【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域で再生可能な自然エネルギーを考える

 津久見市では、1996年度から全国に先駆けて市内全ての可燃ごみを固形燃料化(RDF)する施設「津久見市ドリームフューエルセンター」を稼動させているが、施設の老朽化や財政難を鑑みた場合、修繕等はもちろん施設を延命化するためにごみの減量化を図ることは大きな課題となっているなか、ダンボールコンポスト購入補助事業の導入について考察してみた。



ダンボールコンポスト導入の効果と課題について


大分県本部/津久見市職員労働組合

1. はじめに……津久見市のごみ処理の現状

  津久見市は全国でも有数の石灰石鉱山がある地理的特質から、古くからセメント工場をはじめ石灰石関連産業が発達しており、近年、セメント産業では各種のセメントの製造にあたり、多種多様の原料や燃料を使用する技術を確立してきていた。そこで津久見市においても、1993年度からごみを固形化して燃料として使用する「ごみ固形燃料化施設」の実証実験を行い、1996年度からは全国に先駆け本格的に津久見市全ての可燃ごみを固形燃料化(RDF)する施設「津久見市ドリームフューエルセンター」を稼動させており、現在、市内で発生する一般廃棄物処理では、製造された固形燃料をサーマルリサイクルとして市内のセメント工場でセメント製造時の燃料・原料として使用している。


図1
 

 図1のとおり、2010年度のごみ処理総量は6,343トンである。
 可燃ごみピット投入量4,584トンのうち固形燃料化量は3,346トンであり固形燃料化率は約73.0%となっている。(但し、水分量を加味した場合の固形燃料化率は約99.9%となる。)
 また、古紙類については市内の社会福祉法人へ収集委託し再生業者へ売却しており、収集した古紙類の販売収益は委託費と相殺しながら社会福祉法人の運営費として活用している。
 不燃ごみについては、最終処分場埋立てごみ377トンを除く缶類・古鉄類はリサイクル業者へ売却、ビン類・木くず類・廃プラ類は中間処理後市内のセメント工場で原材料として有効活用している。
 これらにより、津久見市のリサイクル率は約74.7%となっている。(但し、水分量を加味した場合のリサイクル率は約94.1%となる。)
 このように、津久見市のごみ処理は高いリサイクル率を誇っており地域循環型社会を推進するための土壌が形成されている。
 しかしながら、操業以来14年を経過した施設の処理には莫大な経費がかかっており老朽化や財政難を鑑みた場合、修繕等はもちろん施設を延命化するためにごみの減量化を図ることは大きな課題となっていた。

2. ダンボールコンポスト導入の経緯

 1で述べたように、老朽化した施設の長寿命化を推進するため可燃ごみ投入量の削減に努めているが、可燃ごみの約40%に相当する生ごみは多くの水分を含んでおり、ごみ処理の過程で余分な石油や乾燥用添加剤が必要なため処理経費を削減する上で大きなネックになっていた。
 このため津久見市では生ごみ処理機購入助成金制度や生ごみコンポスト購入助成金制度を1992年度より随時実施しているが、購入金額が高額なこともあり市民への広がりが期待したほど浸透していない現状があった。また津久見市全体で取り組んでいる二酸化炭素(CO)削減の目標達成のためにも新たな対策が必要となっていた。
 そこで、担当課である環境保全課内において全国各地の事例等の調査・研究を行った結果、福岡県前原市で開発され、各地で取り組みがされているダンボールコンポストが安価であり取り扱いも簡単なため市民全体に導入が図りやすいとの結論に達し、2009年10月より広報・説明会等を通じて市民にモニターを募集することになった。なお、コンポスト購入費用は自治労の協力により負担していただいた。

3. ダンボールコンポストの概要

(1) 特 徴
 家庭から出る生ごみをダンボール箱に入れた醗酵素材等にかき混ぜると、好気性菌の働きで投入した生ごみの約8~9割が分解処理(水蒸気としてなくなる)され、残りが堆肥化される。ダンボール箱の大きさは縦30cm×横45cm×高さ35cm程度のため庭のないアパート等でも使用可能である。ダンボールは通気性が良いため空気を通しやすく、また堆肥化に必要とされる保湿性と余剰水分を壁面から排出できる水分調整機能を持っている。
(※)ミズゴケなどの植物が堆積し腐食化泥炭を、脱水・粉砕・選別したもの。軽くて通気性・吸水性に富み、農業、園芸用土、もしくは土壌改良材として用いられる。

(2) メリット
・生ごみであれば、調理くず・野菜や果物の皮・魚の骨や内臓・天ぷら油などを入れることができるため可燃ごみが減量でき、ごみ袋が小さくて済む。
・ほとんど臭いが気にならない。
・大きさが手頃なためアパートのベランダ等でも使用できる。
・購入費用が安価でランニングコストがかからない。
・2~3ヶ月でダンボール1個分の堆肥ができるので、畑や家庭菜園等で使用できる。

(3) デメリット
・生ごみの処理や切り返しに手間がかかる。
・容器がダンボールであることから耐久性に問題がある。
・虫の発生する恐れがあるため、屋外設置が原則になる。

4. 津久見市の補助事業について

 説明会等に参加していただきモニターになっていただいた方の中から40人にアンケートを依頼し1ヶ月程取り組んだ成果を集計した結果、8割以上の方が今後も取り組みたい等、概ね好意的な意見が多く、また家庭やグループでの身近な取り組みが環境問題等に関心を持つきっかけになるとの意見もあり、「津久見市廃棄物減量等推進審議会」の答申も受け、2010年度より予算化して取り組むこととなった。
 事業の取扱いについては、市民の利便性等を考慮した場合の申請の簡素化や民間小売店で取扱いをした場合の管理、仕入れから取扱い(販売)までの業務を職員で行うことの困難性等を勘案し、取扱い全般を委託業務とし実施することが最善であると判断した。委託先を古紙類の収集委託をしている社会福祉法人にすることにより、申請の簡素化と、配達・取扱指導・不要物の回収を行い市民の利便性を向上させ、更に仕入れ、在庫管理、取扱いまでを円滑に実施できるものと考えた。
 補助内容については1個換算で565円を公費負担とすることにした。市民負担については購入費用として1個あたり500円とし、ダンボールコンポストが1個で2~3ヶ月もつことから1世帯年間4基までを限度とした。また補助対象個数については初年度は津久見市の世帯数の約1割にあたる800基を目標に予算計上をした。ちなみに800基のダンボールコンポストが使用された場合、年間約45トンの生ごみが減量できるため市の公費負担を差し引いても約36万円の処理経費削減額となる見込みであった。
 市民への広報については、HPや市報を利用した。また、津久見市指定ごみ袋の帯ラベルに掲載を行った。

5. 効果と課題

 2010年度の実績は261基であった。処理経費削減額は12万円程度が見込まれる。目標数の1/4程度の利用実績になったが、家庭で発生する生ごみをごみ袋にすぐ投入するのではなく、ダンボールコンポストを利用することにより、環境面や市の財政面にどのような影響があるのかということを少しでも考えるきっかけになったのではないかと思われる。
 しかし目標に大きく届かなかったのは事実であり、補助事業に対する市の広報不足や取扱い方法の説明不足などが原因でもあるため、今後は広報紙等での呼びかけだけでなく地域に出向いての説明会等の開催も行っていきたい。またダンボールコンポストは投入する生ごみの種類や温度管理により日々色々な変化が見られるため、ペット的な感覚で特に子どもたちの興味を引くものであることから、学校等での取り組みを広げていき、興味を持った子どもたちを通して各家庭に波及していくような取り組みも行っていきたい。
 今回の東日本大震災における原発問題により国のエネルギー政策の方向性が議論されるなか、厳しい財政状況に直面する自治体にとって、経費の削減や使用電力・燃料の削減、COの削減は乗り越えなければならない大きな課題になっていくものと思われる。また、ごみ問題から派生する諸課題は未来永劫続くものでもあるため、津久見市では今後も、少ない経費で市民が取り組みやすくまた大きな効果が得られるであろうダンボールコンポスト補助事業に継続して取り組んでいき、市民が環境問題に関心をもつきっかけづくりの一助になれればと考えている。
 最後に、環境問題を解決するには、家庭や学校での幼少期からの徹底した教育が一番の早道だと思われるので、ダンボールコンポストなどの身近な取り組みにより、10年後、20年後には生ごみを極力出さずにリサイクルすることやごみを減量化するといったことが当たり前であるという社会になることを期待したい。