【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第2分科会 地方財政を考える

 京都府南部に位置する地理的に一体となっている山城地域には、5市6町1村がある。現在、それら自治体のごみ処理は、1市を除き一部事務組合で処理をしている。しかし、リサイクルの進捗による可燃ごみ排出量の減少や、財政難のなか、焼却施設の老朽化による立て替えが大きな課題となっている。そこで、山城地域の各自治体のごみ処理における現状をみながら、財政効率化に向けた「広域化」についてシミュレーションしてみた。



山城地域ごみ広域処理計画について


京都府本部/城南衛生管理組合労働組合・書記長 川戸 英美

1. 可燃(焼却)ごみの処理と施設整備状況

 山城地域各自治体における可燃ごみの処理量は全体で143,797t/年(2009年度版京都府環境白書より)となり、処理方式は、京田辺市を除き一部事務組合による共同処理を行っている。

図1 各自治体の可燃ごみ処理量
(注)和束町・笠置町及び南山城村は省略。


表1 焼却施設の整備状況
設置団体名
施設名称
処理方式
処理能力
城南衛生管理組合
(宇治市・城陽市・八幡市・久御山町・
 宇治田原町・井手町) 
折居清掃工場
ストーカ
230t/日(2炉)
クリーン21長谷山
ストーカ
240t/日(2炉)
京田辺市
環境衛生センター甘南備園
流動床
80t/日(2炉)
相楽郡西部塵芥処理組合
(木津川市・精華町)
打越台環境センター
ストーカ
60t/日(2炉)
相楽郡東部じんかい処理組合
(和束町・笠置町・南山城村)
相楽東部クリーンセンター
ストーカ
20t/日(2炉)

2. 各団体における課題

(1) 城南衛生管理組合
 2006年度にクリーン21長谷山が完成。折居清掃工場と合わせて470t/日の処理能力を有している。しかし、人口増加の鈍化、リサイクルの進捗による可燃ごみ排出量の微減に伴い、2施設の平均稼働率(環境省算出基準)は、約80%に留まる。


表2 折居・長谷山の焼却処理実績
 
折居清掃工場
クリーン21長谷山
焼  却  量
38,696.04 t
62,699.11 t
稼 動 日 数
352日
359日
1日平均処理量
109.93 t
174.65 t
稼  働  率
62.6%
97.2%
(注1)稼働率=実処理量÷年間処理計画量(処理能力×280日×0.96調整稼働率)
(注2)折居清掃工場焼却量には船井衛生管理組合受入分(863.93t)含む

 表2でも明らかのように可燃ごみ発生量の微減により、発電タービンを有すクリーン21長谷山に焼却処理の比重を傾け、売電量を確保している。しかし、折居清掃工場も隣接の山城総合運動公園(太陽ヶ丘)へ蒸気供給を行わなければならず、計画量を下回るごみ排出量に対して苦しい運転状況となっている。
 このことから、2021年度を目標に整備が進められている(仮称)新折居清掃工場の規模設定は、120t/日(60t/日×2炉)になると言われている。

(2) 西部塵芥処理組合
 学研都市として人口の増加著しい同組合管内は、人口増に比例してごみ排出量も増加の傾向にある。このような状況で処理施設の整備が追い付かず、現在は打越台環境センター(60t/日)の処理能力超過分である木津・加茂両地域の燃やすごみを1998年10月(加茂地域分は2000年5月)から三重県伊賀市の民間業者で委託処理(中間処理及び最終処分)している。
 現在までの同組合(旧加茂町含む)の推移を表3に、委託処理量及び委託処理に係る経費を表4に示す。


表3 西部塵芥処理組合の推移
 
精華町
木津町・山城町
加茂町
1962.8 精華町・木津町・山城町の3町で組合設立、
翌1963年鹿背山焼却場稼動 
 
1977    加茂清掃センター稼動
1980 鹿背山焼却場停止、打越台環境センター稼動   
1998.10 木津地域の燃やすごみの委託処理開始   
2000.5    加茂清掃センター停止
加茂地域の委託処理開始
2006.4   木津町・山城町・加茂町が合併し木津川市発足 

表4 民間業者処分委託状況推移
① 処分委託量
 
2007年度
2008年度
2009年度
木津搬出分
2,565,080kg
2,696,400kg
2,463,290kg
加茂搬出分
2,707,530kg
2,626,290kg
2,657,310kg
合 計 ①
5,272,610kg
5,322,690kg
5,120,600kg

② 処分委託料
 
2007年度
2008年度
2009年度
処分委託料 ②
182,142,305円
183,872,319円
171,052,160円
1t当りの単価(②÷①)
34,545円
34,545円
33,405円
(注1)単価の端数は、四捨五入。
(注2)上記、処分委託料に加え、伊賀市分担金として1,000円/tを支出している。

 また、同組合の取り決めで次期焼却場を木津川市内に求めることになっていることから、木津川市は、委託処理を行いながら候補地の選定作業を行ってきた。このようななか、2008年2月、木津中央地区の計画断念後、翌2009年5月に設置された「清掃センター建設審議会」は8回の審議を経て、2010年2月に一度は断念した鹿背山川向地内を再び選定地に決定した。
 今後の地元協議、建設に係る環境影響評価(環境アセスメント)等の手続き期間を考慮すると、完成には10年程度の月日が必要になる。しかし、当初3年を期限に開始した委託処理の継続、打越台環境センターの老朽化など早急に対策が必要な課題が山積しているなか、また、京都府広域化計画では「2018年に相楽地区で1施設」と示されている点も踏まえれば、処理体制の再構築が必要である。


(3) 京田辺市
 大阪府枚方市に隣接する京田辺市は、衛生センター甘南備園で単独処理を行っている。ダイオキシン類対策が全国を席巻した1997年に城南衛生管理組合への加入が持ち上がったものの、条件等で合意に至らず現在に至っている。甘南備園は、2010年度で運転後24年が経過することから更新計画が検討されている。しかし、地方財政の厳しい折、建設コストの負担は大きく、隣接の大阪府枚方市との共同処理を模索していると言われる。


(4) 相楽郡東部じんかい処理組合
 相楽西部と対照的に人口減少(2町1村で9,200人)により、和束町に1999年に設置された相楽東部クリーンセンター(20t/日)の稼動日数は月平均15日に留まっている。同センターは、構成する3町1村の財政規模が小さく、運営経費の負担が大きな課題となっている。また、2019年に撤去することを地元と協定を結んでいるため、今後、施設移転先が課題となってくる。


3. 広域ごみ処理計画

(1) 各自治体が進める施設整備計画
 各自治体が進める施設整備計画(スケジュール)を表5に示す。


表5 各自治体の整備計画
年度
城南衛生管理組合
相楽西部塵
芥処理組合
相楽東部じん
かい処理組合
京田辺市
2010
新折居清掃工場
建設準備室立上げ
建設審議会、
建設候補地選定
   
2011
       
2012
       
2013
       
2014
環境影響評価      
2015
     
2016
    甘南備園、
稼動30年目
2017
入札・契約
建設工事着工
     
2018
京都府広域処理計画上、相楽地区内1施設の目標年度   
2019
  現有施設、使用期限切れ 次期処理体制への移行
目標年度
2020
     
2021
新工場、運転開始
旧工場解体工事
     
2012
     

(2) 短期・中期計画(2021年度まで)
 木津川市による府外(域外)処理は、当初3年間の緊急避難的措置として始まった経緯もあることから、速やかに解消されることが望ましい。対策案として当面は、打越台環境センターの延命化を図りながら、オーバーするごみ量を城南衛生管理組合で受け入れる。
 2007年度ベースで見た処理フローを図2で示す。


図2 短期・中期計画ごみ処理フロー
 

 施設は、それぞれの現有施設を継続使用することから折居清掃工場への搬入量分の処理経費を納入する負担金方式を採用する。
 城南衛生管理組合が2007・2008年度に船井郡衛生管理組合のごみ受け入れを行った際の処理単価は1t当り25,135円であった。上記の搬入量で試算した場合の経費は、約2億9,000万円/年+運搬経費となる。(西部塵芥2億5,000万円、東部じんかい4,000万円)
 また、打越台環境センター、相楽東部クリーンセンターの廃止と折居清掃工場への全量受け入れとなった場合でも、総搬入量は64,000t程度に留まり、過去の焼却量実績と比較しても十分に全量処理が可能である。

(3) 長期計画(2022年度以降)
 現在、城南衛生管理組合で(仮称)新折居清掃工場の建設計画が遂行されている。しかし、広域化計画の必要性からこの新折居清掃工場の処理規模の見直しを行い、京田辺市の処理も包括した新たな組織を立ち上げ、現折居清掃工場敷地内を軸に周辺用地の確保を図りながら新工場の建設を行う。この場合の2007年度ベースで見た処理フローを図3に示す。また、各自治体の負担分は表6に示す。
① 処理形態
  焼却場は、クリーン21長谷山・新折居清掃工場の2施設に集約する。
② 収集運搬
  城南衛生管理組合は現行方法と同様とし、京田辺市はクリーン21長谷山まで直接搬入、相楽郡地域からは、新たに中継施設を設け中継車による一括運搬を行う。
③ 施設規模
  山城地域全体の総搬入量(焼却量)は、約144,000tとなる。うち、クリーン21長谷山で63,000tを焼却する。残り約81,000tを(仮称)新折居清掃工場で焼却することとなり、必要な処理能力は300t/日となる。
  処理能力  81,000t÷(280日×0.96)≒300t/日  (注)中継施設の規模算定は除く。
④ 財政規模
  建設コスト4,000万円/tと仮定した場合の事業費概算は、120億円となる。
  建設事業費 300t/日×4,000万円=120億円  (注)中継施設の事業費算定を除く。


図3 長期計画ごみ処理フロー

表6 各自治体の建設事業費負担金額
宇治市
城陽市
八幡市
久御山町
宇治田原町
47,328t
22,258t
18,220t
7,584t
2,776t
32.9%
15.5%
12.7%
5.3%
1.9%
39.5億円
18.6億円
15.2億円
6.3億円
2.3億円
井手町
木津川市
精華町
京田辺市
和束町
2,364t
14,524t
9,312t
17,777t
810t
1.6%
10.1%
6.5%
12.3%
0.6%
1.9億円
12.1億円
7.8億円
14.8億円
0.7億円
笠置町
南山城村
合計
 
391t
453t
143,797t
0.3%
0.3%
100.0%
0.4億円
0.4億円
120億円
(注1)排出量は2007年度ベース(京都府環境白書から引用)。
(注2)事業費は、排出量按分で算出。
(注3)国庫支出金・地方債等の財源は含まない。

⑤ 課題点
 a.折居清掃工場の敷地面積が狭小であることから、建設用地確保に向け、隣接の保安林解除や運動公園用地買収(借地)について京都府との協議が必要。
 b.相楽郡各自治体及び京田辺市が城南衛生管理組合へ加入する方式とするのか、それぞれの財産を処分・統合し、新たな広域連合として新組織を発足させるのかの検討。
 c.(仮称)新折居清掃工場建設規模の増強により城南衛生管理組合構成団体(3市3町)の建設負担金が増加することから、新規参加団体との事業費調整が必要。