1. はじめに
近年、住民参加はまちづくり手法としてあらゆる場面で一般的に用いられ、実践的な事例報告も数多く挙げられている。しかし、住民に対して一方的に説明を行うだけの、所謂形骸化した住民参加も見受けられる。地方財政の厳しい状況が続く中、今後の地方におけるまちづくりでは、住民を主体とした活動の果たす役割は非常に大きい。行政は住民を巻き込んだまちづくりの本質を理解し、有効に活用していく必要がある。
そこで、めだか保護に対する地域住民の継続した活動と公園整備過程において参加のワークショップ(以降:WS)が行われた大分県津久見市の湧水めだか公園を対象として、住民参加が及ぼした影響を示し、行政に求められるまちづくりへの取り組みについて考察する。
2. 湧水めだか公園整備の概要
(1) 公園整備計画の概要
大分県津久見市千怒地区では1995年度から「第二千怒土地区画整理事業」が行われ、住宅地としての整備が進められてきた。この計画に伴い、めだかが棲む田んぼの用水路(通称めだか川)は道路として埋め立てられた。当時、この計画を知った千怒小学校の児童らが、市長に対して「めだかの生息場所を確保して欲しい」と要望を出したことから、まちづくり交付金を活用して同事業で既に計画されていた公園にめだかの生息環境を創出することが約束された(写真-1)。
(2) 千怒小学校によるめだか保護活動
千怒小学校では「総合的な学習」の中で、めだかに関する学習を継続して行ってきた。1999年度には4~6年生と地域住民、市役所が協働して、めだか川に棲むめだかを救出し、当時の区長が提供したみかん畑の水路と学校の水槽へ移動作業を行っている(写真-2)。区画整理事業が進み、2001年度にはめだか川は埋め立てられ、めだか川の面影は完全になくなってしまった。2002年度には保護者協力のもと、小学校の中庭にめだか池を設置した(写真-3)。2004年度には小学校で育ててきためだかを地区内のグループホーム「千怒の杜」の池に放流し、翌2005年度には再び保護者の協力を得ながら児童自らが進んで作業を行い、小学校の児童玄関側にめだか池を増設した(写真-4)(写真-5)。2007年度にはめだかの生態について学習し、2008年度に「千怒の杜」で繁殖しためだかを地区内の他の場所へ移動するなどめだかの保護活動を10年間継続して行ってきた(写真-6)。そして2009年度には公園づくりのWSに当時の5、6年生が参加し、公園デザインのアイディア出しを行った。2010年度に行われた竣工式では、児童らが保護してきためだかを放流し公園が完成した。
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