【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域で再生可能な自然エネルギーを考える

 私たちのグループは、京都議定書の発効を契機に管理が放棄されている森林整備の取り組みをスタートさせました。従来、森林は木材生産を目的に管理・維持されて来ましたが、今日、森林が持つ多面的機能が重要視されるようになりました。私たちのグループは、森林整備と同時に、自然・循環エネルギーとしての木質バイオマスに注目し、その利活用に関して調査・研究してきました。
 化石燃料に変わり、木質バイオマス等のエネルギーが活用されることになれば、それは単にCO削減・地球温暖化防止と言うことに止まらず、経済の疲弊・過疎高齢化が進行する山間地域の経済活性化に大きく寄与することとなります。



森林整備と木質バイオマスエネルギーの可能性
化石燃料からの脱却は地域経済の活性化に繋がる

群馬県本部/群馬県職員労働組合・マイナス3.9%実行委員会

1. はじめに

 私たちのグループの活動原点は、京都議定書の発効にあります。我が国は2005年2月に発効した所謂「京都議定書」に於いて、2008年から2012年の5年間を第一約束期間として、二酸化炭素量を1990年に比して6%削減するとしました。
 そして、そのうち3.8%は森林の吸収で賄うこととされたため、林野庁は過去5年間(2002年度~2006年度)の平均間伐実績29.2万haを一挙に55万haに引き上げ、2007年度から2012年度の6年間で計330万haの間伐を行うことを目標に間伐に取り組み、ほぼ達成したと報じられています。
 私たちのグループは、京都議定書の発効を踏まえ「自分たちにできる温暖化防止対策」を活動の原点として、ボランティアによる森林整備を始め、既に6年間の実績を積み上げて来ました。当初は、管理が行き届かない所謂「放置林」に対し、下草刈りや枝打ち、間伐などを行い元気な森林にしつつ、将来は売れる材を生産する森林にすると言う目標からのスタートでした。しかし、地球環境の視点に立てば、切り捨て間伐ではなく、可能な限り材として利用すべきであるため、現在は全て搬出しています。更に枝条に至るまで利用し尽くすバイオマスエネルギーとしての可能性を追求することが、新たな活動の柱に加わりました。

2. 我が国の森林の現状

 我が国の森林面積は2,510万ha余りで国土の3分の2を占めています。そして、専門家によれば「日本の山々にこれほどの緑があふれるのは数百年ぶりのこと」と言われるほど、戦後の大造林の成果として山に木がある状態になっています。図表-1は日本の森林状態を示すものですが、1951年当時と比べて、現在、いかに森林蓄積が大きくなっているかが分かります。


図表-1 (推定蓄積量以外の単位は何れも万ha)富士通総合研究所の梶山恵司氏が、
2004年版森林・林業白書から作成

 
人工林
天然林
無立木地等
推定蓄積量
1951年
500
1,650
330
2,480
17億m2
2004年
1,040
1,338
137
2,515
44億m2
増減
+540
-312
-193
+35
+27億m2


 しかし、我が国の森林は大きな問題を抱えています。我が国の森林(2,510万ha余り)は、人工林が1,040万ha余りで、天然林が1,340万ha余りですが、人工林は植林した後、手入れ不足の状態を続けると、やがて間伐しても健全な森林に戻ることが難しくなり、森林が崩壊する危険性が高まると言われています。
 ところが、原木価格の低迷により材を切り出しても、なかなか採算が取れない状態となっていたため、管理(間伐等)が行われない森林が非常に多く見られます。このままでは、戦後の厳しい国民生活にありながらも、前世代の人たちが私たちに残してくれた「緑豊かな」森林が、全く活かされないばかりか、森林の崩壊、ひいては国土の荒廃に繋がる可能性が高まっていると言わざるを得ません。

3. 何故、森林管理が行われなくなったのか
■よく見られる放置林の風景:光がまったく入らない

 何故、森林管理がこれ程までに行われなくなったのかを考えると、現在の森林所有者の多くが、自らの生計を支えるために、植林し保育して来た世代とは異なり、相続で森林所有者となっただけであり、所有林からの収入に所得を依存する必要がないため、林業に対する興味や関心、知識も希薄になっていることが考えられます。しかし、そうなったことを含めて最大の理由は、やはり林業では生計が成り立たないことです。戦後復興とそれに続く高度経済成長期に我が国の木材需要は急激に増大し、ピークには年間1億m2にも達していたと言われ、高値で取引されていました。
 そうした中で国産材も年間6,000万m2余りを生産していましたが、当時の我が国の森林蓄積は20億m2余りであったため、ほどなく資源の枯渇を招き始めました。時を同じくして1964年からは木材の輸入自由化が始まり、安い外国産材が市場を席巻して行きます。木材バブルと呼ぶべき時期以降は、売りに出せる材は少なく、価格も右肩下がりとなる一方、植林と保育だけが残り、収入が得られない(=林業では生計が成り立たない)時代へと突入し、21世紀を迎えることとなりました。
 さて、我が国林業の衰退は久しいものがありますが、近年は状況が大きく変わって来ています。戦後の拡大造林の時代から50年余りが経過し、日本林業は木を育てるだけで、売れる木が殆どない保育の時代から、木材を間伐等によって利用できる新たな時代を迎えています。明るい展望が開けつつありますが、他方では適切な森林管理を行う担い手の不足が深刻な状態です。これが大雑把に見た我が国の森林・林業を取り巻く状況です。


4. 間伐作業の実証から

■林内作業者による間伐材の搬出作業
 

 私たちのグループは、みどり市大間々町のヒノキ林1.5haを所有者から無償で借り受け、間伐・枝打ち等の作業を行うと伴に、間伐木材を原木市場に出荷・販売しています。過去の実績では、10人が2日間行った間伐作で、補助金を含めて7,800円にしかならず、賃金に換算すると1人1日390円にしかなりませんでした。そこで、今回は伐採木材の搬出に林内作業車を導入し、作業の効率化を図って、再度何度かの実証を行ってみました。
① 作業の方法
  2人1組で伐採班、搬出班を作る。搬出班は前回伐採された材を山土場まで搬出する。伐採班は次回の搬出に向けた伐採作業を行う方法とした。
② 木材価格
  前橋原木市場に出荷した木材に対し、群馬県森林組合連合会による「木材共販代金精算書」を基に平均値を算出。1m2=3,700円程度。
③ 搬出量
  林内作業車の導入により搬出については効率化が図られた。実際には安全性及び疲労度を勘案して伐採現場と山土場の往復(片道距離約120m)を3回までとしたが、8時間作業するとすれば、これまでの実績平均から最低でも4往復が可能で、4往復の場合の搬出量は5.0m2余りとなる(直径15㎝~25㎝・4m・40本)。

 今回行った作業を平均すると、4人が1日行った間伐作業の収入は18,500円余りで、賃金に換算すると1人1日約4,600円となり、前回よりは大幅に効率化されていますが、到底採算が合わないことは言うまでもありません。私たちの作業量は、4人で5.0m2余りと素人の水準ですが、素材生産業者の平均は1人1日2~3m2と言われています。しかし、素材生産業者が仮に1日3m2生産したとしても11,100円余りにしかならず、山土場から原木市場への搬出コストやそれに費やす時間を考えると、間伐作業が「業」として成り立つ可能性は低く、結果的に管理されていない森林の間伐が進展する展望は殆どありません。


5. 木質バイオマスの利用:高知県の事例

 高知県ではバイオマスエネルギー活用に向けた様々な取り組みを進めていますが、代表的な2つの事業を見てみます。その一つは高知県にある住友大阪セメントが、セメント製造過程で使用する電力のために持っている火力発電所に着目したものです。具体的には、火力発電所に使用する化石燃料(石炭)を削減し、その代替燃料として木質バイオマスを一部使用して貰うものです。この事業は同社が化石燃料からの排出CO削減を模索していたこと、高知県が木質バイオマス利用促進の政策を推進していたこと、混燃プラント導入に環境省からの補助制度があったことが旨く噛み合ったことによって成立しました。
 石炭の発熱量見合いの価格と木質バイオマス発熱量見合いの価格には、調査時点(2010年2月)でトン当たり2,000円余りの差(木質バイオマス燃料の方がコスト高)があったことから、その差額を高知県が負担する契約を同社と締結しました。同社は燃料コストの負担増はなく、地域貢献活動や地球温暖化防止に向けた化石燃料削減に取り組むことができ、加えて企業イメージのアップに繋がりました。
 一方、高知県は化石燃料(石炭)を削減することによって得られたCO削減分を取得して、CO削減が求められている企業にCOクレジットを売却し、一定の収益を上げています。同時に間伐(切り捨て間伐ではない)が進み、森林整備という県の大きな政策目標が前進します。ここで難しいのは、林地残材の収集・運搬に要するコストと採算性ですが、コストを押さえるため林地残材の収集範囲は片道50㎞以内とした上で、トン4,500円の価格設定(調査時点)としたため、材を供給する側は「赤字にはなっていない」とのことでした。
 木質バイオマスをエネルギーとして利用する住友大阪セメント、木質バイオマスとなる林地残材を供給する事業者の何れもが採算性を保ち、持続可能な仕組みづくりのために高知県は汗をかき、若干の財政支出はあるものの、CO削減、木質バイオマスの利活用、森林整備の促進、雇用の創出などの成果を挙げています。
 高知県の取り組みの二つ目の注目事例は、チップ・ペレットの利用促進です。高知県が着目したのは園芸用加温ボイラーで、JAとの連携により園芸農家の石油ボイラーが耐用年数を迎えた段階で、チップ・ペレットボイラーへの切り替えを推進しようというものです。そこでの課題は、低廉なボイラーの開発と、調査時点では、割高なペレットを燃料としつつも採算が合うようにするための工夫・対応策です。
 バイオマス燃料の安定供給のためには、林地残材の安定的収集が可能であり、更に燃料製造工場の稼働が不可欠ですが、その前提となる燃料製造工場の立ち上げのためには、一定量の需要が確保されなければならず、園芸用加温ボイラーへの着目と、そこでの利用促進は大きな可能性を感じます。高知県によれば、具体的な展開はこれからとしていましたが、調査から2年が経過しており大きく前進しているものと思われます。


6. 木質バイオマスの利用:北海道足寄町の事例

■足寄町役場

■ペレットボイラーの燃焼台

■林地残材の粉砕課程

 私たちのグループは2012年3月、バイオマスタウン構想に早くから名乗りを上げ、先駆的な取り組みを行って来た北海道足寄町を視察し、その取り組み概要を調査しました。
 足寄町の取り組みは、政府が「バイオマス・ニッポン総合戦略」を決定した2002年より早く、2001年度にNEDO(独立行政法人:新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成制度により新エネルギービジョン及び木質バイオマス資源活用ビジョンを策定し、具体的な取り組みを開始したとのことです。
 足寄町は、太陽光発電システムの導入、木質バイオマス導入、風力発電導入、家畜廃棄物の利用、雪氷エネルギーの利用、の5つの計画を進めて来たとのことでしたが、調査時点では、木質バイオマス導入と家畜廃棄物の利用については実用化に至っているものの、風力発電については風車建設予定地域の風量が採算ベースを下回ることから保留状態にあること、太陽光発電と雪氷エネルギーの利用については準備段階であることが説明されました。私たちのグループは、自らの課題でもある木質バイオマスの利用について詳しく説明を受け、燃料製造工場を視察しました。
 足寄町は香川県の3分の2余りの広大な面積を有し、その82%を森林が占めていることから、林業振興、木質バイオマスの利活用が町おこしの柱となっています。そのため、2002年度には早くも「足寄町木質ペレット研究会」を発足させ、2003年3月には小型ペレット製造機による試験製造を開始しました。
 2004年12月には、異業種14社により「とかちペレット協同組合」を設立し、2005年11月からペレット生産を開始しましたが、最大の課題であったペレット燃料の販売先の目処が立ったことが工場稼働の決め手となりました。即ち、2005年度には新庁舎・消防庁舎にペレットボイラーを導入(50万kcal・2台)すること、2006年度には「あしょろ子どもセンター」にペレットボイラーを導入(20万kcal・1台)すると伴に、公共施設にペレットストーブ2台・ペレットグリル8台の導入が決まったことです。
 役場・消防庁舎のボイラーは年間約150トン、子どもセンターは年間約110トンの燃料を必要とすることから、燃料生産工場の生産量は2010年度で657トン、その全てを出荷できることから経営は順調に行われていることでした。
 小さな町の小さなグループが始めた取り組みは、木材生産過程で生まれるゴミとも言える林地残材を木質バイオマス燃料に変え、新たな自然・循環エネルギーとして大きな事業にまで発展していました。木質ペレット燃料関連の事業で、創業者を除き既に新たに17人の雇用を創出する成果も上げています。私たちのグループに対し中心的に説明をして下さった足寄町経済課参事の岩原榮氏は「新たな分野での事業成功のためには、産(事業主体)学(足寄町には九州大学の演習林がある)官(足寄町)に政治(首長・議会)を加えた産学官政の連携が重要です」と言う点を強調されていました。


7. 木質バイオマス燃料は価格競争力がある

 2011年4月末現在、北海道には17カ所のペレット生産工場があるものの稼働率は必ずしも高くはなく、需要の拡大が求められている状況にあります。この原因が燃料コストにあるのではないかと思われますが、実はそうではないようです。図表-2は北海道林産試験場が試算した燃料コスト比較計算です。この結果を見る限りペレットやチップには充分な価格競争力があり、取り分けチップは比較優位の状況にあることが分かります。問題は、ペレットストーブ・ボイラーやチップボイラーなどが大量生産システムに乗っておらず割高であること、ボイラーの設置やメンテナンスができる事業者が少なく利用が簡便ではないこと、安定した燃料供給システムが整備されていないことなどにあります。

【図表-2】バイオマス燃料と化石燃料の価格比較(北海道林産試験場公表データ)
 
単位
価格(円)
発熱量(MJ)
価格/発熱量
備考
灯  油
L
126
36.7
3.4円
2008年9月10日現在
ペレット燃料
kg
44
18.8
2.3円
工場直販価格(送料別)
A 重 油
L
107
39.1
2.7円
工業試験場取引価格
廃材チップ
kg
12.2
0.4円
2,050円/m2として計算
背板チップ
kg
10
12.2
0.8円
4,505円/m2として計算
山棒チップ
kg
15
12.2
1.2円
5,725円/m2として計算
ガソリン
L
174
34.6
5.0円
2008年9月10日現在
バイオエタノール(小麦由来)
L
98
21.2
4.6円
副産物収入(14円)を含む
バイオエタノール(稲わら由来)
L
232
21.2
10.9円
新聞報道2008年6月価格
軽  油
L
157
38.2
4.1円
2008年9月10日現在
バイオディーゼル(廃食油由来)
L
87
34.4
2.5円
発熱量は軽油の10%減
バイオディーゼル(ナタネ由来)
L
212
36.6
5.8円
副産物収入(126円)を含む


8. 地域経済に与える効果:北海道芦別市の事例

 北海道芦別市は、「緑の分権改革」推進事業によって、木質バイオマス有効利用実証調査事業を行いました。芦別市の総面積は865.02km2あり、そのうち森林面積が88%を占めていることから、森林資源のうち未利用の林地残材等をクリーンエネルギーとして有効活用すべく、木質チップ燃料の製造を念頭に置き、原料の収集から利用に至るまでの実証調査を行いました。
 芦別市の問題意識は、暖房と給湯のために市全体が使う石油(重油・灯油)は、毎年6億6,000万円余り(「芦別市地域新エネルギービジョン報告書」)で、その殆どが市域外へ流失している実態の改革でした。具体的な実証調査対象としては、市の第三セクター芦別振興公社が運営するスターライトホテル・芦別温泉が選ばれました。
 詳しくは、先に記載した木質バイオマス有効利用実証調査事業報告書に委ねますが、結論的に言えば、同ホテル・温泉が支払って来た重油代年間6,300万円が、2,000トンの木質チップ燃料を使用することにより、燃料代は5,300万円となり、1,000万円余りの経費節減となることが明らかとなりました。
 この報告書によって、芦別振興公社の経費節減効果は明らかですが、同市の問題意識である「富の市域外への流失防止」と言う観点で見た場合、非常に大きな効果が期待されます。即ち、これまでと同じように同ホテル・温泉が重油を使用した場合、同市域での経済効果は、燃料取扱店が受け取る6,300万円の一部(10%:600万円程度)に過ぎません。殆どは、産油国や石油メジャー等の収入となってしまいます。
 ところが、木質バイオマス燃料が地産地消によって賄われるため、5,300万円は全て同市の経済活性化に繋がります。バイオマス燃料工場での雇用や、林地残材収集の雇用が生まれるのですから、極端に言えば、重油燃料より割高であっても市全体としての経済効果は高いと言えます。同市は、今回の実証調査結果に基づいて、2013年度にも木質バイオマス燃料によるボイラー運転を開始するとしています。(※芦別市の部分は、私たちのグループにオブザーバー参加しているメンバーが同市市議会議員から聞き取り調査し資料提供を頂いた範囲で纏めたものである。)


9. 富を海外に流失させない=地域経済の活性化を

 群馬県のA市で使われる暖房用の灯油や重油は、遙か遠くの産油国からタンカーで運ばれ、製油所で精製された後、タンクローリーでA市に運ばれて来たものです。この灯油や重油の代金は、そのごく一部が取扱店に支払われ地域経済として循環しますが、他の殆どは産油国や石油メジャーなど海外に流出してしまいます。
 日本のエネルギー自給率は極めて低く、化石燃料である石油の輸入量は世界第二位で2億4,300万キロリットル(2006年度)余り、金額にすれば9兆円余りを支払うこととなります。しかも石油価格は長期的トレンドでは明らかに高値にシフトしており、石油依存がこのまま続けば膨大な額を支払い続けなければなりません。
この海外に流出する膨大な日本の「富」を少しでも国内に循環させられないかを考えてみます。輸入される石油のうち約40%はガソリンなどとして運輸部門で使われ、約20%がプラスチックなどの化学製品の原料になります。電力会社が発電用に使うのは10%余りで、家庭や商店、事務所の暖房用が15%余りで会社・工場の材料・発電用が10%余りと言われています。ガソリンの代替品やプラスチック原料の代替品が直ちに実用化されないとしても、電力会社の火力発電用燃料や、工場での発電設備、家庭や商店・事務所・ハウスでの暖房用燃料は、しっかりとした供給システム等を確立さえすれば、例えば木質バイオマス燃料が代替可能だと言えます。このことが実現すれば、少なくとも2兆円余りの「富」が日本に循環しますので、地域経済、大きく言えば日本経済の活性化に大きく貢献することは疑う余地がありません。
 勿論、木質バイオマスに限らず、太陽光発電や風力・小水力・波力・地熱発電など、あらゆる自然・再生可能エネルギーが化石燃料の一部に取って代わることができれば「富」の海外流出を阻止し、国内に「富」を循環させることとなりますが、木質バイオマスには他のエネルギーと異なる点があります。その第一は、我が国の貴重な森林資源を維持するためには、今、将に大規模な間伐が必要であり、間伐の促進のためにはバイオマス燃料の製造が有効であり、一体的に取り組むことができます。第二には、太陽光や波力・風力・地熱などは大規模な設備投資をしてしまえば、メンテナンス要員を除けば持続的な雇用には繋がらないのに対し、間伐・林地残材の収集をベースとする木質バイオマスについては、継続的な雇用が生まれる点です。
 そして第三は、木質バイオマス燃料製造が、過疎化・高齢化が進み経済が疲弊している中山間地で行われることです。巨大資本が風車を設置したり、太陽光パネルを大量に敷設したとしても地域経済への影響は僅かであり、利益の殆どは巨大資本に吸収されて行きます。
 以上の点から自然・再生可能エネルギーの柱として「木質バイオマス」の利活用が重要と判断されます。前記4で述べたとおり、間伐材を原木市場で売却する仕組みだけでは、間伐が「業」として成立しないため、間伐の促進は望めません。他方、切り捨て間伐に徹すれば、地球温暖化防止・CO削減の効果は殆どありません。しかし、前述6(高知県)や前述7(足寄町)、前述9(芦別市)の事例でも見てきたとおり、行政がしっかりした計画を立てて地域を巻き込んだ取り組みを推進すれば、期待される効果を発揮することは確実です。
 既に成功事例がある訳ですから、そこに学び群馬県や県内市町村が、もう一歩先を見据えた取り組みを展開されるよう提言し、私たちのグループの今回の発表とさせて頂きます。