【要請レポート】

第34回兵庫自治研集会
第12分科会 被災地における女性への支援と保護~伝えられなかった真実~

 東日本大震災における、神奈川県本部としての取り組みと、その活動をとおして見えた避難場運営に関わる女性における問題を、支援者からみた避難者の立場、支援者自身の立場の双方から課提起するものです。



避難所における女性の状況
避難者・支援者、男性による壁・女性による壁

神奈川県本部/藤沢市職員労働組合・副委員長 中野 雅臣

1. はじめに

 2011年3月11日に発生した東日本大震災において、自治労神奈川県本部は、同年4月1日に災害対策本部会議を開催、被災地の復旧・復興に向けた支援・取り組みを全力で行うことを確認しました。
 その活動の一つとして、「自治労復興支援活動(人的支援)」に106人が参加、福島県内における「避難所運営補助」「遺失物整理」「事務支援」に従事しました。

(1) 従事した支援内容
① 避難所運営支援
  余震などによる崖崩れ、津波による住居喪失・損壊、原発事故により避難を余儀なくされた住民が避難する施設の運営補助。主に支援物資の搬入・管理、巡回、炊き出し・配食などの生活支援にあたりました。24時間勤務(交代制)で従事しました。
② 遺失物整理
  津波によって漂着した泥まみれの位牌やアルバム、写真等を洗浄し、乾燥・整理し倉庫などに展示する業務。被災者にとってはどれもが思い出の品であり、丁寧に洗浄などの作業を実施しました。日勤(毎日勤務)で従事しました。
③ 事務支援
  義援金申請書の記載漏れなどにより、1次審査にて義援金が支給されなかったものの2次審査作業チェック、仮設住宅入居に係る希望確認や割り振りなどの事務作業補助。被災住民の一日も早い生活安定にむけ、直接被災者本人との電話応対や家財道具などの搬入なども行いました。日勤(毎日勤務)で従事しました。
④ 医療支援業務
  長期かつ先の見えない状況により、相当なストレスをためている避難者、また、避難所生活により、かかりつけ医等への相談ができない避難所での避難者などに対して、支援に入っている医師とともに、保健・看護業務を実施しました。

(2) 参加者内訳
 第1グループ 福島市に対する避難所運営補助 男性10人
 第2グループ 同上 男性 9人 女性1人
 第3グループ 同上 男性10人
 第4グループ 福島市及び浪江町に対する避難所運営補助 男性8人 女性2人
 第5グループ 福島市・浪江町・南相馬市に対する避難所運営補助 男性14人、相馬市における医療支援 女性1人
 第6グループ 南相馬市に対する避難所運営補助 男性4人、浪江町に対する事務支援 男性4人、新開町における遺失物整理 男性2人
 第7グループ 南相馬市に対する避難所運営補助 男性4人、浪江町に対する事務支援 男性2人 女性2人、新開町における遺失物整理 男性2人
 第8グループ 南相馬市に対する避難所運営補助 男性1人 女性3人、浪江町に対する事務支援 男性4人、新開町における遺失物整理 男性1人 女性1人
 第9グループ 浪江町に対する事務支援 男性4人
 第10グループ 浪江町に対する事務支援 男性4人
 第11グループ 浪江町に対する事務支援 男性4人
 第12グループ 浪江町に対する事務支援 男性4人
 第13グループ 浪江町に対する事務支援 男性3人 女性1人

2. 避難所の状況

(1) 従事した避難所の状況
・多くの避難所では、世帯ごとの「間仕切り」がない。あっても段ボール等を利用した自作の壁。
・施設の部屋数などに余裕がない施設においては、食料を保管する場所等を時間帯により更衣スペースに流用。
・洗濯機が不足、また、洗濯物を干すスペースは共用スペース
・避難所の運営は避難者で行う。掃除や片付け、食事(配膳)準備などは、当番制
・避難者間のトラブルの発生
  → プライバシーの保障・保護は困難。そうした中、男女の性差に起因するトラブルも発生する。また、女性にとって、更衣、下着等の洗濯や生理の対応等については、異性のみならず同性の目も気になる状況が見受けられた。

(2) 避難所における女性避難者の状況
 表向きは女性特有の大きな課題は生じないように見えるが
① 男性の視点・意識による障害
・たとえば、パテ-ション等の設置による視界の断絶=防犯上の死角、共同意識の断絶意見によるパテ-ション等の設置に対する反対意見。
  → セキュリティーとコミュニティーとプライバシー
・たとえば、絶対的に少ない女性特有の支援物資(例えば乳液や化粧水=化粧品)に対する男性の考え方。
  → 女性には必須なものでも、男性から見たら贅沢品という考え方
・たとえば、避難所の生活になかなか馴染めず、日常の分担作業を率先して担うことがすくない男性の実態。家事系統に対する「手伝い」感覚
  → 平常時からの「男性は仕事、家庭(近所づきあい)は女性」という考え方
② 女性の視点による壁・意識による障害
・たとえば、地域から提供された農作物等の下処理=男性がすべきではないという女性コミュニティーの考え方。→半強制的に参加者は各家庭ともに女性。男性の参加は困難。
・各家庭ではできていた仕事・家庭・育児の両立が、避難所に入ったとたんに女性中心に。
  → 家庭のプライバシーに対するコミュニティーの干渉。被災女性が仕事・育児・当番に追われる
・たとえば、我慢する(できる)年長者、ストレスを感じる(ため込む)若手の図式
  → 女性の意見を否定(意見をいえなく)するのは、同じ女性でもある実態。
③ そうした中でも配慮していること
・男女別更衣室の設置
・性別に配慮した洗濯干しスペース
・男女別の役割分担を考慮、女性と男性の負担を均等に。
  → あたりまえのことなのか、評価すべきことなのか。

(3) 支援者としての女性の状況
① 女性支援者の従事状況
・神奈川県本部が従事した避難所においては、女性職員(当該自治体職員)も従事。神奈川県本部の支援者も、避難所運営に6人が参加
・従事内容に男女の違いは根本的にはなし。ただし、全てにおいてではないが、男性には力仕事系統、女性には調理などの系統が偏る状況もある。
・24時間従事における、従事者の宿泊・休憩体制において、男女別の場所の確保が困難な施設も存在
② 従事者としての女性の利点と欠点
・女性の視点による課題の発見
・女性のみならず、男性からも相談しやすい場面あり。
・避難者における女性の課題の根底は、支援者にも同様
・逆に同性だからこその距離感もあり。
・支援者間におけるトラブルもあり得ないことではない。

3. さいごに

・課題の見えにくさが一番の課題、災害発生~「贅沢は言えない」風潮が発生する。
・性差を無視することが平等ではないこと。優遇との勘違い
・日常においても、弱い立場ほど意見はあげづらく、声は通りにくい。
・災害時においてはなおさら。特によりどころのない女性などは、不満があっても沈黙せざるをえない。
・当事者が言い出しにくい、言えずに我慢している意見をくみ取り反映できる体制(たとえば相談窓口?)
・子どもの対応、特に思春期の青少年の対応・ケアも必要。

4. 参 考