【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域での再生可能な自然エネルギーを考える

 大分市職労青年部では、過去50年の歴史をさかのぼると伊方原子力発電所視察、玄海原子力発電所、青森県六ヶ所村核燃料施設視察など、原子力関連施設への視察を行い、原発問題に関心を向け続けてきた。本報告では、原発問題の体験的学習を通して、主体的に学ぶ上でのポイントや課題を整理することを目的とし、その実践経過を報告する。



原発問題学習を通した主体的な学びに関する一考察


大分県本部/大分市職員労働組合・青年部自治研部 岡田 知也・後藤 靖之

1. 問題・目的

 大分市職労青年部では、過去50年の歴史をさかのぼると伊方原子力発電所視察、玄海原子力発電所、青森県六ヶ所村核燃料施設視察など、原子力関連施設への視察を行い、原発問題に関心を向け続けてきた。そのような中、2011年3月11日、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故が発生したことに伴い、社会全体の脱原発意識がより高まっている。私たちは、メディアで飛び交う膨大な情報に毎日触れるようになり、今まで以上に主体的な情報選択と判断が求められるようになってきた。また、これまでに行ってきたような施設内見学などの視察が行いにくい状況も散見される。そのため、私たちは、現状に即した形で主体的な学習を進めるにはどうしたらいいのか見直していかなければならない。また、同時に、自治体職員として原発問題をどのように理解し、いかに市民に表現していくかは緊急の課題である。
 そこで本報告では、原発問題の体験的学習を通して、主体的に学ぶ上でのポイントや課題を整理することを目的とし、その実践経過を報告する。

2. 方 法

 大分市職労青年部員を対象に、体験的な学習機会を段階的に設定した。
 実践1:プレ体験学習  ⇒  実践2:本体験学習  ⇒  実践3:事後学習 
 それぞれの実践から学習材料や課題を抽出すると共に、アンケート結果を分析し、参加者の変化や今後必要となる学習材料を整理・分析した。また、実践1と実践2について比較検討を行った。最後に、グループワークでの事後学習により、探索的に課題整理を行った。


3. 実践1~プレ体験学習~
図1 原子力発電所と風力発電所が
混在する伊方原子力発電所

(1) 概 要 
目 的:① 愛媛県伊方原子力発電所、および周辺地域を視察し、実情を学ぶ
    ② 本視察学習に向けて課題を整理する
日 時:2011年11月5日(土)
参加者:青年部員 計6人
内 容:① 伊方原子力発電所ビジターズハウスの見学
    ② 施設職員との質疑応答
    ③ 伊方町全体の視察
    ④ 参加者には事前/事後アンケートを実施

(2) 結 果
① 質疑応答
《参加者から出た質問》                 
・地震や津波の安全対策はどうしているのか、本当に大丈夫か
・なぜわざわざ伊方に原子力発電を作ったのか
・行政とどのように関係を作り、住民にどのように説明しているのか
② 町内観察から得た学習材料
<2つの道の駅(伊方町)>
・道の駅「瀬戸農業公園」……風力発電をアピール、原発資料は皆無、施設周辺で反原発のPR運動も一部あり。原発問題についてインタビューするも、反応無し。
・道の駅「伊方きらら館」……原子力発電をアピール。原発施設と連携した観光資源の紹介。原発問題についてインタビューすると、反応は少ない。
<原子力発電所と風力発電所が混在>
・原子力発電所の周辺(三崎半島全域)で無数の風力発電が行われている光景に、参加者からは「不自然だ」「違和感がある」といった感想が聞かれた。
③ アンケート結果

表1 伊方原発視察学習における事前アンケートと事後アンケートの結果(抜粋)
質問項目
事 前
事 後
伊方原発にある原子炉の数を知っている はい   0人(0%)
いいえ  6人(100%)
はい   6人(100%)
いいえ  0人(0%)
伊方原発周辺地域の原子力問題の現状を知っている はい   0人(0%)
いいえ  6人(100%)
はい   6人(100%)
いいえ  0人(0%)
伊方原発による大分の50km圏内問題を理解している はい   2人(33%)
いいえ  4人(67%)
はい   6人(100%)
いいえ  0人(0%)
原発問題への理解や考え(自由記述)
○……原発推進の意見
△……中立的な意見
×……原発反対の意見
○国内電力をまかなうため、現状では原発依存は仕方ない。
○津波が次に来るのはしばらく先。目先の(事故の)ことを考えすぎ。
△原発はもっと大事に使用するべき
△原発の長所・短所を十分理解できていない
△エネルギー問題は難しい。
△あからさまに反対するのはどうかと思う
×徐々に原発を減らしていく程度で良い
×以前から一貫して反原発の立場をとる市職労は良いと思う。
○使い方を間違えなければ暮らしのためにはなる。
△安全第一だと思う。世の中に「絶対」というものはない。
×安全面での意識付け等は非常に高いが、100%安全であるという保障はないと思う。
×反原発を推すことはしないが、脱原発を行うのは必要。
×再生可能なエネルギーへの転換が至上命題だが、伊方のように風力発電等の代替方式の拡充を施しながら、急な転換ではなく、緩やかな転換が望ましい。
今後の視察
学習への要望
・事前学習があると良い          ・内部施設を実際に見て状況確認したい
・クイズラリー形式でも良いかも      ・住民の生の声を聴くようにするとよい


(3) 考 察
 質疑応答では、原発の安全性に対する確認のほか、立地の問題や行政との付き合い方など、幅広く質問が挙げられる傾向にあり、参加者個人の関心の違いが表れたと思われる。
 町内視察からは、2つの道の駅を原発問題という角度から見比べたことにより、原発推進と原発反対の2つの意見が地域内に混在しているという町の現状が浮かび上がった。また、原発施設周辺を実際に見ることで、風力発電が充実していることにも気付かされ、原発問題を考え直す材料を得ることができた。
 アンケート結果からは、視察前に比べて視察後は原発に関する知識が飛躍的に高まったと言える。次に、原発問題への理解や考えは、視察前に比べて視察後に中立的な意見が減っていた。実際の見学を通して原発問題をより自分の問題として身近に考えるようになったからであると考えられる。

(4) 課 題
 本体験学習に向けて、予め質問事項を整理しておき、問題意識を高めるための事前学習の機会を設けることにより、積極性をさらに高めることができると思われる。また、施設内部を実際に見たり、クイズを組み込むなど、学習形式を工夫する必要性があることが分かった。さらに、今回は電力会社のPR施設を中心とした視察だったことにより、原発推進派の視点からの学びが多くなり、脱原発に向けた実態学習という観点からは物足りなさが残ったため、工夫が必要である。


4. 実践2~本体験学習~
図2 玄海原子力発電所担当との
質疑応答の様子

(1) 概 要
目 的:① 玄海原子力発電所を視察する
    ② 脱原発に関する認識を深める
日 時:2012年5月19日(土)
参加者:青年部員 計22人(主催者2人を含む)
内 容:① 事前学習(クイズ大会、反原発映画鑑賞)
    ② 玄海原子力発電所内の見学
    ③ 玄海原子力発電所エネルギーパーク、
      訓練施設の見学
    ④ 質疑応答
    ⑤ 参加者には事前(クイズ学習後)/事後アンケートを実施

(2) 結 果
① 玄海原子力発電所内の見学
  当初受け入れ可能とされていた原子力発電所内の見学は、打ち合わせの過程で九州電力サイドからの回答が二転三転した結果、見学できないことになり、発電所内部実際に見ることはできなかった。なお、見学ができない明確な理由は示されなかった。
② 質疑応答
 参加者から出た質問(一部抜粋)
 ・想定外の津波に対する対策はしているのか?
 ・東日本大震災の前後で、訓練のあり方は変わったのか?
 ・原子炉の運転に資格は必要なのか?
 ・加圧式型と沸騰水型による発電方式の違いで安全性は違うのか?
 ・ウラン採掘の段階から被爆者がいるというのは本当か?
 ・地域との話し合いをどのように進めているのか?
 ・若い世代に学んでほしいことは何か?
③ 町内観察について
  玄海原発に最も近い道の駅「桃山天下市」(唐津市鎮西町)では、玄海原発の施設PRはなかった。近隣にも原発推進・反対にかかるようなPRは見られなかった。
④ 得られた学習材料
  今回視聴した映画「東京原発」は脱原発をテーマとした映画であるが、企画者が事前に視聴する映画を選定する過程で、多くの脱原発をテーマとした映画作品が見つかった。
   《個人でDVDを入手可能な脱原発に向けた作品例》
      夢-(第6話)赤富士  1990年  黒澤明監督        8分
      チェルノブイリハート  2003年  マリオン・デレオ監督   61分
      東京原発         2004年  山川元監督       110分
      100,000年後の安全    2009年  マイケル・マドセン監督  79分
      祝の島         2010年  綾瀬あや監督      105分
⑤ アンケート結果

表2 玄海原発視察学習における事前アンケートと事後アンケートの結果(抜粋)
質問項目
事 前(クイズ学習後)
事 後
玄海原発にある原子炉の数を知っている
はい   9人 (45%)
いいえ  11人(55%)
はい   20人(100%)
いいえ  0人 (0%)
玄海原発周辺地域の原子力問題の現状を知っている
はい   2人 (10%)
いいえ  18人(90%)
はい   18人(90%)
いいえ  2人 (10%)
九電管内における玄海原発の供給割合を知っている
はい   10人(50%)
いいえ  10人(50%)
はい   20人(100%)
いいえ  0人 (0%)
原発問題への理解や考え(自由記述)
○……原発推進の意見
△……中立的な意見
×……原発反対の意見
○原発に関わる労働者の問題などがある中、反対とは言いにくい。
○安全性が確立できるなら、賛成である。
○市の財政等を考えたら原発を残すことでの税収を得たほうがいいのではないかと思う。
○原発は必要であるが、東電の対応は不誠実。
○原発がなくても生活できるならない方が良い。
△原発を一概に否定していいものかどうかわからないので、よく知りたいと思う。
△原発について知らないことが多いので、視察を通じて知っていきたいと思う。
△今回の見学で考え方がかわるかも……。
△中立の立場であるが、危険であれば当然廃止すべきであると思うし、安全であるのならば必要なものだと思う。
△節電で対応できるなら使用は控えるべき。
×脱原発を行い、不便さや料金の値上げを全員で負担する。
×反対であるが、電力会社のみに責任転嫁すべきではない。
×再生可能エネルギーの推進が大切。
×原発があることで生活できている人等もいるので、脱原発は時間をかけて少しずつ進めていくのが現状であると思う。
×事故への備え・核廃棄物の問題が解決されていない今、推進することは困難であると思う。
○安全面などを考えてできているのが原子力発電所だと思った。
○安全に使えるなら良いと思う。
△日本に必要なのかどうか電力供給、安全面とのバランスをしっかり考えることが必要。
△どのように悪影響なのかはっきり理解できない。
△安全性の確認については、すべての情報を数字で公表し、地域住民、近隣住民の理解・同意を得た上で確認すべきと感じた。
△震災後の対応状況、危機管理体制についてより周知し、全体で知識を持つべき。
△原発の必要性、危険性等をよく理解しないまま反対とは言えないと思った。
×安全対策を確実にしているようだが、あえて推進していくべきものではない。
×順次違う発電法に変更すべき。
×節電で対応できるのなら極力使用を控えるべき。
×今後利用することでのリスクを考えると、脱原発への移行が必要であると改めて感じた。
×クリーンエネルギーの利用が今後の課題である。
×原発が安全でないと感じ、職員も認識しているように見受けられた。
×国民一人ひとりが良く知ることが必要。
×報道されていることを鵜呑みにせず、足を運んででも正しい情報を知るべきだと思う。
×分からない点が多く反原発の考えが強まった。
×安全対策は以前より充実しているが、テロ対策等はどの程度なのか気になった。
×安全性が確保されるまで使用すべきではない。
×100%安全はない中、万が一のことを考えれば、脱原発への大胆な方向転換を国民一人ひとりが決断することが必要だと思う。
×実際どのレベルの自然災害まで耐えることが出来るのか色々教えてもらったが、ピンとこなかった。行ってみないとわからないだろうが危機管理だけはしっかりして欲しい。
 
今後の視察
学習への要望
・このような視察は毎年やるべきだと思う。
・反原発の立場の学習機会もあるといいと思う。
・電力会社で行っている危機管理対策等を把握したい
・視察前に事前学習する機会があるといいと思う。
・単に反原発ではなく、原発がなくてもやっていける社会にするための方法について学びたい。
・体験型の研修は勉強になる。 ・原発の仕組み等を知ることが出来た。実際足を運んでみることができて良かった。
・視察道中で原子力関係の映画を観るのは良い。知識をもてたので視察の参考になった。
・身近に原発がなく、この問題について深く考えることがなかったので、今回はこの問題に向き合ういい機会となった。

(3) 考 察
 かつて玄海原発を視察した際には、原子力発電所施設内部まで見学することができたが、今回は見学できなかった。こうした交渉プロセスと結果からは、東日本大震災によるセキュリティの厳格化や九州電力の対応混乱などの問題が推測されるが、今後しばらくは、原子力発電所施設内部を実際に確かめるという学習形態には困難が予測される。
 映画鑑賞は、アンケート結果での感想からも好評価であり、青年層の事前学習として気軽に活用できるツールであることが分かった。
 質疑応答では、積極的な質疑が交わされ、なおかつ具体的な質問が多かった。これは、脱原発をめぐる激論の様子が描かれた映画作品を視聴したことや、クイズ学習による事前の知識学習が影響しているものと思われる。
 アンケート結果からは、事前のクイズ学習により得た知識に比べると、実際に施設視察や質疑応答などによる学習によって得られた知識の方がより深いことが推測される。また、東日本大震災後の対応に関する自由記述がかなり多く、視察を通して安全・危機管理への問題意識が高まったと考えられる。さらに、脱原発に向けた自由記述もかなり増えており、見学や質疑を通して危険意識を感じたものと思われる。

(4) 伊方視察学習と玄海視察学習の比較検討
 質疑応答では、事前学習のなかった伊方原発視察学習よりも事前学習を実施した玄海原発視察学習の方が、より具体的で積極的な質問が多く挙げられた。アンケート結果からは、クイズ学習をしなかった伊方原発視察学習よりもクイズ学習を実施した玄海原発視察学習が、事前に得られた知識は多かったと言え、事前のクイズ学習の有効性が示唆される。
 地域の実情については、九州電力の施設見学が中心だった玄海原発視察学習に比べて、道の駅を複数視察したり、原発施設周辺を回りながらインタビューを実施した伊方原発の方がより地域の実情が浮かび上がってきたと言える。
 これは、参加者数の違いによって視察学習会自体の学習形態の柔軟性や雰囲気が異なったためであると考えられる。

(5) 課 題
 今回は主に九州電力のPR施設を見学することが中心となり、地域の様子や行政との関係について学ぶ機会が不十分だった。アンケートにも見られたように、原発推進の立場にある施設の見学や担当者とのやりとりだけでなく、原発反対の立場にある人の意見を聞くなど、両者の視点から学習することが必要であると感じる。


5. 実践3:事後学習
図3 KJ法に取り組む様子

(1) 概 要
目 的:今後の原発問題に向けた学習のあり方を考える
日 時:2012年5月21日(月)
参加者:原発視察学習に参加した青年部員 計5人
手続き:まず視察学習で得られたアンケート記述の中からテーマに関連していると思われるアイデアを抽出した。次にブレーンストーミングによって参加者のアイデアを抽出した。最後に、抽出されたアイデアを用いてKJ法による分類作業を行った。テーマは「脱原発の立場から原発問題を学ぶ上で必要なこと」とした。

(2) 結 果
 アイデアは重複も含めて計73個抽出され、32個の小カテゴリー、9個の中カテゴリー、2個の大カテゴリーにまとめられた。(詳細は別途提示資料参照)


表3 脱原発の立場から原発問題を学ぶ上で必要なこと-KJ法による分類(短縮修正版)-
大カテゴリー
中カテゴリー

小カテゴリー

Ⅰ 学習する
1 事前学習 1) クイズ学習
2) 映像学習
3) 視察前学習
2 事後学習 4) 発表する
5) 個別に調べる
3 知識学習 6) 法律について学ぶ
7) 歴史について学ぶ
8) 事故について学ぶ
9) 危険性について学ぶ

10) クリーンエネルギーについて学ぶ

11) その他
4 学習の雰囲気作り 12) 繰り返し学ぶ
13) お得感を作る
14) 楽しく学ぶ
15) 正確な情報を得る
16) その他
5 イメージ学習 17) 将来について考える
Ⅱ 行動する
6 生の声を聞く 18) 原発事故被害者の声
19) 原子力爆弾被爆者被爆者の声
20) 反原発派の話
21) 原発推進派の話
22) 原発のない国の人の話
23) 地元住民の話
24) 学者の話 
7 現場を見る 25) 脱原発国に行く
26) 原発国に行く
27) 被爆地に行く
28) 発電所
8 発信する 29) イベント
30) 伝える
9 工夫する 31) 節電する
32) 新エネルギーを利用する


※)分類結果に基づいて、後日筆者が若干の修正を加えている

(3) 考 察
 「学習する」上で大切なこととして、クイズ学習や映画学習などを通した「事前学習」や、学習成果をまとめたり、個別に調べたり、発表するといった「事後学習」の2つの学習を組み込むことが大事であると考えられる。また、「知識学習」を行う際には、歴史や法律に関する学習、事故や危険性に関する学習、安全なエネルギーに関する学習、自分たちが十分理解していないということを知るなど、多面的な学習が必要であると考えられる。
 そして、これらの学習を進める上で何より大事なことは、繰り返し学んだり、楽しく学んだり、お得感が得られるような「学習の雰囲気作り」であると考えられる。さらに、脱原発が実現されている未来の社会について語り合うといった「将来に向けたイメージ学習」も若い青年層の学習者だからこそ取り組みやすいことであると思われる。
 「行動する」ことは青年層にとって特に重要な取り組みであると言える。その中でも特徴的だったのは、「生の話を聞く」「現場を見る」のいずれのカテゴリーにおいても、原発推進と脱原発の両者の立場に触れる必要性が挙げられていたことである。脱原発派の学習者が原発推進派の視点にも立ってみることは、脱原発に向けた主体的な学びを一層深めることにつながるのではないだろうか。

(4) 課 題
 今回の分析では、他者からの評価を得て再カテゴリー化したり、時間をおいて再度カテゴリー化する場を設けなかったため、分類結果の精度には不十分さが残る。 
 ブレーンストーミングやKJ法による分析は、十分な体験や分析法に対する理解によって質の高いアイデア抽出と精度の高い分析が可能となるものである。従って、これらの分析作業の質を高めるためには繰り返し取り組むことによって経験を積むことが望まれる。


6. まとめ

(1) 主体的な学習に向けて
 参加者から意見の多かった原子力発電所内部を自分の目で確かめる機会を設けることは、以前に比べて大変難しくなっている。従って、今後は、単に施設見学するだけでなく、別の学習機会を設けていくことが課題であると言える。
 今回の学習では、プレ体験学習、本体験学習、事後学習と段階的・継続的に体験的な取り組みを行ったことで、積極的に質疑に参加したり、同じような学習機会の開催を期待するなど、青年部員の主体性が高まり、原発問題に対する理解も深まったと言える。今後もさらに継続的な学習機会や行動機会を設けて創意工夫をこらした学習活動を展開していきたい。
 企画者として準備する中で、原発学習の材料となる映画作品がたくさんあることを発見した。映画学習は参加者の評価も良かったことから、今後も継続して映画鑑賞会を開くことは青年層が気軽に学べる学習の雰囲気作りを進めていく上で効果的かもしれない。
 今回の学習は、企画者の提案→参加者からの要望や実態の整理→企画者の再提案→参加者からの要望や実態の整理と、PDCAサイクルを実践していったが、この過程を通して、企画者自身が徐々に主体性を高め、事後学習への積極的な取り組みを行うこととなった。本実践において主体的に学ぶということは、参加者と企画者がコミュニカティブに学びあい、相互に主体性を高めていくということであったと感じる。

(2) 自治体職員として
 今回の体験学習では、行政・地域の立場から原発問題を学ぶという視点が不足していた。例えば四国電力職員からは愛媛県と安全協定を結んでいることや地域住民を1軒ずつ家庭訪問して理解を求める工夫をしていることが語られた。九州電力職員からは地域住民には正確な知識を選び取って欲しい、との願いが語られた。電力会社から見える行政・地域の課題に触れることはできたが、行政・地域の立場から見た電力会社について触れる必要がある。自治体職員として、電力会社―行政―地域の三者の視点から同等に原発問題を眺めることが必要であると考える。
 企画者として「主体的な学び」という視点から体験学習を開催し、課題を整理できたことは、市民対象のイベントや学習会等をより参加者が主体的に参加できるものに練り上げていく上でも活かせると考えられる。また、KJ法の経験を通して得られた成果や課題は職場での課題解決の取り組みとしてそのまま活用できるものであり、今後の職務に活かせるものであると確信している。