与を100とした場合、地方公共団体の給与水準がどれくらいの値となるかを見るものです。
  砂川市は、2006年度より、職務職階に応じた給与構造や地域における官民格差を取り入れた国家公務員の給与制度を導入し、年功的給与制度の転換を図っています。
④ 将来負担比率
  一般会計等が将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模を基本とした額に対する比率を表します。この比率が高い場合は、当該団体の一般財源規模に比べ、将来負担額が大きいということであり、今後、実質公債費比率が増大すること等により、財政運営上の問題が生じる可能性が高くなります。
  砂川市は、起債残高の着実な減少などにより前年度と比較すると改善しておりますが、類似団体平均をやや上回っています。
⑤ 実質公債費比率
  2006年度起債分より許可制から協議制へと変更になったことに伴い(実質公債費比率が18%以上の場合は引き続き許可制になる)、この実質公債費比率をもって起債が協議団体になるか許可団体になるかが決まります。実質公債費比率が25%以上になると一般単独事業債が発行できなくなり、35%以上になると一般事業債(公営住宅事業債や臨時道路整備事業債等)の発行ができなくなります。
  砂川市は、公債費負担適正化計画の確実な実施などにより前年度と比較すると改善しております。過去の起債償還額が多いところに普及率の高い下水道事業や病床数の多い病院事業を抱えていることなどから類似団体平均を大きく上回っていますが、2012年度までに18%未満となり起債許可から起債協議へと変更する見込みです。

3. 最後に

 以上のように砂川市における決算額と健全化判断比率等の財政状況を分析してみました。これによって砂川市の財政の特徴や傾向が明らかとなりました。東日本大震災による復興費や社会保障関連経費の増大など国の財政状況は非常に不透明な状況であり、砂川市の財源の約4割を占める地方交付税の動向も心配される状況です。さらには地域主権型社会への転換が進められている中で、今後地方自治体がこれまで以上に自己決定・自己責任の中、地域における住民ニーズを捉えて行政サービスを行っていくことが求められる時代となってきております。時代の変化に対応した持続可能な自治体運営を行っていくためには、前例踏襲ではなく、自治体としてこれまで以上にムダの削減や自己財源の確保など徹底していくことはもちろん、職員自身もこれらデータを活用しながら継続的に財政分析をし、その結果をもとに色々知恵を出し合いながら運営に寄与していくことが必要と考えます。