【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第6分科会 地域での子育ち支援

 合併により加速化された人口の流出ではあるが、新規就農者の方やUターンされる方等もあり、現在は15人の子ども達が通園している。1995年に4校が統合してできた小学校も、今年は隣の地区の小学校と統合され2年後には、小中一貫校として隣の中津江村へ行くことになっている。このような厳しい状況の中ではあるが「だからこそできる保育」「必要な保育」そして「大切に守り続けたい保育」とは何であるのかを問いながら大切な子ども達のためにも、人として保育士としての質の向上をめざしていきたいと考える。



保育園職員の資質向上への取り組み
~やがて実になる力は、積み重ねと、受け入れ楽しむ心から~

大分県本部/日田市職員労働組合・すぎっこ保育園 相垣 里美

1. はじめに

 本園は、日田市街地より車で1時間。熊本県との県境に位置し、緑豊かな森林に覆われた小規模の保育園。当時2園あった保育園を統合し、1999年に「すぎっ子保育園」として新築する。OMソーラーを導入し、床材から構造材までの全てを、地元産の津江杉を使って建てられた園舎の中で子ども達は木の感触を肌で感じながら、日々の生活を送っている。


2. 日田市公立保育園(5園)における共通の取り組み

主任会…………… 県の発表に向けて「エピソード記述」に取り組んでいる。
「主体的に生きていける子どもに育ってほしい……」という願いから心を見る力、心の声を聴く力、そこに気づく力を、保育士自身が訓練していきたいという思いで始める。
保育士…………… 年齢別の研修会をそれぞれ年4回行う。
未満児、3歳児、4、5歳児グループに分かれ、内容については各年齢で検討する。
非正規職員も参加できるよう、各園で調整していく。
公開保育………… 5園が1回ずつ行う。園全体が対象であるため、保育、給食、環境等各園の全体が公開の対象となる。それぞれの園がどのような形で公開保育を行うのかは各園で検討する。
午後は、意見交換会を行う。
視察研修………… 年1回。各園より1人参加。
その他の研修会への参加、自主研修のすすめを行っている。
組合との協議…… 「日田の保育を守る会」という保育士会も58回を終えた。
書記長はじめ執行部の方を交え、双方の報告や協議を行っている。


3. 本園におけるその他の取り組み

 本園では、長年行われている「全員参加の朝会」というものがある。伝統として受け継がれているものではないが、年度初めに話し合いを持つと「それは、やはり必要だろう。今年もしましょう。」ということで数十年続いているだけのことである。
 子どもの姿であったり、自由保育からの提案であったり、その他様々な要因があり、その度ごとの職員間の話し合いの結果、始まったものだった。当時あった2園はどちらも行っていた。
 全園児40人程いた時期もあったが、縦割り保育をしていなくても、しっかり縦の関係ができていたのが2園の特徴でもあり、家族的だったのが印象的である。しかし、そのような生活の中でも「全員参加の朝会」は大切なものであった。

(1) 方 法
 週1回(主に月曜日の朝)全園児を対象に担当保育士(主に週番)が朝の挨拶と、なんらかの保育(活動)を行う。
 活動の内容に関しては、年度初めに、職員間で協議するがリズム…劇遊び…季節の歌…素話し…廃材を使った遊び…散歩等様々である。1年間取り組んだ事柄を生活発表会へとつなげることもあった。 
 活動時間は、担当保育士の考える活動内容によって違い、15分程度であったり、1時間以上であったりする。なるべく未満児さんも一緒に楽しめるような配慮や工夫を行うが、場合によっては先に解放~ということもある。状況により臨機応変に対応していく。
 園長、主任、保育士が見守る中、担当保育士が保育を行う。いうなれば、ミニ公開保育のようなもの。
 活動中は担当保育士の保育に協力しながら、その場での情報交換や情報の共有を行い、その保育を一緒に楽しもうという姿勢で取り組み関わっていく。なのでその後改めて、反省会等をすることはしていなかった。 
 しかし、保育所保育指針の改正により、自己評価の重要性を改めて感じ、質の向上に係るP・D・C・A計画(プラン)-実践-記録・省察-自己評価-課題の明確化-研修の必要性を学び昨年度は園内研修として改めて見直し、様式を決めて文章化し明確にしていく。

(2) 事例 ①
11月12日  当番A
*貨物列車 以上児クラスの子に大ブーム。
ジャンケンの勝負がわかり、喜んだり悔しがったりしつつも、一つの列車につながっていくことを楽しんでいた。
 未満児はジャンケンの理解はできないのだが、列車になって動くという楽しさは味わえたのではないか


*ミッキーマウス体操  子ども達に馴染みのある曲と、ノリのよいメロディー。自然と身体も動き、笑顔で参加できていた。

*挨拶・当番紹介      円になって行う。対面スタイルもよいが、円になると子ども同士もお互いの顔、表情が見れてよいと感じる。

*みの虫作り  まつぼっくりに毛糸をまきつけていくだけ……という簡単な製作遊び。未満児クラスの子がとても楽しそうに作業していた。

*絵本「てぶくろ」集中してよく聞いていた。
 ~反省・自己評価~
*全体的な流れがチグハグで、一貫性がなかったように思う流れをどのようにするのか……ということを、もう少し考えてから臨んだ方がよかった。
*みの虫の製作においては、未満児は楽しそうに作業していることが伺えた。以上児もそれなりに楽しんで作業していたものの、もう少し差をつけて(発達に合わせた)工夫があった方がよかったのではないかと思う~他者評価~
*単純な作業だったので、未満児も楽しく参加できた。
*季節にあったものでgood
*毛糸が長すぎて、先に巻いていた毛糸の色が見えなくなっていた子もいたので、少し短く切っていてもよかったのでは。
*どの活動も子ども達の表情がよく、楽しんで参加してる様子が伝わってきた。
*貨物列車では、少しスピードを落とし、ゆっくりテンポから進めていくと、未満児もより楽しめたかもしれない。
*並びのスタイルを変えて見ることはよい経験となる。状況にあわせ、保育士の言葉をしっかり聞きながら、「自分で考えて動く」経験を心がけて体験させてほしい。
 ~課題~
*集会前まで流れをどうするかが決まらず臨んでしまったので、構想をもう少し考えることが必要である
*同じ作品を作って楽しさを共有することは必要であるが年齢差もあるので、それぞれが楽しんで作業できる工夫が必要。

(3) 事例 ②
11月21日  当番B
*色遊び  ハッポートレーをパレットにして、3原色で色作り
赤 青 黄 と白で色々な色ができる事を発見する。


ハッポートレーに1色ずつ入れて置くことが望ましいが、今回は4角に違う4色を入れる。

注意……水をつけた筆は必ず布で拭き水気をとる。
……水を入れる時は、お寿司屋さん用の醤油入れを使う。
……1色を画用紙に円状に塗る。もう1色を筆先で少量とり、混ぜる。
……その繰り返しで、色の違いを作っていく。
……あれこれ混ぜない。
 ~反省・自己評価~
*2歳児には難しいだろう……と思ったので、説明の時点で保育者についてもらい、少しずつ手を取って色作りしたがそちらに手を取られ、他クラスへの目が届かなくなった。
*あれこれ混ぜてしまい、黒っぽくなってしまい残念だった。
*綺麗な色の変化を発見させたかったので、自分の中では納得がいかなかった。
 ~他者評価~
*色々な色ができていたので微妙な色の違い等を、皆で見せ合うのもよかったかもしれないと思った。
*遊びの内容が難しすぎたように思う。保育士が一人一人の手を取って「こうしなさい」「次はこうよ」「それはだめ」という活動で、「子ども達が楽しめたのか?」という点では疑問。
*パレットに色んな色を出せば、それを混ぜてしまいたいのが子どもの心理だと思う。なのでその混ざり具合がどうであれ、楽しめていればよいのではないだろうか。
あるいは、パレットに2色しか出さず、次に違う色を出してあげたり、段階的に行うと又違ったのではないか。
*大好きな絵具遊びだが、活動が高度な為に、必然的に規制も多くなり、楽しさが半減していたように思われる。
*遊びの発想としてはとてもおもしろいので、少し自由な部分を取り入れ、子どもの主体性に目を向けていくと、また変化が見えたのではないか。子どもの思いの汲み取りが大事になってくると思われる。
 ~課題~
*事前に、他の保育士さん方に計画を伝えアドバイスを受ける等して相談していく事も大切である事に気づく。

(3) 事例 ③
1月21日  当番C
*福笑
 かるた、すごろく、凧揚げ、羽根つき 等のお正月遊びをいくつかあげ、その中の「福笑い」という遊びをいやってみる。
 「アンパンマン」と「ドラエモン」を2個ずつ準備し、4チームに分かれて行う。
(各年齢を組み合わせチームを作る)
(未満児のみで1チーム作る)
 遊び方を説明し、年長-年中-年少の順番で行い、出来たらその都度見せ合う。一巡したら、自由に「福笑い」をする
~課題~
*パーツが少なかったので以上児用にはアンパンマンのまゆげ、ドラエモンにはひげ等少し増やしておけばよかった。
*遊びの内容がわかったので以上児には自分で作らせてみたい。
 ~反省・自己評価~
*他のお正月遊びは知っている子もいたが、福笑いはほとんどの子が知らず、初めてする遊びのようだった。その為すぐに興味を示した。
*未満児は目隠しをしない子もいたが、パーツを並べる事を楽しめていたのではないだろうか。
*もう少し形を大きくした方がよかった。
 ~他者評価~
*子ども達の大好きなキャラクターだったので、小さい子も興味津々で楽しんでいた。
 1歳児は目隠しをしたがるが、必ずずらしてしっかり見ながら並べ、2歳児は1歳児にパーツを取ってあげながらも自分が並べ替えたり、それぞれの年齢の発達の姿が現れていておもしろかった。
*目隠しをするというだけでも、ワクワクドキドキとはしゃいでいる子どもたちの姿は本当に楽しそうだった。簡単なお正月遊びだったが、楽しめていた。
*大きいクラスの子はすぐに遊び方がわかり、出来るようになっていたので、自分の分(キャラクターでも自分の顔でも)を作って遊ぶところまでいけるとよかったかな~と思った。
*黒板等に大きく貼り、皆の前で一人ずつ挑戦して見る、というのも、多勢で笑いが共有できておもしろいかな~
*集会が終わったあと、子ども同士で楽しんでいた。

4. 気づき(……そして今後)

*文字にして表すことにより、より明確に見えるようになった部分は確かに感じられる。
*自分たちの保育の振り返りを、繰り返し読むことができるのは文字化のおかげ。
*文章の書き方、人にわかり易く伝える為の工夫が必要となる。
*日々の保育の中で様々な保育記録を繰り返している私たち。研修記録等合わせれば膨大な量となるので 負担が大きくなる。

そこで「全員参加の朝会」の目的や意図を再度、確認してみる。私たちが大事にしたいものは
*担当保育士が意欲的に取り組めるような環境
*他の職員はその保育者の思いを汲み取り、自分も楽しもうとする態度や受け入れの心
*その活動をより盛り上げようとする双方の言動や行動を、お互いが受け入れようとする協調性と協力体制

 双方の保育士たちの意欲や思いやりの心は、子どもたちにも必ず伝わるという気持ちで私たちはこの保育に取り組んできたし、今後も無理なく続けていきたい。
 
 ~積み重ねと、受け入れ楽しむ心が育てる力…を信じて~
受け入れられることで、主体的に生きていけるのは大人も子どもも同じでは……。


5. エピソード(他園保育士より)

 その年のテーマは素話でした。「おいてけ堀」という、こわいお話をご存じですか……欲深な男がルールを守らず魚釣りをしていたら、お化けがでて腰をぬかす…というお話です。
 内容はともかく、この話しを、心ときめかせ聴いていた子ども、そして保育者がいました。
 なぜ、心ときめくのか、それは「私が話してあげたい」という思いで話してくれる保育者だったから……。
 瞳を輝かせ、身振り、手振りで楽しく話してくれた人は…園長先生でした。
 集会や行事の担当で負担に感じることもあるとき、この園長先生の姿勢から、学んだことは大きかったな、と今、振り返ってしみじみ思うのです。
 あたたかい気持ちにふれた事は保育士人生の宝物です。子どもたちにも伝えたい心です。


6. おわりに

 今年は、和の踊りの基本動作にも挑戦中。というのも、和の踊りが得意な保育士さんが意欲的に取り組んで教えてくれている……。先生の一生懸命が、私たちにも伝わる。ちょっと大変だったり、きつかったりもたまにあるけど、おもしろい。子どもたちの微妙な表情もまた可愛い……今年もまた、皆で楽しんでいる。